TS憑依転生オルガマリーの奮闘記 作:手屋んDay
2.TS憑依転生オルガマリーの始まり
───オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィアを知っているだろうか?
大人気アプリゲーム『Fate/Grand Order』にて、最初期から登場している人気キャラにして、10年の月日を経てプレイアブルキャラとして登場し、その性能も最強キャラの一角として名前が上がる程に、運営やユーザーから愛されているキャラこそ、オルガマリー・アニムスフィアに他ならない。
「……まあ、とはいえ、Fate作品で指折りに転生したくないキャラでもあるんだけど」
Fate作品を生み出した同人サークル『型月(TYPE-MOON)』は1999年に発足をし、初作品である2000年に発売された『月姫』で名前が売れ、今日に至るまで様々の名作を生み出し続けた。
そして『型月(TYPE-MOON)』はアプリゲームにまで手を伸ばし、10年もの長い月日がたった今でも愛され続ける、超大作『Fate/Grand Order』を配信しており、セールスランキングでも指折りの順位に何度も食い込む大成功を修めている。
そんな数多くの作品を世に出し続ける『型月(TYPE-MOON)』は、作中のキャラクターが悲劇に見舞われるダークファンタジーのストーリーを売りとしており、悲惨な死や不遇の境遇に苦しみながら生きるキャラクターが一定数存在している。
──そんな中で、このオルガマリー・アニムスフィアこそが歴代最高に悲惨な目に遭っているのではないか?と言うファンも現れ始めるほど、オルガマリーの人生には苦痛と絶望しかない。
初作品から25年の月日が経って尚、不遇キャラが更新されるとは誰も思っていなかった事態に、『型月(TYPE-MOON)』愛好家は密かに色めき立った。
『あの型月作品に出てくる、悲惨な目に遭った可哀想なヒロインすら超えるとかマジ!?』と、興奮を抑えきれなかったのである。
それもその筈、何故ならオルガマリーは……、
「100年間の拷問され続けるじゃない!?そんなの絶対にイヤよッ!?あぁ……でも耐えないと藤丸が絶対に負ける……!……いやでも……ムリムリムリムリッ!所長はあの冬木の時間が幸せな時だったのかもしれないけど、私には地獄でしかないのよ!?寝ても覚めても地獄とかやってられる訳ないでしょ!?」
そう、俺はあろうことかそのオルガマリーに転生してしまったのだ。美人で魔術師として恵まれた血筋と強さ、そして才能はあるが、幸運がおそらく全作品通して最低値の彼女に。
「い、生き残りたい……!でも、世界が……私の
絶対に生き残る。
絶体絶命の状況に頭がどうにかしてしまいそうだけど、それでも勝ち筋を見付けなければ待っているのは死ぬことよりも辛い地獄だけ。
オルガマリーの生存ルートを確立するために、
「100年の拷問地獄なんて受けてやるもんですか!マリスビリーに気取られることなく力を付けて必ず寝首を掻いてやるわ……!」
【☀️☿♀️♁♂️♃♄♅♆♇】
「──……なんてことを考えていたんだけど」
10歳となった現在、俺ことオルガマリー・アニムスフィアは、原作に到達するまでもなく安全が確保できてしまった。
「まさか、この世界線がお父様が探し求めていた大聖杯が存在しない世界線だなんて……」
転生をさせられたのだから、てっきり人理継続保障を行うものだと思っていたが、なんかそうではないらしい。
この世界では人理焼却は起きないし特異点も生まれることはないということ。
それはつまり、何もまだ行動していないのに完璧な身の安全を手にいれてしまったということだ。
「……お父様暗殺計画も念頭に入れていたのに、肩透かしもいいところね」
要するに、カルデアがあるからオルガマリーがカルデアスに入れられる未来がやって来るのならば、そのカルデアを作った張本人であるマリスビリーを暗殺してしまえば、カルデアスそのものが無くなるのは当たり前の話だ。
「お父様を暗殺したあとに私にはマスター適性は無いから、ソロモンのマスターにはトリシャになって貰って、一緒に第五次聖杯戦争を勝利するつもりだったのに計画が狂ってしまったわ」
Fate/stay night のサーヴァントの情報は分かっているし、FGOの炎上都市冬木に残っていたサーヴァントも把握している。
真名を看破しているのは聖杯戦争において、これ以上無いアドバンテージだ。
だからこそ、俺でも勝算があると思っていたのだが実行に移す機会はどうやら無いらしい。
「……まあ、
いつマリスビリーの背中にアゾットして、その企みを根底から台無しにしてやろうかとほくそ笑んでいたのに、まさか勝手に自滅するとは思わなかった。
オルガマリーのアトラスの錬金術への素養からか、駄目元で行った分割思考を修得できたことで、実際に話すオルガマリーとしての口調と俺の思考とで綺麗に切り離し、マリスビリーが想定しているだろう愛しのオルガマリーを長年演じてきたというに、全てが無駄となってしまった。
「……とはいえ、まさか娘に別の魂が入っていることにすら気付かないなんて流石に思ってなかったわ。まあ、頭マリスビリーなら気付かなくても当然よね」
『ガワだけ整っていれば中身なんてどうでもいい』というのなら、まあ気付かれなくてもおかしくない。
いつ指摘してくるのか、実は戦々恐々だったのに何事もなく終わって消化不良が否めない。
「さて、あの人でなしを後顧の憂いを絶つために殺しておくべきかどうか……本音を言えば殺したいけど、それだとエルメロイみたいに最悪没落して終わるわよね」
あのライネスが自害した方がいいかもしれないと言うほどの状況。
誰が好き好んで陥りたいと思うのだろう。
「くぅ~!今なら余裕で殺せるのに立場がそれを許さないわ。私が成人して少し経ったら仕留めましょう」
死亡フラグそのものであるマリスビリーをいの一番に殺したいところではあるけど、そうしてしまうと多くの権力を失ってしまう。
ロードの資格を失えばどうなるかなんて、ライネスの人生を少しでも知っていれば簡単に察することができる。
「……未来視の魔眼を持つトリシャのことを考えると、これからは簡単に口にする事もできないわね。まあ、これからはアニムスフィアの次期ロードとして学びながら魔術師をしていれば、将来は安定でしょう」
まあ、つまらないことこの上ないがFGO時空のオルガマリーに比べれば幸せなのは間違いない。
このまま、この家で魔術の勉強をしながら歳を取っていく。
「──いや、待って。別にもうお父様に貼り付いて見張り続ける必要も無いんだし、自由に過ごしてもいいんじゃない?」
そうだ。
何かと言ってくるだろうマリスビリーは失意に沈んだ。
見離された以上は口煩く何かを言ってくることも無いんだし、好きに生きていいんじゃない?
