「おはようございまーす、今日も張り切って魔力を作っていきましょうね」
柊かながエノルミータに異動して早くも3日。
クロノス・シンジケートで得たスキルを参考にしたり資料を一通り確認したことで、ナハトベースの中心部に巨大な魔力貯蔵室が作られた。
ここが実質かなの私室ということになるのでうてなの提案で早くも掃除係が決められつつある。
「かな、ボク達エノルミータの魔力は欲望を糧とする、強い精神力と願望を魔力に変換して変身や魔法に消費するんだ」
「ああ……コスト制限みたいなものはあります?」
「当然ある、ランク制度みたいなものでね、星の数が扱える魔力量と思ってくれればいい、最大4つだ」
「はぁ……なんか今ひとつ物足りない……ですが魔力の増やし方は大体わかりました、うてなもいきますよ」
「どうして私まで……雑用じゃなくなっただけでもいいけど……」
エノルミータは安易に世界に攻めこんなことで深刻な予備魔力不足に陥っていた、まともに攻め込むこともちょっと厳しいので現在はトレスマジアに悟られないように最小限の攻撃に留めてひたすら魔力を増やしていかないと後が怖いということで、ひたすら魔力づくりに徹している。
「かな姉さんはクロノス・シンジケートではどうやって魔力を用意してたの?」
「それはほら、人力というか自転車操業というか……なんかそういう動きで電気みたいに増やしてたので……」
「全く参考にならない……欲望といわれてもどうやって魔力を増やせば……」
「その点に限っていえば私はコレがあるので……すーっ!!」
かなはロードエノルメから奪った別のパンツで興奮することで一気に魔力を増やす危ないドーピングを行い、少しずつ貯蔵させていく。
あまりにも生々しい上に人として引く所業だがこうなった原因はロードエノルメなので文句はいえない。
「これだけやっても例のシスタギガントさんとやらが動くだけで一気に枯渇するのかぁ」
「巨大化魔法って結構消費激しいのは事実ですからね……現実のあらゆる製品が性能を高めながらどんどん縮小化していくように、時代は小型化こそ正義なわけですよ……」
「……というかその、かな姉さん、本当なの?私のこと前から知ってたって」
「ええ、ほむらはまだですが……姉さん、うさぎ、どれみ、なぎさ……姉たちは全員把握してますよ」
「嫌だあ!!なるべく隠しておきたい!!」
「まあ気持ちはわかりますよ……私の場合は魔法作ってますとか……大っぴらに言えない仕事なのもありましたけど……ああそうだ、魔力に関してヴェナリータさんに相談してもらえませんか」
「え?かな姉さんから直接ヴェナさんに言えばいいのに」
「どうやら私は悪魔ではないらしく、仕事以外ではあまり彼の眼中にないようです」
「……悪魔のこと姉さんも気にしてるの?」
「むしろ、うてなはもっと気にしたほうが……すうううっ、やっぱ労働したこの臭いがたまりませんねぇ……」
パンツを嗅ぎながら魔力をたぎらせる不審者はさておき、うてなも自分なりに魔力を増やす方法を考える。
欲望……つまり自分の好きなものに熱中してアドレナリン高めればいいのだろうか、参考にすべし次女がこの有様なので真似したくはないが自分なりの性癖を模索する。
しかし、どういうわけか魔法少女アニメを観てみたりしても魔力の出が悪い。
どれみにも前に話したが、やはり自分は魔法少女という趣味に限界が来ているのだろうか……?
