ウルトラ怪獣がスキルとして出るのは間違っているだろうか 作:サイセンサイ
「逃げろ!逃げろ!逃げろーーー!!!」
「ポーションもうねぇから!」
「ていうか装備全般限界!」
「もっと計画的に使えよ!」
「お前が言うな!」
「魔力は!?」「一発逆転!」
「無い!」「もうカスカス!」
「魔法もなしかよぉ!!」
「落ち着け!」
「落ち着いて足並み揃えろーー!!!」
「そして逃げる!」「神々で言う【おはし】だ!」
「なんだそれ!!?」「【おかし】じゃなかったか?」
「押さない!走らない!喋らない!」
「押さない!駆けない!喋らない!」
「あっ内容同じなんだ」「何で内容同じのが?」
「どうでもいいわボケーーーーー!!!!!」
なんてやり取りをしながら冒険者たちは必死に逃げていた。彼らは中の下のファミリアの集まりでレベル2が数人その他がレベル1のパーティーだった。そしてそのメンツにベルと関係のある者たちもいた。
「クソぉぉぉ!ついてねぇーーー!」
モルド・ラトロー含めたリヴィラの住人たち。地上へ帰還していた最中のことだった。場所はダンジョンの中層と下層の間、最初の死線【ファースト・ライン】と呼ばれる場所でそれは起きた。
ワオオオオオオオオオオオオオン!!!!!
モンスター・ヘルハウンドの大量発生である。一匹一匹が強力な火炎放射を放つそのモンスターは遠距離攻撃の手段がなければかなり苦しい、なおかつ彼らはそこそこの大所帯でほとんどがレベル1なのでレベル2の者たちは自然と【下を守れ】という空気が流れて自由度の高い行動も出来ない。もう色々諦めて逃げちまうかとリヴィラの住人たちは考える
その時だった
「「「「「!?」」」」」
目の前のヘルハウンドが3体ほどまとめて灰となった。正確には【一本の矢】が【3匹まとめて】貫いたのだ。近くにいた者たちがヘルハウンドの群れの後ろにいる誰かを見つけた。援軍なのかと期待して見てみればそこにいたのは【一人】それも見た目は華奢な女の子だった。これがアマゾネスとかだったらもうちょっと喜べたのにと考えてしまうのは自分らが捻くれているからだとわかっているがそう思ってしまった。
たが、その少女の構える弓矢は彼らを救った。一度放てば2〜3匹が塵になり更にその矢は【曲がった】技術のあるものが放てば神の恩恵無しでもそういう事が出来ると聞いたことがあるが今回は生死をかけた実戦で更に的であるモンスターは四方八方にいる。
だがその少女の弓矢はまるで生き物のように曲がるだけではなく様々な一矢に変化した。
火炎放射の直前に射られたヘルハウンドは同士を巻き込んで焼き殺させた。
矢が地面に当たったと思うと水切りの要領で跳ねて頭を射抜いた。
一度に2本同時に矢を射って一瞬で6匹を塵にした。
そして襲われてたパーティーの欠けて砕けた武器を矢の代わりにして連続で射ち込んだ。その姿は派閥大戦で情も何もなく味方を狙撃したカウルス・ヒルドを撃つ白妖の魔杖を彷彿とさせた。
「弓矢って矢を飛ばすだけでも大変なんじゃ?」
「でもあれ特別な弓っぽいけど」
「いや!だとしても技術ありきだ!」
助けられて余裕が出てきた彼らが様々な言葉を口にする中、モルドが気づいた。
「あの女、、確か獅兎の光とよくつるんでたやつじゃねぇか!?」
「あ!ほんとだ!派閥大戦の時に黒妖の魔剣にドチャクソ切られてたやつだ!」
「あの見事なぺったんこは間違いねぇ!」
その瞬間最後の男の足に矢が刺さった
「「「「「あ!」」」」」
「ぎゃああああああああ!!!??」
「えええええぇぇ!間違いなく確実にあいつが悪いけどモンスター殺す矢を人に当てたぞ!!?」
「間違いなくそいつが悪いけどそこまでするか!!?」
「殺されても文句言われねぇけどマジでやるか!!?」
「100%悪いけど、、、そういう女だったか!?」
射られた男の足は矢が刺さっただけでなくその衝撃で千切れかけていた、足の皮が生々しく血を流しながらゴムのように伸びている。
彼女の名はヒタチ・千草 レベル2の冒険者
彼女はヴェルフが作った大型弓である【黒兎馬】を使いヘルハウンドを蹂躙していった。そして、彼女は魔石しか残っていないことを確認すると前に進んでいった。
「お!おい!魔石いいのかよ!!?」
モルドが殺したヘルハウンドの魔石を一切拾わずにダンジョンの奥に進む彼女に違和感を感じて声をかける(さりげなくポケットに魔石を入れながら)
すると彼女は振り向くことも足を止めることもなく前に進んでいく。
(無視!!?)
