悪の柊七姉妹 〜この中に一人、悪魔がいる!〜   作:黒影時空

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第12話「お姉ちゃんの決断」

「ふむふむ、突然親戚を名乗る変な人が現れてしかもそれが戦隊をやっていると……なんとも面白い結果ですね」

 

「あ、あのう……この料理はなんですか?ラーメンですか?」

 

「ちょ〜っと違いますね、中華そばですよ?雰囲気的に一工夫したとっておきです」

 

(こ……これのどこがちょっと違うなの!?めちゃくちゃスープがすごい色してるよ!?)

 

 この間出した姉妹風のラーメンはマシだったのに今回の中華そばはなんか妙に赤い、辛い感じてもトマトもなさそうだが中華そばにしては異様に赤くてまるで血の色、どこかの過去の人間の血の風呂をイメージしたそういう料理と言われたほうがまだしっくりくる出来栄えだ。

 

「まあ呑めなくもないスープ……それでそのえーと、急に親戚が増えてきたらどうしたらいいのか」

 

「うーん変わった質問ですね、まるで宝くじに当たったみたいな……賑やかでいいと思いますが、質問者としては困ってるわけですよね?」

 

「そんなに嫌な奴らなのか?」

 

「悪人ではないのだけれど、私たちとしては顔が似てるだけの赤の他人だから馴れ馴れしくされると居心地が悪いというか……信用していいのかもわからないの」

 

「それで怖いのは……あたしにも妹がいるんですけど、妹達はその人と知り合いのように、まるで以前から交流があったかのように振る舞ってるから、あたし達の方がおかしいのかなって思うようになっちゃって……」

 

「なんやったっけ……漫画で昔そんなの見たような気するけど」

 

「ふむ……思ったより事態は深刻なようですね……というか貴方達なんでそんなことに?戦隊の親戚なんて戦力として便利とは思いますが」

 

「そんな簡単なことじゃないだろう変な家族が増えるなんて……お前の場合は一人一人変だがな」

 

「あっ、その……そっちの方はまた追々ダメそうだったらまた相談するんですけど……もしかしたらってこともありまして、その……つばめさんは大丈夫ですよね?」

 

「え?私の妹たちが実際は存在しない何かが成り代わってると……?ふ、ふふふふ、ふふふふ」

 

「あっその、えっと……妹さんを悪く言うわけではなくて、他の人もそうだったらって思うと……」

 

 何か良くない一線に触れてしまったのか?ひいらぎの雰囲気が変わり小夜は逃げ出す準備をして場合によっては戦闘になることも覚悟する。

 つばめは笑っている、いつものようにニコニコとしているのに怖い。

 このまま餌にされてしまいそうなくらいだ。

 

「……3人とも、くれぐれも私以外にそんな事を言ってはだめですよ、本当に……」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「心配しなくても姉妹は大丈夫ですよ、永遠に、悠久に、平穏に……仲良しな7人、この中に悪魔はいるかもしれなくても、偽物なんてぜーったいにありえません!」

 

 気まずい空気になってしまったので一旦お開きにしようとトレスマジアは頭を下げて退散、改めてひいらぎには田中とつばめの二人きりとなる。

 

「……どうだかな、私も正直怪しく見えるぞ」

 

「そうですかねぇ?元々怪しまれてるんですから存在くらいは認めてくれてもいいんじゃないです?」

 

「それもそうだが……お前らはよくわからないことが多すぎるな……はあ、口約束はしたがどうするべきか」

 

「なぎさのワガママ聞いてくれるだけでもありがたいですが、まだ悩みがありますか?姉として私に出来ることがあれば……」

 

「軽く答えてやったが戦隊ロボを作るというのが思った以上に難しくてな……」

 

「ああですよね、大きいですし構造も複雑で……だから戦隊も作中では作るより向こうから来てくれたり召喚ってパターンが多いんですよ」

 

「そんな形で用意するリソースなどない、戦力としては世界征服の役に立つとはいえ無駄は極力避けなければヴェナリータが五月蝿いからな」

 

「うてなとかなは何してます?」

 

