聖戦士アムロ   作:くまぷーⅢ世

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いつもありがとうございます。

書きたいことが多過ぎて困っています。

今回もお楽しみ頂ければ幸いです。


8:邂逅

 ニー・ギブンがアムロの軍門に降った頃。

 

 ショウ・ザマのダンバインとマーベル・フローズンのラナウン・シーは激闘を繰り広げていた。

 

「くそっ! あのオーラ・バトラー速い! 慣れているな!?」

 

 初めて乗ったオーラ・バトラーで初めての戦闘を必死で行っているショウ・ザマだが、火器を持たないという大きなビハインドを持ちつつもなんとか致命的なダメージを受けることなくマーベルの攻撃を交わし、時にはオーラ・ソードを打ち込んでマーベルのラナウン・シーに傷を付けていた。

 

「なぜ!? なぜ当たらないの!? あんな、素人丸出しの動きなのに!」

 

 マーベルとてオーラ・バトラーによる戦闘にそこまで慣れているわけではないが、ひきこもり状態から抜け出してからは必死に戦闘訓練や強獣の討伐などをこなし、それなりに戦えるようにはなって来ている。

 

 だが、どう見てもオーラ・バトラーの操縦に関してはど素人丸出しの動きなのに、絶妙なカンの良さと反射神経、更に空手での組手・試合やほぼバイクバトルと言っていいモトクロスのレース経験による勝負強さと気迫を持つショウに、むしろ押され気味となっていた。

 

 そして、二機はそのまま高度を落とし、深い森の中へと戦場を移す。

 と、それを追っていたガラリアからショウへと通信が入る。

 

『ショウ・ザマ! 高度を上げるんだ! 森に入って姿が見えなくなると援護が出来ん……うわっ! ドーメの砲撃を止めろ!!』

 

 だが、オーラ・ボム同士の戦闘も激しさを増して苦戦中のようであり。

 

「ガラリアさん! こっちは自分でなんとかする! 俺に構わずやってくれ!」

『……わかった! だが、危なくなったら必ず助けを求めてくれ! 健闘を祈る!』

「了解! そっちもな!」

 

 ガラリアとの通信を終えたショウが殺気を感じ、操縦桿をぐい、と引きつつペダルを踏み込むと。

 一瞬前までダンバインが居た地面にガン・ポッドの弾が破裂する。

 明らかに注意が逸れていた所を狙い撃ったのに交わされたマーベルが驚愕し、

 

「今のが外れた!?」

 

 そう叫んだ時。

 

「スキあり!!」

 

 爆炎を割いて肉薄したショウのダンバインが、オーラ・ソードを突き出した。

 

「きゃあ!!」

 

 辛うじて身を引いたマーベルのラナウン・シーの首元に、浅めにでは有るがその切っ先が突き刺さる。

 

「メインカメラの映像が消えた!?」

 

 この一撃、そこまで深くは刺さってはいないが、ダメージは意外と大きい。

 

オーラ・バトラーパイロットの主視界は、外からは色付きで見えるが、中から見ると透明になる強獣の外殻を磨き込んで製作されたハッチによるものだ。

 だがそのほかにも、オーラ・バトラーの目の位置に仕掛けられたカメラによる望遠画像や火器の照準画面などがいくつかのスクリーンに表示されている。

 また、頭部にはコンピューターの役目をする生体脳があり、首元を刺されてそういった機能を繋ぐ配線や神経類を傷付けられたラナウン・シーは大幅な機能不全に陥ってしまう。

 

「くっ! この!!」

 

 だが、マーベルも怯まずに左手に持っていたオーラ・ソードを振り下ろし、ダンバインのコクピット・ハッチにヒビを入れることに成功した。

 

「うおっ! くそ、ヒビで前が良く見えなくなっちまった!」

 

 それにより、主視界を奪われたショウだったが。

 

「なら、開ければ良いんだ!」

 

 迷うことなくハッチを全開にし、生身を晒してマーベルのラナウン・シーと相対した

 

「な!?」

 

