聖戦士アムロ   作:くまぷーⅢ世

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今回、ダンバインなどの名前に関して、はるか昔に見た覚えのある設定を入れていますが、正直どこで仕入れた知識か忘却の彼方ですので、作者の妄想とでもお考え下さると幸いです。
では、よろしくお願いします!


2:オーラ・バトラー

「……うん、やはり夢ではなかったか」

 

 窓から明るい朝の陽が差し込み、アムロは深い眠りから目覚めた。

 目を覚ましたらどこかの連邦軍基地の病室だったなどという事もなく、また昨日の出来事が死の間際の幻だったという事もなく。

 昨夜、ファラウに世話をしてもらい夜食を摂り、広い大浴場のような風呂に入り――ファラウがお背中を流します、と言いつつ一緒に入ってきたのには閉口したが――、ふかふかのベッドで眠りについた後、夢を見ることもなく熟睡し、そして目を覚ましたのだ。

 

「なんだか、今までの人生で最も快適に眠れた夜だった気がするな」

 

 昨晩聞いたバーンの話によれば、ここバイストン・ウェルはあらゆる生命の安息の地でもあるという。

 そんな世界だから、父母と過ごしていた地球での少年時代を除けば人生で戦いの場に身を置くことが殆どだったアムロにとって、初めてといっていい安らぎの夜を過ごせたのかもしれない。

 

 アムロに用意された部屋は、そんなに広くはないが清掃が行き届いた清潔な部屋であり、ベッドも寝具も宇宙の軍隊生活では望むべくもない程に素晴らしい寝心地であったし、用意してもらった寝間着も絹らしき布地で出来た極上の肌触りの逸品で、地上人という存在がVIPなのだと実感させられる。

 だが、アムロは昨晩寝る間際に発生した珍事を思い出し、白い天井を見つつ嘆息した。

 

(それにしても……アレには参ったな)

 

 アムロが夜食と入浴、洗面を終え、寝ようかとした時。ファラウから夜の相手をする女性を呼ぶかどうかを聞かれたのだ。

 しかも、最初はファラウ自身が相手をする気満々だった様子であるのが、地味にアムロの精神を削っていた。

 幼馴染の少女を髣髴とさせる、まだまだ幼さを残した娘がまるで娼婦のような行為をしようとした事に、かなりの心理的ダメージを負ってしまったのだった。

 

(……ある意味、一年戦争後に俺が仕掛けられたハニートラップみたいなものか。それにしてもあんな少女が……いや、時代が違うといえばそれまでだが……というか、世界そのものが違うのだから気にしてもしょうがないか)

 

 せっかくさわやかに目覚めたというのに、余計なことを思い出して少し気落ちしたアムロは苦笑しつつあくびをし、ベッドから起き上がると窓の外に視線を投げた。

 

「ん、あれは……」

 

 すると、その視線の先にふよふよと空を飛ぶ円盤のようなものが捉えられた。

 菱形のボディ四方から触手のようなものを生やし、機体の最上部には甲冑を着た兵士が手すりに掴まって乗っている。

 

「あれが、オーラ・マシンか。うーん、正直不格好だな……」

 

 アムロの知る宇宙世紀の、モビル・スーツを始めとするマシン群に比すると非常に原始的なものに見えてしまう。

 

「なんだか、クラゲみたいだ。マシンというよりも生き物っぽいな」

 

 アムロは、まだオーラ・マシンの成り立ちや構造などについては一切聞かされていないが、アムロ自身が優れた技術者でもあるので、その瞳に映るオーラ・マシン……オーラボンバー・ドロについてその成り立ちを鋭く予測した。

 

 アムロの知る宇宙世紀では、マシンといえば一部の特殊な例外を除き無機質なメカで構成されたまさに機械だが、この世界、バイストン・ウェルにおいてのオーラ・マシンの構造は生物に近いものがあるのだ。

 外装を覆う装甲は強獣と呼ばれる怪獣のような生物の外殻や皮膚などを加工されたもの、各種動力を伝達する駆動装置はその筋肉を加工したものと、まさに生物由来の素材で構成された生体マシンなのである。

 

「だけど、火や炎を噴射するでもなく重力下の空を飛んでいる。それがオーラ力によるものなんだろうか……興味深いな」

 

 技術者魂が刺激されたか、アムロはオーラ・マシンに強い興味を惹かれたようだ。

 

「まあとにかく朝食を頂くか。ファラウを呼ぶには……」

 

