「えええ!?エノルミータがトレスマジアと戦うですって!?」
「うん、君等には全く伝えてないけど」
「酷くね!?あーしらだってエノルミータの一員じゃねーかってんだ!ミッチー省きやがって!!」
「正確には……エノルミータの下儲けみたいな立場の『ロード団』ですよ……」
そして遂にトレスマジアとエノルミータの最終決戦?が始まる、決戦というよりはお互い後が無くなったようにも例えられるがある意味元凶である。
現在彼女たちはまさに雑用係……どころか下手したらそれ以下、小さなちゃぶ台のようなデスクで内職じみたことをやらされる。
これらをコツコツとこなしてエノルメポイントを貯めて、それらを交換して粗品と交換したり仕事を与えてもらえるというのが現在のロード団のシステムだ。
もちろんこれもロードエノルメが柊家を抑え込むために思いついたものであり、下手に何もさせないよりもちょっとした仕事を与えてメリットも用意する。
これによって、不満を貯めることなく立場に納得させるという急ごしらえにしてはうまくやった方だ。
うてな及びマジアベーゼは結構幹部やってるので初期ポイントは高いのだが学生生活しながらコツコツと稼いでいるので、魔法少女と戦うのも精一杯だが……。
「まあ気にすんなってうてな!うちらに時間は山ほどあるんだからさ!」
「時間はあってもトレスマジアが終わるかもしれないんですよ!?私は別に魔法少女にやられてほしくない!!」
「そうは言っても、それを決める権利はファンのお前にはないぞうてな、向こうも真剣に戦ってるんだからな」
「そ……それはそうですけど……」
今回の件はうてなにとっては死活問題だ、自分達が壊滅してもエノルミータが勝ったとしても……どっちにしてもトレスマジアはなくなってしまう可能性が高い。
街の外の惨状をうてなは知る由もないが、魔法少女の存在しない世界で悠久の時を過ごしてもそんなものはただの生き地獄だ。
一時期は魔法少女のことが好きじゃなくなってしまったのかと悩むことはあった、だがそれでも……トレスマジアがいなくなってしまうのは嫌だ!!
「でもどうすれば……戦いを止めるにしても、今止めても先延ばしにするだけだし……負けるように仕向けるというのも難しいし」
「ボクとしては君がどうにでもなってくれた方が良かった、最初から目を付けていたのに……ボクよりずっと先に目を付けて唾を付けた奴がいる、ボクがどんなに手を付けてもどうにもならなかったほどだ、まるで末期ガンのようにね」
最近、ヴェナリータがあまりうてなに構ってくることはそんなになくなった、どれみやなぎさ達は自分達が魔の手を祓ったと喜んでいるがうてなには分かる、ここまで過ごしてきた中で散々味わってきた。
『もういいや』そんな感情。
興味はあった、関心もあった……でももういい、自分が何をしても無駄なくらい手遅れ、昔からそんな風に人が離れていった。
そう、ヴェナリータだけじゃない……キウィもそう思っている事は察しがついている。
今の自分では……。
「迷惑かけるならまず家族から、ですよ……うてな、何をしてほしいですか」
「ボクが特別何かする必要はないみたいだね、うてな……だって、今の君にはそのレベルが御似合いだから」
まあ時間はいくらでもある、好きなように生きて好きなことで過ごすことは変わらない。
柊姉妹が何をするとしても、自分達には関係ない……本格的に関わるまでは。
だが気になるのは、誰がうてなの人生をここまでねじまげたのか……それが出来るのは誰なのか?
「悪魔……か、そんなものまで事前に仕込んでいたとしたらとんだエンターテイナーだ、一体どこの誰が僕以上にうてなに望んだのだろうね?」
――
「あ……あの、ここ……寒いんですけど……」
「北海道はこの時期よう冷えるからなあ……」
サルファ達は最後の仕上げとして簡単な物資だけ置いてはるさめ達を北海道に置く、忘れちゃならないのが彼女たちは変身術で家族のフリをして近づくという経緯はどうあれかなり恐ろしいことをしている上に別に裏切ったわけでもないしっかり敵側なので落とし前は付けておく必要はある、ケジメはケジメ。
……というよりは、何故なあなあにして味方扱いしてもらえるのかという能天気にも程がある連中だ、しばらく人前に姿を現さなくて平和ボケしていたのだろうか。
改めて、元の街の状態を見て……エノルミータ総帥ロードエノルメがトレスマジアに宣戦布告したニュースを知る。
ロードエノルメは自分達を人類最後の魔法少女といっていた、つまり外の状況は理解していることにある。
計画は最終段階に入ったか、あるいは世界征服をしている場合ではなくケリをつける段階に入ったわけか?
