悪の柊七姉妹 〜この中に一人、悪魔がいる!〜   作:黒影時空

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第20話「あこがれて…そんなものに?」

 田中達が新幹線から電車に乗り継ぎようやく元の場所に戻ってくると、駅の近くに偶然倉庫があったので走って向かう。

 同じ頃……共通チャットにうてなから返信が来た……柊ほむら、及び柊まどかについて……断定するしかないようだ。

 田中は正体については驚きはしたが、それと同時にやはりという気持ちもあった。

 

 

「柊ほむらは変身術を使っていた……そしてその正体は失踪した柊家の母親……柊まどか」

 

「えっ……!?」

 

 母親が姉妹の末っ子の真似をしていた……というよりは、末っ子として振る舞い続けて過ごしてきたのだ、下手したら10年以上もの間。

 あまりの変貌ぶりにトレスマジアの面々は驚きを隠せない。

 特にはるかは昔からほむらと仲良くしていただけに……。

 

「それはつまり……つばめさんが語ってくれた力を合わせて苦難の中育ててきた思い出も偽物という?」

 

「その可能性もありえるが動揺の仕方が妙だな……」

 

 はるかと小夜も冷や汗をかく中、薫子は冷静になって聞く。

 

「いや待てや、そもそもなんでんなこと分かったんや?」

 

「……そうだな、エノルミータにしてやられたらしい」

 

 田中は上手く誤魔化す、独断で動いたこともあって自分までエノルミータの関係者と気づかれないように……あくまでエノルミータが突如現れて、トゥエルブ及び柊かなを従わせるためにエノルミータが拉致、それを柊どれみやつばめが無事に救助したとシナリオをその場で考えついて三人に話す。

 エノルミータの報復にしても……かなりとんでもない結果だが。

 その間にも田中はこっそり「人が増えてきたから変身解除して撤退しろ、姉妹が修羅場になっているのを装え」と合流ついでに命令し……ヴェナリータにもメッセージを送る。

 

「お前の計画は失敗か?」

『まさか、認識阻害の突破が出来るならボクは最初から魔法少女を襲撃してるよ……カマかけるだけで簡単にボロを出した、まどかについては色々調べただけなのにね』

 

 悪魔というものは案外すぐ近くにいるのかもしれない。

 そして、田中が何事もなかったかのように浜辺に戻ると……つばめが心配そうに駆け寄る。

 

「た……田中さん!その目の傷……」

 

「許容範囲だ、それよりもほむらの事を優先してやれ……まあ、私も行くがな」

 

「え?でも貴方は……」

 

「お前はわたしの総帥夫人だ、抱えるのはお前一人だけでよくなる」

 

 田中はつばめの手を握り、安心させるように一緒に歩く。

 愚かなものだ……本心ではない、つばめを懐柔させたいだけなのに、後ろで見ているヴェナリータも中々の悪魔っぷりであると嘲笑っていそうだが、この電法の他に変身法というもの、なかなか使えそうだ、もうしばらくはちょうしにのらせてもいいのかもしれない。

 

「あっ、そういえば田中さん……こんな時に言うのもなんですが、貴方の名前を教えてくれませんか?ほら、さすが私もそろそろ苗字で呼ぶというのも……」

 

「みち子、田中みち子だ。」

 

 田中……改めて、田中みち子がつばめと一緒に再度エノルミータや柊姉妹の所に向かってみるとそこは正にお通夜というか地獄のような雰囲気と化していた。

 ほむらの周りを囲うように6人の姉たちが囲み、あまりにも想定外の出来事にキウィ達も立ち尽くす事しか出来ない。

 

 「……嘘だよな?まさかそんなことあるわけないだろ、まさかほむらが、そんなことあるわけ」

 

 「どれみ……認めたくないでしょう、それはみんな同じです……しかし間違いなく変身術特有の腐臭があります」

 

 何故今まで不思議に思わなかったのか?それはほむらも相当分かってて細工をしていたからに他ならない。

 化粧は人一倍気を使っていたし、清潔さを保とうとしていた。

 台所では悪臭はつばめの料理で誤魔化せるし学校でもそれらしい話は聞いてない、はるかからもそういった話は聞いてないので……誘拐された時完全に無防備になったのでその分自由な時間がなかったのが災いした。

 つまり、ほむらは完全にヴェナリータにハメられて……初めて柊うてなのせいということになる。

 バレてからはうんともすんとも言わないので焦りが止まらない。

 

「いやちょっと待てよ、いつから?いつからほむほむいたわけ?ちゃんと生まれてきたよな?あーしらの記憶まで疑わなきゃいけないわけ?うてなっちの友達でも似たようなこと起きてんだろ?」

