「まあうろ覚えなところはあるけどさ、私ちょっとだけママ達がいた時のこと覚えてるんだよね」
「何?じゃあちゃんと両親がいたのか……いつの話だ?」
「私が小学生くらい?だから……うてなが幼稚園児ぐらいの頃か、なんというか二人で話をしてた、喧嘩ではないっぽいんだけどさ……なんか変な会話だった……こんなのが気になるって総帥様も物好きだね」
「お前ら家族は実態がよくわからん、その上でヴェナリータが目をつけてるんだ……手札は多いほうがいい」
「それもそうか、ここから先はロボットで」
「そう来ると思って既に開発してある」
「やだ素敵抱いて」
「やめろ気色悪い」
こんな風に、戦隊フィギュアでロードエノルメとなぎさはチェスをしながらそれぞれ話をして柊家に関する話を聞いていたという。
うてなも知らない両親の情報だが、確かに興味深くあるが……話はそこで終わった。
興味深い話を聞いた、だが教えてくれるわけではないらしい。
「んで、とりあえず怪人は用意しました、あとはサンマジカルが戦ってイメージアップから始めるんですね?」
「そうだ、全く貴様の姉がこんな時間から酒なんか飲まなければもっと宣伝効果があったというのに……」
「それで自らカメラを回してるわけですね……」
よほど暇なのか田中が直々にビデオカメラで怪人が暴れる様子からヒーローショーのように戦隊が現れる姿までを撮影している、なんというかうてなはまるで運動会に来た親みたいだなとつっこみたくなった。
最初に会ったときは世界征服を真面目に考えてるなりに威厳のある人だろうと思っていたが、こうして見ると右も左も分からず……自分のようにヴェナリータに従わないなりに真面目にやっているのだろうと、人間性は気に入らないところはあるがちゃんとした人ではあるのだろうと思った。
「総帥って自分からキビキビ動いたりするんですね」
「舐めるな、私は総帥だぞ……玉座にふんぞり返ってるだけでは世界征服なんか出来るか」
「それはそうですけど……ああそうだ、かな姉さんに連絡入れておきますね、あの2人引き取ってもらわないと」
「それは私がやる、私の部下でもあるからな」
「ならどれみ姉さんの方に連絡を……」
田中とうてな、犬猿の仲のはずだが仕事のときはどうにも気が合う、気に食わないところはあれど仕事に持ち出さないようにしている。
だがかけているのはどっちも柊家にだ。
その一方、どれみはうてなの電話に出ている間なぎさは家でネロアリスとマジアベーゼが段取りよくやってくれたのでニュースでもサンマジカルが怪人と戦う映像が特集されていたので興奮が収まらない。
「くうう〜〜〜っこれこれ!!やっぱり戦隊は特撮っぽくあってこそでしょ!!」
「良かったですねなぎさ姉様!ずっと見たいと言ってましたもの!」
「ほんとだよ!なんでサンマジカル選んだのかはわかんないけど涙出てくる……パンタノペスカさんの方はどうだろ、石膏なんだしよほど時間かかるのかな?」
なぎさはパンタノペスカに電話をしようとするが家の電話は現在どれみが占領している、実は柊家は全員が携帯代持つのはもったいないというわけで各々で工夫しており全員が携帯を持ってるわけではない。
家族だとうてなとうさぎどれみ双子くらいでつばめは携帯なしで状況を理解し、かなは職場で支給される携帯をそのまま私物化、ほむらはまだ早いからと持たされていない。
なぎさに関しては……実は一回持ってたがケータイで無駄遣いしすぎて没収されている。
「姉ちゃんまだ〜?」
「ちっうっせーな……はあ、あいつマジで?そうか、あのバカにも連絡入ってるならあたしがどうこうするわけでもないか、カリカリだろうな」
「えっなんかあったの?」
「バカ二人がこんな時間から呑んでるとさ、まあうてなに言われちゃ仕方ないから迎えに行ってくるから留守番してろ」
「えー?私戦隊見に行きたいんだけど!」
「アホか!お前まで行ったらほむら一人になるだろうが!しばらくそこにいろ!」
どれみが軽い身支度をして外に出ていった後、なぎさは改めてパンタノペスカに電話する。
ほむらは相変わらずのほほんとしており、未だに姉妹達の状況を知る由もない。
