悪の柊七姉妹 〜この中に一人、悪魔がいる!〜   作:黒影時空

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ここからGeminiに表現してもらうようになりました。


第23話「決戦!!」

 凍てつくような風が頬を切り裂く。

 上空数千メートル。魔法少女としての身体能力がなければ、即座に意識を失っていたであろう高度から、トレスマジアの三人は「世界」を見下ろしていた。

 

「嘘……これ、本当に日本なの……?」

 

 マジアマゼンタの声が震える。

 眼下に広がる光景は、彼女たちが教科書やテレビで知っている日本列島の姿とはあまりにかけ離れていた。

 かつて四国と呼ばれていた場所は、深い紺碧の海に飲み込まれ影も形もない……1200年という時の流れは、地形そのものを変えるのに十分すぎたのだ。

 視線を北へ向ければ、先ほど訪れた北海道の白い大地。

 だが西へ目を向けた九州地方もまた、不自然なほどの白銀に覆われている。

 

「九州地方は急速な気候変動……いえ、時間の加速による寒冷化が進み、氷河期が到来しているようね……とても現代の日本には見えない」

 

 マジアアズールが冷静さを保とうと努めながら、分析結果を口にする。

 そして彼女たちの住む街に比較的近い中部地方。

 そこには雪こそないものの……緑が極端に少なく荒涼とした大地が広がっていた。

 

「中部地方は……深刻な飢饉、いえ、土壌そのものが枯れ果てていますわ。数十年単位で養分を吸い尽くされ、再生する時間すら与えられなかったかのように……これが今の世界、私から見てもドン引きものですわね」

 

「メチャクチャやないか……! こんなん、世界が終わっとるのと一緒やろ!」

 

 パンタノペスカも引いてマジアサルファが怒りを露わにするが、その拳を叩きつける場所もない。

 世界は滅びているのではない。歪に、残酷に……特定の場所だけが搾取され捨てられたのだ。

 

「世界征服……。エノルミータやクロノス・シンジケートが掲げたそれは、全てを支配することだけではなく……全てを『利用』できる状態にしても成立するなんてね、徹底的に出姿を見せないわけだわ」

 

 アズールは、先ほど聞いた「財布」の機能を反芻し、1つの仮説を導き出していた。

 

「トゥエルブ……柊かなが開発したというあの財布。あれは単に時を止める道具ではなく時間の『銀行』のようなものと考えたわ」

 

「銀行……?」

 

「ええ。時間を『貯金』するには、どこかから時間を『引き落とす』必要がある。例えば、各地域を座標A、私たちが住む街を座標Bとするわ。座標Aの時間を100年分奪い取り、それをエネルギーとして座標Bに100年分の猶予……あるいは停滞を与える」

 

 マゼンタは息を呑んだ。

 自分たちが平和に、何事もなく過ごしていた「日常」は、外の世界の「未来」を食い潰して成り立っていたというのか。

 北海道が、四国が、九州……いや、下手すれば世界各国が犠牲になり、その分の時間が自分たちの街に注ぎ込まれていた。

 あるいは自分たちの街の時間を止めるために、周囲の世界だけを猛烈な速度で回転させたのか……

 どちらにせよ、結果は同じだ。

 

「そんな……それじゃあ、私たちが守ろうとしていた街は、世界の犠牲の上に成り立っていたの……?」

 

「その技術の源流を作ったのが、今はエノルミータにいるトゥエルブだと言うなら……」

 

「この件に関して貴方達には何の非もございませんわ、むしろ話を聞く限りトゥエルブ並びにクロノス・シンジケートを引っ張り出したのはかなりの貢献ともいえますわね」

 

 マゼンタの中で葛藤が渦巻く。

 現在、その危険な技術者はエノルミータの管理下にある。

 ならば、エノルミータを倒しトゥエルブを確保するべきなのか?

 だが、エノルミータにいるトゥエルブはうてなの姉、彼女の家族と本気で殺し合うことになるのか?