しかし今はそれより、かなのことだ……相談したいことについて耳打ちしてもらう。
「……なぎさのことなんですけど」
「なぎさ姉ちゃん?ああ……そういえばクロノス・シンジケートに入ろうとしてたもんね、やはりその件で揉めましたか?」
「いえ、その……ごにょごにょ」
「え!?うわぁ……なんというか、姉ちゃんらしいけど……」
「おーいマジアベーゼ、総帥がお呼びだよー」
「あっヴェナさんちょうどよかった……総帥にも聞いてもらうか、じゃあ行ってきます!」
「魔力ガンガン増やしときますからねー」
総帥の謁見の間まで歩いて数分、雰囲気作りのためか妙に暗いことだけが気になるがもうそれは慣れるしかないので気にしないことにした。
ここに来てもうしばらくだが、幹部になってからちゃんとした仕事が与えられず結構経つ、ヴェナリータが悪魔とやらに関心を持ってなかったら本当にいつクビになってもおかしくないしロードエノルメも本当なら自分を早く切り捨てたいのだろう。
「マジアベーゼ、今日は君に……おや、何か言いたいことがあるみたいだね」
「分かりますか?かな姉さんがちょっと相談したいことがあるとかで」
「そんなもの本人の口から話せばいいだろうが、何故妹のお前を介する必要がある」
「ヴェナさんが姉さんに興味ないからだそうで……あっ、長くなるので回想入りますね」
それはかながエノルミータに入ってすぐ、家族も周囲も未だにクロノス・シンジケートが逃げ出してもうこんな奴らめんどくさいから関わりたくねえ〜となっていることに気がついておらずありもしない敵に周囲がざわめいていた頃の話。
なぎさがかなに泣きついてきた。
「かなえもん〜!!魔法で戦隊作っウワ臭っせ!!!」
「なんですか藪から棒に……というか私、仮眠中だったんですけど」
「うおおお臭え!!えげつない屁をこいた後みたいな臭いが部屋にこびりついてる!普段どんだけ不衛生に過ごしてるっていうか仕事中だけなんでキレイなのっていうか」
「おい、あんま失礼なこと言うと妹でも殺すぞ」
「やってるやってるもう殺りかけてる!!ごめん要件話すから関節技はやめて!!」
不機嫌な時のかなは結構どれみに似て口が悪い、無理矢理叩き起こされて苛ついていたこともありなぎさの肘をやばい方向にぐにゃぐにゃにする。
「で、えっとその……要件を話したいんだけどさあ!!姉ちゃん足なんとかして!!というかつばめ姉ちゃんに掃除してもらうから風呂で話そうか!!」
「ちっしょうがねーな……はぁ……私風呂嫌いなんですよね、清潔にするだけなのに時間がかかるから……」
「かな姉ちゃんもほぼ大概だよな……よく社会人出来るよ全く」
「なんか言ったか」
「なんでもございません」
かなに首根っこ引っ張られたまま浴室に入り、7人全員は入れなさそうなそこそこ大きい浴槽でようやく話に入る。
かなは基本シャワーで済ませるが話を聞くために浴槽に入る。
「で、なんでしたっけ……戦隊を作ってほしい?魔法で……?」
「そうだよ、姉ちゃんか魔法作ってる会社らしいって聞いてからどうしても戦隊を本物にしたい欲求を抑えきれなくてさ……時を止める魔法作れるんだから、人体錬成の一つや2つ出来るでしょ?」
「いや……それはなんか色んな意味でジャンルが違うじゃないですか……それに魔法を作るのだってタダじゃありませんし……」
「魔力が必要ってこと?じゃあ私に出来ることがあればなんでもするから!魔力が必要ならいくらでも出すから!!」
「ええ……戦隊作るにしたって何をしろと?1から魔力で人を作るのは面倒ですし……」
「魔法少女の変身みたいなものでしょ!ちょっとケータイポチポチするだけだから」
「なおさらめんどくさい……変身アイテムとかどんな感覚で作ればいいんですか……魔法のステッキじゃないんだから……」
回想終わり。
「……ということで、なぎさお姉ちゃんが戦隊を欲しがってるんですが、戦隊を作るとなるとどれだけの魔力が必要になるかと」
「うーん……人体創造となると桁外れの魔力が必要になるんだよなぁ、今までの分の3倍にもならないと……」
「……待て、方法ならある、要するに『戦隊を再現すればいい』のだな?」
「え?」
意外にもこの提案にロードエノルメは乗り気だった。
というのも戦隊の話を聞きながら作戦を思いついたといい、席を降りてパワーポイントを作成し作戦指示を行う。
「戦隊ヒーローをローコストで用意することは可能だ、実質1人分の魔力もあれば少しは動ける」
「本気かい?言っておくけどボクはスカウトしたくないよ魔法の素質があるもの以外……というか、ボクは戦隊とやらに詳しくないし」