「魔力供給問題は解決したからな、別の仕事を与えた」

 

 

 ……

 

「んで……新しい仕事はいいんですけどねぇ……」

 

「なんで私達が戦隊ロボのデザインを考えないといけないんですかぁ!!」

 

 ナハトベースでは現在進行形で紙くずの山、出来ることなら家で持ち帰りたいがなぎさがネタバレ嫌いなタイプなのでここで仕事するしかない。

 とはいえ、二人は特に絵心があるわけでもないのでネロアリスと同レベルのお絵描きにしかなっていない。

 

「ねえ……こういうのってAIに頼っちゃダメなの?」

 

「あー最近は動画とかも作れるけど合体シーンとかはまだガタガタになるんですよね……というか、サンマジカルは既存の作品なんだから超合金玩具買わせてこりすちゃんに使わせたら早いというのに……」

 

「オリジナルがいいってワガママ言うんですよ……あの謎のサンマジカルBとやらのせいですね、そしてそれを作ったパンタノペスカ……というかあの人に頼めばいいじゃないですか!!」

 

「あーやっべなんかイライラしてきた、うてな今すぐ服貸して汗とか染み付いたやつ」

 

「嫌です自分の匂いでも嗅いでください、こりすちゃんの前でみっともないですよ姉さん」

 

「うう〜……あれが私にとってのエナドリみたいなものなのに……めんどい!エノルミータに絵が上手い人っていないですか!?」

 

「絵が上手くてもロボット描きたがる人はそんなにいないってキウィちゃん言ってたよ」

 

「それを私にやらせんなっつーの!!ああ総帥め!!喧嘩だったら間違いなく私が勝てるってのに!!この手でパンツ剥ぎ取ってやろうか!!」

 

「姉さん総帥に電話繋がってるよ」

 

「そういうのは早く言え!!ああもしもしパンツ汚れてる!?」

 

「パンツ何色みたいなノリで気色悪いこと言うな!!クロノス・シンジケートはなんてやつを雇っていたんだ……」

 

「クロノス・シンジケートが私より弱いのが悪い!!ちょっとストレス溜まってきたので用件は手短にお願いします!!」

 

「お前が悪魔じゃないならなんなんだ……ロボットの方はどうだ」

 

「出来るわけねーだろ!!どこのアニメで世界征服に巨大ロボを使う魔法少女の悪の組織があるんだ!!絵を描くのだって楽じゃねえんだぞバカタレェ!!!」

 

「あの、かな姉さん代わってください……それと誰か牛乳が染み付いた雑巾を手配してください!!」

 

「お前の姉ちゃんと関わりたくなくなってきたんなけど」

 

「ほんとそれは申し訳ないですが!」

 

 影から現れたルベルブルーメにくっせぇ雑巾を顔に押し付けられて海老のように跳ねまくるかなを尻目に。うてなが引き続き電話に応じるが、ただ描くだけではなくなぎさのこだわり強さ故に理想のロボットを作るなんてことは色んな意味で素人の2人には不可能に等しい。

 

「総帥の魔法って確か私みたいにモンスターを自在に作れましたよね?アレ使っていい感じに出来ません?」

 

「できるかもしれないしできないかもしれない、デザイン面に関して確信が持てないからこそ貴様達に指示しているのではないか」

 

「そうは言われてもこのままじゃ八方塞がり……っていうかロボットって向こうも出してくるのかなぁ……」

 

「パンタノペスカか……そうだ、なぎさを通してパンタノペスカを調べてこい、ヤツからパクってロボットのデザイン奪ってくればいいんだ」

 

「なんて悪質な……ってそういえば私達悪の組織でした、はぁ……パクリとか解釈違い甚だしいですが仕方ない……やる気は出ませんがなぎさ姉ちゃんのところ行ってきますね……かな姉さんは定期的に3日洗濯してないシャツとか与えといてください」

 

「お前の次女社会に出しちゃいけない生命体じゃないのか?」

 

「これでもつばめ姉さんの教育のおかげでギリギリマシになってます」

 