どっちにしても、この戦いで終わってしまうような気がするが……当然、マジアマゼンタはこの結果に乗り気ではない。
「悪の組織を倒して世界を救う、それがあたし達魔法少女の役目……なのにあたしはこんなことになってることも気付かないで!皆が毎日を穏やかに過ごせるように過ごせないこんな世界じゃ、何の意味もない……」
「……鍵を握るのは3人が聞いた情報だな」
柊かなの作り出した財布は最大100年しか貯蔵できない、変身前の自分達に対しては1つしかないことを前提で説明していたので貯まるたびにちょっと返すと語っていた。
これはあくまでそういった表現の可能性もあるが、もし財布を全部手に入れたらこの狂った時の流れも止められるかもしれないが、それでも現実的ではないと思ってしまう。
こんな世界滅亡間近の状況を把握しているなら、いくらエノルミータといえど多少時を戻してもおかしくないからだ、現代人が荒廃した世紀末で王者を気取るほど馬鹿なわけない……。
だが、マゼンタは諦めたくなかった、自分たちは知らなかったからこそ世界を元に戻したい。
その一方でロードエノルメも進軍の前にロード団を詰め込んでおいたスラムのような溜まり場に向かう、しかし鍵を開けてみると中はも抜けの殻……!?
しくったか、そう思った……あの財布について交渉することは分かっていたのか?だが、逃げられないようにしていた……別次元に置いていたから。
だが見誤っていた……。
「……私は柊つばめの事を甘く見ていた、家族第一の奴がこんなリスクの高い作戦は取らないと思っていたが……!!」
「え!?あいつらどこ行ったわけ?」
「知るか!!ひとまず向かうぞ!!」
柊家が派手に動いたら何をしでかすか分からない、大急ぎで柊家が居そうな所へ真っ先に移動。
あまり電法は使いたくないのだが使えるとしたら電法ワープしかない。
だが考察している余裕はなかった。
「うお臭せぇ!!」
いつも、つばめが趣味感覚で活動していた大衆食堂ひいらぎ……多少寂れているし客も滅多に来ない、ほぼ自分やうてなのクラスメイト達の溜まり場で、変なものばかり出して……それでも忘れられない思い出で、遠からずバカみたいな場所と思っていた。
だが……まだそんなに経っていないはずなのに、確かにボロボロだったが最低限店の体制は保っていたはずのひいらぎはボロボロの潰れかけのようになって、仕込みのスープはこの世の物とは思えない色、冷凍して食べてくださいと置いてある料理はもはや別物……まるでヨモツヘグイ。
「なんだこれは……幻覚でも見ているのか?」
「ん!」
「なっ……なんですって!?ルベルが調べたら……柊家があった場所、今跡形もないですって!?」
「何!?そ……そうか!!日本列島を巡れ!!その中で発展しているところだけを探すんだ!!」
前提が間違っていた、時間の奪い方に関してはロードエノルメも同じ考察をしていたが……座標Bの場所が違う!
何百年分の奪った時間の出力先は自分達の街ではない、物理的に柊姉妹の周辺。
何故ならロード団に任命してから柊姉妹は家に帰らせていない、ナハトベースのすぐ近くにスラムを建ててそこで寝泊まりさせていた!