助けられたのだから流石に文句は言わないがちょっとショックを受けるモルドの耳にその声は響いた。
「こんなもの、戯れに過ぎず。余が狙うは価値あるものよ」
((((((余!?))))))
【余】。一人称【余】である彼女の言動に驚きながらその背中から目が離せなかった。まるで溢れ出るカリスマを観ているかのようなその背中に傷ついた者たちは魅了された。
「てかソロ?」
そして気づいた。彼女は一人であると、普通この場所ならレベル2でもパーティーを組むものだが彼女は一人だった。だがその雰囲気は明らかに強者のものであり彼らは何も言えず見つめ続けるしかなかった。
足を射抜かれた男を無視しながら
そして射った矢を回収した彼女はレベル2でありながらダンジョンの奥に進んでいった。
「試したい!この溢れ出る暗黒の力を!!」
それは普段の彼女とは違っていた。
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「一体何度目だクソが!」
ダンジョン中層・迷宮の楽園
リヴィラの町
そこで一人の猫人が迷宮の楽園の端の端で簡素なテントを設置して自己羞恥に震えていた。
男の名はアレン・フローメルそして謎のスキルによりトップレベルの地獄を味わった者の一人。
ピグモン
友好珍獣
という一応敏捷に補正はかかるがそれ以外理由のわからないスキルである。彼はこのスキルのせいで無意識のうちに人助けをしてしまい人を避けてここにテントを設置して暮らしていたがリヴィラの町はならず者の町なので揉め事など日常茶飯事でそのたんびにアレンの身体は動き、なるべく平和的に解決するという行いをやりまくっており最近自分見る視線が変化してきて気持ち悪いと思っている。もうここで暮らすの諦めたら?と思うだろうが地上には今【自分の身長を抜いた妹】が存在しているので絶対に戻りたくない。ていうか戻ってもう一度しっかり見たら自分がどうなるか分からない。
その時だった
1本の矢が自分に目掛けて飛んできた。
アレンは持ち前の速さでそれを交わすが2本目が来た。しかも2本目はヘビのように曲がり自分の身体に向かってくるが素手で掴んで防いだ。
「何者だ?」
そして茂みから出てきたのは見たことのある顔だった。
「流石だな、褒めてやろう」
「あぁ!?」
アレンは彼女が顔を知っていた。兎の関係者で派閥大戦ひいてはイシュタル・ファミリアの時にも見たことがある。
しかし雰囲気がまるで違う
「余は【暗黒極東大女帝】千草である!!」
「!?」
なんて?そんな言葉がアレンの頭を過った。ていうかだんだん思い出してきた。アレは確か物凄くくだらない事件だった、、、そう【真夏の夜の恋宴(ラブサバト)】なんて言われてたあの事件の時の教祖がこいつだったなと、あの時のやつに似てるなと
「この世界に舞い降りし支配者の力を振るいたくここにさせ参じた!さぁ槍を取れ!」
「手合わせだな分かった」
(あ!!?クソ!また勝手に!!?)
色々突っ込みたいところはあったが友好珍獣のスキルが発動してしまいアレンは戦うことになった。
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「すっ!すげぇ!」
遠くでその光景を見ていたリヴィラの住人たちは驚きの声を上げる。あの女神の戦車相手にレベル2の女の子が立ち回っているのだから。
(流されただと!!?)
