Pokémon World Online 作:アラワナイアライグマ
目の前に起動画面が表示される。
『Pokémon World Online』
タイトルロゴが光り輝き、聞き覚えのある定番のBGMが流れ始めた。
目線誘導型のカーソルをスムーズに動かしていき、キャラクターメイク画面に移動する。MMORPGの醍醐味の一つ、人によっては何十時間もかけて自分好みのキャラクターを作るほどのメインイベント。
メイキング画面をざっとスクロールしていく。人種、体格、初期アクセサリー、衣装などなど、もはや再現できないものはないのではないかと思うほど盛り沢山。意図的に被せに行かないと、キャラメイキングが同一になることはないだろう。
「おいおいマジかマジか!どんな見た目でやろうかな……」
せっかくだから昔のアニメの主人公でも再現してみるか。いや、でも溢れんばかりに再現されているだろうし個性が無くなっちまうか。
とはいえ、現実の姿をゲームのキャラにする趣味もない。ゲームコラボしてるアイドルとか、ビジュアル重視の配信者なんかは反映しているが俺のビジュアルは残念ながら見せるもんでもない。
俺はゲームと現実の性別は同じにするタイプなので、男キャラ1を元に作成する。
悩んでいる時間がもったいないな。
初期でやるか、いやそれはもったいなさすぎる。ここは雰囲気で決めてしまおう。
「髪は短髪、深い青色、帽子を被って…あとは適当に適当にっと!」
顔のパーツをいじり、体格を標準より少し細めに調整する。服装は初期装備のジャケットとジーンズ。シンプルでいい。
完成したキャラクターを回転させながら確認する。どこか赤い帽子が似合いそうな無口な青年に見えなくもないが、いい感じのキャラメイクができた。
確定ボタンを押してキャラメイクを終わらせる。
次に表示されたのは職業選択画面。
「ポケモンなのに職業とかあるのか、数は……そんなに無いみたいだけど」
選択できる職業は4つのみ。
『探索者』、『製作者』、『研究者』、『交易者』
それぞれの説明文に目を通していく。
『探索者』——未知の大地を駆ける冒険者。フィールドでのアイテム発見率が上昇し、移動速度も速い。冒険を愛する者に向いた職業。
『製作者』——素材からアイテムを生み出す職人。きずぐすりやモンスターボールなどを作成時の成功率が高く、消費する素材も少なく済む。
『芸術家』——ポケモンの美しさを追求する職業。カラーリング変更やエフェクト追加などの見た目カスタマイズが可能で、コンテストでの評価が高くなる。
『交易者』——商売に長けた商人。NPCショップでの購入価格が下がり、売却価格は上がる。移動式のショップを開くことも可能。
「探索者が一番良さそうだな」
説明文を見る限り、フィールド探索に特化している。自分たちが戦闘をするタイプのゲームではないため、攻撃アップとかクリティカル上昇などはない。その代わり、アイテム発見率と移動速度が上がる。
MMORPGで冒険しないなんてナンセンス。俺の主義に反する。
キャラメイクに比べてサクッと決めた職業を確定させると、最後にプレイヤーネームを決める画面に移行。
と言っても悩むことはなく、全てのゲームで統一の『Haru』と入力した。
「よしよし、全て入力が完了したな!」
確定ボタンを押す。
視界が一瞬暗転した次の瞬間、俺は真っ白な空間に立っていた。
目の前に、ホログラム映像の老年の男性が現れる。白衣を着て、温和そうな笑みを浮かべている。
「ようこそ!ポケットモンスターの世界へ」
博士。名札には『ケヤキ博士』と書かれ、白衣を靡かせながら語りかけてくる。
「わたしの名前はケヤキ。この世界でポケモンの研究をしている者だ」
何となく子供の頃の記憶が蘇る。レトロコーナーに置かれたやつを買ってもらって、夜中に布団を被りながらやったなぁ。
「この世界には、ポケモンと呼ばれる不思議な生き物たちが暮らしている」
博士の背後に、様々なポケモンの映像が浮かび上がる。ピカチュウ、リザードン、ラプラス、見覚えのあるポケモンたちが次々と映し出される。
「人々はポケモンと共に生き、共に冒険し、共に成長していく」
「君も、これからポケモンと共に旅をすることになる」
博士が手を広げる。
「さあ、君の最初のパートナーを選びたまえ」
ホログラムが消え、視界が切り替わる。
目の前に、3つの台座が現れた。
それぞれの台座の上には、モンスターボールが置かれている。
「この3匹の中から、1匹を選ぶといい」
台座に近づくと、それぞれの情報が表示される。
【フシギダネ】——くさ・どくタイプ。背中の種から栄養を吸収し、成長と共に大きな花を咲かせる。
【ヒコザル】——ほのおタイプ。尻の炎は体内の燃焼ガスが燃えたもので、体調が悪いと炎が弱まる。
【ケロマツ】——みずタイプ。背中から泡を出し、身を守る。身軽で素早い動きが得意。
「どれにしようかな…」
三匹それぞれの傾向から見る。
フシギダネは特攻が高い。
ヒコザルは攻撃が高い。
ケロマツは素早さが高い。
俺の好みのプレイングは、避けて殴って避けてを繰り返すヒットアンドウェイ。そうなってくると、俺が選ぶのはこいつしかいない。
「よし、決めた」
ケロマツの台座に手を伸ばす。
光が溢れ出し——
小さな青いポケモンが姿を現した。
「ケロ?」
ケロマツがこちらを見上げる。
つぶらな瞳。背中の泡。軽やかな佇まい。
「よろしくな、相棒」
「ケロ!」
ケロマツが嬉しそうに跳ねる。
博士が優しく微笑む。
「さあ、これから君の冒険が始まる」
「広大な大地を駆け、多くのポケモンと出会い、そして……」
「自分だけの物語を紡ぎたまえ」
博士が手を掲げる。
「良い旅を、Haru君」
視界が光に包まれる。
次に目を開けた時——。
俺は、小さな街の中に立っていた。
青い空。暖かい風。遠くに見える森。
俺は深呼吸を一つして、前を見据えた。
冒険の始まりだ。