「えーとパンタノペスカさん……長いな、パンダさんでいい?」
「私絶滅危惧種でしたの?まあ構いませんけどニュースは私も観ましたわ」
「あっそうなの?実はさぁエノルミータにも筒抜けだったらしくて……」
「まあ身内にそんなもの抱えていれば無理もありませんわ、心配には及びませんことよ手配しましたので」
「おっやったぁ!そっちの方も期待してるね!……ってあれ?パンダさんなんでエノルミータの幹部が身内って知って……」
切れた、とりあえずパンタノペスカの方も戦隊を用意してくれたらしいので楽しみに待つことにするがしばらくしないうちにかなは帰宅、更には田中と一緒でありつばめとうさぎの首根っこを掴んでいた。
「てめぇ……人が死に物狂いで神経すり減らしてる時に余計な仕事を増やしてんじゃねえぞ、このクズどもが……」
「今回は本当に悪かったな……というわけだなぎさ、今からちょっと柊家が嵐を呼ぶから適当にほむらと散歩してくれ」
「あ、ああうん……なんか姉ちゃん達何があったか知らんけどごゆっくり……ほむら、公園行こうか」
「ほ、ほむほむ、助けて……つーかつば姉さっきからゲロってるんだから許したって」
「許すわけねえだろブタァ!!」
「うええ……完全にキレた時のかな姉ちゃんはおっかないからな」
ゴミ袋のように投げ捨てられる姉2人、なぎさは見なかったことにしてほむらを引っ張って外に出ていった。
連絡をしたということはきっとうてな達も近くにいるはず……と思っていたがそうでもないらしい、家の修羅場に巻き込まれたくなくて一緒に田中も出てくる。
「お前の所の次女はなんなんだ……?変態だったり社畜だったかと思えば、爆発したらあんななのか……」
「かな姉ちゃん、子供の頃はしょっちゅう色んなやつ泣かせてたからな……まあ悪の組織に似合うっちゃ似合うけど」
「冗談じゃない鉄砲玉なんぞいらん……それでどうだったサンマジカルドールの戦績は」
「それはもうむっちゃ最高だった、テンション上がりまくり……ああそうそう、パンダさんも同じタイミングで戦隊作ったって」
「パンダさん……パンタノペスカのことか!?そういうことは早く言え!!どこでやっている!?」
「いやそうは言われても電話切れちゃったし……ちょっとした口約束で1日1回しか受けてくれないんだよね……」
「かなり警戒しているようだな……柊かなが抜けた今どうやって魔力を補充するか……いや、いけるか」
田中はドライヤーみたいな機械をなぎさに押し当てるとあっという間にメーターがたまる、ヴェナリータが用意した欲望から蓄積する魔力を吸い出すための道具であり、戦隊を見てテンションが上がっているなぎさにはうってつけで何日分も溜められそうだ。
「戦隊ロボはもう少し待て、これだけあってもまだ足りないからな」
「それ、私にもやってくれませんか?」
「何を言う、これは玩具ではない……見た目だけな」
「別にいいんじゃないです?献血みたいなもんだし」
「それもそうか」
田中は一応ほむらの額にも機械を押し当ててみるも様子がおかしい、ちょっと当てただけでみるみるうちに魔力が蓄積されていく、姉妹の中でものほほんとして田中の中でもノーマークだった柊ほむらがとんでもないポテンシャルを秘めていた。
一分もせず額から離したが、なぎさの倍以上は魔力が補充されてしまった。
「こいつ一体何なんだ……魔力の量が尋常ではないぞ」
「ああ、もしかしてほむらに魔法少女の素質が……なんて、いくらあのママ達でもないか」
「あの話のことですか?うてな姉様は本気にしてないようですが……実は私達姉妹は全員魔法少女が由来だそうですよ」
「そんなバカな話がありえるか、魔法少女の本名が世間に知られていたら面目丸潰れじゃないか」
魔法少女は認識阻害魔法で実態は明らかになっていないのは世界の常識、現にトレスマジアもここまで深く接触したのに正体が皆うてなのクラスメイトであることは仲間同士以外では決して明らかになることはない。
田中……ロードエノルメからしてみれば数々の魔法少女を葬ってきたがその中につばめ、かな、うさぎ、どれみ、なぎさ、うてな、ほむらなんてものは誰一人知らない。
