異世界でVtuber事務所を立ち上げた馬鹿〜初配信まで数百年〜   作:哀上

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幼女メイド

 すげなく断られてしまった。そりゃそうか。魔法っていうと、転生したばっかの俺からしちゃファンタジーでどこか現実味のない不思議な力っていうふわふわとした認識しかないが。実際、火付けたり水出したり出来るんだもんな。

 

 3歳児にそれは流石に早い。部屋を水浸しにしちゃったとかならまだ可愛いもんだが、火事は本当に洒落にならないし。

 

 理解は出来る、出来るのだが……

 

 文字は読めない、魔法も使えない、貰ったチートも役立たず。せっかく転生したってのに、幼少期の内すら天才ぶれないってマ? 成長するにつれて化けの皮が剥がれるとかでもなく、はなっからその可能性すらないとか。これは酷い。

 

 幼女メイドに断られたからと他の人に頼んだとて、教えてくれるとも思えないしな。おそらく答えは一緒だ。まだ早い、もう少し大きくなったら。完全に詰みである。夢の神童ルート、オワタ。

 

 ……いや? 一応手がなくもないのか? 教わるのは無理でも、見て盗むとかなら。まぁ、本当に見て盗むだけだと文字覚えるより時間かかるだろうけど。そこは一工夫。さっき幼女メイドにかけてもらった回復魔法。特に何か魔力的なものは感じなかったが、効果的に俺の体組織に干渉してきてるのは確実。わざと怪我して、その度にかけてもらって。その反復で覚えるって戦法なら。

 

 ま、考えてはみたけどこれは流石に無しか。さっきの彼女の慌てよう。心労かけてどうするよ。幼女にあんな顔させて、それをわざと繰り返すとか胸が痛い。まるでSNSに取り憑かれた現代社会の毒親である。前世の俺はとても立派な大人とは言えなかったが、そこまで終わってもない。

 

 それに、だ。普通そんな頻度で怪我するか? 子供に怪我はつきものだが、あまりに繰り返すのも考えものだ。そもそも神童ルート目指そうって話なのに、無能扱いされるのはまずい。本末転倒もいいとこだ。発言の説得力が消え、神童の柔軟な発想ではなくバカの突飛な発想になる。それは困る。

 

 この方法はアウト。他に何か方法は、何か今の俺でも周囲から神童だと思われる方法……

 

 ダメだ、考えても何も出てこない。嘘だろ? いくら俺が凡人とはいえ、3歳児の体に大人が入っててそんなことある!?

 

 ……

 

 寝るか。

 

 いや、別にふて寝じゃないよ? うん。まだ3歳児、子供も子供。寝るのも立派な仕事である。それに、煮詰まったから睡眠って悪い物じゃない。このままあれこれ考えてもしゃーないしね。案外、寝てる間に脳内が整理されて名案でも閃くかもしれない。

 

 前世の記憶、思い出したのはついさっき。実質転生初日なのだ。幼児の記憶と前世の記憶が混ざって、一気に情報増えた。その整理の時間が必要である。

 

 後、単純に眠い。窓の外を見るにまだまだ日は高いのだが。ま、子供なんてこんなものかね。幼児の眠気は抗い難い。

 

「エルン様、おねむですか? ベッドまで行きましょうねぇ~」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 何かが聞こえる。意識がぼんやりしててうまく聞き取れないが。これは怒ってる、のか?

 

 薄目を開ける。知らない天井……あ、そういや俺って転生したんだっけ? そうか。気にしてなかったが、この部屋の天井ってこんな感じだったんだ。貴族の家らしいというか、なんというか。何やら不思議な模様が刻まれている。脳内でそんな事を考えつつ、ぼんやりとした視界を音の方向へ向けた。

 

 音の発生源は幼女メイドだった。何かをぶつぶつ言っている。そして、手元には本。俺が読もうとして諦めたやつだ。そのページを1枚ずつビリビリと破き、くしゃくしゃに丸めて壁に投げる。

 

 こりゃ、随分とイライラしてらっしゃるご様子で。

 

 あれ? あなた、そんな感じでしたっけ? 俺の、というより転生前の幼児の記憶の中じゃ。とっても優しいお姉さんで、年齢以上に大人びてて、まさに憧れの人、そんな感じのイメージだったんだけど。本当に同一人物か?

 

 あんな独り言いながら、本のページ破ってはそれを壁に投げつけて。あ、それじゃ収まりつかなかったのか、表紙を思いっきりグーで殴った。痛かったらしい。涙目で本を睨みつける幼女。

 

 そんな様子をしばらく眺めていたのだが、ふと目があった。俺が起きたことに気づいたらしい。

 

「……あ、エルン様。お目覚めですか?」

 

 俺と目があった瞬間、ニコッと笑って。いつもの、幼児の記憶の中にいる彼女の姿に戻った。怖い怖い怖い……

 

 どっちが本当の? いや、十中八九今のが本性だろ!

 

 まぁ、彼女はまだ小学校低学年とか年長さんとかそれぐらいの年齢。その年で仕事として幼児のメイドをしているのだ。そこにかかるストレス。まるで経験したことがないので想像しかできないが、相当溜め込んでるに違いない。

 

 その結果としてのさっきの行動なのだろう。仕方ない面はありそう。同情はできる。これが画面の向こう側なら、俺はきっと彼女の擁護側の立場をとっていた。けど、身近それも自分のメイドだと思うと話が変わってくるというか。

 

 今は本で済んでるが、それが他に向いたら? 俺に当たってきたりしないだろうな。転生して数日と持たずに幼女メイドに殺されるとか、ごめんである。

 

 こいつに預けるとか。俺の親は何を考えているんだ。

 

 確かに俺は次男、長男の予備でしかない。待遇が悪いのとか、後回しになるのとかは理解できる。でも、予備だぞ予備! 予備は生きててこそ意味がある、違うか?




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