TS憑依転生オルガマリーの奮闘記   作:手屋んDay

1 / 4
1.『偽りの聖杯戦争』

 新鮮な風が吹く雄大な大地。

 未だに土地開発がまだ行われていない場所にある、大きな岩山の上に立ち深く溜め息を吐く。

 

「……オルガマリーの地獄が始まる切っ掛けとなった、2004年に行われた第五次聖杯戦争を越えて私は今ここに居る。『人理保障機関フィニス・カルデア』は生まれず、私はカルデアスに放り込まれることなく、こうして2009年が経っても尚、存命することができた」

 

 遠くに視線を向ければそこはこことは違い、文明が進んだ都市だ。

 乱立するビル郡、そして車の通行量の多さがどれだけ町が発展しているのかを物語っている。

 ここは世界の中心にして、今や世界中に存在している魔術師の意識が一点に向けられる場所。

 新しい時代の転換期になりえる土地……()()()と呼ぶべき場所がここだった。

 

 遥か遠くに見える大都市を眺めて独り言を口にする。

 

 

 

「アメリカのネバダ州にある都市スノーフィールド……『偽りの聖杯戦争』の舞台。…………どうして私はここに居るのよ……」

 

 

 

 股下まで伸びる白いシャツに袖を通し、オレンジと黒の上着を羽織る。

 ブローチを着けた赤いジャボタイを締め、爪先まである朱色のタイツを黒のハイヒールで地面に足が着く私……いや、()は岩山の上からスノーフィールドの町並みを見下ろす。

 

 このヤバ過ぎる聖杯戦争はまるで規模が違う。

 勿論、FGOの世界と比べれば楽なのは間違いないが、それは数多の特異点や異聞帯を超えた藤丸視点の話。

 俺からすれば難易度は五十歩百歩である……最初期の所長コスをしていた弊害なのだろうか……?

 

 

「オルガマリーに転生したらFGO時空かと普通は思うでしょ!?何でよりによってFake時空なのよッ!?」

 

 

 よりにもよって、半神やら大英勇でも手に余ると言うのに、神様や死徒なんていう埒外の化け物が出てくる作品に、俺はどうやら転生してしまったらしい。

 

 

 

【☀️☿♀️♁♂️♃♄♅♆♇】

 

 

 

 エルメロイ教室のOBやOG、そして現生徒が集まり、『偽りの聖杯戦争』の参加者である──ドリス・ルセンドラを無力化した。

 

「ドリス・ルセンドラ。『鬼種』の魔術を扱う魔術師。タイプとしてはスヴィンと似通った体を変質させる魔術師……情報、感謝するわオルガマリーさん」

 

 黒い艶のある髪を靡かせながら名前の通り凛とした顔を向けてくるその美女──遠坂凛が振り向く。

 『五大元素使い(アベレージ・ワン)』という1つの時代に数人しか現れない超天才にして、八極拳の格闘スキルまである近距離遠距離何でもありの万能魔術師が彼女だ。

 そんな属性が盛り盛り過ぎるぞ、この元ツインテールの赤い悪魔……流石はあのロボット人間こと衛宮士郎が一目惚れした女というところだろうか。

 

 

「──ドリス・ルセンドラは『偽りの聖杯戦争』の黒幕である、フランチェスカ・プレラーティの『お願い』を聞く魔術師の1人。その魔術師をサーヴァントを召喚される前に無力化できたことは大きな収穫ね」

 

 

 【Fate/stay night [UNLIMITED BLADE WORKS]】でのヒロイン振りは凄まじかった。

 作品を見ていて『こんな彼女が欲しい!』と本気で思ったものだ……まあ、オルガマリーに憑依したことで女の子にトキメキことも失くなっちゃったけどさ。

 これが同性同士だからか、肉体がオルガマリーあるにも拘わらず魂は俺のために起きる、弊害なのかは分からないがそのような感情は今世では抱けなくなってしまっている。

 まあ、好きなキャラクターをこうして直接見ることができて嬉しいって思う、ファンの心は残っているから充分と言えば充分ではあるけど。

 

「(まあ、魔術師としていつかは男を身繕わなくちゃいけないけど)」

 

 顔が良くて、性格が良くて、家柄も良いとなると、ユグドレミアのカウレスかなー……魔術師だから倫理観おかしい奴が多いからちゃんと選ばないとだ。

 スヴィンはグレイたんだしフラットはヤバくて怖いし、残ってる常識があっていい男って言うと……ウェイバー君とか?

