異世界でVtuber事務所を立ち上げた馬鹿〜初配信まで数百年〜   作:哀上

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魔法

 字がまるで理解出来なかった。そりゃそうだ。勉強もしてないのに読めるわけがない。元々、英語とかも苦手だったしな。別世界の文字なんて読めなくて当然。

 

 幼女メイドと意思疎通取れてただろって? どうも、彼女とあまり不自由なく話せてたのは元の頭脳のおかげっぽい。無論、前世の方ではなく今世の3歳児の方の。幼児の柔軟な頭に感謝。まだ年相応のたどたどしさはあるだろうが、それでも喋れるのと喋れないのじゃ雲泥の差だ。

 

 ……これ、もし早めに記憶取り戻してたら詰んでたかもな。

 

 せっかくの赤子の真っ白なキャンバスに、俺の前世の記憶なんてインストールして。手がかりもなしに異世界の言語解析を1からやらされる羽目になってた可能性。英語どうこうのレベルじゃない。教材なし、辞書なし、手がかりはボディーランゲージ。そんな言語学者みたいな事はごめん、ってか不可能である。

 

 赤ちゃんプレイどこうとか、本当に些末事だった。そういう次元の話ではなく、割と俺の人生に直結するタイプの問題。記憶取り戻したのが今で良かったぁ~。

 

 とは言え、本はまだ少し早かったか。ま、3歳児だしな。しゃーない。ただ、記憶を取り戻しちゃった以上今日以降の言語習得にかなりの不安要素が出る。いや、今更どうしようもないんだけど。会話出来るだけマシか。文字の方は聞きながら覚えてくしかない。それで今は満足しておこう。

 

 こりゃ、本を読み始めるまでに相当時間かかるな。

 

 プランの初手から瓦解とか、幸先の悪い。とは言え、時間は有限である。10で神童、15で才子、20過ぎれば只の人。順調に神童ルートから外れていってる気しかしないが、3歳でこれじゃ成長すればもっと厳しいのが目に見えている。今がチャンスなのだ! 中身凡人の俺が天才ぶれる。

 

 本がダメなら次の一手だ。

 

 魔力ってのは幼いほどよく伸びる。今から鍛えれば、数年後には本職の魔術師すら圧倒する膨大な魔力が手に入る可能性が高い。これで行こう。ん? どこでそんな知識を得たのかって? ただのテンプレである。前世読んだ物語の世界じゃ、幼少期は魔力の伸びもいいのが定番……

 

 いや、待ってほしい! 確かに、我ながら酷い暴論だとは思う。根拠が前世の物語のテンプレってのは。でも、だ。ここまでテンプレ的なファンタジー世界。俺をこの世界に転生させた推定女神様も、チートスキルがテンプレだとかなんとか言ってたし。ここに来てそこから外れる方が不自然だろ? この世界じゃテンプレに従うことこそが吉と見た。

 

 肝心の伸ばし方に関しては。まぁ、魔法使って魔力を使い切ればその度にちょっとずつ伸びるとか、魔力を体内で循環させれば器的なものが拡張されて増えるとか、空気中の魔力を感じ取って体内に取り込むだとか。物語によってその方法はバラバラ。だが、今の俺は幼児。日々何かに追われてる訳でもない。時間は有限ではあるが、持て余してもいるのだ。端から試していけばいい。

 

 ……

 

 で、魔法ってどうやって使うの?

 

 まずは、脳内でイメージしてみる。火、は危ないから水にするか。手を突き出し、そこから水流が溢れるイメージ。……うんともすんとも言わない。このまま力んでれば汗ぐらいかくかもしれないが、それを水魔法と言い張るのは流石に苦しい。

 

 主人公たちってどうやって魔法使ってたっけ。ダメだ。あっさり流されすぎてて全然記憶にない。テンプレならもっと簡単に。ってか、女神様に魔法もらってればこんな悩まずに済んだんだよな。魔力を使い切るのは、魔法さえ使えれば簡単。それで使いきれないならはなっから天才だったってことで喜ばしい限り。魔法さえ使えれば魔力を体内で動かす感覚も会得できるかもしれないし、空気中の魔力だって感知できるかも。少なくとも、この何のヒントもない今の状態よりはマシ。

 

 いや、後悔しても仕方ないのだけれど。あれだ。女神様が言ってたリスク。もし魔法貰ってたら、転生に失敗してたかもしれないし。そう考えれば、ね。命には変えられない。貰わなくて正解だった。うん、そういうことにしておこう。

 

 過ぎたことは忘れて、テンプレの話に戻る。思い返してみると、魔導書を盗み見て隠れて練習してる場面とかあったような。それで規模がデカくなり過ぎて壁を壊したりするのもあるある。が、これは本末転倒である。そもそも文字が読めなくてこっちに切り替えたのだ。先に文字を覚えるって手も無くはないが、俺の地頭じゃ何年かかるか。魔力の成長は幼少期が肝なのだ。

 

 何年もかけて文字を覚えて、そっから魔法の練習して……。もはや神童でもなんでもない! 簡単な魔法なら、俺の少し年上ぐらいでしかない幼女メイドでも使えるのだ。

 

 ……ん? そうじゃん! 彼女、さっきおもいっきり魔法使ってたじゃん。

 

 身近に教師がいた。文字も魔法も彼女頼りとか、我ながら情けない。俺よりお姉さんとはいえまだ幼い、しかも本職はメイドである。本当はプロに教わった方がいいんだろうけど、こんなカツカツな我が家が予備の俺に幼少期から家庭教師をつけてくれるとも思えないしな。贅沢は言えない。

 

「まほう、おしえて!」

「お勉強の次は魔法ですか。流石エルン様です! でも、魔法はまだちょっと早いかもしれませんね。もう少し大きくなったら一緒に練習しましょうか」

 

 はい、詰んだ。




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