聖戦士アムロ   作:くまぷーⅢ世

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 独自設定やご都合主義などが多数有りますので、苦手な方はブラウザバックでお願いします。


1:召喚

 

 アの国の地方領主、ドレイク・ルフトの居城であるラース・ワウ。

 夜も更け始めたころ、その奥にある中庭に眩いばかりの光とともに一人の男が顕れた。

 

「よし、成功だ!」

「シルキー・マウの様子はどうか!?」

「かなり疲れて衰弱しております! 今夜はもう限界かと」

「仕方あるまい。水牢に戻せ!」

「はっ!!」

 

 ざわめく中庭の中央付近に置かれていた鉄檻。

 その中には、不可思議な雰囲気を持つ女性――エ・フェラリオのシルキー・マウが倒れ伏している。

 

「檻を上げろ! あまり揺らすなよ! よし、そのまま水牢へ下ろせ」

 

 木で出来たクレーンのようなもので鉄檻が持ち上げられ、城内に設置された清水に満たされた部屋――水牢へと沈められていく。

 シルキー・マウも檻に入れられたまま一緒に沈んでいくが、エ・フェラリオである彼女は溺れることなどなく水底でほっとしたような表情となり、疲労と心労からすぐに眠りについた。

 

「四人目は成人の男か。歳の頃はショット様、ゼット様と同じくらいか?……しかしずいぶんと奇妙な服を着ている。ヘルメットも見たことのないものだな。先日召喚されたショウ・ザマが着けていたものともまた違うようだ」

 

 そんな言葉を受けつつ、召喚された男――アムロ・レイは上半身を上げ周囲を見回し、愕然とした。

 まるで旧世紀のヨーロッパの城のような建物、だろうか。地球にもまだそういった遺跡などは現存しているが、またそれらとも違った雰囲気である。

 アムロの周りを取り囲む兵士のような人間も、身に着けているものは博物館や資料映像でしか見たことのない、古めかしい革作りの胸当てや甲冑のようなものだ。おまけに、数頭の大柄な馬……というか、角が有るのでユニコーンらしき生物までいる。

 

(なんだ、ここは……俺は地球へ落下するアクシズをみんなと一緒にνガンダムで抑えていて……)

 

 そして、周囲が光に包まれ――恐らくνガンダムはその手に掴んだサザビーのコックピットとともに爆発し、アムロも――そしてシャアも死んだのだろう。

 だが、しかし。

 

(いや、俺は生きているようだ。が……)

 

 まだ靄がかかったような意識を振り払い、アムロはヘルメットを脱いだ。

 

(俺は地球へ落ちたのか? いや、それにしてはおかし過ぎる。νガンダムに乗ったまま落ちたはずだから、例え助かったのだとしてもこんな生身のまま地上に転がっているわけはない。とにかく、まずは現状を知るのが最優先だな……)

 

 アムロは数回深呼吸をし、己を落ち着かせる。

 

「言葉はわかるかな? 私はアの国の領主、ドレイク・ルフト様に仕えるルフト家騎士団長のバーン・バニングスという者だ。良ければ、貴殿の名前を教えてもらいたい」

 

 と、アムロが落ち着くのを待っていたかのように、薄青み掛かった銀髪の男が声を掛けて来た。

 

(アの国? 領主? 一体何なんだ……まるで、旧世紀の地球で流行っていたアニメーションのような……? しかし、これはアニメじゃない。どうやら現実らしい)

 

 明晰な頭脳を持ち、ニュータイプとしての優れた感応性を持つアムロには、目の前の男が嘘やデタラメを言っているのではないことがわかる。

 

「……俺は、地球連邦軍ロンド・ベル隊所属のアムロ・レイ。階級は大尉だ。それよりも、一体ここはどこなんだ。そして、どういう状況なのかを教えてもらえるだろうか」

「ほう、軍人なのか。その落ち着き様、歴戦の猛者と思える。もちろん、状況などすべて説明させてもらう。こんな場所ではなんなので、ご同行頂けるだろうか?」

 

 名前と所属を答えたアムロに、バーン・バニングスが微笑みつつ手を差し伸べる。

 

「わかった、お願いする」

 

 アムロは、まだ自分が地面に座り込んだままなのに気づき、差し伸べられたバーンの手を取って立ち上がった。その瞬間。

 

(うっ……この男、強い野心を持っている。いずれは、自分が伸し上がって王? か支配者にでもなるつもりのようだ)

 

 バーンの強烈な野心を感じ、顔をしかめた。

 

「大丈夫か? 気分が悪いようであれば少し休んでからでも結構だが」

 

 アムロの表情を見たバーンが気を遣うように声を掛けて来た。

 

「いや、大丈夫だ。心配ありがとう」

 

 が、アムロは目を閉じ、数回頭を振ってからそう返した。

 

「そうか。では、こちらへ」

 

