悪の柊七姉妹 〜この中に一人、悪魔がいる!〜   作:黒影時空

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第18話「クロノス・シンジケートの真実」

 そして柊姉妹+エノルミータが慰安旅行に向かっていた頃、とてつもない違和感を感じていたのはトレスマジアの三人。

 悪の組織の面々が揃っていなくなったとは露知らず、街は恐ろしいほどの静寂に包まれて呆れ返るほどを通り越して恐ろしさすら感じるほどの平和。

 戦わなくていいに越したことはないはるか、小夜、薫子だが今のうちにはっきりさせておいたい。

 花菱はるさめ、水神朝日、天川真知子……通称、謎の戦隊『魔力戦隊サンマジカル』

 突如として現れて親戚を名乗り、現在も尚この場所で家族同然の付き合いをしようとしている……はるか達から見てそっくりな赤の他人。

 どうせ、向こうは自分達が魔法少女であることを知っているのだろうと……無人の大衆食堂ひいらぎで話す。

 店主不在による休業かと思えば張り紙付きで『ご飯が食べたいならそこの冷蔵庫から冷凍した炒飯があるのであっためてください』と書いてあった、もはや身内絡みしか来ないものも開き直っている。

 

「それで、私たちと話したいことって?」

 

「うだうだと話しても仕方ないからはっきり言わせてもらうが、お前らは何者や?」

 

 先陣を切って薫子が結論を言うが、どうせこの発言をしたところではぐらかされるだろうということは分かっている。

 そこで……小夜が切り出してきた、柊どれみから聞いた過去に存在したという魔法以前の技術の存在。

 

「貴方達の使っているそれは魔法少女の物と似ているようで異なる……旧世代という言い方もなんだけど、それらを用いた力でサンマジカルに変身している……私はそう考えているの」

 

 これまでの謎も、未知の技術も全てこの結論に行き着くと考えればそうおかしな展開でもない。

 朝日は……鞄から大きな本を取り出す。

 

「魔法少女の変化……えっと、今ではトランスマジアと名付けているのでしたか、名称自体はどうでもいいのですが、確かにありとあらゆる技術を扱いやすいように調整されたのが今の魔法であり、魔法少女ということになっています。」

 

 全部話してくれた、呪法、電法、技法……とにかく『法』と付いていればなんでも技術ということにして各地で様々な能力者じみたものを作っていた。

 それが合併されて今の魔法少女という存在になる……中でも魔法少女の根本、言わばプロトタイプとなった前任者の名称は『変身術』だった。

 変身法は自身の肉体を突然変異のように作り替える特別な力を持った者……魔法少女の変身の元になった存在だが違うところも多いが、おおかた察するものも多い。

 

「つまり……貴方達はその変身法というものを使ってあたしたちの身内の真似をしたってこと?えーとそれじゃあ変身元があるわけで……」

 

「いや分かるで……ウチらのことを知っていて突然こんな事ができる奴らといったら……ちょっと前から因縁付けられた奴ら……そう、クロノス・シンジケートや」

 

 クロノス・シンジケート。

 エノルミータの次にトレスマジアと戦いながらも実体が見えてこない謎の悪の組織、分かっていることは目的は時間停止の魔法を作成することによる世界征服。

 確か幹部格はうてなの姉、かなを含めて何人かいる……喧嘩を売ってきて尚且つトレスマジアの事を知っているとなれば奴らしかあり得ない、特にはるかは偶然とはいえ一度クロノス・シンジケートに行ったことがある。

 それに一度ボロが出ると効いてるのは過去に見ている、目に見えて動揺している。

 

「ああそこまではバレる気はしなかったって顔やな、まあ答えが出たら遠慮なく潰すだけや、ついでにクロノス・シンジケートの内部まで案内してもらおか」

 

「あっ待って待って!!そういうのは本当に意味ないから!!クロノス・シンジケートもう機能してないんです!!」

 

 はるさめはマジで殺されると分かり焦って内情を全て明かす、ここにきてトレスマジアは初めてトゥエルブこと柊かながエノルミータの方に行ったことを知るのだが、かながうてな達に語ったものとは大きく異なる事実が隠されていた。

 向こうはクロノス・シンジケートは逃げたと思っているようだが、何も出来ない状況にあるという。

 クロノス・シンジケート本社は別次元にあると思っているようだが実際は違う。

 

「黒い切符のIDを勝手に消したんですよあの人!自分がクロノス・シンジケートを辞めるときに勝手にそうなるようにしたみたいです!」

 

