とはいっても休日、殆ど戦いにも出ることもないとヒマを持て余したキウィは何か騒ぎになりそうな楽しそうな予感がして柊家のインターホンを鳴らしてうさぎが出迎えてくれる。
「おっ、キーウィ来てくれた?マジうれしいんだけどー」
「おいーす、あいついるかー?なんか暇潰しになりそうと思って連れてきたぞ……あとこいつも」
「ん」
サンマジカル作戦では大事ということでこりすも同行、どういうわけかしっくりくる三人組が妙な流れで柊家に集まっている。
改めてキウィは内装を見せてもらうと確かにワケアリ姉妹のようなおどろおどろしさはあるがバラエティ番組のそういう特集で見るような生活感は感じられる、というかあの手の番組で取材されてなかった?って気もしてきた。
「んで、なんでうてなちゃんの姉貴は今日会社休み入れたわけ?聞いたけど」
「へぇーかな姉から直接!ならもう話してもいいか、あーしら恒例の映画ドラフト!」
「……は?映画ドラフト?」
「ほら、あーし達7人姉妹じゃん?そうなるとこういう時に趣味がバラバラだからさぁ映画とか見たい時揉めるんだよ、全部見る時間も余裕もねーし」
うさぎに案内されて居間につくと、なんとうてなが他の姉妹に並んで大真面目にクイズ番組のようなセットで並んでいるではないか。
相変わらずこの姉妹は見てても何がなんだか分からない。
「そんなわけで、今年は誰の希望を優先するかこうして姉妹で談義してるわけよ毎回」
「ひょっとしてお前らめちゃくちゃ暇なんじゃないのか?」
これにはキウィもたまらずツッコミ側に回る。
しかしうてなとしては真剣であり、この日にはつばめやかなですらバチバチに燃えているので姉妹内ではツッコミ不在の異常空間と化す。
こりすもなんだコイツらって顔で引きながら姉妹たちを見る、多分悪いやつではないがお近づきにはなりたくないなって具合の顔。
ヴェナリータが危惧していた通り、うてなは柊姉妹とキウィ達それ以外で関係に大きな溝がある。
特別嫌ったり関心があるわけではないが、まだまだ心を開くには至れない感覚。
キウィとこりすがここに訪れたのもほんの偶然ではないだろう。
「あっキウィちゃんとこりすちゃん!」
「何やってんだお前……休み入れたかと思ったらこんなの」
「こんなのじゃないよ!毎年柊姉妹は夏休みの予定とかクリスマスで誰がサンタやるかと姉妹でこうして徹底議論するのが恒例なんだから!」
「そうやって変なことばっかしてるから変な噂立つんだじゃないの?」
「ん」
「まるであたしらが変人集団みたいな」
「みたいじゃなくてそうなんだよ」
「でも……せっかくなので中立的な目線も欲しいところですよね、ちょっと来てくれませんか」
「もしかしてアタシらにもやれと!?」
「審査員してくれるだけでいいから」
更にそのまま流れに身を任せて中立派のセットを用意されて巻き込まれる形になった、もしかしなくてもとんでもない日に来てしまったのではないのか。
キウィのツッコミや気分はフルスロットルだがようやくドラフトが始まる。
(あー……落ち着け落ち着け……大袈裟すぎるが要するにこいつらどんな映画見たいかって話なだけだよな、ある意味では趣味傾向からどんな奴らか推測できる)
キウィが親しいのは現状うさぎだけでうてなとはギリギリ交流しているぐらい、かなとなぎさは全然よくわからないしつばめは顔が怖いヤバい人にしか見えない。
ほむらはぱわぽわしているくらいで改めてよくわからない連中だ、しかし映画の趣味なら性格が出やすいので付き合いやすい人物を推測して付き合っていけばいい。
「では毎度恒例第2希望から決めていきましょう」
「えっ質問、第1からじゃないのか?」
「第1は拗れないようにほむらの見たいものを真っ先に決めるって昔からのルールなので」
「お前ら末っ子に甘すぎるだろ!!」
「うわ」
姉妹の流れでついにこりすから「ん」以外の台詞を引き出してしまったが、それが「うわ」なのはまずいかもしれない。
だがこんなところでつまずいていたら話が進まないのでこの際ほむらは気にしないことにしてようやくドラフトが始まる。
「ではなぎさは確定してるのでラストでいいですね」
「何省こうとしてるの!?負け確みたいじゃん!」
「負け確っつーかどうせ戦隊映画見るんだろ毎年そうじゃん」
「やっぱ見ててつまんねーとか?」