……

 

「さて、晩御飯はキャベツを使いたいところですが揚げキャベツというのも……おや?」

 

 つばめが買い物をしていると、はるかにそっくりな人物……親戚を名乗る花菱はるさめと出会う、つばめは滅多に来ない客の顔は大体覚えていたのですぐに分かった。

 

「おや貴方……ちょっといいですか?」

 

「えっ何?貴方誰?」

 

「いえ、ちょっと貴方のご家族とは縁がありましてね……噂はかねがね」

 

「ああ!もしかしてはるかの?是非とも話がしたいところ!」

 

(……かかりましたねえ)

 

 はるさめはそのままつばめを連れて花菱家まで案内、つばめは靴を脱いで堂々とはるかの家に入り込む。

 押し入るつもりはなかったがはるさめがここまで嬉しそうにしているのだから善意に応えるべきである。

 しばらくしているとはるかも帰ってくるが、玄関前につばめがいるものだからそりゃ驚く。

 

「えっ!?つ、つばめさん!?なんでここに!?」

 

「いやぁー実は例の親戚さんとばったり出会っちゃって、意気投合して夕飯でもいかがと誘われたもので」

 

「そっちの家族には!?」

 

「うてなとかなにはどうにも繋がらなくて……まあ、どれみは料理が出来るので大丈夫でしょうね」

 

「でしょうねってまさか泊まり込むんですか!?」

 

「……はるさめさんは良いって言ってましたよ?」

 

「ひえっ」

 

 はるかからすれば恐ろしくて仕方ない、直前までつざめ達姉妹をはるさめのような突然現れた親族かもしれない?と疑りかかったら直接家に乗り込んできたようなものなので、普通に考えて始末しに来たようにしか見えない。

 もちろんつばめとしてはそんな意図はないが、とてものんびりできる空気ではない。

 不都合なことにうてなも今携帯を使っていないので地獄のような空気で家に過ごす、今すぐにでも小夜か薫子のところにでも行きたいがそれでは妹の身が危ない。

 

(こうなったのはあたしのせいだ……だから、家族を守らないと!)

 

 

 と、そんな修羅場が起こっていることは知る由もないうてなとかな。

 追いかけるのはなぎさの後ろ姿、実の姉妹を隠れながら追いかけ回すというのも変な光景だがやりたくない仕事を乗り越えるためにはなぎさを犠牲にするしかない。

 それに、謎に満ちた魔法少女パンタノペスカのことを知れるいい機会だ。

 

「かなお姉ちゃんが案内をした時はどんな調子でした?」

 

「よくもまあ魔法少女姿で堂々と……といった印象です、それでいて宣戦布告でなく本当に就活に来たのですからびっくりというか……」

 

「そもそもなぎさ姉ちゃんの年で魔法少女はだいぶギリギリ感あるような気も」

 

「さっきからコソコソしてるけどがっつり聞こえてますわよ」

 

「ひいえええ!?」

 

 つばめ姉さんに引けを取らないレベルの気配の隠し方、なぎさの後ろをつけるうてなとかな、その更に後ろにパンタノペスカ。

 このせいでなぎさを見失ったが、まあ目的の人物には会えたのでヨシとする。

 

「びっくりした……」

 

「びっくりしたはこっちが言いたいですわ、なぎささんに会おうとしたら後ろからつけているのですもの」

 

「えーとまあ……就活の時以来ですね……実は折行って相談があって……」

 

「戦隊ロボの話ですわね……?まあひとまずこちらに」

 

 一旦会話をするために離れた所に向かおうとするのだが、パンタノペスカの足取りが重い。

 タラタラ歩いても仕方ないのでかなの方からふっかけてくる。

 

「それで戦隊ロボの進捗どうですか」

 

「どうもこうもありませんわめちゃくちゃクソですわ〜口約束したはいいものの好きでもないものを作るのってイマイチ気が乗らなくて手が進みませんことよ」

 

「うわやっべぇものの見事にうちらと同じだ」

 

「笑い事じゃないんですけど……というか、気になることがまだまだ山ほどあるのですが」

 