 それにこの惨状を作り出したのはトゥエルブの技術だけではない……もっと以前からクロノス・シンジケートという組織が暗躍していた。

 サルファが、苛立ちを隠せない様子で、案内役の少女――パンタノペスカの胸倉を掴み上げた。

 

「おい、お前! ええ加減全部吐けや! お前、ほんま『パンタノペスカ』柳井言うたな? 未来から来た魔法少女や言うても、あまりに事情を知らなさすぎるし、逆に今のこの惨状には驚いとったな。どういうことや!」

 

 掴みかかられても、少女の表情は変わらない。能面のような冷たさで、彼女は静かに答えた。

 

「……訂正するよ。私……いや、なんというか俺は未来に存在する『パンタノペスカ』という魔法少女の、名前と外見情報を借りて顕現しただけの別の存在だ、といっても本来は少し後もすればお前たちも会う予定だけどな」

 

「はぁ!?」

 

「本来の俺の目的は、歴史の修正……というか、観測?とはいえこの件は完全に想定外だよ。俺たちが認識していた歴史の歪みよりも、遥か以前から……あなたたちの時代よりもっと前から、この世界は『時間』を食い物にされているという緊急事態が起きていた」

 

 パンタノペスカの姿をしたナニカは、淡々と続ける。

 

「クロノス・シンジケート。彼らが元凶であることは間違いない。とはいえ、ここまで徹底的に世界を資源として使い潰しているとは……」

 

 マゼンタは拳を握りしめた。

 もし、この事実を公表すればどうなる?

 「あなたたちの住む街以外、世界はもう滅ぶ寸前です」なんて誰が信じる?

 信じたとしてパニックは避けられない。暴動が起き、絶望が蔓延するだけだ。

 

(エノルミータは……ロードエノルメは、これを知っているの?)

 

 テレビで堂々と宣戦布告したロードエノルメは本気で世界征服を目指しているように見えた。だが、征服するべき「世界」がもう残っていないとしたら?

 いや……もし知っていて、それでもなおこの街を支配しようとしているのなら、彼女たちもまた同罪だ。

 だが今は違う。

 エノルミータは少なくとも今はまだ、街の中で「ごっこ遊び」の延長線上にいる。

 しかしクロノス・シンジケートは違う。彼らは明確な悪意を持って、世界を壊した。

 

「……ねえ、二人とも」

 

 マゼンタは顔を上げ、決意の光を瞳に宿した。

 

「このことはまだ誰にも言えない。市民の人たちにも、もしかしたらエノルミータにも」

 

「マゼンタ……?」

 

「エノルミータがトゥエルブを引き抜いたのがこの事態を把握してのことなのか、それとも単なる戦力増強なのかは分からない。でも今あたしたちが動かなきゃいけない相手は、はっきりしてる」

 

 マゼンタは、眼下に広がる荒廃した日本列島を見据える。

 

「クロノス・シンジケートを叩こう。あの組織がこれ以上時間を奪うのを止めさせなきゃ……たとえ、もう手遅れだったとしても、これ以上未来を奪わせるわけにはいかない!」

 

「……そうこなくっちゃな。ウチはどっちが先でもええけど、ムカつくやつからぶっ飛ばすのが一番スッキリするわ」

 

「合理的ね。エノルミータとの決着は、世界の時を正常に戻してからでも遅くはないはず。……戻せる保証はなくても、このまま何もしないよりはずっといいわ!」

 

 トレスマジアの意見は一致した。

 残酷な真実を胸に秘め、彼女たちは再び動き出す。

 止まった時の中で遊ぶ悪の組織と、動きすぎた時の中で世界を食い潰した真の悪。

 魔法少女たちの本当の戦いは、ここから始まろうとしていた……。

 

「そんで未来人、念のためクロノス・シンジケートのIDは作っといたから後は乗り込むだけとアンタを頼りたかったわけなんやけど」

 

「さっき事情は聞きました……そろそろ口調を直しておくか、時間を超えている間に俺の未来のことを話しておくか……いでよソラ!!」

 

 パンタノペスカを名乗る存在は空を掴んで広げるとバーチャル空間のようなものが広がり、中に入っていきそれを追いかける。

 その存在が話す……未来のターニングポイントとなるのは、やはり田中のことらしい。

 

「田中は近い将来、魔法少女達を引き入れて魔法少女専属事務所『イミタシオ』の所長となる、パンタノペスカはそのうちのメンバーの一人で出自不明の謎の魔法少女、イミタシオを見つけて『シオちゃんズ』を結成する……俺が見た歴史はそんな感じだ」

 

「つまり、田中さんはあたし達の仲間……新しい魔法少女チームを作るために必要な存在だったってことだよね」

 

「目元の傷跡で焦ったのもそれが理由なのね?」

 

「ああ、シオちゃんズ結成後に負傷して顔に傷跡が残るって聞いたから……この時点で破綻してることになる」

 

 この人物も何もしていなかったわけでもない、必死にイミタシオ……本名『忌田シオン』を探していたのだが、結局この日までシオンを見つけることは出来なかったが無理もない、この状況では誰が探しても絶対にシオンに会うことは出来ない。