「いや聞いてくれよ、こいつ選んでおいて同時上映のバイク乗る仮面のやつで興味無くして爆睡するからな」
「だから私としては……DVDだけ与えておきたいんですよ……こいつ映画見せちゃいけないタイプです」
「私は戦隊だけ見たいの!!うてなだって魔法少女の映画見たいんでしょ!?」
「いや見るからには最後まで見なきゃダメだし……私は趣味に関する映画ならお小遣い貯めて一人で見に行くから、迷惑かけたくないし」
「はしご下ろすんじゃねえ妹!!オタクとしては正しい態度だが家族のこと考えろ!!」
「途中で寝るやつにマナー云々言われたくないんじゃねえかな……なぎさは基本的に自分の好きなもの以外興味なし……と」
「んっ」
「どうしたこりす……個人で好きに行けるなら全員で末っ子に付き合わなくても良くないか?だそうだ」
「な、なんて酷いことを言うんですか貴方は……」
「家族一緒じゃないとかわいそうじゃないですか……!!」
「奇数組ちょっと黙ってろ、まあそう思う気持ちも分かるよ?全体的に姉貴とうてながほむらに甘いんだよいつも」
「なんですか……どれみだってほむらを甘やかしてるようにもみえますが?」
「反面教師って言え、妹にはあたしやバカ姉貴みたいな野蛮な奴になってほしくないんだよ」
「反面教師ねえ……この間軽く聞いたけどそんな酷かったのか?」
「そりゃまあ酷いのなんのって、かな姉なんてマジ勝負になったら勝てねーから」
「へぇ詳しく」
「ん!」
話が全然進展しないことにとうとうこりすもツッコミを入れてグダグダが許されないとばかりに、うてなより上の姉たちがカンペを広げて一斉に開示していく。
「除霊プロレス野郎!!」
(長女は見るからに名前の時点でヤバそうなB級、下手すりゃZ級映画が好みか、まあインパクト的にはそうか)
「ブルーローズの花束……なんですか文句ありますか」
(次女は恋愛モノか……年齢層的にはおかしな話でもない、色恋沙汰に興味あるのは確かに意外ではあるな)
「は?一番はなんつってもヘルマスク・ゾンビだろこの時期!」
(うげぇマジかようさぎんホラー派か、それもだいぶスプラッタなやつ……まだ小さい妹にも見せるって分かってるよな?空気が読めないところがある)
「水平線タイムリミット、やっぱ引き込まれて誰でも楽しめるのはサスペンス系だからな」
(口悪いけど四女が一番真面目に考えてるんだよな……アタシでもあのラインナップだったらまあ推理系見るかもしれないし……)
「スーパー戦隊クライマックスシリーズバージョン2.5仕様」
「論外」
「考察の余地なしは酷くないキウィちゃん!!」
「それで最後に私は……その、実はかな姉さんと被っちゃった、ブルーローズの花束……」
「うてな!?色を知る歳でしたかっっ!!?お相手は!!?」
「姉さんうるさいです……貴方、こういう時でも魔法少女アニメの映画を見に行くはずだったのに……本気ですか?」
「だな、なんだかんだ第2希望はうてなにすること多いけど……まだ気にしてるのか?」
「うてなっちなんかあったわけ?」
「……話していいやつかコレ?」
「うん、そんな嫌ってことの話でもないから……」
決心したようにうてなは話す、最近魔法少女作品を見ても何か物足りなく感じてしまうこと、飽きが来てしまったのか?これまで好きだったものを心から推せなくなったことに恐怖感を感じている。
魔法少女作品にあまり乗り気でないこともこれが理由である。
「なるほどそりゃ重症だな」
「うてなっちの魔法少女好きはもう相当だったからな……あーしだったらアイデンティティ崩壊ものよ」
「私……魔法少女のこと好きじゃなくなったのかな……うわ」
悩んでいるところにヴェナリータが窓を叩いているのが見えて、ほむら除く姉妹達も目を合わせて合図を送り、キウィにさりげなく伝えて意図を理解する。
「えーと末っ子のほむらか、こりすが菓子欲しがってるからなんか持ってきてくれよ」
「わかりました!こりすちゃんのことは任せてください」
「ん」
こりすを連れてほむらを離してもらうと、窓を開けてヴェナリータが入ってくる。
こうして家族一同で揃って顔を見るのは初めてか。
「改めてボクがヴェナリータだ、といっても観察してたんだっけ?マジアベーゼのことも含めて」
「お互い取り繕うのはやめたって感じかウサギ野郎」
