Pokémon World Online 作:アラワナイアライグマ
夏休み初日。
時刻は21時より少しほど前。
攻略サイト、考察サイトやらをポチポチと開いて色々と情報を確認していたら、PWOをログアウトしてから1時間程度経っていた。
何ともゲーマーらしい初日を迎えてしまったが、過ぎたことを気にしていても何も始まらないので忘れよう。
今のところ序盤で重要そうな情報は3個ある。
1. 夏休み期間中のサーバー増強
現在も爆発的な人口増加が起きているPWOの世界。夏休みで更にプレイヤーが増えるとの見通しから、サーバー増強を実施するらしい。最初の街は初心者でごった返すだろうから、早めに次の街へ移動するのが賢明。
1. フロント・サイドポケモンシステム
今作には手持ち6匹が「フロント3匹」と「サイド3匹」に分かれる仕様がある。攻略サイトには色々と書いてあったが、結論から言うと経験値は6匹全員に入る。ただし、野生ポケモン含めて戦闘ではフロント3匹しか使えない。戦闘中以外はフロントとサイドのポケモンを自由に入れ替え可能。
1. レベル上限までの経験値について
上限は現在100レベル。大体6匹を上限まで上げるのに数百時間から数千時間はかかるとのこと。気長に進めていくしか現状はないな。
他にも伝説のポケモンの情報やフィールドごとのボスポケモンなんかも記載されたページがあったが、そこら辺は初見の感動が薄れるので見なかった。
「フィールドボスとやらも見ておきたいし、今日中にデュオシティまで目指すとするか」
目的が決まればやることは早い。
水分と軽食を補給してPWOを起動する。
ウノタウンの入口で目を覚ました半裸ウッウ男ハルこと俺は、視線がやはり気になるので路地裏へと向かう。
チュートリアルが終わった際に流れたアナウンスに気になるものがあった。メニュー画面を開くと表示される『図鑑』を指でタップする。
【ポケモン図鑑】登録数:2/1025
・入手済みのポケモン表示・入手してないポケモン非表示
No.016 ポッポ
No.656 ケロマツ
「ボタンを押すと入手してないポケモンもシルエットだけ表示されるのか」
入手したポケモンは分類、タイプ、高さや重さなんかの情報が出るらしく、シルエットのみではタップしても先に進めることができない。
現状ではいくら捕獲しても特段もらえる報酬などはないらしく、そもそも伝説や準伝説含めて確認されていないポケモンを数多くいる。アンノーンやドータクン、プテラなどの化石ポケモンもまだ見つかっていないと考察サイトに書いてあった。
現状では攻略サイトや公式のポケモン図鑑なんかを見た方が良さそうな情報しかないので、ゲーム的な演出以上のものは無さそうだ。
「デュオシティに向かうとするか」
1番道路を奥へと進む。
野生ポケモンのレベルも徐々に上がっていく。レベル7、8、9。
ケロマツも戦闘を重ねるごとに動きが良くなってきた。指示を出す前に先読みして動くことも増えてきている。
『ケロマツがレベル10になりました』
「お、レベル10か」
次の瞬間、画面中央に新たなメッセージが表示される。
『ケロマツが したでなめる を覚えました!』
「したでなめる……確率で麻痺付与の技か。確か3割ぐらいだったかな。状態異常にできるのはいいな」
ケロマツの技欄を確認する。
【ケロマツの技】
1.たいあたり
2.なきごえ
3.みずてっぽう
4.でんこうせっか
5.したでなめる ←NEW!
6.FREE
7.FREE
8.FREE
「よし、順調だな」
さらに奥へ進むと草原の向こうに、巨大な街並みが見えてきた。
ガラス張りの高層ビル群、象徴的に見える塔、他にも近代的な建築物が立ち並ぶ。
ウノタウンとは比べ物にならない規模だ。
「あれがデュオシティか……」
だが、その手前。
草原の中央に、明らかに異質な存在感を放つ影がある。
巨大なオニスズメ。
通常の個体の3倍はあろうかという巨体。鋭い目がこちらを睨む。
画面上部に表示される情報。
【フィールドボス:オニスズメ Lv.15】
推奨人数:3人。推奨レベル:12。
「推奨レベル12か……ケロマツは10」
周囲を見渡すが、他のプレイヤーの姿はない。
ソロ討伐になるか。
「複数人推奨のボスを1人でやるのか。ケロマツ、いけるか?」
「ケロ!」
力強く鳴くケロマツ。
こいつも、やる気十分らしい。
「よし!いくぞ!」
オニスズメとの距離を詰める。
巨大オニスズメがこちらに気づき、鋭い視線を向ける。
次の瞬間
「ピィィィィッ!!」
甲高い鳴き声と共に、オニスズメが動く。
【オニスズメの つつく!】
巨大な嘴が、ケロマツめがけて突き出される。
「左に避けろ!」
俺の指示と同時に、ケロマツが横へ跳ぶ。
ドスッ!