 でも、種としてゴミだしライネスやグレイを出し抜くとかすると、最悪戦争が始まるし……うーん、無いな。ナイナイ。

 

 あーあ、子供産まないといけないのが一番面倒臭いわ。

 ただの作業と割り切ってるけど面倒なんだよなー。

 

「……まあ、今考えても無意味ね」

 

 何とも儘ならないものだ。

 別に男が好きになったわけでもないのに結婚とか、ここが地獄か?

 

「メアリ先輩とオルガマリーさんは凄いですね……『星の内海』の仮想展開に詳細な『虚空』の情報を同調させることで、星の裏側だけじゃなくて宇宙の先まで把握可能にするだけじゃなく、少しだけとはいえ未来や過去まで観測できるようになるなんて……」

 

 そのカウレスがドン引きしている。

 まあ、その気持ちは分からないでもないけどさ。

 

「褒めてくれるのは嬉しいけど、少しでも情報が足りなければ観測も上手くはいかないから、そこまで期待されてもできないことはできないわよ?」

 

「ええ、私達の仮想展開にはそこまでの精度はまだありません。アニムスフィアさんが教えてくれたドリスさんの名前と家名。そして、珍しい『鬼種』の魔術を扱う魔術師だという条件が無ければ、このように検索することはできなかったでしょう」

 

 メアリも言っているが前世で読んだ【Fate/strange Fake】の知識が無ければ、ここまで上手くいくことはなかった。

 

「いえ、このスノーフィールドに居ることしか分からなかったドリス・ルセンドラを見つけ出せたのは、オルガマリー嬢とメアリ先輩の手腕があってこそです。魔眼である千里眼と同じ様なことができる人はそうはいませんよ」

 

 スヴィンがカウレスに同調して褒めてくる。

 ま、まあ?次期ロードの娘だしぃ?当然かなー。

 

「まあ、メアリ先輩の『星の内海』の仮想展開の出来映えに焦って、オルガマリーちゃんが対抗し始めたのは面白かったけどねー!」

 

 ぬぐっ!?

 イヴェットめ……余計なことを……っ!

 

「よ、より精度を上げるためなんだから勘違いしないでくれる!?天体魔術の魔術師が2人も居るのなら当然の合理性じゃない!」

 

「ふふふっ、ありがとうございます。アニムスフィアさん」

 

 メアリ先輩が眩しい……!

 理想のお姉様過ぎるよこの人。

 出会ったときからずっと仲良くしてくれるんだよなこの人。

 良い人だわ~。

 俺が思うにこの人ほどの親しみやすい絵に描いたようなお姉さんキャラって、型月にはなかなかいない気がする。

 

 えっ?メアリ先輩の父親?なんか天動説じゃなくて地動説の天体魔術をして失敗したみたい。

 仏の顔も三度までだしそういうこともあるわな。

 

 ……それはそうと、オルガマリーの性格のトレースも最近じゃ息をするように出来すぎてて、自分でも嘘か本心か分からなくなってきた。

 特に問題とかも無いからいいけどさ。

 

「流石はアニムスフィア家直系のご令嬢と、アニムスフィア家に連なる天体科から生まれた才媛だ。これほどまで正確な擬似地球の仮想展開もそうそう無いだろう。流石は我らが誇る偉大なロード・エルメロイⅡ世に見出だされた魔術師だ。先生も喜んでくださる事だろう」

 