つまりあの街にも時間の影響が及び始めて、この始末、そして戻ってくれば街は元通り。
電灯が特定の範囲だけ照らしているようなもの……。
「奴の言う神様という奴は、随分融通が利かないようだな……」
「神様を悪く言っちゃいけないよ、生きていけるのは神様のおかげなんだからね」
廃墟のひいらぎ、錆まみれの厨房で木片が奇跡的に形状を維持しながら座っている謎の存在。
よく笑っているが怪しい雰囲気、レオパルトは銃を構えるがロードエノルメが制止する。
「お前は……神様、いいやこんな例え方をしたくない、柊うてなを……」
あの時、柊まどかと接触して。
あの日、数々の姉妹を失敗作として捨てて。
あの年、赤子だった柊うてなを誘拐してすべての運命を変えた。
言ってみれば全ての元凶、ロードエノルメもトレスマジアを倒したあとに牙を剥くことを想定していた存在。
通称『神様』。
「変な言い方するね、ただの廃墟マニアかもしれないのになんで俺を神様って言い切れるの?」
「そうだな……私も何故こんなものが確信になるのか分からないし、言ったところでどうかしてると思う、お前らも冷静になって思い返してみろ」
「…………私は不思議なことに生まれてからずっと、『男性』というものを見たことがないんだ」
この世界には、『男』を見ることはない。
何を言ってるんだと思うかもしれないが考えてみると確かに記憶にない。
レオパルトもネロアリスもロコムジカもルベルブルーメも……両親のもとで生まれ育ったはずなのに記憶にない、けど確かに存在はしているはず。
ヴェナリータ……は人外だし性別の概念があるかも怪しい、男を見たのは目の前に居るこの存在が初めてだ。
それを聞いて男は笑い出す、馬鹿にしてあっけにとられるというよりは本当に想定してなかったようなアドリブを楽しむ笑い方だ。
「そうか!だから俺は存在できなかったのか!じゃあ認めるしかないじゃん!改めて、俺は神様で……ここじゃ、『柊ふれい』でいいのかな、柊うてなの父親という役回りを演じさせてもらっている」
「黙れ、貴様ごときが『父』も『親』も名乗るのも反吐が出る……ちょうどいい、トレスマジアより先にお前と会えたのは好都合だ」
ロードエノルメは無慈悲に冷酷に手を振るい、溜め込んでいた魔力を全て解放させ即座に大量の怪物を作り出した、エノルミータ全幹部にも指示を出す。
戦闘態勢に入り遂に砕け散ったひいらぎを飛び越え、魔力から作り出した黒い怪物の群れを引き連れて一斉に突撃。
「総員、魔力を全部出し切れ……柊ふれい、あの異質な神を名乗る不届き者を亡き者にしろ!!」
ふれいは圧倒的不利の状況でも笑みを崩さず、まるで遊ぶように目を逸らさない。
この中に一人、悪魔がいる……但し悪魔は意図的に作られたものだ。
こいつがいなくなれば直接救われるわけでもない、だが神様気取りで良いようにされるのは悪者としても気に入らないじゃないか……。
――
その一方、トレスマジアはマジアアズールが何かに気付いたように懐から発信器のようなものを取り出すとすぐ近くで大きな反応を示していた。
「アズール、それなに?」
「電法レーダーよ、つばめさんの電法を用いたワープ技術を聞いたヴァーツが作ってくれたの」
電法で作成し発生する静電気の力は魔力で構成されているものと類似しているとわかり、レーダーみたいなものがあれば事前にある程度の移動先が分かるのではないか?と用意してくれたのがこの道具。
アズールが反応をする方に向けてみると確かにこの近く、それもかなりの出力だ……と、冷静に分析しながらも警戒を解かない
この近くで電法ワープを使えるのは……つばめと田中のみ、どっちにしてもとんでもない出力を叩き出しているので巻き込まれないように離れるとレーダーの通り、……田中が目の前でワープしてきたあの時のように強い稲妻と共に周囲が閃光に包まれて見えなくなる、しかもその時よりも遥かに強い電力と光だ。
「ぎええええ!!!」
「うげええああああ!!」
「いってええええええ!!!」
しかも悲鳴が響いている、電力による超光速移動はリスクが伴うものであり移動の先に切傷のようなものが出来てしまうからだ。
……しかし、発せられる悲鳴は何個か聞き覚えがあった。
「うわ最悪!!顔に出来てんじゃねえかよ傷!!これメイクで落ちるか!?」
「いいだろ顔なんて個性になるから!あたしなんか後ちょっとで首いくところだったぞ!」
「首は本当に致命傷になりえますからね……ほら止血剤用意してますよ」
「お腹!!ちょっと横っ腹を不意打ち気味に切られた感覚……つばめ姉さん私にも包帯出して!!」
「あっやべぇほむらが息してない!!というか私尻切られたかもしれない!!」
……なんと、そこには柊姉妹が全員集合。
ロードエノルメの想定外、それは柊つばめが……大事な妹たち全員に電法ワープを教えるはずがないと認識を誤っていたこと。
あの後全員は見事に電法を覚えて……トレスマジアの所まで一気にワープしてきたのだ、次元すらも超えて!
