ウルトラ怪獣がスキルとして出るのは間違っているだろうか 作:サイセンサイ
夢を見ていた
それは彼の後ろにいる夢
彼がダンジョンで戦っている
彼が人を助けている
彼が成長している
そしてそこには沢山の彼を支える人達がいる
彼はその人たちと笑い合っている手を取り合っている
でも
そこに私はいない
当たり前だ
私はアドバイザー
私は一ギルド職員
彼の周りには強い人達が沢山いて
強い女の子が沢山いて
私はそこにいない
仕方ない 仕方ない 仕方ない
だって私には
彼を見ることしかできない
悲壮感を出していたその女は目の前にいる彼の背中から目を背けた。そして後ろを振り返り歩いていく
何かにぶつかった
正面には壁があった
そしてその壁は壁ではなかった
巨大なエメラルドの眼だった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ん?」
エイナは自室のベッドの上で目を覚ました
「なんか変な夢見てたような?」
そう首を傾げながら仕事に出勤しようとする先ずは身支度を整えようとベッドの上で背伸びをする。
「今日は天気がいいなぁ」
目を瞑って背筋を伸ばしながらそう思った
「あれ?」
なぜ天気がわかる?ベッドの上で部屋にはカーテンがかけられているのに?起きてすぐに目をつむっていたのに?
まるで【別の目】があるような
そしてエイナは瞑っていた両目を開けると
目の前にフワフワと【眼球】が浮かんでいた
複数の浮遊する眼球がこちらを見ているのだ
そんな状況でエイナの反応はごくごく普通のものだった
「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えっと結局この【目玉】はなんなの?」
「それが分かったら苦労しないよぉぉぉ」
エイナはあの後ひとしきりパニックになった後、浮遊する【眼球】を操作できることに気づいた。しかし、いくら念じても一定の距離から離れてくれないのだ、時刻は出勤ギリギリでこの非常事態なら休んでもいいと思うがそこは真面目なエイナさん。【眼球】を操作してカバンのなかに詰め込みギルドに出勤した。
しかし、今だ完全に操作することは難しくギルドについたらすぐに【眼球】がカバンから飛び出して1時期パニックになった。エイナはギルド長から割と正当性のあるお叱りを受けて今日は裏方に回るように言われた。流石に浮遊する【眼球】があったら仕事にもならないし周りにも迷惑をかけるからだ。
隣で仕事をしているミイシャ・フロットは浮遊する【眼球】を指でつついている。
「最初はびっくりしたけど慣れれば意外と可愛いかも?」
「はぁ〜私もそう考えられたらなぁ〜」
「ていうか瞳の色エメラルドなんだ!エイナと同じだね!」
「え?」
エイナは覚えたての操作で【眼球】を一つ目の前に持ってくる。確かに瞳の色は自分と同じ色だった。
「しかもその目、繋がってるんでしょ?」
「う、うん」
【眼球】はエイナの目と繋がっているらしく言葉にすれば【視覚情報の共有】である。最初は慣れなかったがエイナは数時間で既に【眼球】の扱い方と要領をある程度覚えていた。
今は、【眼球】を使って複数の資料に目を通すことができている。しかも浮かぶことができるので高いところも観ることができて探すこともできる。結構便利だった。
そしてその日は裏方の仕事で1日を終えた
エイナは帰る前にディアンケヒト・ファミリアによることを決めていた。
この【眼球】の正体を調べてもらうためだ。朝と同じようにカバンに【眼球】を入れてコソコソと人目をさけるように向かっていると
「エイナ?」
「リ!リヴェリア様!!?」
第一級冒険者にして尊敬するハイエルフのリヴェリアに出会った
どうにもコソコソするエイナの様子が気になり声をかけたらしい
そしてエイナは仕方なく事情を説明することになった
ついでにいうと尊敬する人にコソコソするところを見られて赤面した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「魔法ですね」
「やはりか、、、」
「魔法、、ですか、、、、」
そこはディアンケヒト・ファミリアの診察室で『戦場の聖女』ことアミッド・テアサナーレがカルテを書きながら診断した
「私もここまで奇怪な魔法は初めです。目を作る浮かす更にそれが繋がっているなんて、、、一部の人たちには喉から手が出るほどほしい魔法ですね、かく言う私もそうです。」
「そ、そうですか」
今も【眼球】はエイナの周りをプカプカと浮かんでいる、そして、エイナには【眼球】から共有される光景がよく見える
「しかし突然とは奇っ怪だな?それに魔法なら詠唱があるはずだが」
「私は詠唱みたいなのは口にした記憶はありません」
「ふむ、、、、エイナさん。失礼ですがやはりステータスを見せていただくのが一番手っ取り早いと思います。ただしこれは個人情報ですのでどうするかはエイナさんにお任せします。」
「やっぱりそうですか、、、」
エイナは学区の出身であるために一応のファルナを持ってはいる。しかしステータスは人においそれと見せるものではない。どうするべきかと悩んでいた時、隣から声が響いた
「ならば私が直接見よう、私ならヒエログリフも読めるしどうだろうか?」
「そ!そんな!リヴェリア様のお手を煩わせるわけには!」
リヴェリアはハイエルフであり世界的にも有名な御方、個人の事情に付き合ってもらうなど恐れ多かったがリヴェリアは笑顔を向けて話を続ける
「なんだ、私が信用ならないか?」
「い!いえいえ!!そんなことはないですぅぅ!!」
突然のことで声が裏返ってしまった
「ふふふっ冗談だエイナ、、だがこの魔法がお前にどんな影響を及ぼすか分からないんだ。どうか親友の娘を心配してしまう老婆心を許してほしい」
結局、リヴェリアに流されるがままにエイナは背中を向けた
(リヴェリア様に気を使わせちゃった、、、はぁ、、、なんでいきなり魔法が発現したんだろう?)
