悪の柊七姉妹 〜この中に一人、悪魔がいる!〜   作:黒影時空

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第6話「それは、はじまり」

「クロノス・シンジケートぉ?かな姉そんな会社入ってた?てか前あーしが聞いた時は『ブラック企業を育てる会社』とか言ってなかった?」

 

「嘘は言ってませんよ……それもまた業務ですからね……働いて働いて働いて働いて働いて……働き尽くす、そんな会社です、楽しいですよ……」

 

(聞いてる限りだと全く楽しそうに感じないのだが!?)

 

「にしてもマジでなんもねーところだなぁ」

 

「ド田舎なんてそんなものですよ……まあ私はこういうところのほうが静かで好きですが……さて皆さん、今から社内を案内しますがそれまでの間に何か質問のある方」

 

(来た……!ここから有益な情報を絞れるだけ絞り出せ、だが正体を悟られるな!向こうはエノルミータを把握している、下手に気付かれたらスパイ活動とバレる……!!)

 

 田中は必死に考える、エノルミータを存続し尚且つこの会社を叩き潰す上で必要な情報は何か脳内で何度シミュレーションする、そもそも巣灯裏亞駅も不思議だ、別次元にしては日本に近い雰囲気すぎるし携帯も電波がしっかり届く、ヴェナリータが引っ掛けてきたわけでもないし同類なら奴でも口に出さないことがおかしい。

 他の面々も質問に悩む中、真っ先に挙手したのは花菱はるかであった、会社に見学するつもりはないがこの駅には入りたかったしトレスマジアとして彼女も調べておきたかった、無茶なのは承知の上である。

 

「えっと……かなさんは最初はどうやってこの会社を知ったんですか?入るにしても……特別な手段が必要そうだけど」

 

「ああ?……ああ、確かに考えてみれば私が案内したのなら私はどこから?って思うのも無理はありませんね……大したことはありません……拾ったんですよ、切符」

 

 かなが見せてくれたのはドス黒い色の切符、電車で泥酔しているところで偶然拾ってからというものの全く違う電車に乗れるようになって巣灯裏亞駅に辿り着くようになったということだ。

 明らかに怪しすぎるものだが、本当にかなは働けるならなんでもいいことを実感させられる。

 キウィはもちろんこの隙を見逃さずにスマホで撮ってある。

 

「……私からも質問だ、魔法を開発しているという噂を聞いたが」

 

「事実ですねえ、魔法を作るといってもそれほど難しい話でもありませんよ」

 

 曰く魔法というものはファンタジーな言葉で表現されているがエネルギーに込められているのは膨大なプログラムのようなものでやってることはプログラマー。

 炎の魔法なら熱を発したりエネルギーを火に関する物に変換すれば簡単に完成する、そんな調子でありとあらゆる魔法を作ることがあくまで理論上は可能ということ。

 

「そんなこと許されるのかな……」

 

「許されるでしょ、うてなっちが居ないからこんなこと言えるんだけど別に魔法少女が特別すげぇってわけじゃないし」

 

 切り込むようなうさぎの発言に周囲の空気が凍りつく、あんなヘラヘラしていた態度からこんな発言が飛んでくることにはるかもキウィも驚くがなぎさは首を振って肩を叩く。

 

「うさぎ姉ちゃんはさ、こんな見た目してるけど結構リアリストなんだよ」

 

「あーしもね?魔法少女が実際は大したことないって話をするんじゃなくて現実の軍隊も結構やるって話をしてるわけ、機関銃が魔法より弱いわけじゃないし実際この間魔法で武器作ったやつが出てきたじゃん?」

 

「そうですね、捻くれた考えかもしれませんが兵器とか戦車とかで勝てなくもなさそうな相手にも見えます、しかしうさぎ……何故それをやらないか分かります?」

 

「相手が分からんからでしょ、自分は世界に喧嘩売るわけだから徹底的に隠れる、これがすぐ分かるような奴だったら魔法少女が出る幕なく家に押しかけて風穴開けるだけで終わる」

 

「まあそれもありますが……面白くないじゃないですか……うちの妹、魔法少女が好きなんですよ、魔法少女が好きなあの子のために魔法少女に活躍してもらいたいんですよ、だとしたらそれ以外なんて邪魔じゃないですか」

 

「なるほどなるほど、要するにこの会社の理念は魔法開発ときどき世界征服ごっこということでいいのですね?わたくしのようなフリーの魔法少女としては楽ですが」

 

「ああ〜……まあ間違ってはいないかもしれませんね、中には本気で世界征服考えてる人もいますが面倒なこと増えるだけなのでごっこ遊び程度で充分ですね……」

 