「その辺もおいおい含めてこちらにどうぞ」

 

 

パンタノぺスカが案内したのは普段の姉妹内では行かなさそうな少々高めのお店、とはいってもドレスコードが必要なレベルではないらしいが恐る恐るテーブル席へ座る。

 

「この店はわたくしが貸し切ってますの」

 

「金持ってるんですねぇ……就職なんて必要なかったのでは?」

 

「ちょっとした社会勉強ですの、それで……私に会いに来た理由はもう分ってますのよエノルミータの…ああ、まだ幹部でしたわね」

 

 何かうてなに対して含みのある言い方をするのが気になるが今は三人揃ってなぎさのワガママに銅答えるかだが、結局はめんどくさいに行き着く。

 戦隊ロボって奴はなんでああも複雑なのか……。

 オシャレな店の無駄使いのような会話を繰り広げる中、かながコーヒーを飲みながら話題を変える。

 

「今更ですが……海外出身の魔法少女って嘘ですよね」

 

「あら分かります?さすがクロノス・シンジケートのトゥエルブ……」

 

「その名前やめてくれます?改めて、国籍不明、正体不明…となればなんなのか?ここでもっと過激な尋問してもいいんですよ」

 

「まあこわいこわい……では軽く話しますと、私は未来から来た魔法少女ですの」

 

「は……はあ。時を操る悪の組織の次は未来人の魔法少女ですか、それって思い切りかな姉さんの敵では?」

 

「うわあめんどくさ……私はもうクロノス・シンジケートじゃないんですがね……」

 

 時間停止による世界征服を掲げるクロノス・シンジケートが突然現れて世間を騒がせているのだから無名の魔法少女が嘘にしても事実にしても未来から来たという名目でライバルが現れてもおかしくもない。

 納得しているところに氷の剣がテーブルに突き刺さる、飛んできた方角の先には……なんとマジアアズール!?

 

「パンタノペスカを調べていたらまさか……貴方がクロノス・シンジケートの」

 

「いやいやあの……悪の組織のオフを狙う魔法少女がどこにいるんですか……いや、この場合顔が割れている私の方が悪いのか、パンタノペスカさんこういう時誰の味方する?」

 

「もちろん悪党を成敗しますわ、たとえ相手が丸腰の一般人でも」

 

「はあ……めんどくさ、私がこういう時なんのケアもしてなかったと思います?それと何度も言いますが今の私はクロノス・シンジケートじゃなくて、エノルミータですから」

 

「トゥエルブ、迎えに来たぞ」

 

「田中さ……ロードエノルメ様」

 

 魔法の結界を無視して店の上からヘリコプター……いや、よく見たら造形が玩具。

 ネロアリスがヘリコプターの玩具を魔法で実物に変えているようだ。

 

(ここは私がなんとかしておきますので今のうちにマジアベーゼになっておきなさい)

 

(あっすみませんかな姉さん)

 

 かなが急ごしらえでトゥエルブとしての衣装を用意してさりげなくうてなを逃がし、戦闘態勢へ……。

 

「わざわざ来てくれたということは用意してくれたんですね?」

 

「当然だ、魔法少女のブランドを蹴落とすための戦隊作戦だからな……サンマジカルはもちろん用意した!」

 

「あらでしたらわたくしのスタチューファイブと勝負と……あら壊れてる」

 

 パンタノペスカの用意した戦隊(石膏)を破壊していたのは……マジアアズールの親戚、水神朝日。

 サンマジカルのブルーを名乗る今一番よくわからないやべーやつ。

 

「あっ!3番目の変な戦隊……あれパンダさんの作ったやつじゃないんですか!?」

 

「えっ……アレは本当に知りませんわ」

 

「はあーっ……トランスマジア!!揺蕩う海の導き手!サンライトアズール!魔力戦隊サンマジカル!!」

 

「うわっ来たわ……本当に戦隊だったのね貴方」

 

「おいあれはなんだ?」

 

「戦隊を名乗る不審者ですけど……」

 

「アレは何?」

 