 何故なら誰も知らないから、本人すら知らない。

 イミタシオとロードエノルメ……田中は同一人物であることなど……。

 しかし事は思うように進まず、捜索の途中で世界各国が異常が起きたことを察して捜していたというわけである。

 

「……そもそも、貴方は何故この時代に?」

 

「実を言えばあいつは何をしてるんだろうと思ってな……簡潔に言うと、俺より先にこの時代に来た奴がいる、まあライバルみたいなものかな……そいつが色々手を尽くしているんだからここまで酷いことになるなんて」

 

 どうやらパンタノペスカを名乗るものよりずっと前から別の人物が過去に現れて手を出したらしい、色々話してくれた……自分より技術があって、賢くて……英雄のようだったと。

 しかし……そんな人物が敗北してしまった?いや、或いは……該当してる人が思いつかないので、聞いてみる。

 

「その人ってどんな……」

 

「あっ、そろそろクロノス・シンジケートのアジトがある時代だよ」

 

 しかしマゼンタが聞く前に目的地にたどり向いたので、今は堂々とクロノス・シンジケートを叩き潰すことにしたが、3人は確かに感じ取っていた。

 未来人がライバルについて話をしている時のそれは、口ぶりは尊敬しているようにも感じられたが……深い闇のようなものも感じていた。

 恐らくあと数時間もすればクロノス・シンジケートは完全に壊滅する、元々戦闘が得意な組織ではなかったのだから百戦錬磨のトレスマジアなら余裕であろう……。

 

――

 

「はあああああ!!?」

 

 一方で……ロードエノルメの方もようやくルベルブルーメの調査によって自分の住んでいる街以外の酷い惨状を知った、世界征服しようにも殆ど亡きあとになっているとあれば狼狽えるのも無理もない。

 しかしそれが分かると不思議だったこともおかしくなくなる……宣戦布告してきたというのに外国はミサイルを飛ばしたりとか抵抗することもなかった、もう存在しているかも怪しかったから。

 シスタギガントの魔力がすぐに切れたのもそうだ、あれは巨大化の消耗が激しかったのではなく時の流れ……厳密には進んでいる感覚が大きくズレたことによる弊害。

 

……さらに言えばあの任務のあと全くシスタギガントを見ていないのだが、まさかあの中で骨も残らず寿命が尽きてしまったのか?それだけはないと信じたい。

 問題はそれを作る柊かなだ、あの時間を奪い取る財布……たった一つなら百年貯めてちょっとずつ返すと他の人物にも言ったような本末転倒の欠陥品だろう。

 だがそれが10個、100個もあれば話は別だ……一方的に兵器も必要とせずに文字通り時間を奪い、周囲を壊滅させて……自分達の空間だけその有り余る時を独占させる。

 ……意味が分からない。

 

「家族円満に過ごすというのは分からなくもない……だがあの量、あの時間は……」

 

 10000時間以上、そうとしか思えないほどの搾取された時の流れ……それだけの時間を一つの家族の為に使う必要制がどこにある?

 人生なんて100年若いままでも足りないくらいだ、これだけの悠久の中で何を過ごしていくことに意義があるのか!?

 悪魔じみた発想、しかしかなは悪魔ではない……それが厄介だ。

 ……柊七姉妹をロード団に隔離したのは、緊急会議を開くときに邪魔されないようにするためでもある。

 

「柊家には悪魔が潜むというのは……あながち都市伝説でも無いようだ、奴らの溜め込まれたエゴイズムは到底世界に扱い切れるものではない」

 

「謎が分かるのはいいんだが、とんでもねえ地獄が待ってたもんだな……なあさ、アタシら世界征服達成したところで何の意味もないんじゃないのか?」

 

「ふざけたことを言うな!我々の世界征服は真なる世界の調律、世直しをもって改めて征服といえる……そう、ヴェナリータに言われてエノルミータが始まったんだ」

 

「アレまだ本気にしていたんだ」

 

 かなのやり方は実のところロードエノルメの最初想定していた世界征服とも大きく反れるような形になり相容れない。

 とても肯定出来ない、それどころか最初から分かっていたのであればとてつもない下衆……長年嫌がらせを受けてきたのもあり、エノルミータ側としても偶然ヴェナリータが連れてきたのが彼女の身内で、目に届く範囲まで引っ張り出せたのは幸運のように思える。

 そして問題は今後、どのように立ち回っていくのか……を考えている時、こりすが何か言いたげだ。

 

「ん!」

 

「結局悪魔は誰なのか目星ついてるのかだそうだ」

 

「確かに……一応身内になるんですよね?」

 