もし知っていればヴェナリータが連れてきた時点で何か違和感でも感じる。
「うてなも同じ事を言ってたなぁ、でもママ達が言ってたのはなんだったんだろう」
「そもそもお前達の両親は何故そんな事を知っている?という話にもなってくるが……それよりパンタノペスカの作った戦隊を見に行きたい……」
そしてうてなもどれみと合流してトレスマジアを探すが、これだけの騒ぎになっているのに見つからない。
ニュースで聞いたはずなのにトレスマジアが姿を見せないなんてことはありえないので、オタクとして考えられるのは1つ。
「新しい敵に邪魔された……?」
「またか!?クロノス・シンジケートがどうとかやったばかりなのにそれは陳腐すぎるぞ!?」
「私もそう思うけどそれ以外にありえないじゃないですか!」
「クロノス・シンジケートが来てる可能性だって……」
「最高戦力のかな姉さん抜けてるのに何か出来るわけでもないので……無視してもいいですよ、戦闘が得意な人とかも聞いてないし」
「極端な悪の組織だな……いやこの場合はあのバカ姉貴が強すぎるのもあるか」
「それでいったらどれみ姉さんだってスタンガンパンチとかいう必殺技使えるじゃん」
「あっそうか、アレでコンクリートでもぶん殴ればトレスマジアなりなんなり来るか……すぅはー……スタンガンパンチ!!」
「ストップストップ!!今ここで使ってって意味じゃないし大っぴらに見せていいものなの!?」
どれみが静電気を浴びせながら道路を殴るととても人間業ではない技術で破壊してしまう、物理的な悪魔じみた存在だがキレたかなはもっと強いらしいから信じられない話だ。
改めて喧嘩を売りたくないがうてなは早速気配を感じ取る。
どれみも痺れた右手を上手く調整しながら、そこに待っているものを待機すると……。
「あっちげぇわ戦隊の方だ」
「ええ〜……マジアベーゼにならなくていいやどれみ姉さんなんとかして」
「いやあたしはお前の仕事のためにやったんだからさ」
どれみとうてなが揉めてる間にも、シルエット越しに見えてくるのは3人組だが絶妙に違う奴ら。
しかしうてなは目を凝らしてよーく見てみると、何か見覚えがあるしどれみにもそれが分かる。
「あれ、お前のクラスメイトじゃね?」
「た……確かにそれっぽくはありますけど、なんで?」
うてなが困惑している最中でも3人組も周りを見渡して状況を調べつつ、ゆっくりと近づく。
「あれ?なんかとてつもないほどバリバリーって感じがしたから来たんだけど……何か知らない?」
「何かって……あれじゃね?知らんけど」
どれみは適当に指差したところに都合良く怪獣みたいな奴が現れる、あまりにも狙いすましたタイミングすぎて咄嗟にチョマテヨと言いたくなるが厄介者は押し付けるに限るとどれみは手を引っ張るが動かない。
「おいどうした!!とっととずらかるんだよ!!」
「どんな形であれ変身ヒロインの変身シーンは見ておきたい」
「これだからオタクは!!ちょっと見るだけだからな!?」
しかしちょっと見るだけで終わらないことになるまで数秒前、3人組は携帯のような変身アイテムを取り出す戦隊いつもの流れだが……聞き逃がせないものがあった。
「トランスマジア!!」
「は!?と、トランスってお前……」
「戦隊といえば〇〇チェンジとかじゃないですかぁ!!」
「ツッコミどころはそこじゃねえ!」
とにかくまあ言いたいことがまとまらないが、そんなことはおかまいなしとばかりに変身を済ませていく3人。
そしてお決まりの決めポーズ。
「葡萄色の煌めく先陣!サンシャインマゼンタ!」
「揺蕩う海の導き手!サンライトアズール!」
「煌めく閃光の刃!サンダーサルファ!!」
「願いを魔術に変え、聖なる装いにトランスする!魔力戦隊……サンマジカル!!」
そして名乗り口上からの3段階の爆発、お決まりすぎる流れで現れたのはなんと魔力戦隊サンマジカル、ネロアリスに頼んでフィギュアから用意してもらったあの戦隊と同じ名前、しかしどう考えても別人!
しかもそれが知り合いに似ている!あの様子ではコスプレもありえない!