 

「変身術の本もここにあるが、見分ける手段はありそうだぞ」

 

「なっ……そうなんですか!?私でもそこまで解読できなかったのに……」

 

「むしろ学が無かったやつが踏み込まなかっただけ大したものだ……」

 

 田中は変身術について振り返る。

 自身、あるいは他者を完全に作り変えて認識すら作り変えるのが変身術……柊かなは一度使用しているが完璧に内容を理解できなかったので、自身の経歴を持ってなんでもいいから社員になりたいという願望を叶えるだけに終わった。

 一度使用したら二度と使用できないので使い方としてはもったいない気もするが下手に踏み込んでしまうよりは良かったのかもしれない。

 今、変身術の本はネモが読み込んでいる……ゲーマーの彼女なら攻略本とかも隅から隅まで見逃さないので呑み込みも早いと踏んだ。

 

「あーふむふむ、変身術が腐った匂いを出すのは自身を再構築させるうえで脳以外の部位を1回壊死、つまり死体にした上で被るように内部に新しい肉体をアタシらでいう魔力で再構築させて付けているって理屈か」

 

「マトリョーシカ人形のような感じってこと?」

 

 だが肝心なのは変身術のもう少し踏み込んだ話だが、ネモはすぐに見つけられた……変身術を使用した後の年数経過の影響のページ、かなが分からなかったのは漢字が読めなかったからだ。

 年数経過……つまり、変身してから時が経つとどのような影響があるかだが、まずどれみはかなの方を見る。

 

「あんた変身術いつ使ったか覚えてるか?」

 

「18になって働かなくては……と思ったので……8年前ですかね……」

 

「8年か、本によると5年以上経つと頬辺りに影響があるそうだ」

 

「痛い痛い痛い!私まだ1ヶ月前に変身したばかりですから!!」

 

「確かにこいつのほっぺなんともあらへんな」

 

 話を聞いてた薫子がはるさめの頬を引っ張って現れるが、便乗してなぎさも頬を引っ張ると伸びる伸びる、ごく普通の柔らかいほっぺだが、小夜がかなの頬に触れてみると……触れてみるとまるで乾いた雑巾に触れているようなザラザラとして弾力もない異様な感触、確かにこれは人間の体とは思えない。

 はるかもほむらの頬に触れたらまさに同じような感触、怠惰な生活で苦しみ抜いた身体のかなはともかく、うてなの一個下でまだまだ成長ばかりのほむらがこれはおかしいというか……。

 少なくとも五年前というところで、うてなが挙手する。

 

「ね……ネモちゃん、ありますか?10年前のサイン」

 

「うてなちゃん!?」

 

「……あの、私だって想像したくないんです、だからこんなことありえないってはっきりしたいじゃないですか……だって、だってそんな可能性があったら……」

 

 柊まどかは『柊ほむら』となって、赤子として自分の娘に育てられて、末っ子としてバックストーリーを固めてた上で姉たちにチヤホヤされる生活を10年以上送ってきたことになる、煽りじゃなくてもヴェナリータがおぞましいというのも分かる。

 自分が可愛がってきた妹は……そんなことないと反発したかった。

 ネモもその気持ちに答えて一言。

 

「変身術を使って10年経ったやつの変化は爪だ」

 

「……確かに私も最近、爪の伸びが悪いような気はしますが」

 

「……ほむら、手を出して」

 

 うてなが恐る恐る爪を触ってみると……爪の感触じゃない、空気の抜けた風船、引っ張ったら伸びるゴム……まるでダルダルの皮というかそういうニッチな性癖のそれを触れているかのような。

 マジックのタネが割れるように、これまで13年間が明らかになった時……ふざけるなという気持ちが溢れ出してくるのは、つばめよりもかなだった。

 拳を振り上げて脳天に叩き付けることを察知したどれみは珍しく電法を使ってまで止める。

 

「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!それはマジでやめろバカ!!」

 

「うるせえ!!!!こいつ以上のバカがどこにいるんだよ!!」

 

「やめろかな姉ちゃん!!ほんとそれやべぇから多分!!」

 

「何故だ!!何故家族を捨て……いや捨ててないがもっと悪質だろうが!!!あんたがそんな姿でのうのうと生かしてもらっている間……ずっと姉さんが命を削って私たちを育ててきたんだぞ!!」

 

 かなの怒号が海に響いてもほむらは何も言わない。

 はるか達も気迫に押されてどうすればいいか分からない。

 