だが、それはつまり姉妹のうち半分が堂々とトレスマジアの前に現れたことになる。
うてなはマジアベーゼの姿とはいえ、うさぎやつばめなど何の変身もしていないものもいる。
だが……目的のトゥエルブが目の前に現れてくれた。
「トゥエルブ……いいえ、柊かな!!」
「ん……ああ、いつかぶりのトレスマジアですね……なぎさがめちゃくちゃやった時以来ですか……」
かなはこんな時でも能天気な反応をしているが、しっかり自分がやってきたことに目を向けさせるためにサルファが掴み上げて顔を近づける。
「お前随分好き勝手やってくれたようやな……ああ!?よくもまあここまでしてくれたものや!」
「えっ……?どういうこと?」
なぎさ達は何が起きているのか分からない、それも当然で柊姉妹達がその場所に降り立った途端荒廃していた地域は時が元の時代に遡っていた、荒廃した景色を見ていないのだが当事者のかなは察していたのか掴みかかられても見下すように吐き捨てる。
「悪いですね、こっちは学力無い中で作り出したので無から有は作れないんですよ、まあいいじゃないですか旅行とか行く気ないし」
「てめぇオラァ!!」
「やめなさいサルファ……単刀直入に言うわ、貴方の持っている時間を奪った大量の財布を回収させてもらうわ」
「何故?私が悪の組織だからですか?我々の幸せを邪魔されなくないのですがねえ」
「周囲の不幸の上に成り立つ幸せなんてあっていいわけない!!」
「はあ……どうしましょうか皆さん」
「どうしましょうかじゃねえよ聞いたところお前のせいだから1個や2個くらいでいいだろ全部返してこい」
柊姉妹が揉めている中、マジアベーゼとしては結構久しぶりのトレスマジアとの遭遇と戦闘といきたいところだが、何やら互いに様子がおかしいと分かった。
トレスマジアとしては……マジアベーゼのすぐ近くに柊姉妹が揃っているということで、トレスマジアから見てマジアベーゼがいて、姉妹全員揃って、うてなだけがいないということはそういうことではないか。
認識阻害がかかっていてもメタ的な視線で正体に気付けないほど周囲も馬鹿じゃない、それ故に基本は身内にも正体を隠しているのだが……うてなの場合は勝手に向こうが調べてしまったのもあるとはいえ……だが空気を読んで、絶対に正体のことは口にしない。
マジアベーゼとしての違和感は周りに自分達以外誰もいないこと、エノルミータが本格的に動き出したというのに……。
「なんや、お前らエノルミータとしてウチらとやりにきたんちゃうのか?」
「あっはい、私はそのつもりだったのですがまだ来てないんですね……」
「あっマジアベーゼ……違いますよ、私は貴方の為にここまで来たんですから」
「どういうこと?」
トレスマジアのエノルミータの最終決戦、
どちらにしても善と悪のどちらかが欠けてしまえば、トレスマジアの終わりを意味する。
魔法少女オタクの妹には耐え難い現実、それを変えるために姉は考えた……この戦いを成立させなければいい。
つまり、永遠にトレスマジアとエノルミータが戦い続けられる環境を作ろうという。
なんともまあ、悪の組織らしい発想というか傲慢というか……これを妹の悩みを解決させているように語るのだから、度し難いものがある。
しかしそれに異を唱えたのは、トレスマジアよりも先にマジアベーゼであった。
「待って!!確かにトレスマジアがいなくなってほしくはないけど……それはさすがに無茶苦茶すぎるよ!」
「何も永遠とは言ってませんよ……飽きたら時を弄ってまた流れを戻せばいいんですから」
「でもそれって他所から持ってきた時間ってことでいいんだよね……それじゃあ、他の人達はどうなるんですか?」
「さあ?」
「だったら……だったらいいです!!役に立たない姉さんには頼りません!!!」
「ふざけるな!!」
初めてかなはマジアベーゼのことを殴った、前々から自分の仕事を台無しにされたら激昂するタイプではあったが身内に手を出したの姿は誰も見たことなかったので周囲も驚くが、すぐにどれみが拳を振り上げてスタンガンパンチを出そうとするがサルファに掴みかかられてかなと一緒に地面に叩きつけられる。
「姉妹喧嘩は他所でやれや!!」