聖戦士アムロ   作:くまぷーⅢ世

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いつもありがとうございます。
たくさんの閲覧・評価・感想・ご指摘を頂きまして感謝感激です!

なお、話の中に出てくる伝説の聖戦士につきましては、そのうち本文にて触れる予定ですのでお待ち頂けると幸いです。
また、本編ではバーンやガラリアの設定を大幅に捏造・ハイパー化して(盛って)いますのでご注意下さい!

ご指摘頂きました箇所や誤字については、今週末に自分でも見直しつつ修正させて頂きます。

それでは、お楽しみ下さい!


5:騎士たちの肖像

「まさか、まさかアムロなのか!?」

 

 膨大な量の燐光――オーラ力の残滓であろう――をまき散らしつつあっという間に飛び去っていたゲドを見て驚愕に叫ぶバーンだったが、はっと我に返りあのゲドのパイロットがアムロなのかを確かめるため、手にした無線機の周波数をゲドのそれに合わせた。

 

「今発進したゲド! パイロットは誰だ!? アムロなのか!?」

 

 だが、ゲドの無線機がオフになっているらしく、まったく反応が返って来ない。

 

「くそ、どういう状況なんだ? ともかく、私もゲドで追うか……」

 

 バーンがそう判断し、再び格納庫に向かおうとすると。

 

「バーン殿!」

 

 いつの間にか、馬車に乗ってこちらに向かって来ていたショットが声を掛けて来た。

 

「ショット様! 申し訳ありません。演習に出たダンバインなのですが、ギブン家の手の者と遭遇して戦闘になりそうです」

「ああ、知っているよ。その件で報告がある。先程ゲドが発進していったが、あれは……」

「アムロ・レイですか?」

 

 ショットの言葉を横取りするようにしてバーンが尋ねると。

 

「ああ、その通りだよ。なぜそうなったかの事情は後で詳しく話すが、アムロは敵の接近を戦場で培ったカンとやらで察知し、オーラ・バトラーで出撃したいと申し出て来た。もちろん私は危険だと止めたのだが、彼の熱意に負けてゲドでの出撃を許可してしまった。勝手なことをして申し訳ない」

「そうですか……せめて一言、ご相談頂きたかったですが止むを得ませんね」

 

 ショットの説明にバーンは表情を歪めたが、立場上激しく責めるわけにはいかないので黙るしか無い。

 

「だが、案ずること無いと思う。君も見ただろう? あの動きと光を。彼……アムロは、我々が思うよりも遥かに凄まじいオーラ力を持っている。それに、生粋の軍人であり、戦う事にまったく躊躇がないようだ」

 

 黙ってしまったバーンを気遣うかのように、ショットがそう言うと。

 

「……ええ、それに彼からは邪念というか、悪しき物を感じない。凄まじい力と経験を持つようなのに、驕り高ぶりと言ったものを殆ど感じさせない。彼は一体どんな人生を歩んで来たのか……」

 

 バーンは、己を振り返りつつ自嘲気味に呟く。

 

(私よりも年齢・経験ともに上なのは間違いない。が、私がアムロの年齢に達したとき、あのような凄みと雰囲気を持てるだろうか……?)

 

 バーンのこれまでの人生は、順風満帆であったと言える。

 騎士家の長男として生まれ、幼い頃から何をしても一番優秀であり、父のあとを継いでルフト家へ奉仕を始めてからも、騎士として彼よりも優秀な人材は存在しなかった。

 領主であるドレイクからの信頼も厚く、このまま順調にいけば現在まで男子が生まれていないルフト家の長女、アリサ・ルフトとの結婚も有りうる――つまり、領主の座を受け継ぐ可能性もあると目されているのだ。

 

 野心も強く、騎士として己よりも優秀なものなどほとんど存在しない。

 そんな強烈なアイデンティティに支えられたバーンだが――

 

(アムロは……アムロ・レイという男は、私を遥かに超える存在なのかもしれない……)

 

 初めて出会ってからまだ丸一日にも満たないというのに、バーン・バニングスはそんな思いを抱き始めていた。

 

 

 

 

 

 少し時は戻り。

 ショットと別れたのち、ゲドのコックピットに納まったアムロは整備主任の話を聞きつつモニターやカメラなどのスイッチを操作して行く。

 そして、大体の説明を受け終わり、ゲドが無事に機動状態になった後。

 

「そうです、これでアイドリング状態に入りましたので、あとはハッチを閉じて発進できます」

「ありがとう、了解した。じゃあ、発進する」

「はい、お気をつけて!」

 

 アムロは整備主任に礼を言いながらゲドのコックピットハッチを閉じ、慣れた手つき足つきで操縦桿とフートペダルを操作する。

 と、ゲドの目に眩い光があふれ、まるで人間そのものの如きスムーズさで格納庫出口へ向かって歩き出した。

 