「えーと……あん時の切符か、それで何回使ってもシンジケートに行けなかったわけか」

 

「別次元……というのもちょっと違う、例えるとするならタイムスリップに近いような……速く走る乗り物を媒体として一次的にその場所を過去に変えるもの」

 

「どこぞの22世紀ネコが出すタイムマシン的なアレ……?」

 

「更にそのネコが持ってる時を超えられるベルトに近いのかな……ってな感じ」

 

 実際の真相は実にシンプルかつ強引、クロノス・シンジケートに移動させたいタイミングで電車内で連れて行く面々を強引な手を使って気絶(かなの場合は睡眠薬)。

 その後電車内で保護フィルターを貼り、指を鳴らすと共に急速に時間軸を逆行……フィルターが貼られなかった者は急激な砂嵐のようになって消失し過去に飛ぶ、後は一回の電車の駅を終点にするようにすればクロノス・シンジケートに戻れる……と極めて面倒で非人道的な手段だったようだ。

 

「なんか地味やけどやってること狂ってるな……ていうかこの時点でも結構狂ってるんやけど、なんやうちらの事を追いかけてはるさめ共は一体どうやってシンジケートからウチらのところへ来たんや?」

 

「来たっていうか……その、会社に入れなくなったというか、何もできないっていうか……トゥエルブ大幹部がガサツな人であることは知ってるはずだけど……さっきも言ったように出ていった際に黒い切符の権限を全部消したんです」

 

 そしたら黒い切符にクロノス・シンジケートの全権を任せていたようであり、かなも忘れているのか意図的なのか……それが使えなくなるだけでパソコンは開けない、セキュリティの設定も変えられない、タイムカードも起動しない。

 そう、知らない間にトゥエルブは多機能通り越して切符1枚にクロノス・シンジケートをかかりっきりにさせていた、更には自分が万が一クビにされた時にそれをシャットダウンさせるという悪質な奥の手を隠していた……あるいはその奥の手すら忘れていたというか?

 そんなこともあり、クロノス・シンジケートは働くことすら出来なくなったとか。

 要は仕事が出来ないからかなを連れ戻すために変身術で三人の親戚に成りすましてることになる。

 そんなやつ生かす理由もないので始末しかないが、小夜が止める。

 

「まだ待って……そうなってくる場合とんでもないことになるわ、その変身術というものがクロノス・シンジケートに広まっているなら、柊さんのお姉さん、柊かなは本当に柊かななの!?」

 

「あっそうじゃん!こんな高度な変身ができて、あたし達の身内の真似まで出来るならあの人も……」

 

「それはありえなくもないですが、もう我々にも分かりません……変身術は貴方達も感じてる通り概念……戸籍や記憶まで一気に作り替える代物なので、我々の目から見ても柊姉妹の次女にしか見えないし、なんとかクロノス・シンジケートとしての記憶を維持してるので」

 

 それにはトレスマジアも覚えがある……変身時の認識阻害魔法、どうやら変身術というものは認識阻害魔法の大元になっているようだが大きな違いは一次的なオンオフではなく完全に自身の性質を作り変えて下手すれば自身すら変わったという自覚すら持てないまま完全に変化してしまう。

 柊かなが本当に存在するかどうかを考えると銀河の根本が歪むほどになる。

 魔法少女のその力すらデリケートな代物であることは理解しているので……一旦その話は後にすることに、何より問題なのはクロノス・シンジケートの目的、時間を止める魔法を作ることによる世界征服。

 それは答えと見ていいのだろうか?朝日はちょっと悩んでいるかのような顔をした後に……あまりにも衝撃的すぎる答えを出した。

 魔法少女でも扱い切れるか怪しいほどの……。

 

 

「半分が正解です……時間を止める魔法に関して気付くとは思わなかった……こんなことなら早めに潰しておけばよかった、でもそんな力はない……何もできない」

 

「半分?時間を止めることが目的じゃないって……いや、まさかそんな……そんなことが事実だとしたら」

 

「小夜ちゃんどういうこと!?」

 

「完成していた……半分が正解ということは、もう既に時間停止の魔法は作られている!?」

 

「はい……といっても、完成したとはいえ現在実用性は全くないとして会社は改良の方向性に向かっていた所に、トゥエルブ様のあの横暴というわけですが」

 

 なんと時間停止の魔法は既に完成していた、実用性がないと語ることは数秒しか止められないとか、何かしらの制約があるとかそういった感じかもしれないが時間停止魔法の全権はかなが握っているので詳細は分からないという。

