【未完】個性と念。【引き継いでくれる人募集】   作:確かな勇気

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第十六話

相澤消太は、視線だけで全員を見渡した。

 

この場にいるのは、雄英の教師、そして第一線で戦い続けてきたヒーローたち。

迷いはあっても、理解力と順応力は一流だ。

 

(時間はかからない)

(“引っかかり”さえ掴めば、一気に来る)

 

「いいか」

 

相澤は淡々と口を開く。

 

「オーラは“探すもの”じゃない」

 

「自分の中に新しく何かが生まれるわけでもない」

 

「最初からある」

 

その言葉に、ミッドナイトがわずかに眉を上げた。

 

「……最初から、ね」

 

「言われてみれば……そういう感覚、覚えがないわけじゃないけど」

 

「……ある前提で、立て」

 

相澤は続ける。

 

「深呼吸はいらない」

 

「呼吸を整えようとするな。普段通りでいい」

 

プレゼント・マイクが肩をすくめる。

 

「おいおい、リラックスしろって話じゃねえのかよ」

 

「真逆だな」

 

ヒーローたちは半信半疑のまま、指示に従った。

 

床に立つ感覚。

重心。

視界の端。

 

「“力を入れない”ことだけ意識しろ」

 

「抜こうとするな。ただ、入れない」

 

その説明に、ミッドナイトが小さく息を吐く。

 

「……言葉にすると、ほんとに禅問答ね」

 

一方、プレゼント・マイクは内心で舌打ちしていた。

 

(言葉遊びみてえだな……)

 

だが、その瞬間だった。

 

ふと、力が抜けた。

 

本当に一瞬、意識の隙間のような感覚。

 

(……?)

 

次の瞬間、身体の輪郭が、わずかに“厚く”なった気がした。

 

「……っ」

 

思わず、プレゼント・マイクが息を飲む。

 

(今のは……気のせいか?)

 

だが、相澤の声が即座に飛ぶ。

 

「今、何かあったな」

 

名指しではない。

だが、確信に近い声音。

 

プレゼント・マイクは目を見開いた。

 

「……ああ」

 

「一瞬だけ……」

 

「自分の身体が、内側から“そこにある”感じが……」

 

その言葉に、空気が変わる。

 

「……それだ」

 

相澤は即断した。

 

「それが“自覚”の入り口だ」

 

「派手じゃない。むしろ、地味すぎて見逃す」

 

「だが、今の感覚を“否定しない”こと」

 

その直後、ミッドナイトが小さく声を漏らした。

 

「……あ」

 

「今の話を聞いて……」

 

「私も、さっき一瞬だけ……背骨の奥が、重くなったような……」

 

セメントスも、低く唸る。

 

「……奇妙だ」

 

「強化された、というより……」

 

「自分の身体が、より“固定”された感じがする」

 

連鎖するように、微細な反応が広がっていく。

 

誰かが言葉を失い、

誰かが無意識に拳を開き、

誰かが自分の腕を見下ろした。

 

プレゼント・マイクが、ぽつりと呟く。

 

「……これか」

 

「正直、もっと分かりやすく“来る”力だと思ってた」

 

ミッドナイトが、静かに続ける。

 

「強くなった感じは……正直、まだしないわね」

 

「でも……」

 

自分の手を見つめ、言葉を選ぶ。

 

「確かに、“在る”」

 

相澤は、その様子を見て内心で頷いた。

 

(来たな)

(全員じゃないが、十分だ)

 

「いい」

 

「今の段階で完璧に分かる必要はない」

 

「“否定できない違和感”を覚えたなら、それで合格だ」

 

セメントスが、低く納得したように言う。

 

「……正直、もっと扱いづらい力だと思っていましたが」

 

「これは……」

 

少し考え、結論づける。

 

「私達を助けてくれる能力。なんとなく、そう思います」

 

その言葉に、ミッドナイトが小さく頷いた。

 

「ええ……」

 

「邪魔にならないどころか……」

 

プレゼント・マイクが、苦笑混じりに続ける。

 

「俺たち向きかもな、これ。」

 

相澤は腕を組んだ。

 

「今日は、ここまででいい」

 

「自覚は“掴んだ”」

 

「次は、それを“安定”させる」

 

視線を巡らせる。

 

「ここから先は、焦った方が負けだ」

 

誰も反論しなかった。

 

それどころか――

全員の表情に、同じ感情が浮かんでいた。

 

(……本当に、知らなかっただけなんだ)

 

(こんなものが、ずっと足元にあったなんて)

 

そして同時に、誰もが思ってしまう。

 

――もし、敵がこれを先に使いこなしたら?

 

その問いが、言葉にならず場に沈んだ。

 

相澤は、それを見て静かに確信する。

 

(もう、“半信半疑”の段階は終わった)

 

(次は――危機感のフェーズだ)

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