「私がここまで生きてきて過酷な環境の中で妹達を憎まなかったことがあったか……八つ当たりにも等しい感情で殺してやろうと思ったことさえあった!!!なのにそうせず生きていたのは……そんな、そんな私の事まで含めて……姉さんが家族との生活を守ろうとしていたから……!!」

 

「……んで、つば姉は実際にやってくれたんだよな……10年以上も、あんな身体になってまで……まーさ、かな姉がキレる気持ちも分かるけどさ、結局ほむらになった理由が分かんね〜んだよな、赤子に変身するってことは脳みそも引っ張られるわけだろ?赤ちゃんになるわけじゃん」

 

「赤子になっても自由に動けるとかないのか?」

 

「む……無理よ、完全に変化元に脳も身体も多少引っ張られるから」

 

 まどかがほむらとしてやった行いがあまりにも不可解すぎて話がまとまらないし当の本人が無言を貫き通している。

 あまりにもカオスな光景だったが、うてなはというと怒りが引いてきた。

 

「なんか……怒る気もなくなってきちゃった」

 

「え?」

 

「それでいいのかようてな!?こいつの中身、あたし達を見捨てたやつだぞ!?」

 

「ああ〜……それは分かってるんだけど……なんというか私にとっては生まれて間もない頃にいない人だし……別に育てられてないじゃん、私にとってはつばめ姉さんやかな姉さんの方がよっぽどお母さんだよ」

 

「う……うてな」

 

「だからさ、まどかさん」

 

 本来なら屈した魔法少女に向けられるような重い目線を向ける、怒っていないが軽蔑していないとは言ってない。

 めちゃくちゃ許してないから何も言わないことにした。

 

「貴方はもういないんです、貴方は私の妹の柊ほむら、魔法少女は絶対に正体を明かさないように一度変身したらほむらのままでいでください……死ぬまで、そういうものですよね?変身というものはそれだけ責任があります……違いますか?」

 

「う、うてな……ね、ねえさま」

 

「はい、そうです、貴方のお姉ちゃんのうてな姉さまだよ」

 

「ま、うてながそういうのなら、あたしはそれでいいけどさ……あたしからしても、魔法少女アニメの名前からとんでもねえキラキラネームつけるようなやつだし、今更母親ヅラされても乗れないし」

 

「アタシのママもこんくらいのサイズしてるぞ」

 

「キウィっちのママはありのままで可愛がってくれるしその上でずっと育ててくれたんじゃん?でも今からほむらは、自分のことを母親だと思ってる精神異常末っ子!それでいいじゃん」

 

 姉妹達にとって力を合わせて過ごしてきた生活が長かったこともあり、うさぎ、どれみ、なぎさも別にまどかとかどうでもいいな?という気持ちがあったしどんどん外堀が埋まっていく。

 しかし肝心なのは妹たちの逆境を命がけで守ってきた、かなとつばめがどう思うかだが……かなはやはり冷静になりながらも受け入れられない状態だ。

 

「……変身術が使えるんですよ?私はともかく妹達はもしどのタイミングで使われるか今後警戒しながら生きていく必要があるんですよ!?突然人生を奪われるみたいなものですよ!?」

 

「いいえ、その心配はありませんよかな」

 

「姉さん……心配ないって、相手はほむらじゃない!!私たちを捨ててのうのうと赤子ごっこして!!それで何も言わずだんまりしてるような、はっきり言ってクズだ!!」

 

「……みち子さん、あらゆる技術が魔法少女の魔力に統合されたのはですね、これまでが欠陥だらけだったからです」

 

「それはそうだな、電法1つにしても人間の身体がもたん、変身法含めて魔法少女がこんなリスクの高い物を使うと思えん……」

 

 柊まどかを仮に20歳でつばめを産んだとして、うてなが生まれてから更に1年後には35歳……そこから一気に0歳まで若返り、13歳……しかし腐食したまま50代近くの内部が残り続ける。

 幸いなのは、かなが詳しく読んでいなかったことだろう、つばめは三人を見る。

 

「事情はみち子さんからお聞きしましたよ、おいくつだったか覚えています?」

 

「……私と同年代の幹部しかいないので、20代そこらじゃないですか?」

 

「えっと……この身体になってからは大学くらいを想定しています!何か……まずかったですか?」

 

「いえ……そのなんといいますかね、変身術って他人にも使えますけどその制約が自分にかけられるってちっちゃく書いてあるんですよ」

 

「……え!?」

 

「確かに書いてあるな」

 

 田中がネモから本を借りて読んでみると確かにすごく小さいがそれらしい記載がある、肝となるのは腐食した肉体は死んではいないこと、機能を完全に変身後に押し付けただけであくまで変身、元の身体は同じなのだ。

