悪の柊七姉妹 〜この中に一人、悪魔がいる!〜   作:黒影時空

26 / 26
最終話「トキノナガレ」

「……で、意気込んだはいいが勝てるのか!?」

 

「私一人で勝てるとは言ってませんよ!!」

 

「じゃあなんで来たんだ!!」

 

 マジアベーゼとロードエノルメが一緒になってふれいの連続攻撃を避けるのがやっとだが、ヴェナリータはぐるぐると周りを回ってベーゼ達の方を眺めながら呟いた。

 

「まだ迷っているのかい?考えついたのはキミじゃないか」

 

「何か考えていたなら早く言え!!電法もいつまで持つか分からんし、心臓マッサージで叩き起こすのにも無理がある!!お前がやれ!お前の責任でもある!!」

 

 さすがに限界近いこともありロードエノルメも大マジな顔でベーゼに問い詰める……思い詰めた顔だが、決心した顔でエノルメに言う、鍵を握るのはこの歪んだ歴史のなかで生まれた『電法』と『時を止める財布』である。

 ここから先は喋り続けたらふれいに怪しまれるので互いに電法を使える者として脳に電波を送って、擬似的なテレパシーを送るがマジアベーゼはついさっき教えてもらったばかりなので変えたばかりの携帯のようにおぼつかないが、相手が今いつまで遊び感覚で相手してくれるかに賭けるしかない。

 

「あの財布、本当に800個作ったんですね!?」

 

「はあ!?数えてるわけないだろ多すぎるわ!!」

 

「うん、きっちり800個揃っているよ……たいしたことにね」

 

「うっ……こんな状態ではコイツ直接脳内にってツッコむ余裕もない」

 

「君達でも出来るような事をボクが出来ないとでも思ったのかい?だが時間が無いからサクっといこう、ベーゼはその総勢800個の財布を一斉に破壊させるんだ」

 

時の財布は開ければ貯め込まれた時が開放されて元の時間が流れてくるという事だが、破壊という形で強引にこじ開けた場合は抑え込んできた時間が一気にあふれ出す為周囲にも影響を及ぼす、簡潔に言えば詰め込まれた100年の時間が爆弾のようになって周囲を包み込み、還ってくる時諸共周囲を逆行させる……それを一気に全部爆破させようということだ。

 時間は帰ってくるので荒れ放題になった世界も元通りになるが、それはつまり……。

 

 「尋常じゃないくらい危険じゃないのか」

 

 「尋常どころじゃないね、100年分でも確実に人を即死させられるがそれ全部となると合計で8万年分の時が一気に周囲に叩きつけられるわけだ、指一本でも巻き込まれたら分子レベルで周囲一帯ごと消えて無くなる、ちょっとブレたら街一帯が恐竜時代ってわけだね」

 

 「笑い事みたいに言うな!確かにそんなもの浴びせたら奴でも倒せそうだがただではすまないし成功するのか!?」

 

「大丈夫ですよ……こういう大事な時に絶対成功させるし、生きて帰るのがお決まりなんですよ……魔法少女みたいな正義のヒーローは!」

 

「なっ……そうか、マジアベーゼ貴様!!まさか作戦の引き金を魔法少女にやらせる気かッ!!」

 

――

 

 電法テレパシーの内容以外は全部うさぎのスマホを通して全部柊姉妹とトレスマジアに伝わった、ついさっきいてもたってもいられずマジアベーゼが電法ワープで飛び去って行ったが、あまりにも身勝手でムチャクチャな黒幕に唖然とするしかないのだが、自分達が奴に弄ばれる為に存在していると言われて黙って見ているはずがないし……何かあの神様の正体に心当たりがあった。

 

「おい、敢えてこう呼んでやるわ……パンタノペスカ!」

 

「言いたいことはわかるけど一応、はい来てやりましたわ」

 

「お前、クロノス・シンジケート通るときに自分より先に来た奴がおるとか言っとったな?」

 

「はあなにそれ、どう考えてもアレのことじゃんか」

 

「誤魔化す理由もないからはっきり言うけどそうだよ、あいつは……何をするにも俺以上で、だからこそ独りよがりで……だから各地でこんな惨状になって」

 

「待って……今の何!?各地って、まさかこんな事例が何個も……」

 

「いいんだよそれは!少なくともあの神様を名乗るアレだけがアンタらの敵なんだから!……ただ、アレを倒すにはまだ心持たない」

 

「心持たないって……そんな勝手な!」

 

 元はといえばあの神様が勝手なことをしているのが悪いのだから、なんとか追い出せないものか……だが映像で見てきたようにエノルミータの全勢力を遊び感覚で蹴散らしたような存在、真正面から戦ったところで勝ち目はないし……マジアベーゼとの戦闘も極力行わず進行していたのでトレスマジアも真化に進行するに至っていない。