 攻撃によりヒビが入ったハッチを開き、生身のまま怯むことなくこちらを睨みつけて来るショウに絶句したマーベル。

 ダンバインのソードは未だラナウン・シー首元に刺さったままであり、彼我の距離は数メートルほどしかない。

 

「いったい何を考えているの!?」

 

 マーベルが悲鳴交じりの叫びを上げると、しっかりと聞こえたのかショウがむっとした様子で言い返す。

 

「何を考えているのも何もあるか! これは殺し合いだろ!? 俺だってこんな事したくはないさ! だけど、死にたく無いからやってるんだ!!」

「な……!?」

 

 それを聞いたマーベルは愕然とする。

 なぜならば、領主であるロムン・ギブンからは、ドレイク軍に属してその指示に従い言う事を聞いているような地上人は全員欲深く下劣な奴らだ、と聞かされていたからだ。

 ただその話をされた時、ニーが何とも言えないような苦い表情を見せていた事がマーベルの印象に残ったのだが……

 

(話が……ちがう?)

 

 マーベルは意を決して自分もコックピット・ハッチを開くと、ヘルメットを脱いでショウと相対した。

 

「な、女!?」

「ええ、女ですが何か? 私はギブン領で召喚された地上人、マーベル・フローズン。あなたはドレイク領で呼ばれた地上人なのですね?」

「ああ、そうだ。俺はザマ……いや、ショウ・ザマっていう。あんたはギブン家の地上人か……そうだ、あのちっこいのは何なんだよ! いきなり人の部屋に入って来て暴れまわってさ。言いたい事言ってさっさと逃げちゃって……ったく、ちゃんと躾けておいてくれよ」

「ちっこいの……? ああ、チャム・ファウね。そういえば、ドレイクのところに来た地上人をコテンパンにしてやった、って自慢していたわ。あなたの事だったのね」

 

 マーベルはショウの言い様がおかしく、またその時の様子が思い浮かんでしまい、少々笑ってしまいながら返した。

 

「何笑ってるんだよ!」

 

 と、ショウが憮然として文句を言って来たので、マーベルは咳ばらいをして体裁を整えた。

 

「んんっ! 失礼。で、なぜあなたはドレイクに従っているの? 今、このバイストン・ウェルがどういう状況に成りつつあるのか理解した上で従っているの?」

 

 真面目な様子を取り戻したマーベルの誰何にショウは気圧されてしまい。

 

「そんなの、わからないな! こっちはまだ来たばかりなんだよ」

 

 と、少々逆切れ気味に返した。

 

「なら、私と一緒に来て話を聞いて! 戦うのはそれからでも遅くはないでしょう?」

「そんなこと、今すぐ判断出来っこない! こっちにだって義理が有るんだ!!」

「この……わからずや!!」

 

 そして、お互いに興奮しての言い合いに発展しつつ有った時、ショウの無線機に通信が入った。

 

『こちらガラリア! ショウ・ザマ、無事か!? 現在はどこにいる? バーンから連絡が入った! 我らの勝利だ! ギブン側のオーラ・バトラーは二機とも無力化された。すでにドーメ二機も降伏している。まだ戦闘をしているのなら、そちらの敵パイロットにもそう伝えて降伏を勧告してくれ!』

 

 高揚感に溢れたガラリアからの通信はすぐそばにいたマーベルにも聞こえたようで、愕然とした表情で固まっている。

 

「……だってさ。どうする?」

 

 ショウが肩を竦めながらそう尋ねると、

 

「……私だけ意地を張ってもどうしようもないわね。降伏するわ」

 

 マーベルは動揺を抑えつつ、震える声でそう答えた。

 

「わかった。ちょっと待ってくれ。ガラリアさん、こっちのパイロットも降伏した。どこに行けばいいか指示をくれ」

『そうか! ではダンバインにこちらの位置を送るので来てくれ……』

 

 そして、ショウのダンバインとマーベルのラナウン・シーは空に舞い上がり、ガラリアから送られてきた地点を目指してゆっくりと飛行を始めた。

 