 質問が終わり、再び歩を進めてクロノス・シンジケートの内部へ進んでいく一行。

 はるかとしては複雑な答えだった、自分達が必要とされていることは分かったがクロノス・シンジケートとしては世界の敵というよりは暇潰し相手のように思われている。

 単なる暇潰しということもない、トレスマジアは人々に認知されるためにメディア進出も行われて数々のグッズや契約を抱えている、言うなればトレスマジアとは単なる正義のヒーローではなくブランド。

 簡単に終わってはつまらない茶番の為に魔法少女という概念は生かされている……ロードエノルメはそう解釈した。

 

(魔法少女という概念を蜜のように啜り私腹を肥やす愚かな世界……思えばヴェナリータも私を見つけたときは世直しと言っていたな、クロノス・シンジケートのことはまだ曖昧だが……今後の身の振り方は掴めた、自分の立場が危ういとか腑抜けたことを言っている場合ではなかったようだな)

 

「あのさ、アタシ達こことは無関係だから帰りたいんだけど」

 

「ああ……駄目です、私がそうしないのではなくてこの切符、1回使うと3時間充電が必要なので……」

 

「3時間!?」

 

「あ、ああ……そうなんですか……どうしよう妹達」

 

「そういえばはるかちゃんも妹いるんだっけ、いくつ?」

 

「ほむらちゃんよりも結構下ぐらい」

 

「えっ若えな」

 

「ってかお腹すいた〜!ここ何か食べるとこないわけ〜」

 

 だんだん社内見学というより段取りがめちゃくちゃな修学旅行のグループみたいになってきたがかなは淡々と冷静に処理して中へと導いていく。

 組織としての余裕さを感じる中、田中が目をつけたのは今も尚不思議なパンタノペスカ。

 フリーの魔法少女自体はよく聞くし魔法少女狩りで色々始末してきたが、こんな人物はどこの情報でも見たことがないし新人にしては貫禄がありすぎる。

 

「お前はどこの魔法少女だ……?」

 

「わたくしこう見えて英国出身ですの」

 

「なるほど海外の魔法少女か、世界征服をするくらいだから外国から来ることもあり得る……」

 

 絶妙に真面目なのでどう見ても嘘臭いこの発言を田中は信じてしまった。

 そんな中かなでも少し唸らせて困っていたのが昼食問題、昼食べていくことを想定してないので食事に困っていた。

 

「……昼くらいなら食べなくても生きていけますよ、むしろ空腹は慣れると却って労働を促進させるパワーにも繋がりますので……クロノス・シンジケートに入る上で慣れておきます……?」

 

「聞いたことねえよ絶食を推奨される会社」

 

「なぎさこの会社辞めといたほうがいいって姉ちゃんとして止めるから」

 

「このブラック具合が逆に癖になる!!」

 

「あーしの妹こんなんばっか……」

 

「実質ニートの双子と実質ニートの姉さんよりはいい働き方だと思いますがねえ……」

 

「おやおやそれは一番のお姉ちゃんとして聞き捨てなりませんねえご飯食べて栄養摂らないとねえ」

 

「ギャアアアアアア!!?」

 

 あのダウナーな次女でも突然現れたら悲鳴を上げるのがお姉ちゃん、柊姉妹きってのストーカー柊つばめ。

 いつの間にかあなたの後ろにいるのされるリアルメリーさん体験には背筋が冷える、さっきから関係ないところで驚いてばかりで全然進まないのなんとかしてほしいとキウィは脳内でツッコミを入れる。

 

「あんたどうやって来たんだ異次元空間だぞ!?さすがに私も引きますからな!?」

 

「いえずっといたんですよ、こんな体ですが気配を隠すのは得意なので」

 

「えっつば姉いつから?」

 

「貴方が本日2度目のパンツを見せつけた辺りからですねぇ」

 

「姉ちゃんきもいよ!」

 

 つばめが想像以上のストーカースキルを見せつけて姉達を戦慄させている中意に介せず懐から弁当箱とレジャーシートを取り出して普通にピクニック感覚で昼食を取ろうとする。

 無関係なはるかとパンタノペスカは普通に混ざっていた。

 

「一番上のお姉さんって飲食店やってるんですよね?どんな料理作ってるんですか?」

 

「今日はちょっと手を込めて……エリマキトカゲを色んな風に調理してみたんですよ〜!フライにしたり焼いてみたり出汁を取ってみたり、色々ありますよ!」

 

「あのさつば姉、今調べてみたらエリマキトカゲって絶命しそうだからワシントン条約で取引禁止されてるってあるんだけどそれマジのやつだったら国際問題よ」

 

「ええ、もちろん加工されたものも禁止なのでそれっぽい形のものを用意してみました、がんもどきみたいなものですね」

 

「じゃあそれ結局なんの肉よ姉ちゃん!?」

 

(これ本当に食べていいものなのか……?)