 だが、何か決定打になるものでもあれば……。

 というところで、そういえば忘れてるかもしれない北海道で震えながらはるさめ達が雪まみれで姿を現す。

 

「あ……あの……理論上ですけど……百年貯めこんだ時間を詰め込んだ財布を一気に開けば、メガトン級の爆弾になったりするんじゃないですか?」

 

「それを800個一気に起爆すれば……まああのバカでもぶっ壊れるかもしれないか」

 

「なんやそれ!?つまり爆弾仕掛けて一気にドカンって、確かに倒せる気はするけど危険すぎるやろ!!」

 

「そうよ……800個なんてどこに用意してどこで爆発させたら……加減を間違えたら私達も巻き込まれるわ」

 

「……それでもやりたい!!危ないのは分かってる、でもあたしは試したい!これであの神様を止められるなら、あたし達の世界が元に戻るなら!!」

 

 マゼンタは少しでも賭けてみたかった、自分が守れなかった平和を取り戻せる可能性があるなら、確率が1パーセントだろうと命がけだろうと……魔法少女として出来ることをしたい。

 ここまで力説されてはアズールもサルファも……世界を救うために命を捨てる。

 問題は全ての時の財布をどう用意するか……だが、大きな渦が出たかと思えばありったけの財布がボトボトと落ちてくる……恐らく全部ここに。

 ……渦の後ろには、スーツ姿ではなくなり、みすぼらしい格好にはなったものの内面的な変化だった為に特に変化のない柊かなの姿が。

 

「はあ……私、これで責任取れるかわかりませんが……ツケは勘弁してください、改めて姉さんの結婚費用、稼がないとなぁ……」

 

 彼女はただ、働きたかっただけだ。

 その為に経歴をかなり間違った形で得てしまったわけだ……安易に禁術に触れた代償は大きい、近いうちにその償いをしていくことになるだろう……なんかすぐそこで見るも無残なヨボヨボの婆さんまでいる。

 

「何よこれ」

 

「変身術が解けた結果の有様、というかおぞましあよな」

 

「えっまさかこれ母さんなの!?」

 

 これがかつて柊ほむらだったものであり、柊まどかでもあったもの。

 神様にツバつけただけで自分がアルティメットになれると勘違いしてしまったある意味では被害者かもしれないが、暴走して末っ子の真似をした件に関しては姉達でも擁護出来ないのでこれも代償かもしれないのか……?

 それにしたってなんとも末路が怖い、トレスマジアはアレを見ながら魔法少女の変身はオンオフが利いて良かったと思った。

 何はともかく爆発までの準備は整った、マゼンタが槍を構えて回復魔法を唱え自傷に備える……電法レーダーをちょっと弄ればこれまで溜まっていた分の電気を借りて擬似的なワープ装置にすることも可能だ、アズールが座標をセットした後……水分を操作する魔法で槍を何倍にも拡張して大きくしたあと、サルファがそれを片手で持ち上げる。

 電法レーダーが起動して槍を転送させれば、財布を貫いて爆発させながら槍を転移させることができるというわけだ。

 

「よっしゃ……方角よし!!いつでもぶん投げたるからな!!」

 

「貴方達は早く逃げて!!どこまで巻き込まれるか分からないわ!!」

 

「いえ、そういうわけにはいきませんよ……なにせ、〆はあの娘ですから」

 

「だりゃあ!!」

 

「待ってサルファ!!投げちゃダメ!!つばめさん達が……」

 

 だがとき既に遅し、サルファは巨大氷槍を財布に向けて鋭くぶん投げると財布を一気に貫通して風穴が空き、溜め込んでいた時の流れが一気に臨界点に達する。

 今すぐにでもトレスマジアは撤退しなくてはいけないのだが、柊姉妹はなぜか全く離れようともしない。

 それどころかつばめはピクニックの準備まで始めようとしている。

 

「いやあたしでも突っ込むわ!!能天気すぎんだろ姉貴!!」

 

「これくらいがちょうどいいんですよ、私たちにはこれくらいが」

 

 

――

 

 そして改めて視点を戻し、そろそろふれいが文字通り痺れを切らして本気を出してくるかもしれなかった頃合い、魔力と殺気でロードエノルメとマジアベーゼもマジでトレスマジアの方から何かしてくれたことに気付き、腹を括る覚悟が出来た。

 

「……お前、本当にやる気か?」

 

「当たり前でしょう」

 

「しかしそんな事をしたらお前は……」

 

「いいんじゃないですか?元々我々柊姉妹は、この街で場違いのような存在といわれてますから……」

 

 その刹那、サルファが投げ飛ばした巨大氷槍が遂に直ぐ側まで到達、ロードエノルメとマジアベーゼは滑り込むように真後ろから回避すると……こんな攻撃がかなり遠くから飛んでくることは予想外だったふれいの脳天に綺麗にぶっ刺さり……だけでは終わらない!!