 薫子はそれを聞いて新たにペンで加筆する、変身術の真髄は魔法少女のトランスマジアの原点というよりは認識阻害のナーフ化にある、名前を変えて誤魔化しているように見えるが実態は肉体と経歴を大きく作り替える常識改変にも等しい力だ、現代で封印されるのも無理もない。

 その結果辿り着いた結論はこれだ。

 

「クロノス・シンジケートは本当は存在せえへん組織や……変身術で『自分がそういう会社の人間』ということにすれば、簡単に今の立場を維持できる……大幹部なんておかしな話やろ?」

 

「でもそこまでいくと変身術一つで全ての前提が覆るワイルドカードになるわ、何か条件があるはずよ」

 

「条件かどうかはともかく……変身術は1人1回まで、一度作り替えたら元に戻れないというか結構リスクが大きいですし、トゥエルブ様はもうかなり前から変身術を使っています」

 

「変身術を使ったことを判別する手段はないんか?お前らも互いにクロノス・シンジケートの社員ってことは覚えてるんやろ」

 

「判別方法というと匂いくらいしかないかな……なんというか変身法ってファンシーじゃないというか、元の体から更に別情報を貼り付けてその負荷で腐った臭いがするというか……」

 

「なんか納豆みたいな臭いすると思ったらそのせいだったのね……よくそれで私たちの家族のフリできると……」

 

 さて、改めてクロノス・シンジケートのことは分かったが最後にのこった問題は……この自分たちの家族を名乗るクロノス・シンジケートの幹部たちをどうするべきかということ。

 おおかた自分達に接触したのは、柊かなを連れ戻すための計画を建てていたのだろうが……自分たちからすれば第二の悪の組織、生かしておいていい理由にならない。

 

「どうする?このままクロノス・シンジケート上がり込んで完全に叩き潰したいところやけど」

 

「そうしたいところだけどどうやって帰るの?いくらなんでも時間を超えることなんて今の私たちの力では不可能よ……」

 

「……あっ、そういえば未来から来た魔法少女がいなかった!?」

 

「確かパンタノペスカ……といったかしら?」

 

 そう、まだ詳細がわからないものとしてもう一つ……未来から来た魔法少女パンタノペスカ、まさに彼女も向こうからすれば過去に飛んでいるではないか。

 クロノス・シンジケートの言うことが事実ならタイムスリップの方法を教えてもらえば突入も非現実的ではないのだろう。

 さっそく行動しようと席を立つがその刹那、眩い閃光が目の前で走り……はるさめ達を吹き飛ばしてテーブルを壊しながら現れたのは……田中だった、しかし彼女の顔にかまいたちのようにすっぱり斬られた傷が出来ており血が滲んでいる。

 

「電車で2時間の距離くらいですら目元が痛い、これだけではとても……ん?お前は確かクロノス・シンジケートの時の……」

 

「貴方は……田中さん!?」

 

「この人は?」

 

「前にクロノス・シンジケートに入ろうとしていた田中さん……えっと、うてなちゃんと仲がいいとか」

 

「仲良くしているつもりはないが最近ここの店主に妙に好かれてな……電法を教えてもらいテストをしていたところだ」

 

「電法って、あの四女が使えるやつか?……あれワープも出来たんやな」

 

「というよりはこれが本来の使い方だろう……だがお前達には関係ない、身体が痛いがもう一回電法を使うしか」

 

「あ……あの!!もしかしてつばめさんの所に行くんですか!?でしたらあたし達も!」

 

「何故だ、赤の他人のお前達を連れて何の徳がある?」

 

「えっと……えっと、柊かなさんとも会うんですよね?実はこの人たちクロノス・シンジケートの人たちなんです!」

 

「うげえええ!?ちょっとはるか!?確かにそうだけどそれをその人に言うのは!?」

 

「何?……なるほど興味深い、だがこの数はワープ出来ないから新幹線代を出せ」

 

 クロノス・シンジケートにつながる情報なら何でも欲しかった田中ははるさめ達を含めた上ではるか達を拉致することにした。

 その上で田中はつばめから聞いた情報や手に入れた資料を、はるかははるさめから聞いたクロノス・シンジケートの話を聞くと互いにとんでもない情報を掴んだと確信する。

 変身術、クロノス・シンジケートの真実……そして、田中がそういう関係になろうとしていること、打算で。

 

「貴方からかなさんに説得することは?」

 