 

 色んな意味で恐ろしすぎて食べた感覚もせず味わえなかったが腹を満たすことは出来た一同。

 食べていく中で思考を巡らせる、ヴェナリータが言っていた柊家に潜む悪魔……こうして家族と相対してみると目を光らせている柊うてな以外も結構怪しい。

 長女、次女、三女、五女……ここに姉妹が殆ど揃ったのは偶然に見えなくもないし、この間に見てきた振る舞いだけでも恐ろしさを感じられる。

 特に神出鬼没、傷の多さに反して人当たりは良さそうだが油断したら丸呑みされそうなつばめとクロノス・シンジケートを取り仕切り過度な労働を喜びとしてどんなことでもやりそうなかなの姉二人組はマークしている。

 

「はあ……随分想定外な客が増えてしまいましたが、クロノス・シンジケートの中へご案内……今回の見学ツアーでは実際に魔法を作るところを体験しちゃいましょうかね……」

 

「かな、いい感じに料理を作れる魔法とかありませんかね?」

 

「姉さんの場合なら舌をバカにしたほうが早いんじゃないですかね……もちろんそんな魔法も簡単に作れます」

 

 

 そして姉達が殆ど失踪していることは知らず、どれみは妹二人を連れてファミレスでパスタを食べる。

 その辺のありふれた味だが少なくともつばめが出すやつよりはよっぽどマシな出来栄え、うてなはあれからまだ落ち込んだままだった、よく分からない気持ちよりもいつもなら楽しめたはずの魔法少女作品に違和感を感じたことで気分が沈んでいるのだ。

 

「はあ……私このまま魔法少女が好きじゃなくなるのかな……」

 

「別に何かしらに飽きることなんてよくあることだろ、何か足りないっていうのは典型的な倦怠期だよ」

 

「そうなのかな……なんか違うような、私は魔法少女は好きなんだけど、その好きを追求していく上で何かもっとドキドキするような事があった気がするんだ、それが……それがなんなのか分からない」

 

「大丈夫ですか姉様」

 

「……お前は昔っからアレ隙だったからな、重症だこれは、飽きたわけじゃないとなるともっと楽しいものを見つけたとか?」

 

「もっと楽しいもの……まさかそんなもの……」

 

 心当たりはあった、しかしそれは……それははたして?

 うてなの中で色んな思い出がぐるぐる巡って目が回りそうになり、どれみに介抱してもらい家に帰りベッドで横になる。

 覚えがあるといえば、マジアベーゼとして戦った時……魔法少女を追い込んだ時に何故か妙に胸が高鳴った、自分は悪の組織として酷いことをしたのに楽しかった……まさか、あれのせいだろうか?

 

「だとしたら……私は魔法少女に期待しているものは……」

 

「うーん良くない流れだねうてな」

 

「ウオッ」

 

 最近は何も言わずヴェナリータが乗り込んでくることも増えた、姉の殆どが外出しているとは言え急に現れると心臓がいくつあっても足りないというか姉さんに分けてほしいレベル。

 

「ヴェナさんちょっと……今はほむらいるんですから」

 

「それだよボクが問題視しているのは、君と出会ってからしばらく経つけど君のなかの悩みや人間関係は全て姉妹達の中で完結してしまう、広がらないじゃないか色んな物が」

 

「ええ?そんな事言われましても私はこれまでそうやって過ごしてきましたし……別に友人が作れなくても辛くもありません、姉さん達がいて魔法少女と楽しめればそれで……」

 

「本当にそう思っているのかい?もう既に感じているはずだ、自分が魔法少女に何をしたいのか……」

 

「それはただ、貴方が悪魔を見たいだけですよね?」

 

「それもあるが……まあ、いつまでもそんな調子のままじゃいられないことは分かってもらいたいね、マジアベーゼなんだから」

 

「ヴェナさん、私がマジアベーゼになろうと思ったのはあの総帥が気に入らないからですよ」

 

 一見すると険悪な空気の中、うてなは横になり話にならないとヴェナリータも去ろうとするが、うてなが見えてない間に扉越しにどれみが手招きする、せっかくなのでという気分で空を飛んで一旦帰り、宙返りして別の窓からどれみの方へ合流して地下室へ入る。

 

 

「そういえば君たち姉妹はボクの存在を認知してたっけ、うてなには内緒なのかい」

 

「うさぎはただの好奇心で姉貴達はまあ心配してんだろうな……あたしとしてはアイツの好きにやらせればいいとは思ってるが、せっかくだから聞いておきたいことがある」

 

「何故うてなを選んだのかといったところかな」

 

「少し違う、なんで()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 うてなに悪魔の性質を見出して世界征服に利用するだとか、総帥とやらの命令も感じられない。

 まるで単なる好奇心で柊家の悪魔について調べているような傾向がある、それならうてなのみをスカウトした理由はなんなのだろうか?