「止めろ、ヴェルナー。教授の威光を言葉にすればするだけそれは陳腐なものになっていくぞ」

 

 ヴェルナー・シザームンド先輩とオルグ・ラム先輩のそんな会話が聞こえてくる。

 久し振りに会ったけど……ホント濃いわーこの人達、八丁味噌かよ。

 個性の煮凝りみたいな奴ばっかりなんだよな、エルメロイ教室から卒業した奴って。

 

「フ、フフフ……それがあれば、先生の敵を世界規模で捜索することが可能だな」

 

 ローランド・ベルジンスキー先輩チースッ。

 相変わらず先生の敵を殺しまくってて、イキイキしてるみたいですねっ!

 懐かしい雰囲気に温かい気持ちになる。

 それはそうと、エルメロイ教室から卒業した人って信者が多いんだよなぁ。

 まあ、落ちこぼれを拾い上げ続ければそりゃそうなるだろって感じだけど。

 双子のギャル姉妹とかも久し振りに会って、テンション上がったけど既に『偽りの聖杯戦争』はもう始まっている。

 そんな状況のため基本的に溜め息しか出てこない……どうしてこんな面倒なことになってしまったのだろうか?

 

 『ロードエルメロイⅡ世』、『先生』、『教授』と言ったワードが次々に飛び交う、エルメロイ教室の卒業生と在校生の会話を聞きながら世の儚さを嘆いていると、凛が今回の本題を切り出した。

 

 

「それじゃあ、始めるわよ。──英霊召喚をね」

 

 

 既にドリスから令呪を奪い、エルメロイ教室の魔術師28人に分配している。

 あとは、英霊を召喚しエルメロイ教室の面々がマスターとなるだけ。

 

「ちょっと、ちょっと、ちょっとっ!どうしてこのイヴェットちゃんに令呪が渡されてないんですかー!?差別反たーいっ!」

 

 ……それをぶち壊すかのように眼帯を掛けた少女が主張する。

 声高々にそう主張するがエルメロイ教室の面々の顔は、白けたものである。

 

「……いや、イヴェットはその場のノリで裏切るだろ……」

 

「一人でも裏切れば、他者の魔術回路に干渉したヴェルナーが死んでしまいますから仕方ありませんね」

 

「イヴェットはともかくとして、オルガマリー。君はいいのか?それこそ、君は信用に足る人物だと私達は思っているが」

 

「いいわ。私にはマスター適性は確実に無いだろうから、私とイヴェットを抜いた28人で回して頂戴」

 

「えー!?オルガマリーちゃん本気で言ってるの!?」

 

 元々、マリスビリーによってそんな機能は取り除かれているだろうから今さらである。

 付けるだけ無駄というか、付けることができないだろうし。

 ガクガクと肩をイヴェットに揺すられるが、イヴェットは自業自得だよ。

 

「それじゃあ、始めるわよ──素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)。 繰り返すつどに五度。 ただ、満たされる刻を破却する」

 

「──告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

「誓いを此処に、我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 

「ぐっ!さ、せるか……ッ!」

 

「危な……ッ!」

 

 そこまで凛が言うと、眠っていたはずのドリスが目を覚まして霧を吹き出した。

 俺も含めた全ての人間が飛び退く中で、ローランドは蛇を用いてすぐにドリスの意識を完璧に飛ばす。

 

「ナイスです。ローランドさん」

 

「気にするな」

 

 そんなカウレスとローランドのやり取りを聞きながら、凛は詠唱の最後の言い切った。

 

 

「……汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

 

 ぺカーッと、虹色の輝きが魔法陣から溢れ出す。

 おーっ、星5かぁ───なんて思っていると唐突に光が消えた。

 そう、消えたのだ。

 

「は?…………消えた……?」

 

 誰が言ったか疑問の声が出たあとに、痛いほどの静寂が空間を支配した。

 冷や汗を掻いて目をぐるぐるさせている凛は、誰に言われるまでもなく言い訳を開始する。

 