「一応私達が戦ってる悪の組織だけど」

 

 サンマジカルを名乗る不審者とエノルミータ、互いに面識がなかったので互いにあのよくわからないものは何だと聞き合うカオスな光景になってしまった。

 

「サンマジカルにしては似てないな」

 

「それはまあ……あれは勝手に名乗ってるだけですし、玩具からパクった我々も大概ですが……」

 

 そして街の中心部……魔法の結界が張られた一角は、既に異様な空気に包まれていた。

 エノルミータの幹部たち、サンマジカルを名乗る謎の集団、そして突如現れたマジアアズールとその「親戚」水神朝日。互いに牽制し合いいつ戦闘が始まってもおかしくない緊張感が漂う中でさらなる火種がその場に現れた。

 

「ん? あれは……何だか楽しそうな雰囲気じゃん!てかかな姉ちゃんまでいるし」

 

 全ての元凶たる五女の柊なぎさだった。

 戦隊オタクとして知られる彼女は偶然この場所を通りかかり目の前に広がるカオスな状況に目を輝かせていた。

 小夜の親戚並びにサンマジカルのブルーを名乗る水神朝日、そしてその奇妙な石膏の戦隊「スタチューファイブ」の残骸。

 さらに玩具のヘリコプターを操るネロアリスの姿まで……なぎさの心は例えるなら戦隊アニメのクライマックスを見ているかのように高揚するのも無理もないことだ。

 

「ちょっと待っ……なぎさか、 ここは危なのでさっさと離したいような……ああもう一番会いたくない人が来たな……」

 

 柊かなが焦った声を上げる。彼女にとって、なぎさはこの状況をさらにややこしくする最大の不安要素だった。戦隊オタクのこだわりが暴走すれば、収拾がつかなくなることは目に見えていた。

 しかし、普段から空気の読めないなぎさは一歩も引かない。むしろ目を輝か、朝日が変身した「サンライトアズール」や、エノルミータの面々をじっくり観察し始めて……即座に目を細める、まるで期待外れのように。

 

「うーん……なんか、こう……戦隊っぽいんだけど、どこか違うなアレ……サンマジカルのブルーって、もっとこう、キリッとした感じじゃなかったっけ、 あと、そっちの方はデザインが……なんか質感が安っぽいっていうか……プラスチック臭いっていうか……あとそれと」

 

 なぎさの口から放たれたのは、止まらない不満と戦隊オタク特有の辛辣な批評だった。

 彼女の「蛙化現象」とも呼べるべき瞬間である。期待が高すぎるゆえに、わずかな違和感で一気に冷めてしまう

 その言葉は、その場にいた柊かなの逆鱗に火をつけた。

 

「おいなぎさ……てめえ、今何て言った?」

 

 かな……いや、トゥエルブが低く危険な声で呟く。彼女の冷たい目はすでに怒りで燃え上がり中指を突き立てていた

 

「人が! 金と! 労力と! 時間をかけて! 必死に作ったものを! 一瞬で無駄にする奴が! 許せねえってんだよ! 妹だろうがぶち殺す気で行くぞ田中ァ!!」

 

「ん……ああ、久々にやる気出したかと思えばこんな調子が」

 

 かなが叫ぶと同時に、彼女の魔力が爆発的に解放された。

 普段は面倒とコスパ節約のために温存していたその力はネロアリスが持ち込んだ玩具の果物セットを媒体に、ロードエノルメの黒い怪物と混ぜ合わせて異形の怪物へと変貌する、果物の人が、ライオンが、イーグルが合体してまるで合体ロボのような姿に。

 

「行け!この間買ったばかりの玩具から生まれた合体魔獣カジュエンダー!!」

 

 そうして生まれたフルーツをモチーフにした巨大な魔獣。

 バナナの腕、ミカンの頭部、パイナップルの棘が無数に生えたその姿は、グロテスクさと奇妙な可愛らしさを併せ持つ。

 カジュエンダーは咆哮を上げ、戦場にいた全ての勢力――サンマジカル、マジアアズール、パンタノペスカ――を一気に襲い始めた。

 その頃、遅れて到着したマジアベーゼ(柊うてな)は、遠くからその光景を眺めていた。

 