「どうせ皆マジアベーゼの事は知ってるんだろう?うてなにバレた今コソコソする必要もない……と言いたいが、まだ末っ子には話してないのか」
「言えませんよこんなの……ほむらに見られたらなんて思われるか……というか本当は姉さんにもバレたくなかったのに……」
「かなはそういうところありますからねえ……」
「いや姉さんが監視カメラ欲しいとか言い出したんじゃないですか……」
「そんなことはともかく、君たちの話を通してうてなの問題はよーくわかった、他でもない君たちだ」
「はあ?」
柊シスターズはヴェナリータを掴み睨見つけるように牽制するがヴェナリータは全く動じる様子もない、こけおどし程度にも感じていなさそうだ、世界征服の先導者がこの程度で怯えるはずもない。
「私の問題?それって一体」
「言ってしまえば君の欲望は縛られている……まず一つが隠しておきたい気持ち、家族という強いものが君の本心の邪魔をする……さらにこれは反面教師という感情にも表れているね、過去に感情をコントロールせず荒々しかった姉たちを見てさらけ出すことを悪だと無意識に決めつけている」
「うてなに何吹き込む気か知らないですが……悪い子にしようというのならこちらも考えがありますよ」
「好きにすればいいさ、お互い仲良くするつもりはないし……君らもうてなの事言えるのかい?柊かながクロノス・シンジケートという悪の組織のトップだったこと含めて家族に話せない秘密を抱えているくせに」
「は?」
ヴェナリータの発言で空気が一変する。
家族の中に亀裂を生み出そうとしているのが感じられる中、どれみがヴェナリータをぶん投げて右手を強く握りしめると右手から稲妻のオーラが宿っていく。
「なっ!?」
「スタンガン!!パァァンチ!!!」
そのままアッパーカットをかけるとヴェナリータの顎部分がぐにゃりと曲がりそのまま空へと飛んでいく。
全く動じてないようでまだ星になった演出中なのにひょっこりと別個体のようにタンスを開けて出てくる。
「どれみ姉さん!?今の何、必殺技!?」
「人生生きてりゃそんなこともあるんだよ……あのバカはこれ使っても勝てなかったけどな」
「そういえばどれみがこれ使ってた頃はまだ赤子でしたものね、スタンガンパンチ」
「待てよ家族内の内輪ネタみたいに消化するな、部外者のアタシが入り込めない……」
「もう一回!どれみ姉ちゃん今のパンチもう一回やってぶっ飛ばしてよこんなやつ!!」
「簡単に言うな!!必殺技をそんなバンバン使えるわけないだろ戦隊だってそうだろうが!!」
「待ってろどれみ、あーしが今チェーンソー持ってくるから」
「うちそんなのあったの!?」
「っていうか戦隊!!そうだ今からでもあの人に連絡入れよう!!悪いやつ倒すのは戦隊の仕事じゃん!」
「残念だがその願いは敵わない、君お姉さんに相談したんだろ?戦隊とやらが欲しいって……ああもうなんか思い出すだけで疲れてきた、キツかったんだよ鑑賞会」
「え?かな姉ちゃんもしかしてなんとかするってエノルミータに対してなの!?私パンタノペスカさんに頼んじゃったよ!?」
「仕方ないじゃないですか……クロノス・シンジケートでも人を作るヒマなんてないんですよ……ま、それはこっちも似たようなものですが……」
「えっうてな!?どういう……」
「まあそういうことだけど……というか私も乗り気じゃないんだよなあトレスマジア(略)」
「どんどん略されているじゃないか!!いいだろ『トレスマジアよりサンマジカルの方が超かっこいい作戦』!!」
「あっ田中さん」
どんどん柊家にエノルミータの関係者が集まってきてもうどっちがアジトらしいのか分からなくなってくるが少なくとも悪の組織扱いされてもおかしくない。
なんかもうほむらに誤魔化しが効かなくなりそうだが当たり前のようにキウィ、こりす、田中(ロードエノルメ)が馴染んでいる。
「ヴェナリータ、後は私が話をつける……お前は魔力補充に戻れ」
「まあ元々君の考えた作戦だしそうなったのも君のせいだ、その辺の帳尻合わせはなんとかしてもらうからね」
ヴェナリータが出ていき、ようやくこりすもほむらを連れて帰還したがエノルミータIn柊家の構図は変わらない。
「あれ?お客さん増えました?」
「ほら……前になぎさが就活してたじゃないですか、その時に一緒だった……田中さんです」
「田中だ、主に世界征服を希望する仕事を探している」
「はははおもしれー」