 電法ワープは電力を利用した超高速移動、それ即ち出力される電気のパワーが多ければ多いほど、持って行くスピードや質量も大きく変化する。

 マジアベーゼ達は向こうが電法ワープを使えることは知らないため、もしもの時には仕上げは自分達が手を出そうと思っていた。

 

「……では、色々なこともありましたがお世話になりました」

 

 マジアベーゼは避けながら槍に手を触れて、電法ワープを試みるがその手をロードエノルメが掴む……止めるというよりは一緒に電力を発している……当然だが質量は彼女の方が上。

 

「え?田中さん?」

 

「勘違いするな、つばめに会いに行くだけだ……それに、今更私にどうしろと言うんだ、お前らのいない世界に残されるなんて」

 

「えっ、何の話して」

 

「こういうことだっ!!!」

 

 二人の電法でふれいは氷槍ごと一気にワープ、その場から完全に消失し……電力で無理矢理体を動かしていた幹部達は完全に倒れる、だかその一瞬……レオパルトは手を伸ばした、何故か分からないが……マジアベーゼに、あるいは柊うてなにいなくなって欲しくないと願ってしまった。

 そして転送先はもちろん、爆破寸前の時の流れ。

 いつものように、何も変わらない柊姉妹がすぐそこにあった……でも今回は田中もすぐそばに。

 

「……待ってましたよ、うてな、みち子さん」

 

「うん、待たせてごめんね」

 

 

「ダメ!!早く離れて!!行っちゃダメ!!」

 

「もう無理よマゼンタ!!私達も巻き込まれるわ!!」

 

 

「うてなちゃん!!」

 

 その刹那、遂に時の流れは逆流して大爆発を引き起こし荒廃していた世界各地は逆回転するように元の発展していた場所へと逆戻りする。

 あるべき世界に戻りながら大爆発を引き起こし、目に見えるもの全てが分解されていく……まるでもう一度過去の時代をやり直すかのように。

 ふれいも当然ただでは済まないが、そこにパンタノペスカが割って入ってくる。

 

「ふれい……いや×××××、あんたの負けだ……いや、ようやく一回勝ち直したと言っていいか」

 

「君もしつこいね、まだ諦めてなかったの?ほぼ俺が勝ってたものなのに」

 

「諦めない、生き続けている限り絶対に……どんな姿になっても、どんな物語でも私は……」

 

「まあいいや、俺がこんな風になってもまだ作品は7000近くあるんだ……1個や2個くらい……」

 

 こうしてパンタノペスカを名乗る何かも柊ふれいも分子レベルに分解されて消えていき……トレスマジアに残されたのは、完全に元に戻った日本と、跡形もなく消え去った跡地のみ。

 柊姉妹の姿はもう、どこにもなかった……。

 

――

 

 それからの話をすると、トレスマジアは今でも活動を続けている。

 あれから謎の未来人が言ったように本当に「パンタノペスカ」という魔法少女が仲間と共に現れたりもした。

 エノルミータもロードエノルメがいなくなり、ヴェナリータまで姿を見せなくなったことで大人しくなった。

 だが戦いはこれからも続くことだろう。

 ただしエノルミータの現幹部は雰囲気が変わった気がする、世界征服を掲げていた総帥がいなくなったことで何をしていくか分からなくなっていたのだが内部分裂は期待できそうにない。

 

 あれからマジアマゼンタはたまに柊家があった場所にいく、世界が元通りになってから一気に影も形もない場所になってしまった。

 あの家族にあそこまで大きな家があったこと事態、不思議なので最初からふれいが何か細工をしてきたことは間違いない、というよりは最初から間違っていたのも事実だろう。

 ……あの騒動が終わってからも、何度も見に行くことだろう、思い出は時と共に消失してしまうのかもしれない。

 だが、確かに頭に残っている自分達が繋いでいくことが出来る。

 

「ねえ……変なこと言うんだけど、あたしこの店やってみたい!」

 

「本気で言ってる?こんなボロボロのお店、建て直すのもかなり時間かかるわよ」

 

「ま……ようやくヒマも出来たしおもろそうやないか、魔法少女がやる大衆食堂!」

 