「え……私が何かする前に、もうこんなことになってるの?というか、かな姉さんめちゃくちゃキレてるし近づきたくないなぁ……」

 

 カジュエンダーの圧倒的な力は、敵味方問わず次々とフルーツのように「搾り取って」いた。

 マジアアズールが捕まり魔獣の触手に締め上げられ、苦悶の表情を浮かべながらもどこか恍惚とした雰囲気を漂わせている姿に、うてなは心なしか胸の高鳴りを覚えた。

 

(いや、ちょっと待って! なんで私、こんな状況でドキドキしてるんだろう……そういえば前もそうだったような、最初に変身して植物で縛った時も、蝋燭の怪物でほむらに見られそうになった時も……そうだ、その時いつも……)

 

 しかし戦況はさらに予想外の方向へ転じることになる。

 

「おぐおっ!?」

 

 カジュエンダーの攻撃の余波で、偶然にもなぎさの頭に巨大なフルーツ(どう見てもスイカのような物体)が被さったのだ。視界を完全に塞がれたなぎさの雰囲気が一変する。

 

「うおっ……見えなっ……はあはあ……さっきのは敵?つまり今私のこの姿……あーー!!あぁー「敵」!!「敵」「敵」「敵」お前「敵」!!倒したい!!」

 

 顔を隠されたなぎさは、なぜか途端にヒロイックというかヒステリックブルーなモードに突入。

 彼女の性癖――顔を隠されることに快楽を感じ、視界を遮られると大胆になる傾向が爆発する。

 だが致命的な欠陥があり、完全に隠されているので目が見えていないことにあり、周りの事など一切考えないのでその拳の矛先はどこに飛ぶか分からない。

 殴っていいんだ、この人は殴っていいんだ。

 

「おいなぎさ! 小学生の頃、お前がそれで暴走して荒んだ頃の私もどれみもボコボコにしたせいで姉さんがヒーローごっこ禁止にしたの忘れたのか!?」

 

 かなが叫ぶが、時すでに遅し。なぎさは思うがまま「正義の鉄拳」を振り回し、見境なく周囲を叩きのめし始めた。サッカーやろうぜ!

 カジュエンダーすら怯むほどの勢いで、戦場は一瞬にしてめちゃくちゃに。

 

「うわああ!私巻き込まれたくない!ネロちゃん逃げよう!」

 

「ちょっと待て! かわいい姉と総帥を見捨て気か!!」

 

「こいつら……私が完全に眼中にないな……組織戻ったらどうしてやろうか……」

 

 うてなとネロアリスは慌てて逃げ出すが、なぎさの暴走は止まらない。行く先々でサンマジカルもマジアアズールも巻き添えになり、綺麗なお店は賠償不可避な壊滅状態に。

 ついに耐えきれなくなったロードエノルメ(田中)は、黒い魔力を召喚し巨大な怪物を作り出した。

 

「トゥエルブ退くぞ! どうなってるんだお前の妹は!!」

 

「ほんとすみませんねぇ!!なぎさのパンツに免じて許してください!!」

 

「人を同じ性癖扱いするな!!」

 

 黒い怪物はかなとエノルメを呑み込み、瞬く間に撤退……残されたのは、ぐにゃぐにゃにやられたヒーローたちと、フルーツの果汁まみれの廃墟だった。

 マジアアズールは、傷つけられながらもどこか昂りを感じていた自分に気づき、慌てて我に返る。

 

「待て、さっきのあの感覚は……! いや、 それより……パンタノペスカ! 貴方がさっき未来から来たという話、詳しく聞かせな――」

 

 しかし、振り返った先にパンタノペスカの姿はなく、倒れていたのはスイカを被ったまま気絶したなぎさだけだった。

 

「あれは一体なんだったの……?」

 マジアアズールが呟く中、遠くで怪物達の咆哮がまだ響いていた。この戦いは、誰にとっても得体の知れない結末を迎えたのだった。

 

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