「本当にあくまで身内って形だが……柊家のなかに一人悪魔がいる、そういう触れ込みだが……私から見てみればもう手遅れのように感じる」

 

 腐ったミカンの例えのようなものだ、腐ってるミカンをミカン箱に入れたら普通のミカンも1つ残らず腐らせてしまう。

 学園ドラマではみ出しものを引き離す際などで聞き飽きたフレーズだがこの件で言えば間違いでもない。

 一般的な目線で見れば上から下まで全員腐っている、誰が悪魔なのかは分からないが……もう既に侵食して全員まとめて異常事態、誰が始点だったとしても現在同じ状態、腐ってしまえば食えたものではなくなってしまう。

 だから結論としてはもう全員悪魔だ、手遅れなんだ。

 腐ったミカンはこれ以上被害を被らないように他所に置いておくしかない。

 誰かが悪かったわけでもない、もう既に腐っていたものを見つけてしまっただけだ。

 ただし……。

 

「仮に悪魔を『柊うてな』だとして意図的に腐ったミカンに変えた奴が存在することは確かだ、どこの誰とも分からないし目的も不明。しかし確信できるのは我々の目的を果たすうえで最後の脅威となる、魔法少女から見てもそれは同様だ」

 

 ……こちらも調べがついた、何者かによって情報が殆ど消されていたので調べるのは苦労したがなんとか見つかった。

 14年前、この街で赤子を誘拐された事件が本当にあった……しかも盗まれた家族はたった2日後に失踪、それも家丸ごと最初から無かったかのように消し飛んでいる。

 まるで、柊うてな以外の余計なものを消し去るように……この頃から運命が歪んでいたのなら、その存在は本当に恐ろしい。

 つばめは自分の親のことを神様だと言っていた、間違いではないのだろう……指一つでなんでも思い通りにして、気まぐれに迷惑をかけて、正しいと思っている。

 ロードエノルメは理解した、世界を支配することは一歩間違えたら自分を神と錯覚してしまうことに繋がる。

 悪の組織である自分が言えたことではないが……とても、ああなりたくないと思った。

 

 その話を聞いてからキウィも浮かれない顔をしている、もともと強い承認欲求を拗らせてエノルミータにスカウトされたのだが……自分の思うがままに生きてきた末路はそんな風なのか?

 それに……。

 

「もしそんなことが無く過ごしたらさ、あいつとの付き合い方も変わってたのかなって思ったんだよ」

 

「そんなこと考えても無駄だ……それより今優先すべきことは、考え方を変えれば敵は限られてきたということだ。」

 

 正常に機能しているのはたまたま柊家と同じ街で生活してきた自分達エノルミータと……そこで活動している魔法少女のみ。

 恐らくトレスマジアがこの事態に気付くのも時間の問題か、あるいはあの未来人が接触している以上既に把握している。

 そして、クロノス・シンジケートは戦闘力がないことは聞いている……トレスマジアが先に潜入できたなら木っ端微塵に消し飛ぶことだろう。

 ともなれば……自分達の脅威はトレスマジアのみとなり、トレスマジアの敵も自分達だけだ。

 

「もう一回電波ジャック出来るか……そろそろ決心する時が来た」

 

「ヴェナリータには伝えない感じか?」

 

「どうせ断るだろう、今の我々なら出来る……というより、もたもたしていればトレスマジアの方から攻めてくる……エノルミータ全幹部に告げる!!地球全土の荒廃により大打撃を受けているが我々世界征服の野望は揺るがない!そして!この街で我々の邪魔をする物はトレスマジアただ一つと定義した!!」

 

 

「エノルミータは人類最後の魔法少女トレスマジアに最後の戦いを仕掛ける!!」

 

 

 ロードエノルメは部下を全員引き連れて時空を超えナハトベースを超える、唯一無事な街でトレスマジアと決着をつけるときが来た。

 というよりは……終わらせざるを得ない。

 同じ頃……ちょうど会社の全てを木っ端微塵に吹っ飛ばしておいたマジアサルファ。

 

「抜かりはないなお前ら?」

 

「ええ……システムの奥にも入ってデータを全部消しておいて、バックアップは回収した……」

 

「壊滅させるとは思ってたけどこんなあっさりとなんて……びっくりですわ」

 

「それでマゼンタどうする?エノルミータを倒しても、世界が元に戻る保証はない、問題は山積みや」

 

「……世界征服が成功しても、それから扱い切れる?」 

 

「それは……」

 

「その件は……」

 

 

「今考えてもしょうがない!!」




パンタノぺスカの正体は小説カキコ時代のあのキャラです。
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