アレンの槍は千草の横っ腹を狙い打撃を射ち込んだはずだったが、千草は弓を槍に当てて直撃を防ぎ合気道の要領で身体からその衝撃を排出、その力を利用して裏拳まで使ってきた。
薙ぎ払いは身体を回転させて威力を殺しそのまま距離を取り一矢を撃ち込む。単純な突きはあえて避けずに当たった力をそのまま相手にぶつけるように足に力のを溜めて低めのサマーソルトを顔に決めようとしたが避けられた。だがそのすぐ後に矢を連射して後ろに更に後退して弓の力が光る距離を作りそこからは曲がり跳ねる変幻の矢をアレンに向けて射ち込んだ。
レベル6のアレンには矢を見切るなど容易いだが曲がりと跳ねるの変化によって軌道が読みづらく直前までどうガードするかが分からない。彼女の弓はモンスター用の特別な物であるので当たればアレンでも怪我を負うだろう。
ならばと近接に持ち込んだ。その凄まじい速さで距離を詰めて千草に向けて槍を刺す。
矢を撃とうとした体勢で彼女の肩から血が噴き出た。
だがそれは計算された傷の深さと血の量だとアレンはすぐに気づいた。圧倒的なフィジカルの差で完全に避けるのは不可能だと彼女は分かっているのだろう。
ならば狙いは?そうアレンが思考した瞬間、天地が逆になった。アレンは驚くと同時に何が起こったのかすぐに理解する、ようは刺された肩と刺さった槍を起点に自分を投げたのだ。
顔が地面につく前に手を地面に当ててすぐさま体勢を立て直すがその隙を彼女は狙っていた。
姿勢が崩れて一瞬、こちらに目線が外れる瞬間に彼女は矢を放った。矢を撃とうとした体勢で槍に刺されたのはこの瞬間にノータイムで発射するためだったのだ。
しかし、その矢はアレンの顔に当たる直前に槍の柄で矢の先端を掠らせて真横に流した。流された矢は後ろの木に突き刺さりそれと同時にアレンは矢のリロードがされる前に千草に蹴りを決めた。
完全に決まったと思ったが
「!!?」
アレンの足に痛みが走った。
そして千草はレベル6の蹴りが身体に当たり後ろに吹き飛ばされ、たまたま生えていた大木に激突、その大木はバキリと折れて地面に倒れた。
大木が衝撃をいくらか吸収してくれたが所詮はレベル2
レベル6の攻撃に耐えられるはずもなく千草は沈黙した。
だがただでは負けなかった。
「当たった瞬間に足首の関節を狙って捻りやがった。」
足が当たり吹き飛ばされる一瞬の刹那に千草は弓から手を離し足首の肉と骨の間を直感で見極めブーツ越しに捻り上げた
ブーツでわからないがアレンの足首は今、腫れている状態だろう。戦いの野を経験しているアレンにはこんなダメージは慣れたものだろうが、もしも今、同じレベルもしくは一つ下のレベル5のものと戦ったら
「確実に貴様の負けだな」
「! ヘディン、、、」
そこにいたのはヘディンを含めて千草を探しに来ていたメンバーだった。彼らは冒険者の話を色々聞いてリヴィラの町まで来ていた。レベル2である千草がソロでここまでたどり着くなど普通ならあり得ないが先ほどの立ち回りを見ていた者たちは千草は本当にソロでここにたどり着いたのだということが分かった。
ベルと命が気絶した千草に声をかけている中、他のものは先ほどの動きが信じられなかった。レベル2の動きではなかったからだ。
彼らは知る由もないが太古の時代、神の恩恵無しでレベル5ほどの実力を持っていた英雄達がいて、洗練された技と駆け引きが今の千草に通じている。
「謎のスキル、と断言はできないが、、、ここまで来るのに聞いた話では彼女の言動は普段とは違ったみたいだし可能性は高いね」
「それがヒタチさんの潜在能力を引き出したと?」
「第一級にも引けを取らない無駄のない技と駆け引きだった」
そして彼らが千草という少女の事を話しているのをリヴィラの住人たちはじっと見ていた。
そして【今回の件】はすぐに地上に伝わった。
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「え〜〜っと誰なのそれは?」
「千草殿です!」
「嘘でしょ!?」
場所はタケミカヅチ・ファミリアのホーム
千草は布団から目が覚めて今回の件を命から聞いた。
そして自分がそんな事をしていたのかとショックを受けた。
「団長交代か、、、、」
「桜花!!?」
「かっこよかったですよ!【暗黒極東大女帝】という凄まじい名乗りは!!」
「暗黒、、、なんて!!!?」
桜花は千草の凄すぎる活躍に目に見えて落ち込んでいて自らの弱さと地味さを呪っている。そして命は千草の【暗黒極東大女帝】状態をもう一度見たいと思っていた。
しかし一番騒いでいるのは
「グアアアアアアアア!!!」
「タケミカヅチ様!!?」
「何故か千草殿のステータスを見てからあの調子で!」
「くっ!命の【絶✝影】以来の心の痛みが!!!」
神々のセンス的に【イタい】そのワードはタケミカヅチの心を大いに削った。これ絶対他の神たちにいじられるやつだ、【暗黒極東大女帝さんチィーす】てやられるやつだとタケミカヅチは神たち特有の葛藤に苦しんでいた。
「しかもこのスキル!スキル名!!ああああああダメだ!最悪だーーー!!!!!!!」
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ヒタチ・千草
謎のスキル
エンペラ
暗黒宇宙大皇帝
全アビリティに超高補正
心が暗黒に染まっている限り効果は持続する
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後にこの活躍で【暗黒極東大女帝ファンクラブ】が出来るのだがそれは少し跡の話
「元気出してよ桜花ーーーーーーー!!!」