「おー、ハッチ開けて飛ぶと気持ち良いな! ちょっと怖いけれど」

 

 ヒビが入ったハッチを開けっ放しで飛んでいるショウが楽しそうに声を上げる。

 

「さっきまでは、こんな余裕な気分で飛べてなかったからな……」

 

 ショウがダンバインに乗って飛び立った時は初めての経験で必死であったし、その後すぐに戦闘に入ってしまったので空を飛ぶ、という事を楽しめるような状況では無かった。

 

『良いわよね、あなたは。気楽で』

 

 そんなショウに対し、真面目なマーベルは今後の状況を悪い方にしか考えられず、どんよりとした空気を纏いながら呟く声を通信に乗せた。

 

「そりゃ、こっちは勝ったからね。まあ、なんとかなるよ。君に酷いことをしないように俺が頼むからさ。そんな暗い声出してちゃ、美人が台無しだぜ!」

 

 そんなマーベルを哀れに思ったか、ショウ元気づけるように言う。

 

『はあ……まあ、ありがとう。期待してるわ』

 

 真面目とはいえ、基本陽キャなアメリカンでもあるマーベルも一息吐いて礼を言う。

 そして二人は改めて地上のどこから来たのかなどの雑談をしつつ、指定された地点へと飛んだ。

 

 十分ほど飛び、指定された地点に到達した二人は高度を下げて着陸態勢を取る。

 

「お。あそこだな……なんだよ、トカマクのダンバインはボロボロじゃないか。口ほどにも無いなぁ」

 

 と、地面に転がされている二機のオーラ・バトラーが見えて来て、ショウはトカマクのダンバインの惨状に溜息を吐く。

 

『ミイナのラナウン・シー……胴体しかないじゃない……』

 

 だが、トカマクのダンバインなど比較にならない酷い状態のミイナのラナウン・シーを見たマーベルが呆然と呟いた。

 

「え、あれオーラ・バトラーか。よく見ると、マーベルのと同じ胴体だな。すごいな、だれがやったんだ? バーンさんか?」

 

 そして、転がっている二機のそばにはブラウンのゲドが二機と右腕が無いダーナ・オシーが膝立ちで鎮座し、そこから少し離れた広場になっている平地にはドロ二機とドーメ二機が着陸していた。

 ちなみにトッドのダンバインとドロの一機は万が一の襲撃に備え、離れた場所に潜伏していてこの場にはいなかった。

 

『あれって……ゲドじゃない。あんな旧式でミイナのラナウン・シーとニーのダーナ・オシーをやったって言うの?』

 

 マーベルが呆然としたまま、さらに呟く。彼女が見る限り、その場で五体満足なオーラ・バトラーはゲド二機のみである。

 

「とりあえず降りようぜ。行けば解るだろ」

 

 ショウはそういうと、ゲドの近くにダンバインを着陸させる。

 

「……まあ、もうどうだっていいわ」

 

 マーベルもすべてを諦めた顔でそう呟き、ダンバインの隣にラナウン・シーを着陸させた。

 

 

 

「やあ、ショウ・ザマ。無事で何よりだ。そして、君の健闘を心から称えよう」

 

 ショウがダンバインのコックピットから飛び降りると、さわやかな笑顔のバーンがそれを迎えた。

 

「……俺はほとんど何も出来なかったけどね。でも、それは受け取っておくよ」

 

 自分に向かって伸ばされたバーンの手を、戸惑いがちだがショウが握り返す。

 

「いや、本当によくやってくれた。若き聖戦士よ、今後も期待させてもらう」

 

「……生かせてもらっているうちは、頑張ってみるよ」

 

 バーンはショウの言葉にうなずき、肩を叩いて視線をマーベルに向ける。

 

「地上人、マーベル・フローズンで良いのかな?」

 

 そして、マーベルへと穏やかに声を掛けた。

 