 キウィとこりすの頭にはハテナマークが浮かぶことになるが、うさぎが助け舟をする。

 

「よーするに、実際はほむらはママとしての年齢のままなんだよ、つば姉いつ産んだかは分かんね〜ままだけどさっきの例え通りなら49歳」

 

「あくまで例えで実際は50以上もあり得る、変身どころか実態は玉手箱を空けたしわくちゃのババアってわけだ」

 

「うぐっ!!」

 

 ほむらは血を吐く、身体がバキバキと崩れそうな折れそうな感覚に陥った、これは例えるならまるで経年劣化……。

 かなもつばめが何をいいたいのか分かった。

 

「……もしかして、他者に変身術を使ったら何かデメリットが?」

 

「書いてあるな……他者を無理矢理変身術で年齢を変えた場合、その差の数値分自身も年を取るとある」

 

「なんだそのカードゲームの特殊効果みたいな仕様!」

 

そして誘拐されたはずなのにそれらしき人物がいないということは変身術を使ったということに他ならない。

 おそらく複数人規模、人間にせずとも虫けらやトカゲにしてるかもしれないが人間に変えた場合そのしわ寄せがこの誘拐事件で一気に来る。

 そう、想定とは違いながらもヴェナリータの「邪魔な柊ほむらを始末する」は結果的に成功したことになる。

 もう変身術は使えない、柊まどかの実年齢は恐らく80超え、幼い少女の内側には見るに堪えない老婆が詰め込まれているだろう。

 この状態で娘に何かしようものなら……老衰という危険性がある。

 

「……は?ははは!!つまり自業自得で死んじまうのか、そうかそうか!!……姉さんはそれで納得がいくの?」

 

「いきませんよ……私たちのかわいいほむら、入れ替わってるんじゃないかと思いたいくらいには…………はぁ……まだ、受け入れるには時間が……かかりそうです」

 

 今回の件ではさすがにつばめでも堪えたのか口数も少なくなっていた。

 ほむらを気にかけて一緒に追いかけた魔法少女3人も……柊家の想像以上の闇に立ち尽くすことしか出来ない……が、こんな時に言うことではないとはいえ自分たちにも用件があったことを思い出した。

 

 

「あの……こんな時になんですが、実は……」

 

「ええ……なるほど、姉さんや田中さんから話は伺ってますよ……またあとで」

 

「話は終わったか?そんなやつはいいから行くぞ」

 

「行くって、どこへ?」

 

「慰安旅行はまだ始まったばかりだぞ?……こっちは全員分の水着代買ってやったんだ、いずれその分を返してもらうためにも今は楽しめ」

 

 田中はそう言ってまた浜辺の方に行くが、今更になって遊べるなんて雰囲気になることもなく……。

 柊家はその後、あまり会話をかわすこともなく眠りについた。

 きっとこれは何か悪い夢だと思いたかったから……。

 その日の真夜中、はるか達3人が監視の上でかなと話をする。

 

「ふーん……そうですか……それはなんというか、私のせいでご迷惑をかけたというか……」

 

「まあなんとなく察しはついとるがクロノス・シンジケートに戻る気はないんやな?」

 

「元々利用するだけの1次職、時を止める魔法が完成すればちゃんとした仕事につくために頑張ってたので……なんならひいらぎのコンサルというのも悪くないかもですね……へへへ」

 

「じゃあやはり持っているのね……時間を止める魔法」

 

「あるにはありますけど、皆さんが想定しているものとは違いますよ……」

 

 かながポケットから取り出したのは古臭いガマグチ財布、ばちんと中を開けるとブラックホールや小宇宙のように吸い込まれそうなほどの光を放っている、見ているだけで自分の魂まで中に取り込まれてしまいそうな神秘性を感じる。

 これが時間停止の魔法……ただし、クロノス・シンジケートが実用性がないと判断したもの。

 

「これは一体?……」

 

「財布ですよ、財布……この中に時間を溜め込むんです、まあ……簡単に言えば未来となる時をここに詰め込むんです、その間だけ我々は時を過ごさなくても良くなる」

 

「ああ、貯金すればその間だけ時が止まるって理屈やな……確かにこれ使いにくいわ……んで、どれだけ時を持ってったんや?」

 

「そうですねぇ……100年くらい?」

 

「ひゃ……ひゃ、百年!!?それってつまり!?」

 

「ええ、貴方達も認識してないだけで百年以上生きてる……なーんてのは冗談、そこまで融通は利きませんよ」

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