「……ま、まさかとは思うがうてなの言う通り新しい勢力か?」
「また、かな姉さんに監視カメラ用意してもらう必要がありそうだなぁ……今は逃げよう!巻き込まれたら揃って爆死だよ!」
「それだけは勘弁してえな!!」
サンマジカル?が活躍してド派手に怪獣をぶっ倒す姿を背景に柊姉妹は背を向けてマジ疾走、今日は色々ありすぎたが未だに嵐が吹き荒れる柊家屋敷へと帰還することになる。
多分つばめは今でもあの戦隊の戦いにも匹敵するくらいかなにボコボコにされていることだろう。
そしてサンマジカルが無事に戦闘を終わらせた頃。
「ふいー、終わり!2人ともお疲れ様!」
「悪の組織でも出てきてくれたら張り合いがあるんだけど」
「んなことウチらが願っても仕方ないやろ、ほな帰るで帰るで」
そうして三人は別れ、各自で家に帰ってプライベートな時間を過ごす……戦隊はこういった表裏が少ないので思いのままに過ごせて、来週の戦いが来るその時まで存分にリラックス出来る。
……それが、各自の家だったなら。
「ぎゃああああああああ!!不審者!!?」
「化け物を見たような顔をしないでよ……酷いじゃない」
「貴方誰!?どうして私の家にいるの!?」
「どうしてって……
親戚なら当然でしょう?」
「は!?親戚ってどういうことや」
「忘れたの?私の顔……酷いなぁ、花菱はるさめ、よく一緒に遊んだりしたじゃない」
「水神朝日……私のこと忘れた?小夜姉さん」
「天川真知子……忘れたか?この名前」
「え……ええ?」
……
「知らん、めっちゃ知らんわ久しぶりみたいなツラしてるけど全然知らん奴がうちに来た!!それどころかはるさと小夜の家にもやろ!?」
「それが当たり前のような振る舞いで……ずっと家にいたわね」
「あたしちょっと妹に何かされないか怖くて寝れなかったよ……」
「そりゃそうや……改めて皆あの親戚を名乗る連中には心当たりがないみたいやな」
「それもただの親戚じゃない……魔力戦隊サンマジカル、ニュースに突如現れたフィクションと同じ名前をしているの」
「タチ悪いのは他にサンマジカルがいること、サンマジカルAとサンマジカルBでややこしいな、ドラマ作ってた方としてはいい迷惑やわ」
戦隊が盛り上がるどころかどっちもサンマジカルがのさばるとイメージが悪くなる、しかし正体はわからないしあの親戚も分からない。
はるか達が目処をつけているのは2つ、エノルミータあるいはクロノス・シンジケート。
特に後者は時を止める魔法を作ろうとするくらいだ、クローン技術の一つや2つあってもおかしくない。
問題は目的だ。
「ヒーローごっこにしては……雑ね、何より問題なのは向こうだった場合正体がバレてることになるわ、身内になろうとするなんて」
「あたし達バレるようなことしてないよ!?SNSだって気をつけてるし」
「ウチらに落ち度があったようには思えん……けどなんか更に覚えがある、あの異様な柊姉妹!」
やはり気になってくるのは謎の姉妹、あの面々も本当に家族かどうか疑わしかったので薫子としてはもう一つの可能性を考えた。
……柊姉妹と自分達の親戚はほぼ同じ存在、実在しない者が家族ごっこをしているのではないか?
そんな疑問を解消すべく今度は3人でひいらぎに訪れると、既に田中が席に座っていた。
「貴方は……田中さん?」
「お前は……あの時こいつの妹と一緒についてきたやつか」
「おや、今日も来てくれたんですかぁ最近は暇を持て余さなくていいですねえ」
「相変わらずガラガラした店やな……また聞きたいことがあったんや」
「なんだ、柊姉妹のことを調べてるやつはいくらでもいるんだな……」
「え?では貴方も?」
「といっても大したことではない……五女から変なことを聞いた、こいつら姉妹の名前の由来は魔法少女だそうだ」
「はあ!?」
「懐かしいですね〜確かにそんなことを言われた記憶は私にもあります、私は世界にも匹敵する魔法少女、かなは手に職つけてもやっていける子、うさぎとどれみは少々お転婆に……なぎさもそれに近いパワフルな子に……うてなはその反動で綺麗な子に、ほむらはもう見たときからこれしかないとか……でもまあ!なぎさが戦隊が好きになったと聞いたときは『さくらにしておいたほうが良かったかな〜』って笑ってましたけどね」
「ありえない!そんな名前の魔法少女聞いたことないぞ、マニアのあの妹だってそう言ってたんだろ!」
「確かに……私も調べてみたらそんな人たちいませんでしたからねえ、でもまあそういうものじゃないですか?案外、我々の見えないところに……」
「……まあ、釈然としないがそういう解釈にしておこう、いたとしてもとっくに死んでいるだろう」
「すみません、あたしからもいいですか?」
「その代わり……ご注文をどうぞ?」