 アムロはベッドの枕元に置かれたベルを鳴らす。と、

 

「おはようございます、アムロ様! お目覚めでしょうか?」

 

 十秒もしないうちにドアがノックされ、廊下からファラウの元気な声が聞こえて来た。

 その元気溌剌な様子に、アムロは思わず苦笑してしまう。

 

 

 

 ――昨晩、アムロに夜伽を断られたときにはこの世の終わりのような顔で落ち込み、

 

「やはり、私のような貧相な体つきではお気に召さないのでしょうか……」

 

 などと涙目になりつつも、

 

「でしたら、もっと豊満でアムロ様がお好みになられるような女性をご用意することもできますが、如何いたしますか……?」

 

 と悲しそうに聞いて来て、慌てたアムロが

 

「いや、ファラウが好みじゃないとか豊満な女性が良いとかじゃなく、疲れているからゆっくり眠りたいんだ」

 

 そう、頭を撫でて言い聞かせると

 

「はい、わかりました! ではごゆっくりお休みなさいませ!」

 

 ファラウは途端に元気を取り戻し、にっこりと微笑んでアムロの部屋を辞したのだった――

 

 

 

 恐らくは、ドアの向こうで満面の笑みを浮かべているであろうファラウに向かい、アムロは声を掛ける。

 

「ああ、おはようファラウ。朝食の用意を頼めるかい?」

「畏まりました! 少々お待ち下さいませ!」

 

 そうアムロが頼むと元気な声でファラウが応え、タタタ、と廊下を掛けて行く音が聞こえた。

 

「ファラウはどんな身の上なのかな。不幸でなければ良いんだが……」

 

 幼馴染の少女に似ているからか、またその明るく人懐こい気性を感じたからか、たった一晩で彼女に情が移ってしまったらしい。

 そう気づいたアムロは自嘲気味に笑ったが、なぜか悪い気はせず大きく伸びをして背骨をパキパキと鳴らした。

 

 

 

 ファラウの甲斐甲斐しい世話で朝食と洗面を終え、少し迷ったがノーマル・スーツを着るのは止めてこの世界の一般的な服に着替えたアムロは、昨日説明を受けたのと同じ応接室のような部屋までファラウに案内され、ソファに腰かけてバーンがやってくるのを待っていた。

 と、ドアがノックされたので入室を促すと、革の甲冑で身を固め、ヘルメットを抱えたバーンがドアを開けて入って来た。

 

「やあ、おはよう。よく眠れたかな?」

「ああ、おかげさまで。とても快適な夜だったよ」

「それは重畳。さて、私のことはバーン、と名前で呼んでくれて良い。貴殿はなんと呼べば良いだろうか?」

「じゃあ俺のこともアムロ、と呼んでくれ」

「わかった、よろしくアムロ」

「こちらこそ」

 

 アムロはソファから立ち上がり、バーンが差し出した手を握り返す。

 

「さっそくだが、アムロさえよければこれから行う演習を見学してもらいたい。今朝は君よりも先に召喚されている地上人三人が初めてオーラ・バトラーに搭乗して慣熟訓練を行うので、せっかくだから君にも見てもらいたいのだ。君の事情や立場などを聞かせてもらうのは今夜でも構わないだろうか?」

 

 バーンが少し申し訳なさそうに言ってきたが、オーラ・マシン……とりわけ戦闘用ロボット兵器であるというオーラ・バトラーはアムロにとっても非常に興味深い。

 

「ああ、問題ない。というよりも、ぜひ見てみたいな」

 

 アムロがそう答えると、バーンは嬉しそうに笑い。

 

「やはり、軍人として血が騒ぐようだな。地上人三人は支度をしている最中だから、彼らを紹介するのも演習が終わってからにしよう。では、一緒に来てくれ」

 

 そう言って、アムロを連れて歩き出した。

 

 

 しばらく歩き、多数の兵士や軍装をした角の生えたユニコーンのような馬――ユニコン・ウーというらしい――が列をなしている広い庭、というかグラウンドのような演習場に出る。

 演習場の中心付近には、今朝方窓から見えたオーラマシン・ドロが数機着陸しており、さらにその真ん中に三機のロボット兵器――オーラ・バトラーが膝をつくような姿勢を取っていた。

 まだ地上人のパイロットは出てきておらず、メカニックマンらしき兵士が各部の点検をしている。

 バーンに連れられたアムロはその足元付近にまで近づき、三機のオーラ・バトラーに目を奪われた。

 