「ある意味笑い事じゃないけどな……というか、あたし達の家っていつからこんな騒がしくなった?」
「7人姉妹の時点で今更だろ……それでロー……田中さんは何のためにここに?」
「なぎさに聞きたいことがあってな、例のパンタノペスカについて」
(露骨ぅ……多分流れからして田中さんってエノルミータの仲間だしなぁ、話したくね〜)
「パンタノペスカさんと話したこと田中さんも知ってるわけ?」
「私もパンタノペスカのことは個人的に気になってな、最近は治安も悪い」
「治安悪くしたの貴方ですけどね」
「なんか言ったか」
「なんでもありませーん」
パンタノペスカと会って戦隊を作ってもらう話については、謎の魔法少女を知るなぎさに関心が集まる。
まるで一緒になってテレビを見ているかのような馴染み具合だがほむらとしては賑やかな方がいいので気にしてないがセットを片付けながらパンタノペスカの話をする。
「戦隊について相談したらあの人が作ってくれるっていうんだ、なんでも石膏したらそっくりに動かせる魔法を使えるみたいで」
「ふむ、石像を操る魔法か……しかしよく連絡が取れたな、私も調べてみたが国籍はまるで出鱈目で番号ももらっていないぞ」
「え?海外の魔法少女とか言ってたよな?」
「うさぎ姉さん、日本以外に魔法少女はいないよ……もしいたら援軍とか来るしニュースにもなってるよ」
「それに関してだけど……なんかパンタノペスカさんの方から家に来たんだよね、なんで住所知ってるんだって聞いたら魔法少女ならこれくらい当然って言ってた」
「えっ怖っ」
「まあ魔法少女ならそれくらいできるか……」
「魔法少女に甘いようてなァ!」
「それでなんかお近づきの印として魔法でどんなものでも作ってあげるって言うから私はオリジナルの戦隊をお願いしたんだよ」
「げっオリジナルですか……我々は魔力戦隊サンマジカルを元にするのに」
「そういえばそんなこと言ってたっけ、それでパンタノペスカさんさ、姉ちゃんやうてな達の欲しいものも作ってくれるってさ」
「えっマジ?石膏とはいえなんでもいいわけ?どれみなんかある?」
「いやいらねーよ石造りのギターとか……姉貴はなんかあるか?」
「うーーんそれってなんでも石で作ってくれるんですよね?それでいて動ける……ひいらぎががらーんとしてさびしいのでサクラを雇ってもらいましょう!」
「姉貴それ自分で言ってて悲しくならねーのか」
「ちょっと涙出てきました……せっかくだからうてなも何か頼んでは?敵とはいえ推しでしょう?」
「……そのパンタノペスカさんって本当に魔法少女?かな姉さんのクロノス・シンジケートみたいな例もあるし……」
「実際私も同じ事を考えている、魔法少女の厄介な所はこの機密性だ……だが好都合だ、作戦を更に変更するぞ」
「あの田中さん、そういうのは貴方のアジトでやってくれませんか?ウチは秘密基地じゃないんですけど」
「世間的には秘密基地みたいなものだろ、何普通の家ですみたいな面構えしている」
強引にリードを取り、備え付けのホワイトボードに勝手に作戦を立てたりなぎさの部屋から小道具を借りたりする。
ロードエノルメはエノルミータから出てもなかなかに唯我独尊だが、こんな状況でも冷静に受け答えする柊姉妹のメンタルもすごいと思った。
うてなとしては呑気にしてるほむらがいつ変なこと言ってるかヒヤヒヤしてしょうがない。
「なんの話をしているのですか?」
「ああそうだな、将棋とかチェスとか……盤上競技の話をしているんだ、ただし使うのは戦隊……何ちょっとした賭けだ、パンタノペスカの作るオリジナル戦隊と、私たちが手配する魔力戦隊サンマジカル、どっちがかっこいいかという対決みたいなものさ……」
「というかうてな、あんた勝手に私のフィギュアパクってたんだ」
「いやちょっと借りるつもりだったというか……ちゃんと伝えるつもりだったの!こりすちゃんにどうしても与えたくて!」
「……はあ、本当にこういうところでしょうがないオタク妹を持ったものだなぁ、田中さんいくら出費が必要ですか?」
「なっ……なぎさ!?」
「何が望みだ?お前由来の作戦だ、何かしらのワガママを私に答えさせる気だろう」
「さすが総帥様は話がわかるね、簡単なことだよ……戦隊ロボも出してくれなきゃ貸してあげない!」
「いいだろう戦隊ロボか!シスタギガントの代わりにはもってこいだな!」