 アムロを先導するように歩き出したバーンについて、アムロも歩を進める。

 と、足に伝わる本物の地面――土の感触が懐かしく、アムロはふと笑った。

 

「何かおかしかったかな?」

 

 いつの間にか振り向いていたバーンが興味深そうに尋ねてきたので。

 

「いや、久しぶりに踏む地面が懐かしくてつい、ね。ここは、とても自然豊かな場所のようだ」

 

 アムロは心情をそのまま率直に語ってみた。

 

「地面を踏むのが久しぶり、か。貴殿はかなり特殊な仕事をしていたようだ。そういえば、ショット様に伺ったことがある。地上では、空の更に上にある宇宙という場所を開発するために従事している人々がいると。貴殿はその宇宙開発の現場に従事する軍人なのかな?」

「……? まあ、そうといえばそうとも言えるか……? だが、どこか認識のズレを感じる。そのショットという人は、俺と同じような立場なのだろうか?」

 

 バーンの言葉から、まるで宇宙開発初期の時代の話のような雰囲気を感じたアムロは戸惑いながらそう尋ねる。

 

「ショット様は地上から召喚された技術者であり、ロボット工学の権威だそうだ。現在はオーラ・マシンの開発者としてゼット様とともに活動なさっている。お二人とも地上人の中でもかなり進んだ思考や感性の持ち主であるようだが……断片的な話をすると却って混乱してしまいそうだ。まずは落ち着ける場所でこの世界や状況を説明させてもらおう。貴殿の地上での立場や状況などはその後に聞かせてもらうという事でよろしいか?」

 

(地上での立場……? 地球上での立場、ということか? いや、微妙に違う意味な気もするが……とにかく、話を聞こう。すべてはそれからだ)

 

「……了解した。それが良いだろうな」

 

バーンはアムロの返事にうなずくと、前を向き歩き出す。アムロはバーンの後を追いながら、周囲に目と意識を向け観察しておくことにした。

 

 中世の城としか思えない建物に入ると、中はよく手入れされていて現役で使い込まれているのがわかる。

 

(映画のセットやその類を使って俺をだまそうとしているわけではないな。それに、電気などの文明機器もほぼ見当たらない。なにやら太い配線のようなものが廊下を這ってはいたが、廊下の照明も燭台の蠟燭だったしな……)

 

 アムロがそう考えていると、バーンは木造りの重厚なドアの前で足を止めた。

 

「この部屋で話そう。おい、茶を持ってきてくれ」

 

そして、そのドアの前に立っていた番兵にそう声を掛ける。

 

「はっ!」

 

 ドアの左右に立っていた兵士二人のうちの一人がそれに応え、廊下を掛けて行く。

 

「では、入ってくれ。室内の適当な椅子に掛けてもらって構わない」

「わかった。ありがとう」

 

 バーンに従い部屋の中に入ると、そこもやはり中世のような雰囲気を感じさせる豪奢な部屋だった。アムロが室内の中心に配置された応接セットのようなソファーに近い革張りの低めの椅子に腰かけると、バーンがテーブルを挟んだ向こう側に腰を落ち着ける。

 

「茶を用意させているので、少々待ってくれ。喉を潤してから、話をしよう」

「ああ、了解した」

 

 アムロはそう答え、瞳を閉じた。

 そんなアムロの様子を見て、バーンは軽く畏敬の念を覚えていた。

 

(ふむ、落ち着いているな。かなりの修羅場を潜ってきているようだ)

 

 これまでに召喚されたパイロット候補の地上人三人は、程度の差はあれ混乱のあまりエキセントリックな言動を見せた。

 先日召喚されたショウ・ザマなどはいきなり殴りかかってきたことを思い出し、バーンは苦笑する。

 それに比べ、目の前の男……アムロ・レイと名乗った軍人らしき彼は、多少の混乱はしていたもののすぐに落ち着いてバーンの話を聞き、理性的に従ってくれている。

 それはまさに歴戦の軍人の風格を感じさせ、ギブン家などとの争いで実戦経験を重ねているバーンから見ても強者と見えた。

 

(この男は、恐らく只者ではない。オーラ・マシンへの適性次第ではあるが、しっかりと味方につけておきたいものだな……)

 

 バーンにとって、アムロは今後の出世を果たす為に必要な地上人と強く感じる。だが、しかし。

 

(恐らくは御屋形様も気に入られるだろう。だがもし、私を差し置き出世していくようであれば……)

 

 その時は排除することも考えねばなるまい。

 バーンはそう考えつつ、静かに目を閉じているアムロを凝視した。

 

 

 

 

「バイストン・ウェル。それがこの世界の名前であり、貴殿ら地上人が住む世界と海の間にあると伝えられている……」

 

 メイドが持ってきた不思議な味のする茶で喉を潤した後、バーンが語り出したのはアムロにとって驚くべき話であった。

 正直、意味が分からないことばかりであったが、アムロはとにかくバーンの話を一言たりとも聞き逃すことのないように耳を傾けた。

 