「よし、思っていたよりもかなり楽に動かせるな。多少の操縦は必要そうだが、操縦桿やペダルを操作しつつどうしたいのかを考えると、機体がそれを察して動いてくれるようだ」

 

 モビル・スーツの操縦系統との違いは多々あるが、やはり同じ様な二足歩行の機動歩兵だけ有って操縦桿やペダルの位置・操作方法は似通ったものもある。

 また、正確な操作や微調整などはあまり必要とせず、パイロットであるアムロの意思を読み取るかのようにして動いてくれるのだ。

 

「おお……ゲドがこんなに素早く、力強く歩くなんて!」

 

 レクチャー後、ゲドから離れて心配そうに見守っていた整備主任が感嘆の声を上げ、周囲の整備兵たちも驚きの眼差しでその様子を見つめている。

 

「やはり、あの方……アムロ様はすごい聖戦士だ。これまでに呼ばれた地上人の方々の誰よりも……」

 

 主任は感極まったのか、大粒の涙を流しつつ呟く。

 アムロは、そんな主任がリアカメラのスクリーンに写っているのを見てバツが悪くなったが。

 

『よし、主任さん。これなら問題ない! アムロ・ゲド、発進する!!』

 

 アムロは外部スピーカーでそう伝えると素早く格納庫から演習場へ移動する。

そして、周囲に人や危険物などが無いことを確認してからフートペダルをグイ、と踏み込み、同時に操縦桿も前方へと押し込んだ。

 すると、操作とのタイムラグをほとんど見せずにオーラ・コンバーターを開いたゲドは、整備兵たちが見たことも無いほど大量の光を吐き出しつつ大空へと舞い上がった。

 

「うわっ! 眩しい!!」

「は、速い!! なんだありゃ!?」

 

 それを見守っていた整備兵たちはあまりの輝きと、周知されているゲドの限界をはるかに超えたそのスピードに驚愕し、呆気に取られてしまう。

 

「あの方は、ただの聖戦士じゃあない。あの、主神サーバインに愛されたという伝説の聖戦士その人なのかもしれない……」

 

 涙を流したままの整備主任が、帽子を取って握りしめながらそう呟く。

 その言葉は整備兵の間で共有され、瞬く間にラース・ワウ城内と付近の街や村に広がっていくのだった。

 

 

 

 場面は再び変わり。

 ギブン家の手の者と接敵した、ガラリア・ニャムヒーが指揮するドレイク軍のオーラ・ボンバー、ドロの部隊だが、最新のオーラ・バトラーであるダンバインが三機もいるのを警戒してか、今のところ攻撃を仕掛けてくる様子はない。

 

「警戒しつつ撤退する! 地上の方々、我々ドロ隊がしんがりを務めるので、現在可能な最大速度で演習場へ戻られたし!」

 

 今がチャンスだとばかりに、ガラリアはダンバイン三機と繋げた無線で叫ぶ。

 

『了解! 慣熟飛行中だってのに、戦闘なんてやってられっかよ!』

『こっちも了解だ! さっさと逃げようぜ』

 

 ガラリアに応え、トッドとトカマクが踵を返し全速で撤退を始める。

 もちろん、それは非常に正しい行動ではあるのだが……

 

(くっ! 地上人のくせに腰抜けな! 多少は強気なことでも言えないのか!)

 

 ガラリアにとって、その態度は情けない臆病者にしか見えなかった。

 

 

 

――騎士隊長バーン・バニングスの副官であり、またドレイク軍の切り込み隊長ともいえる立場のガラリア・ニャムヒーは過酷な生い立ちを持つ女性である。

 

 彼女はルフト領の片隅にある貧村に生まれ、多くの兄弟姉妹の最年長長女として五歳程度の子供時代から親の仕事の農業や牧畜を手伝った。

 その暮らしは楽ではなく、また働けど働けど豊かには程遠く、いつも腹を空かせ泣く弟妹たちを養う為に、己自身も子供であることも、また女であることも忘れて必死に働いたのだ。

 そんな生活を続けるうち、ひょんなことから彼女が天性の運動能力や反射神経を持つことが解り、それからは彼女の仕事は主に野獣を狩る狩人となった。

 そしてめきめきと頭角を現すと、10歳を数える頃には村一番の狩人として知られる存在にまでなったのである。

 

 だが、どれだけ森や野の獣を狩ろうとも、村の盟主である村長にほとんどの利益を持ち去られてしまい、何とか家族が食うに困らない程度の物しか渡してもらえない。

 しかし両親や村人たちはそんな状況を変えようと行動を起こす余裕も気力も無く、ただ日々を過酷な畑仕事や狩りに費やすだけであった。

 

 そんな彼女の人生を変える出来事が起こったのは、彼女が十二歳の時。

 

 ガラリアや他の腕利きの猟師が協力しても討伐が難しい、強獣と呼ばれる脅威が村を襲った時の事である。

 さすがに手におえぬ、と判断した村長が領主であるドレイク・ルフトに陳情を出し、派遣された騎士団が村にやって来た。

 