 悪魔について調べたいのであればエノルミータに加えなくても適当に家族をかき集めてデスゲームでもやらせればいい、どれみが悪魔ならそういう事を考える。

 

「ボクは別に人間の醜い所を眺めたいような趣味の悪い生物じゃないからね、君と違って」

 

「一言余計なんだよ猫もどき、じゃあ何か?うてなは特別だというのか?」

 

「うーーんこの辺りは答えに困るんだよなぁ、ある意味ではうてなが特別というか、逆に君たちうてな以外が異常というか……とにかくボクの不満は君らがうてなにベタベタし過ぎな所なんだよね、何か悩んだり闇を抱えても君らだけで絡んですぐに解決されては色んな意味で話にならないよ」

 

「それを部外者にとやかく言われるのはあたしでもムカつくぞ、家族にあんま口出しするな」

 

「なるほど……まあ、そうしていられるのも今のうちかもね、悪魔が出てくる前に日本が滅んだらちょっと面倒だけど」

 

「あ?何言ってお前」

 

「ただいま……やっと帰ってこれたよ」

 

「あっ、なぎさやっと帰ってきた……いねえ」

 

 なぎさ達が異次元から帰還してきた頃、ヴェナリータの姿はなかった。

 なんとも都合のいい流れだが、このままでは妹に危害を加えられてもおかしくない。

 意外かもしれないが姉妹の中でうてなを想っているのは四女どれみだ。

 あのウサギのバケモノが現れてから生活がどんどん歪んでいく、もしかしたら家庭以外にも影響を与えるかもしれない……。

 

 そしてこの嫌な予感は即座に的中することになる。

 

 それよりまずはトレスマジアとエノルミータ双方がクロノス・シンジケートの情報を掴んだところからだろう。

 

「巣灯裏亞駅に入ったぁ!!?何を無茶しとんねんお前!!」

 

「あ、あたしも偶然みたいなものだったけど……ちょっと怖かった」

 

「まさか本当にクロノス・シンジケートがあったなんて……」

 

「しかもそこで働いていたのが、あの子のお姉さんなんて……曰く付きの姉妹と街の噂だったけどここまでとは」

 

「ウチは最初から胡散臭いと思っとったわ、特に異次元に長女次女三女五女が揃うところなんか狙い澄ましたかのようにしか見えへん」

 

 やはりというかトレスマジアはクロノス・シンジケートを通して柊家を怪しんでいる、マジアベーゼとの邂逅は少ないが柊家の怪しさに深掘りしていく日も遠くないだろう。

 だが何より気になるのはフリーの魔法少女パンタノペスカ、変身した姿で会社に来るのも堂々としているが、改めて聞いてみるとヴァーツはそんな魔法少女を知らないというのだ。

 

「フリーの物も一通りチェックしてはいますが、その中にパンタノペスカという名前の魔法少女はいなかったはずです、海外に魔法少女がいるなんて話もなかったような……」

 

「でも認識阻害魔法は感じられたしあの人は間違いなく魔法少女……なんだよね」

 

 パンタノペスカとは何者なのか?敵か味方か?

 出来れば話をしたかったがあの場所で深掘りしてはマジアマゼンタであるとバレてしまう可能性もあった。

 願わくばもう一度パンタノペスカに会えるかどうか……だが、肝心な彼女は双眼鏡でロードエノルメの様子を伺っていた。

 

「うーん……この流れはちょっとまずいですわね……まさか相乗効果でより世界征服を本格的にするとは……」

 

 

 ロードエノルメは決心した、敵は魔法少女にあらず世界そのもの。

 時に目を向けなくてはならないのがより大きな存在、生活を犠牲にしてでも成さなくてはならないのが国という相手だ。

 

「シスタギガント……これがリストだ」

 

「ロード様……本当によろしいのですかぁ?ここまで過激な行動を取ればヴェナリータ様も……」

 

「構わん、どうせ避けられぬ事態……それにまだ序の口だ、エノルミータの恐ろしさを世間に知らしめる為の報復にすぎん、世界各地の軍隊が配備されている基地をお前の巨大化で踏み潰せ、それもなるべく国力が大きいところを破壊するんだ」

 

「……どうなっても知りませんからねえ」

 

 

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