 三十分ほど掛かっただろうか、バーンがこの世界……バイストン・ウェルのことやアムロがシルキー・マウというエ・フェラリオ――地上でいうところの妖精の一種らしい――の力で召喚されたこと。

偶然バイストン・ウェルにやって来たショットとゼットという地上人の技術者により、この世界を構成する重要な成分の一種であるオーラ力(ちから)を取り入れて作動するオーラ・マシンが開発されつつあること。

アムロ以前にも何人かの地上人が来ていること。

そして、長い歴史の中で乱れ始めたバイストン・ウェルの平和を安定させるためにオーラ力(ちから)の強い地上人を召喚し、オーラ・マシンの一種であり、戦うために生み出されたロボット兵器、オーラ・バトラーのパイロットとなってもらうこと。

 

そういった話を一気に聞かされ、さすがのアムロも戸惑いを隠せなかった。

 

「……これで、一通りのことは説明できたと思う。何か疑問や質問などが有れば言ってほしい」

 

 話し終わったバーンがそう言いながら一息つき、冷めた茶を美味そうに飲み干す。

 

「……正直、疑問だらけではある。だが、状況は大体把握できた。それに、いま質問しようにもどう聞いていいか分からないから、とにかく自分の中で飲み込むまで待ってもらって良いだろうか」

「もちろんだ。貴殿の話も聞きたいが、今夜はもう遅いしここまでにしてゆっくりと休んでもらいたい。ああその前に、腹は減っていないか? もし空腹ならば夜食の用意が出来ているが」

 

 バーンは微笑みながら、アムロにそう声を掛けた。

 

「……そうだな、そういえば腹ペコだ。お願い出来るだろうか?」

 

 いろいろと有り過ぎて失念していたが、そういえばずいぶんと長い事食事を摂っていないことを思い出したアムロはバーンに向かって頼む。

 

「承知した。とりあえず、今夜寝てもらう部屋に案内させよう。食事や洗面用具、着替えはその部屋に届けさせる。必要ならば風呂も沸いている。隣の部屋に付き人を配置するので、なにか用が有ったらベルを鳴らして呼んでくれれば良い」

「わかった。色々と世話を掛ける」

「なに、これくらい何でもないさ。明朝はゆっくりとしてくれ。起きたらベルを鳴らして付き人を呼び、朝食をとった後落ち着いたら私を呼んでほしい」

「了解した」

「では、良い夢を」

 

 バーンがそう言い、部屋を出ていくのと入れ替わりにメイド服を着た少女が一人、入室して来た。

 

「あの、私は貴方様をお世話させて頂く使用人のファラウといいます。よろしくお願いします。では、お部屋にご案内いたします」

 

 少々おどおどとしているが、茶色の瞳は好奇心に輝いている。

 先程のバーンの話だと、召喚された地上人は英雄として喧伝され、この世界の一般的な人々――コモンというらしい――からは尊敬と羨望の念を抱かれているようだ。

 

「ああ、ありがとう。お願いするよ」

「はい!」

 

 元気良く返事をしたファラウは、アムロが立ち上がるのを待ち部屋の外へと案内する。

 

「あ、お風呂にお入りになりますか? それとも食事を先になさいますか?」

「ああ、とりあえず食事を頼むよ。風呂はそのあと入らせてもらおうかな」

「はい、畏まりました!」

 

 頬を桃色に染め、はきはきと答えるファラウを見てアムロはくすりと笑ってしまう。

 栗色のショートカットに、同じく栗色の大きな瞳。小柄だが元気に溢れているその姿は、アムロに懐かしい幼馴染の少女を思い起こさせた。

 

「あの、何かおかしかったでしょうか?」

「いや、何でもないよ。君が俺の知っている娘によく似ていたからつい笑ってしまった。すまなかったね」

「い、いえとんでもありません! 光栄です!」

 

 ファラウは嬉しそうに笑顔を見せると、アムロを案内させるために薄暗い廊下を先導して歩き出す。

 

(そういえば、名前まで似ているんだな……)

 

 元気な少女の後を追い廊下を歩き出したアムロは、窓から夜の空を見上げた。

 

(バーンの話が本当ならば、あそこに見えているのは空ではなく海なのか? 星みたいなものまで見えるけれど、どうなっているのだろう?)

 

 疑問は留まることなく溢れ出てくる。だが、現在知る術は無い。

 

(あの時、俺は死んだのか? それとも、何とか助かって昏睡状態にでもなり、今は夢の中なのか?)

 

 思考の迷宮にはまり込みそうになり、アムロは頭を振って考えるのを止めにした。

 

(とにかく、すべては明日になってからだ。明日、無事にこのまま目が覚めるとは限らないしな……それにしても)

 

「いったい、ここはどこなんだ……?」

 

 ぴょこぴょこと髪を揺らして歩く少女の後を追いかけつつ、アムロは無意識にそう呟いていた。

 

 

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