 村の近くの沼地に居座り、野の獣のみならず家畜や人間を襲い喰らう強獣ガッターを討伐するために、付近の地理に通じたガラリアが騎士団の案内役として選ばれた。

 

 そして、討伐までの道先案内役として、また討伐時にもガッターを翻弄するおとり役として卓越した能力を見せたガラリアは派遣された騎士団長であるアラル・ステルに大層気に入られたのだ。

 

 元々、磨けば光る素養を隠し切れなかった容姿の良さも相まってアラル・ステルに可愛がられたガラリアは、アラルと妻の間に子供が出来なかったこともあり義娘にならないかと誘われ承諾。

 そしてアラルはガラリアの両親と養子縁組の話し合いをする際、その暮しぶりのあまりの貧しさに驚いてしまう。

 不審に思ったアラル自らが多くの村民から状況を聞き取った結果、ルフト家が取り決めた村長の権限を過大に逸脱して利益を独占していた事が判明したのだ。

 

 しかも、村長は村民の働きが悪く村の生活が苦しいという理由で税の免除や軽減を願い出て承認されており、膨大な額の税を不正に逃れていたことまでもが明るみに出された結果、激怒したアラルはすぐに村長を拘束して領主であるドレイクに報告した。

 

 報告を受けた領主ドレイクも烈火の如く激怒し村長の処刑を即断して指示。

 それを受け、アラルが村人の目の前で罪状を読み上げた後に執行。

 また、村長とともに虚偽の報告を上げて賄賂を受け取っていた徴税官やその関連の役人を調査し、重罪人として同じく処刑。

 新たな村長としてルフト家血筋の人間を任命し、村の暮らしはそれまでとは比較にならぬ程に楽になり、ガラリアの弟妹もひもじさに泣くことが無くなったのだ。

 

 ガラリアは、どうしようもなかった現状を打破してくれた義父アラルとドレイクに深く感謝し、その恩に報いたいと申し出た。

 

 ガラリアの優れた能力と容姿を買って養子に迎えていたアラルはもちろん、アラルから報告を受けていたドレイクも快くその申し出を受け入れ、この世界でも珍しい女騎士として取り立てられることになったのだった。

 

 ガラリアは入団後にめきめきと頭角を現し、団長であるアラルの義娘という立場もあり順調に昇進していき、二十歳となった時に、若手で最も期待されているバーン・バニングス騎士隊長の副官としての立場を得る。

 だがその直後、義父であるアラルはオーラ・マシンへの適性が著しく低くパイロットになれなかった事や加齢による衰えもあり、ガロウ・ランの軍との戦闘時に部下をかばうためとは言え敵前逃亡をしてしまい、騎士団長の任を解かれてしまったのだ。

 

 本来ならば厳しく罰せられるはずのアラルだったが、それまでの多くの功績を鑑みて、ドレイクから生まれ故郷の代官として任命されてラース・ワウを去った。

 

 アラルとその妻は、義娘とはいえ敵前逃亡した騎士の子として後ろ指を指されるであろうガラリアも自分たちと一緒に来るようにと願ったが、ガラリアは尊敬する義父の名誉を取り戻すために、と騎士団に残留したのだった。

 

 そんなガラリアからすれば、いくら訓練中とはいえ、強いオーラ力を持つくせに、まだ剣も交えないうちからさっさと逃げ出そうとする地上人は唾棄すべき存在に思えてしまうのだ――

 

 

 

(やはり地上人などは使い物にならない! 覚悟が足りなさすぎる!)

 

 ガラリアが、自分が理不尽なことを理解しつつも怒りに震えている時。

 

『ガラリアさん! 俺も残る! どうすれば良いか指示をくれ!』

 

 だが、さっさと飛び去って行くダークブルーとグリーンの二機とは異なり、淡いパープルのダンバインからそんな通信が入って来た。

 

「……ショウ・ザマか!? その気持ちは有り難いが、今貴殿たちを失うわけにはいかん! その気持ちだけ受け取らせてもらうので、撤退してくれ!」

 

 ショウからの通信に驚き。

 

(なるほど、地上人も腰抜けだけではない、か。ショウ・ザマ。見どころがあるようだ)

 

 何やらさわやかな気持ちとなり、クスリと微笑んだ。

 

『いや、女性を置いて逃げるなんて武士道が廃る! おとりでもいい、やれることを教えてくれ!』

「なんだって?」

 

 だが、更に言い募るショウに良い意味で驚き。

 

「……わかった。そのダンバインは目立つ。敵の攻撃に十分注意して飛び回ってくれ。貴殿が注意を逸らしてくれている間に、ボム隊が敵を狙撃する! ボム隊各機に告ぐ! ショウ・ザマのダンバインが敵を引き付けている間に注意の逸れた奴を狙撃・撃破せよ!」

 

 その心意気に応えようと、指示を発した。

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