 思い出は消えないし、そこに生き続けた証を知るものがいる限り……8万年だってきっと簡単に受け継ぐ人たちが現れるだろう。

 この町には、魔法少女がいる。

 人を尊び、未来を掴み、世界を救い……一度歪められた歴史でもう一度新しい物語を作り出した皆のあこがれ……その名もトレスマジア。

――

 

 「うおおお!!姉ちゃん見てくれよ!!本物の大名行列だぞ!!」

 

 「はいはい下がってましょうね……場所が場所なら切り捨て御免なので……」

 

 「うてなっち~!!スマホの充電キレたんだけど~!!」

 

 「アホか、時代錯誤なもん出してんじゃねえよ!あと三日くらい我慢しろ!」

 

 「ほら、白身魚が焼けましたよみち子さん」

 

 「ああ、ちゃんとした米が食えるだけ江戸時代はまだマシな方だな……来週はどこに飛ぶことになるのやら」

 

 「ねえつばめ、うなぎとってきたからさばいてくれないかな」

 

 「……なんか普通に馴染んでますね、ヴェナリータさん」

 

 そして柊姉妹はというと……あれから時空の流れに吹っ飛ばされて全員の身体が吹っ飛んだ……はずなのだが、七人姉妹と田中みち子はどういうわけか気が付くと原始時代……から更に昭和、に行ったかと思えば中世ローマとどういうわけか一週間ごとに時間を行き来しているようになった、実は現代……つまり元の時代に帰ってきた時もあるにはあるのだが、完全に視認されていないのかどんなにアピールしても反応されることはない。

 それどころか、車はすり抜けるし戦争の時代に行っても弾が当たることはない、爆撃されても一切の影響が及ばないが腹は減るし体は汚れる……どうにも異常で人間の常置を超えた存在になったことは確かだが、どうにも分からない。

 柊姉妹は当たり前のように適応しており、みち子も慣れたというよりは考えないようにしていただけ、それに何故だかヴェナリータもそれについていく形になっている。

 

「そろそろはっきりさせておきたい……私たちはあの時死んで幽霊になったのか?それとも不規則なタイムスリップを繰り返してるだけか?」

 

「これはあくまでボクの見解だが、何万規模の時の流れに間近で衝突したことによってキミ達は時間という概念と一体化したんだ、キミ達は死んでいないが生きてるかと言われるとそれも違う……まあ擬似的な不老不死みたいなものじゃないのかな?」

 

「なんてことだ……エノルミータに帰れる気がしない、というかヴェナリータ、お前は私たちと一緒にいていいのか?」

 

「退屈はしないし、どうせやることもないからね……それにだ、ふれいのことが気になる」

 

 一緒に吹っ飛んだふれいはあれからどの時代でも見ていない。

 自分達よりずっと丈夫だったせいか時の流れと一心になることも出来ずに消えて無くなったのだろうか?だが、死んだなら死んだでいいとはいえ安心出来ない。

 神様と名乗り、好き勝手できる男だ……きっとまた別のところで何やら大きなことを企んでいるに違いない。

 しかし不便なことに時と一体化した自分達は自在に時を移動できない、1週間後にどこに行くかはよくわからないが姉妹共はこれを旅行感覚で楽しんでるのだから能天気なものだ。

 

「むしろ君こそどうするつもりだい?もう世界征服どころじゃないし、本当にあの傷だらけのバケモノと結婚するのか?」

 

「父親気取りにあそこまで啖呵切ってしまったんだからしょうがないだろう、結婚式を挙げるどころじゃなくなったかもしれないがな……」

 

「なあヴェナさんよ、暇つぶしとかできるものない?1週間時間移動を古い時代で過ごすのも大変だってこのバカがゴネるんだよ」

 

「うっせー!現代人はスマホなしでは生きられねーんじゃバカヤロー」

 

「暇つぶしならちょうどいいものがある、時間の流れに適応して面白いものを作ってみたよ」

 

 ヴェナリータはお腹をゴソゴソと撫でると丸い玉を取り出して、それを投げるとレッドカーペットが敷かれて大きなシアターが展開される。

 もちろんこれも周囲には見えてないものだ。

 

「お前な……こんな時代で映画館はさすがに……」

 

「うひょー映画映画!」

 

「でもこんな所で一体何の映画をやるんですか?見ますけど……」

 

「そうだね、もし運命が違ったらあり得たかもしれない……君たちの別の未来とか?」

 

 柊姉妹は時と一体化して今日も平穏に生きている、色んなことはあったけどなんだかんだ幸せです。

 このなかに一人、悪魔がいる……しかし皆まとめて悪魔を超越しちゃえば、関係ないよね……だから私は、柊うてななんです。

 

『悪の柊7姉妹〜この中に一人、悪魔がいる!〜』

【怠惰エンド】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告