「なんだ知らないのか?戦隊は要するに数人規模のヒーロー、分類としては魔法少女と大差ないが大きな違いは完全にフィクションなこと、本物じゃないからこそ代替えが利く……もう出てきていいぞ」
エノルメが呼びかけると大きな門が開き幼い少女が出てくる、自分どころかほむらよりも年下に見える……というか実際小さいのだろう、なんとなく懐かしい気持ちになるがロリータ服が本当に可愛い。
「こいつはネロアリス、お前より少し前に幹部になった……最年少だが魔法に関しては光るものがある」
「なるほど、ネロアリスは玩具を媒体とした魔法を使えるから……比較的低コストでそれっぽいことは出来るわけか」
「はあ……ありがたいですがどうして?断るものかと」
「なに、この戦隊とやらもエノルミータに充分使える……本題に入る、ネロアリスにヒーローフィギュアなどで戦隊風怪物を複製、こいつらを利用したプロパガンダを立てるんだ、我々が魔力を補充している間表向きの作戦を奴らに任せる形になる」
「は、はあ……よくまあ短期間でそれを思いつきましたね」
「善は急げ……いや我々の場合では悪は急げ!お前は家に帰って何かしらなぎさとやらから戦隊の玩具を貸してもらえ、私も色々と準備を済ませる!」
「ええ!?そ、そんな急に……え、えーとよろしく……ね」
そして本当に悪は急げと言わんばかりにすぐに柊家に帰り、なぎさの部屋に入って良さそうな物を探すがいまいちいいものが見つからない。
というか、あまりにも散らかしまくりでネロアリスこと杜乃こりすが座るスペースもない。
姉妹のうち半分くらいがゴミ屋敷みたいになってるから変な噂が立つのではないか。
「こりすちゃんちょっと待って……うーん、ほむらが来る時に気を付けてって言ったのに」
「ん」
こりすも見ているだけでなく一緒に片付けしたりして手伝ってくれたりする中、つばめが様子を見に来た。
相変わらず妹が何かしている中に神出鬼没な長女である。
「うわっ……ちょ、ちょっとつばめ姉さん!お客さん来てるんだからその傷だとびっくりしちゃうでしょ」
「おや……そんなに悪目立ちしますかね?私の体……それよりキウィちゃんに引き続いてお友達なんて、それもこんな小さい……ほむらやうてなもこんな頃がありましたねえ」
「そんな小さくないから!つばめ姉さんも掃除手伝って……というかなぎさ姉ちゃんは?」
「なぎさなら、ほらこの間の体験で知り合ったパンタノペスカさんと会いに行くとか」
「パンタノペスカ?とかぁ……うーん」
「どうしました?魔法少女に会いに行くなんて羨ましがると思いましたが」
「確かに羨ましいけど……私色々魔法少女は調べてますが、パンタノペスカなんて聞いたことないから大丈夫かな」
「まあ大丈夫ですよ……あの子も腕っぷしはありますし、というか意外と皆喧嘩出来るんですよ?うちの妹達」
「こりすちゃんに変なこと教えないで誤解されるでしょ!あっ……よし!これちょっと借りるって姉ちゃんに言っておいて!」
「はいはい〜あっ、よければこれおやつにどうぞ、ドラゴンフルーツを丸ごと焼いてみたんですが」
「いらない!!」
このままじゃ色んな意味でボロが出そうになったので退散すると、入り口前でロードエノルメの変身前(田中)がラフな格好……というか『溶岩魔神』と書かれたとてつもないインパクトのダサTで待機していた。
「目的のものは手に入れられたか」
「ええまあフィギュアを3種類……ツッコミ待ちですかそれ」
「何の話だ」
改めてうてな、こりす、田中は一周回って怪しまれないように喫茶店で作戦会議を行う。
さっきからこりすという少女は何を考えているかはわからないが年相応な振る舞いでほむらほどではないが中々愛くるしいと感じられるし、田中も変身前を介さず化粧をしていないときはそこそこ綺麗に見える、コーヒーを飲んでいる時なんてかなよりもキャリアウーマンに見える、シャツのセンス以外は。
「ところで興味深い話を聞いたがお前ら姉妹は皆喧嘩が出来るのか?」
「いやそんな……喧嘩といっても、私達姉妹は殆どかな姉さんに育ててもらったんですが、当時の姉さんって精神的に不安定で結構グレてたんですよ、たまにその時出てくるけど……どれみ姉さんなんてしょっちゅう殴り合いしてたなぁ当時は」
「まあ当然荒れるだろうな、お前が生まれた頃なんて奴はまだ12歳だ、そんな中6歳の双子だの抱えればストレスも溜まるだろう……むしろ今よく安定してるな変態だけど」
「上の姉さん2人が就活しようって時に多少は安定化していったので……まあつまりこれまで結構危なかった経験もあるので結果的に全員腕っぷしは良くなったわけです」