「待って違うわ可笑しいもの、こ、こんなのあり得ないからねッ!?」

 

「ミス・トオサカ!?あなた英霊召喚も満足にできないんですの!?聖杯戦争経験者というから万に一つの間違いがないようにあなたにやらせたというに、これはどういうことです!?」

 

「おい、おいおいおい……ッ!冬木の聖杯戦争に参加したんじゃなかったのかよ!?英霊召喚失敗なんて前代未聞じゃないか!?聖杯の解体をしにきたのに、これじゃあ何もできないまま終わるぞ!?」

 

 皆にやんややんやと言われて気圧されながらも凛は言い返す。

 またの名を、開き直ったとも言う。

 

「前はこれでちゃんと成功したんだからね!?失敗をしたんならそれは『偽りの聖杯戦争』の不具合よ!」

 

「言うに事欠いて、責任の所在を自分以外に押し付けましたわね!?ああ、なんて品性の無い人なのでしょう……!こんな女の弟子にされたシェロが可哀想ですわ!」

 

「なんですって、このスットコドッコイ!アンタみたいな女が傍に居る方が士郎にとって有害よ!」

 

 それから、凛とルヴィアのキャットファイト(地形が変わるほどの)が始まろうとその時、唐突にあることに凛が気付き意識を令呪に向けた。

 

 

 

「──待って、サーヴァントとの経路(パス)は繋がっているわ。……つまり、ちゃんと英霊は召喚されてるってこと」

 

 

 

 その言葉に令呪を分配された者が魔力を辿ると、しっかりとサーヴァントと経路(パス)が繋がっていることが確認できた。

 

「じゃあ、何でここに居ない訳?魔法陣があるんだから普通はそこに現れるんじゃないの?」

 

「えーと……、実はそうでもなかったりするのよね。私の時も召喚された英霊が魔法陣じゃなくて、一階上の二階だった訳だし……」

 

「おいおい、その辺りの情報は共有していて欲しいものだな。何故、それを教えておいてくれなかったんだ遠坂」

 

「え、えーと、極めて珍しい事例っていうか……あれは私がうっかり間違えて魔法陣の中心に居たから、アーチャーは弾かれて上に行っただけだし……」

 

 ブツブツ何やら口にしている凛に深く聞いても意味がないと思ったのか、ヴェルナーがすぐに方針を決める。

 

「まあいい。あとは経路(パス)を通じて召喚した英霊に会いに行けばいいだけだろう」

 

「そうね。経路(パス)で繋がっている以上は、どれだけ離れていても必ず探し出すことが──あら?これは……どういうことかしら……」

 

「ん?どうしたんだメアリ?」

 

「いえ、それが……すぐ近くに居るみたいなの。それこそ、本当にすぐ近くに…………え?」

 

「へー!なら、早速会いに行きましょうか!皆さんには私が積極的に動いて貢献したということを、是非先生に言ってくださいねっ!」

 

 点数稼ぎのためかイヴェットが元気よく……あるいは破れかぶれに声を出すが、誰一人としてその場から動こうとしない。

 

「……あれ?どうしたんですか?みなさん」

 

「いや、それが……」

 

 呆然とするエルメロイ教室の卒業生と在校生の姿に、訝しげな目を向けるイヴェットだったが、そんな彼女に反応をする余裕も彼らには存在しなかった。

 手の甲に浮かんだ令呪に意識を向ければ、その先に繋がっている人物が目の前に居ることが分かってしまったからだ。

 そう、つまり……、

 

 

 

「え?……私…………?」

 

 

 

 オルガマリー・アースミライト・アニムスフィア。

 そんなこんなで魔法陣の上に立ってしまった俺こそが、彼らエルメロイ教室のサーヴァントであった。

 

 

 

 

 

 ──『偽りの聖杯戦争』、最後の召喚サーヴァント。

 

 

 『アンビースト』U-オルガマリー。

 

 

 ・分類、デミサーヴァント。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。