「なぜ私がそこまでしてやる必要がある……しかし時間停止魔法が完成しているのは事実なのか」

 

「まあ、そうね、我々でも使ったことはないけどトゥエルブ様はずっと限界まで魔法の調整を行っていた……というよりは何かを試していた?」

 

「田中さん、変身術を使った人間は腐臭がするそうですが……姉妹の中にそういった人物は?」

 

「例の奴は大体風呂に入っていないからそんなものだが……そうだな、むしろ腐臭よりもそれを誤魔化すためにより大きな匂いで掻き消す……だが覚えがあるな」

 

 柊姉妹はおしゃれに無沈着というわけでもないが、変身術を使っていそうな人物はかな以外にも心当たりがある、そしてその候補者がそうだとしたら……悪魔の正体にも辿り着きそうだ。

 乗っている最中、携帯がマナーモードで振動を始めたので軽く答えて返す。

 

「今新幹線の中だ、要件はチャットで言え」

 

 そして電話を切ると鬼のようなチャットの嵐、よほど焦っているのか誤字や誤送信も非常に多いが内容は即座に分かったので一言。

 『分かった、お前はもう動け』とだけ。

 つばめから必死に送られてきた内容というのは……。

 

「どうやら私とつはめが電法の実験を行っている間に……末のやつが誘拐されたらしい」

 

「えっ!?ほむらちゃんが!?」

 

「一番下の妹……どうして急に誘拐なんて」

 

「今考えられるのは悪の組織だの胡散臭い姉だのが多いやつの末っ子や、恨むやつが1人や2人おってもおかしくあらへん、報復されても文句言えん気もするわ」

 

 酷い評価だがそれくらい柊姉妹が胡散臭いので仕方ないところがある。

 だが案外なんとかなるのかもしれない……本当に神様に恵まれているのであれば。

 つばめには連絡を入れて自分がやってくる前に活動できるだろう。

 

「おいクロノス・シンジケート、時間に関する魔法を使えるならこの新幹線を加速させることはできないのか」

 

「あの人自分を追い詰めることが好きなので時間をカットすることが苦手なので……」

 

「ちっ使えんな……こいつで飛ばしても1時間はかかるな」

 

「ど、どうしよう……どうしよう!?」

 

「落ち着け、こんなところじゃウチらにできることなんか何もあらへん……それにこれは姉妹達の問題で近くに全員揃ってるんやろ?」

 

 そして肝心の海岸、この中で一番慌てているのは意外にもうさぎ。

 普段能天気そうにしているが人一倍不安には敏感なのか口数が少ないがスマホ打つのは早い。

 つばめに代わって田中に連絡したがブレが酷かったたのはこのせいだ。

 そして……。

 

「姉貴はワープができるんだよな?だから単独ってわけか」

 

「ええ……ほむらにはGPSを持たせてあるので後は地理を推測して電力を貯めれば、私達よりも早く到着できます」

 

「万が一って感じで私らが一気に突撃すると……いける?うてな」

 

「……ごめんなさい皆、私がほむらをちゃんと見ていなかったから」

 

「うてな1人の責任じゃないだろ?それにあたしらだってこれから独断でエノルミータの力を使うんだ」

 

 自分達は正義のヒーローではない、あこがれていた魔法少女には絶対なれない。

 しかし、自分の家族を守るためならどんなことでも出来る気がする……うてなはそうやって育ってきた。

 ほむらを救出するためにマジアベーゼ、アンチマスコット、トゥエルブ、そして電法完全開放のどれみが動き出す!

 歩を進めようというところでキウィ達の姿が。

 

「止めないでキウィちゃん!これは家族の問題だから巻き込みたくないし……罰だったらいくらでも」

 

「いやめちゃくちゃ首突っ込むに決まってんだろ、なんか面白そうだしロードエノルメが来るまでめちゃくちゃ時間あるじゃん?」

 

「というか、ロコ達からしても世界征服の為にそれ以外の悪者って邪魔じゃない?」

 

「ゲームはたまに過剰戦力ぐらいで遊びたくなる時があるんだよ」

 

「み、みんな……」

 

「エノルミータは世界に名を轟かせる組織なんだ、バーッと派手にやっちまうぜ!」

 

 かくして、誘拐された柊ほむらを逆に奪い返すべく……エノルミータほぼ全てのメンバーが集結!

 悪の花道を行き、世界を制する。

 私たちは柊姉妹でありエノルミータ。

 大きくあれ、自分たちの欲望――。

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