(……というか本当にこいつは両親もなしにあの姉達に育てられたのか、右も左も分からない幼い状態の奴らに……一体どんな家庭環境だった?おかしな点が多すぎる)
「姉妹に勘付かれている以上、行く行くはお前の親族全員をエノルミータに入れて誰が一番使えるか……というのも悪くない」
「ほむらだけは勘弁してください!」
「それは私が決めることだ……改めてこりす、やれるな?」
「ん」
「よろしい、それでこの戦隊の名前は?」
「魔力戦隊サンマジカルだったような……」
「サンマジカル……内容は知ってるか?」
「昔はよくお姉ちゃんにアニメ見るの付き合わされたからもうほぼ頭に入りました……」
「よし完璧だ、この作戦はお前たちに一任する、魔力を増やしている間に戦隊の人気を高めながらエノルミータのプロパガンダ活動を行い、トレスマジアに牽制を仕掛け虚構のヒーローによるショーを広げる……名付けて『トレスマジアよりサンマジカルの方が超かっこいい作戦』を開始する!」
ネーミングセンスとか魔法少女が下げられていることとかツッコみたい所は山ほどあったがそれをぐっと堪えて『トレスマジアより(略)』をネロアリスと共に実行することになったマジアベーゼ。
何はともかく、作戦会議のために一旦かなに相談する為にナハトベースに帰還した。
「おやおや……それはなんとも面白いことになりましたね……なぎさ喜ぶといいですが」
「でも本当にうまくいくのかな、こりすちゃんの魔法がそれだけ凄いって自信があると思うんだけどアニメの実体化なんて」
「アニメですか……そういえば数十年前は……戦隊って『特撮』と呼ばれるもので作られてましたね」
「とく……さつ?」
「特殊撮影技術のことです、着ぐるみだったり模型だったり……時代が進めばCGやワイヤーアクションなんかも使われたド派手なドラマ作品のことですよ、その辺りの歴史はなぎさのほうが詳しいんじゃないですかね……」
「じゃあどうしてアニメになっちゃったの?」
「そこはほら、私たちの世界には魔法少女がいるじゃないですか……現実世界でどんなに表現しても迫力や表現が本物の魔法少女の戦いに敵わないので……」
かなは言った、確かに『戦隊』が現実に存在した時代は確かにあった。
それをあるべき姿に返すのも案外面白いかもしれない、それがどんな形で利用されたとしても……何よりなんか面白そうではないか。
「なんか……嫌な予感しかしない、久しぶりにトレスマジアの顔を見れるのは嬉しいけど利用する形なんて……」
「まぁ……たまには妹のワガママにも答えてやらないとですね……ああそうだ、私たち姉妹にはもっと大切なことがあったじゃないですか、ほら毎年恒例の……」
「あ、あああー!!またこの時期!?」
「明日は……私もロードエノルメ様に言ってもらって休みにしてもらいますので……ゆっくり談義しましょうね、徹夜ですよ……」
「へへへ……なんか私も楽しみになってきた……では早上がりしましょうか」
「その為にも……私の仕事手伝ってください、魔力3日分くらい作りますよ、というかこの気分なら作れますよね」
「何言ってるの姉さん、三日分どころか一週間分は出来そうだよ」
「テンション上げていきますよ!!!明日はァ!!!」
「柊家毎年恒例!!チキチキ映画ドラフトおおおおおおおおお!!!!」
「いいですねぇえええええええええ!!」
その様子を眺めるロードエノルメとヴェナリータ。
「奴ら……家庭環境はおかしいが間違いなく人生は楽しそうだな」
「だからこそまずい流れなんだけどね、うてなの中で成長の兆しが見えない、ずっとあの姉妹としか交流を深めずそれで満足しているようでは彼女のためにならない」
「なんだ、悪魔がどうとか言う割には特別やつを気に入っているのか」
「なんとでも思ってくれたらいいさ……なんにしてもだ、柊家はボクにとっておかしな点が多い……まだまだ情報が欲しいところだな」
「そうか、それよりもお前はこれを見ておけ」
「嫌だよなんか分厚いしそんな暇ないしというか耳引っ張らないで欲しいんだけど」
「いいやお前は戦隊を知らないんだ、作戦を知る上で本編を知るのは大事だ一緒にサンマジカル視聴を付き合え、ちなみに全48話ある」
「本当にボクそんなことやってる場合じゃないというかそんなの興味ないんだけどちょっと離してくれぐえええー」
その後、かなとうてなは凄まじいテンションで本当に1週間分の魔力を作り出して有給を取る。
柊かなが有給休暇を取るときは絶対に家族サービスの時、極限まで追い込んで休むことが大好きだが家族を労うためなら別だ。
そしてヴェナリータは今ロードエノルメの作戦のために半ば強引に缶詰状態にある。