「アムロ、これが我がドレイク軍の誇る最新の試作オーラ・バトラー、ダンバインだ。名の由来は、ルフト家に伝わる伝説の守護神の名を頂いたものだ。守護神ダンバインは三柱存在し、バイストン・ウェルに悪鬼が蔓延り世界に危機が訪れた時、この世界の主神サーバインの先鋒として悪鬼を打ち滅ぼす役目を果たすのだという」

「これが、オーラ・バトラー……ダンバイン……」

 

 少し得意げなバーンの説明を聞きつつ、アムロは三機のダンバインを注意深く観察する。

 

(これは、ずいぶんと小さいな。膝をついているとはいえ、立ち上がっても体高は10メートル……いや、7メートル程度だろうか。モビル・スーツの三分の一程度しかないみたいだ。カラーリングはダークブルーにグリーン、そして薄いパープル。ダークブルーは夜や宇宙……はないか。グリーンは森などの自然の中。そしてパープルは朝方や夕方に対応する迷彩になるのだろうか? それにしても、これはちょっと驚くようなカタチをしているな……)

 

 その機体の小ささもさることながら、アムロの興味を強く引いたのは形状――そのデザインの奇抜さだ。

 一応、二腕二足の人型ではあるようだが、まるでカブトムシのような頭部を始め、腕や脚の形状。艶のない、まるで固い革を張り付けたような装甲表面。さらにはまるで鳥類……いや、恐竜のような生物感丸出しの上に爪の生えた足には驚くしかない。

 

(背中には胴体よりも大きいくらいのランドセル……いや、これは可動式の推力噴射装置なのか? それより、半透明の昆虫みたいな翅が生えているが……)

 

 あまりにも奇々怪々なその姿と構造に、アムロは絶句してしまう。

 

(これはもう、俺の知るモビル・スーツとは全く違う技術体系で製造されているのだろうな。腕や脚の関節にも何やら細い動力パイプのようなコード類がぎっしり走っているし、これは本当に興味深いな……)

 

 やはり技術者魂が騒ぐのか、目を輝かせてダンバインの各部を観察するアムロを見て満足気に微笑んでいたバーンだが、オープンタイプの馬車に乗せられてこちらに向かってくる三人の地上人に気付き、

 

「アムロ、夢中になっているところ悪いのだがそろそろ演習開始の時間だ。ダンバインのパイロット候補の三人には後ほどちゃんと紹介したいので、安全な場所まで離れてもらえるだろうか?」

 

 アムロの肩を軽くたたき、そう頼んで来た。

 

「あ、ああ、了解した。あまりにも、俺の知るロボット兵器と違っていてつい見入ってしまった」

 

 アムロの返事に頷いたバーンは、手近にいる兵士に指示を出す。

 

「おい、この方を演習が良く見える場所まで案内して差し上げろ。あの城壁の上が良いだろう。ではアムロ、私も演習を監督せねばならないので一度失礼する」

「ああ、気を付けて」

「ありがとう」

 

 アムロに一礼したバーンは、ダンバインの足元に立った三人の青年たちのもとへと向かって行く。

 

「それでは、こちらへお乗りください」

 

 アムロがバーンを見送っていると、バーンの指示を受けた兵士がアムロを小型の馬車へと案内したので、言われるままに乗り込んだ。

 

 走り出した馬車に揺られつつ、アムロはバーンから説明を受けているらしいパイロット候補の地上人三人に目を向ける。と、一人だけ、一番若そうな黒髪の男が振り向いてアムロと視線を合わせた。

 と、その瞳に強い輝きを感じ、アムロはゴクリ、と喉を鳴らした。

 

(……彼から、強い力を感じる……ニュータイプ、か? いや、違うな。この感覚はまたニュータイプとは違うものだ……もしかするとこれがオーラ力というものなのか?)

 

 アムロはしばらく黒髪の青年と視線を合わせていたが、青年がバーンに声を掛けられ視線を外した。

 そして、パイロット候補の三人はヘルメットを被り、気合の声を上げつつ各々に与えられた各色のダンバインへと駆けて行き、コクピットに乗り込んだ。

 

「こちらの階段から、城壁の上へお上がり下さい。お気をつけて」

 

 そしてアムロは兵士に誘われ、一際高い城壁の上へとのぼり、ダンバインが飛び立つのを待つのだった。

 

 

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