一話完結・前後編作品集(オリジナル)   作:異世界製菓(Prime)

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生存報告も兼ねて


或る阿呆の一生

玄関を出て、すぐそこに、あゝ死よと崇めようとしている彼がいる。

どうしたのかと尋ねたところ、

「あと百年以内に死んでしまう」

などと宣った。

あゝ彼よ、それは寿命だ。

 

 

 

 

 

外を気晴らしに歩くと、いつも野良猫がいる。同じ種ではなく(あるいは同じ柄でなく)、しかし同じ塀に座る。総じて人懐こいのは、少々辛い生活の救いになっている。

いつものように撫で散らかす、腰を叩くなどして、用事に遅れそうなので仕方なく一旦の別れをした。

 

戻った時、その野良猫たちはいなくなっていた。忽然と。居場所もわからず。

幻だったかと、納得するには少し長く居すぎた。そう言えば、ここ数ヶ月ほど同じ場所に入れ替わりでいた。何か意味があるのだろうか?考えるには遅すぎただろう、しかしそうなるほどその猫たちは日常に根付いていた。「なかった」わけではない、「いなかった」のであり、「いたはず」ではなく「いた」としたい。そう突き詰める内、気づけば猫だった*1

 

 

 

 

 

 

昼には一人で食べることに決めている。

「隣、いいかな。」

そう言うのは、死を崇めようとした彼。気づかぬうちに微妙な顔になっていて、しまった、失礼だ、と思った。

「どうぞ。誰も座りませんから、あなたは初めてのもう一人だ」

決め事はどうにも決めたままではいられないようだ。

 

「相談をしたいのです。いわゆる恋愛とか」

「はぁ」

興味はない。だが隣からは聞こえてくる。小耳ぐらいには挟んでおこうかと、耳を傾ける。

 

「家からすぐそこの、とても愛らしい子なんだ。おれの世迷言も、すぐに止めてくれたしな。世話焼きなんだろう。それでいて警戒心が高く、しかし人懐こい。相反してるように聞こえるだろう?それが彼女なんだ」

 

 

「…それで?」

「まだ分からないのかい?きみのことだ。きみが大好きなんだ、十数年前から」

「十数年前から?」

「そう。子どもの頃、ずいぶんひざに擦り傷ができて、きみが手当してくれた。可愛かったよ」

「可愛かったんですか」

「可愛かった」

「なるほど」

正直に言うと、可愛いと言われたのは嬉しいし、何より彼の容姿。整っていて、まっすぐこちらを見据えている。小学生ほどの彼は典型的な運動をする気質だった。凄まじい擦り傷をこちらに見せて大泣きしていた様子は、もちろん大変愛おしかった。

「まずはお友達から、お願いします」

「ありがとう。こちらこそ、よろしく」

*1
自分とは猫である、自分とは人間である。あるいはいつから人だったか、いつまで猫であったのか




短編集として続くかも
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