「……ええ、その通りです。ニーとミイナは生きているのかしら?」

「私はドレイク軍オーラ・バトラー隊騎士隊長、バーン・バニングスだ。二人は無事だ。今はドロの中で待機してもらっている。君たちは捕虜として扱わせてもらうが、無体な事はしないし他の者にもさせないと騎士の名誉に掛けて約束しよう」

 

 声を掛けられて一瞬、身を固くしたマーベルだったが、バーンの紳士的な振る舞いに安堵したのか表情を緩める。

 

「迎えの馬車がやってくるので、それまでとりあえず君にもドロに乗っていてもらおう。ショウ、君も来てくれ」

「……わかったわ」

「了解」

 

 そして三人が連れ立ってドロの一機へ向かうと、他のドロからガラリアが降りて来てショウに声を掛けた。

 

「ショウ・ザマ。勇敢なる戦士よ! 今回はありがとう。貴殿の戦いぶりには本当に助けられた。これからもよろしく頼む」

 

 そして、にこやかに微笑みながらショウの肩を叩き、頬にキスをした。

 

「うわあっ! あ、ああ。こちらこそ」

 

 突然の事にショウは慌て、顔を真っ赤に染めつつしどろもどろになってしまう。

 

「ふふ、初心だな。初陣にしてあの戦い振りは見事だったが、女との戦闘経験はまだのようだ。まあ、その若さだから仕方ないか」

「か、からかわないでくれよ!」

「ははははは! すまんすまん!」

 

 じとっとした視線を向けるマーベルの隣で、二人のやりとりを苦笑いで見守っていたバーンだが、

 

「ガラリア、そのくらいにしておけ。ショウ、マーベル、こっちだ」

 

 と声を掛ける。

 

「あ、ああ」

 

 慌ててガラリアから距離を取り、紅い顔をしてマーベルの隣に戻って来たショウだったが。

 

「……ドスケベジャパニーズ」

「え? は、はぁ!?」

 

 ジト目のマーベルにグサリと刺され、素っ頓狂な声を上げた。

 

「ショウ、何を騒いでいる。早く来てくれ」

 

 目を白黒とさせ、マーベルに反論しようと口をパクパクとさせたショウだったが、何か言う前にバーンに注意されてしまい黙るしかない。

 

「なんなんだよ、まったく……」

 

 そして憤懣やる方ない、と言う様子でバーンの後を追った。

 

「アムロ、入るぞ」

 

 バーンがそう、気安げな声を掛けて機内に入るのにショウとマーベルも続く。

 

(アムロ? 誰だ?)

 

 聞き覚えの無い名前にショウが戸惑っていると、機内には床に座り込んだ一組の男女と、二人の前に立った一人の男がいる。

 

「ああバーン。全員揃ったみたいだね」

 

 立っている男がショウたちの方を向いて微笑む。

 アムロと呼ばれたその男は、発進前にショウが妙に気になったあの男だった。

 

「アムロ、彼はショウ・ザマ。今日が初陣にも拘らず勇敢に戦ってくれた若き勇者だ。そしてショウ、彼はアムロ・レイ。君の翌日にバイストン・ウェルに召喚された‥‥…とにかく凄い男だ。真なる意味での聖戦士、と言うべきか」

「やめてくれよバーン。俺はオーラ・バトラーのようなロボット兵器での戦闘経験が多いだけさ」

 

 なぜかバーンから誇らしげに紹介されたその男は、苦笑しながらショウに右手を差し出す。

 

「よろしく、ショウ……と呼んでも良いかな? 俺の事もアムロ、と呼び捨ててくれ」

「あ、ああよろしくアムロさ……アムロ」

 

 戸惑いながら差し出されたショウの手をアムロが強く握り、屈託のない笑みを見せた。

 

(うん……やはり純粋な、そして強い正義感に溢れた心を持っている。ショウは本当の意味で良い戦士になるだろうな)

 

 握ったショウの手から感じるものに、アムロは爽やかな感覚を捉え高く評価する。

 

(うわ……この人は、凄い人だ。そして……物凄く強い)

 

 そして、ショウもまたバーンの言っていた言葉の意味を本能的に理解したのだった。

 

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