そもそも、ロードの娘としての矜持なんてものは俺にはない。
マリスビリーは求めていた聖杯なら容赦なく俺をカルデアスに放り込んだ筈だ。
そんな奴に親孝行なんてする義理はないし、送るものといえばデイビッドの代わりに、あのスかした顔へ鉛玉をぶち込んでやるだけ。
「……これからは、私の……私だけの人生」
マリスビリーが敷いたレールは意図せずに終わりを告げた。
なら、これからは俺のしたいように生きてもいい筈だ。
「だったら、まずはこれよね」
とある決意を固めると同時に、トントンと扉がノックされる。
「マリー、午後からは座学の時間で……何をしているのですか?」
「見れば分かるでしょ?身支度よ」
ちょ~と、気が早いかもしれないが、これから先のことを思えば無駄になることはないだろう。
戸惑っているトリシャの前で腰に手を当てると、威風堂々と言い放つ。
「トリシャ、決めたわ!私はこれから時計塔に入学してコネ作りをするべきなのよ!」
ドーン!と、その理由を胸を張って堂々と言うが、トリシャの顔は残念な子供を見る目になった。
なんで?事件簿のオルガマリーみたいに不安定じゃないし、なんならマリスビリーっていう父親に見離されたのに、奮起している俺の姿を見て安心して見守れる筈なのに……。
「……脈絡も無しに突発的に行動するところは淑女として直さなくてはいけませんね」
「でも、魔術師には行動力が求められるわ!期を逃せばチャンスを掴むことなんてできないもの!今、行動することに意味があるのよトリシャ!」
「はあ……いいでしょう。手続きはこちらでしておきます。ロードの娘として相応しい振る舞いをしてきなさい。いいですね?」
「勿論よ!天体科アニムスフィア家次期ロード、オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィアの名を、時計塔に居る全ての魔術師に刻み込んでやるわ!」
ルンルン気分で準備をする。
まあ、行けるようになるのは多分数ヶ月あとだけど、あの時計塔に行けるなんて夢みたいだ。
ワクワクするぜ、ひゃっほい!!
「……まあ、天体科となりその方々達と交遊を深めれば、この先マリーのためになるでしょう」
取り敢えず、頭空洞野郎から魔術刻印をぶん取るか。
【♇♆♅♄♃♂️♁♀️☿☀️】
2002年。
時計塔に天体科のロードの娘が入学した。
僅か9歳という幼さでありながら大卒レベルの知識と魔術の実力によって、飛び級で時計塔に入学することを許された麒麟児。
将来有望なその令嬢とお近付きたいと思うものは数知れず、彼女の行動を先読みをするための情報戦が陰で行われていたのは、時計塔ならば最早当然のながれであった。
しかし、彼女が来るだろう天体科の教室に待ち構えても、不思議と訪れる気配もない。
それもその筈、彼女が向かった教室は天体科の教室ではなく、全く違う教室だったのだから。
「──皆の衆。言いたい事は分かるが落ち着き
教壇の上で冷静ぶっているが、彼女の隣に居る眉間に皺が寄った男も生徒達と同じく混乱をしているのか、あちこちに視線が動いていた。
それを知ってか知らずか彼女は元気よく名乗り挙げる。
「ええ、よろしくってよ!いい?私の名前はオルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア。天体科の次期ロードになる女よ!今日からここ、エルメロイ教室の一生徒になるからよろしく頼むわ!」
「「「「ええーー!?なんでっっ!?!?!?」」」」
エルメロイ教室の面々とはコネ作った方がいい。面倒事には絶対に巻き込まれるけど。
それと、ライネスとオルガマリーはてっきり同年代だと思っていたけど、どうやら5歳以上ライネスの方が年上みたい。