【未完】個性と念。【引き継いでくれる人募集】   作:確かな勇気

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第十四話

オールマイトは、腕を組んだまま顎をわずかに上げ、緑谷を真正面から見据えた。いつもの彼とは違う、探るような視線だった。

 

「一つ聞かせてくれ、少年」

 

低く、しかし場を切り裂くような声。

 

「君は……他の念能力者に出会ったことはあるのか?」

 

「敵でも、味方でもいい。実際に“使い手”を見たことがあるのか」

 

緑谷は一瞬だけ言葉を探すように視線を落とし、すぐに首を横に振った。

 

「……直接、会ったことはありません」

 

緑谷は続けた。

 

「でも、師匠……僕が精神世界で出会った念の達人から、過去にどんな使い手がいたのか、話を聞いたことはあります」

 

会議室の空気が、自然と引き締まる。

“過去の使い手”。

それは、今この場にいない誰かの話でありながら、確かに現実に存在した力の証明だった。

 

「もちろん、純粋に力を増幅させるタイプもいたそうです」

 

「身体能力を極端に高める者。攻撃力や防御力を突き詰めた者。分かりやすい強さですね」

 

ここまでは、理解できる。

ヒーロー達の表情にも、まだ戸惑いは少ない。

 

だが、緑谷はそこで一度、言葉を切った。

 

「……ただ」

 

「念能力は、それだけじゃありません」

 

視線が上がり、会議室全体を見渡す。

 

「言葉で説明するのは、正直……難しいです」

 

「能力の方向性が、本当に多岐に渡るので」

 

ミッドナイトが、冗談めかした口調で言う。

 

「多岐、ってどのくらい?」

 

緑谷は一拍置き、慎重に言葉を選んだ。

 

「……位置情報を把握する能力」

 

「特定の条件を満たした時だけ発動する能力」

 

「触れたものにだけ影響を及ぼす能力」

 

「相手の行動を制限する能力」

 

一つ一つは短い説明だったが、積み重なるにつれて、聞く側の表情が変わっていく。

 

「……それって」

 

プレゼント・マイクが思わず口を挟む。

 

「個性とほとんど変わらねぇじゃねぇか?」

 

「似ています」

 

緑谷は否定しなかった。

 

「でも、決定的に違う点があります」

 

少しだけ、声が低くなる。

 

「念能力は……念能力じゃないと、基本的に“知覚”できません」

 

その瞬間、会議室の空気が凍りついた。

 

「見えない。感じられない。気づけない」

 

「念を知らない相手にとって、念能力は“存在しないのと同じ”なんです」

 

オールマイトの目が、鋭く細められる。

 

「……つまり」

 

緑谷は、静かに頷いた。

 

「言葉を選ばずに言えば」

 

「念能力は、暗殺に向いています」

 

誰かが、息を呑む音がした。

 

「気配を消し」

 

「能力の発動自体を悟らせず」

 

「個性反応もなく」

 

「結果だけが残る」

 

緑谷の声は淡々としていたが、その内容はあまりにも重い。

 

「だからこそ……学ぶ必要があります」

 

「使うため、じゃありません」

 

「“気づくため”です」

 

沈黙が落ちた。

 

驚愕。

困惑。

そして、はっきりとした危機感。

 

セメントスは無意識に拳を握り、エッジショットは影のように目を伏せ、ミルコは歯を食いしばって舌打ちした。

 

「……なるほどな」

 

エンデヴァーが、低く笑う。

 

「表に出てこなかったわけだ」

 

「こんな力、目立つ前に消されるか、裏に潜るか……どっちかだ」

 

相澤が静かに口を開いた。

 

「だからこそ、ここに集めた」

 

「知らないままじゃ、対処も警戒もできない」

 

オールマイトは、緑谷を見つめながら、深く息を吐いた。

 

 

「緑谷少年…君は、とんでもない話を持ち込んできたな」

 

その声音には、叱責でも称賛でもない、純粋な重さがあった。

 

緑谷は、わずかに背筋を伸ばす。

 

「……はい」

 

「でも、もう動き始めています」

 

「僕たちが知ろうとしなくても、使う側は現れる」

 

「だったら――」

 

言葉は、自然と結ばれる。

 

「先に知っていた方が、いいと思ったんです」

 

会議室に、再び静寂が訪れる。

だがそれは、先ほどまでの“理解を拒む沈黙”ではなかった。

 

これは、覚悟を測る沈黙だった。

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