そんな事を思いながらしばらくしていると
「、、、、、、、、、、ん」
「? リヴェリア様?」
何やら妙な声がしたような気がして後ろを振り向く
そしてそこには
変な汗を流しているリヴェリアがいた
「え!?リヴェリア様!!?」
「どうかしたんですか?」
そして同じく同行していたアミッドもリヴェリアの様子に気づいた。
「いや、、、魔法が発現していたんだが、、、」
変な汗は上から下に集まり
「気になるスキルもあって、、、だな、、、」
顎にたまり
「、、、、、、、、、、身体に害を及ぼすものではないんだ」
ポトンポトンとそこそこの速さで下に落ちていく
「ただ、、、その、、 、」
リヴェリアは言い淀んでいた。大木の心を持つリヴェリアがこうも狼狽しているということは恐らく何かあるのだろう。心なしか目が合わない
「リ!リヴェリア様!何かあるなら言ってください!私は見てくれただけでもありがたいですから!」
「エイナ、、、、、わかった、、だがアミッドは席を外してくれ」
「!」
「なるほど、、、わかりました。ここには誰も来ないように一応指示を出しておきますね。」
「すまない、助かる」
(なんなんだろう?私の背中に何が浮き出ていたんだろう?)
エイナは少し不安になってきた。しかし目の前に尊敬するお方がいる以上、ナヨナヨした態度はいけないとその場でビシッと背筋を伸ばす
「どうぞ!」
エイナがどうかしゃべってくださいと合図する
「わかった、、、、だが、気をしっかり持てよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
エイナ・チュール
謎のスキル
ガンQ
奇獣
魔法で作り出した【眼球】と視界を共有できる。
【眼球】を意のままに操れる。
白き最愛、潰れた果実、生まれいでる女の性
私の瞳に閉じ込めて、あなたの心に囚われて
魔に飲まれても構わない、
転回する衝動、増幅する執着、胸疼かせるその光、
破滅であろうと抱きしめさせて、
生まれ持つ清廉、積み上げし自分、守り続ける潔白、
それら全てを捧げ尽くす、
見て観て視て診て看て満て光て、
愛で潰してこの身を抱いて、
恋に狂った呪いの化身、
我が名はアールヴ、
【カイジュウノマナコ】
「い、、、今のが魔法の詠唱だ」
「、、、、、、、、、、、、 、」
地獄のような沈黙がその場を支配した。そしてなぜアミッドを退席させたのか納得してしまった。
こんな重い女の詠唱など他人に知られたら生きていけないからだ
最もエイナ的には死んでも見られたくない一人に既に見られてしまったのだが
尊敬して敬愛するリヴェリア様に自分の欲望詰め込みマシマシセットの言葉を口にさせてしまった
エイナはしばらく沈黙した後、立ち上がりリヴェリアに背を向け部屋の壁の前に立つ、そして両手で壁をバアーーーンと一度叩くとこちらを振り返った。
その目はハイライトの無い目でありエメラルドのはずなのに真っ黒に見えた。
「ここであったことは全てなかったことにしてもらえますか?」
「あっ、、、あぁ、、、」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あの後、ディアンケヒト・ファミリアを出て家に帰った。そして鍵をしっかりかけたことを確認してベッドにダイブする着替えなどしていない、ギルドの制服のままでしばらく沈黙すること数十分、当たりがすっかり暗くなった頃
ついに限界が来た
「ああああああああああああああああああ!!!!」
制服がミシミシ言うのも気にしないでその場で手足をバタバタさせまくった
「なんなのあの詠唱ぅぅぅ!!!重い!重すぎる!!なんでどうしてこうなったの!!?違う!私はあんな事考えてない!!私は真っ当!なのに呪いの化身って何!!?生まれいでる女の性!!?増幅する執着!!?あ、、、愛で潰して、、ああああああ!無理無理無理!病む病む病む病むぅぅぅぅ!!!私にはエルフの血が流れてるのに!なのにこんなふしだらなァァァ!違うからぁぁぁぁ!!そんな事考えてないからぁぁぁ!!だからベル君!私の頭のなかのベル君!私の脳内で私を見ないでぇぇぇぇ!!!!」
どうしようもない自己嫌悪と自己羞恥はしばらく続いた