嘴が地面に突き刺さる。
「今だ! したでなめる!」
「ケロッ!」
ケロマツが素早く接近し、舌でオニスズメの足を舐める。
「ピギッ!?」
オニスズメの体に電流のようなエフェクトは走らない。
麻痺は入らなかったか。30%だしな。
当たるまでやり続けてやる。
オニスズメが体勢を立て直した。
【オニスズメの たつまき!】
巨大な翼が羽ばたき、強烈な突風が吹き荒れる。
前方広範囲への攻撃だ。
「後ろに下がれ!」
ケロマツが素早く後退。
風が通り過ぎるのを待つ。
「攻撃パターンが読みやすいな。初心者向けボスってことか」
所詮は最初のフィールドボス。初見殺しな技もなければ、予備動作もかなり大きいため回避指示を出すまで余裕がある。
相手の予備動作を見れば、次の攻撃は予測できる。
オニスズメが再び動く、空高く舞い上がる。
「上か!」
【オニスズメの ふみつけ!】
地面に着地点の予兆、赤い円が表示される。
ケロマツがいる位置だ。
「ケロマツ、右前方に跳べ!」
「ケロ!」
ケロマツが跳ぶ。
次の瞬間に
ドゴォォォンッ!!
オニスズメが地面に激突。
凄まじい衝撃が走るが、ケロマツは範囲外。
「今だ! でんこうせっか!」
「ケロッ!」
ケロマツが一気に距離を詰め体当たり。
ドスッ!
オニスズメがよろめく。
「続けて、みずてっぽう!」
「ケロォッ!」
ウッウヘルムの効果で威力が上がった水鉄砲が、オニスズメの翼に直撃する。
「ピギャァッ!」
オニスズメのHPが削れる。残り90%以上。
まだまだ削りは少ない。
オニスズメが再び つつく を繰り出してくる。
「右に避けて、したでなめる!」
「ケロ!」
回避から即座に反撃。
二度目の舌なめずり。
だが、今度も麻痺は入らない。
「また外れたか。まぁ、30%だしな」
オニスズメがたつまきを再度使用。
「また後ろ!」
ケロマツが後退して回避。
「攻撃パターンは3つか。つつく、たつまき、ふみつけ。」
やはり初心者向けボスだけあって、攻撃の予兆がはっきりしている。
完全回避も不可能じゃない。
オニスズメが再び つつく。
「左に避けて、みずてっぽう!」
「ケロッ!」
「でんこうせっか!そのままたいあたりだ!」
回避からの反撃。水鉄砲が命中。
でんこうせっかによる強襲から、たいあたりへのコンボ攻撃。
回避、攻撃を数度繰り返していくことでオニスズメのHPもだいぶゲージが減ってきたのが見える。
残り50%。
「もう一度、したでなめる!」
「ケロッ!」
三度目の正直。
ケロマツの舌がオニスズメの足を舐める。
「ピギギギギ!?」
オニスズメの体に電流のようなエフェクトが走る。
「よし、麻痺入った! 三回目で引けたか」
麻痺状態になれば、相手の動きが鈍る。攻撃のタイミングも読みやすくなるはずだ。
「畳みかける! みずてっぽう連射!」
「ケロケロケロッ!」
ケロマツの口から、連続で水鉄砲が放たれる。
次々とオニスズメに命中する。
「ピギャァァッ!」
オニスズメのHPがみるみる削れていく。
残り30%。
オニスズメが反撃しようとするが、体が痺れて動けない。
「チャンスだ! でんこうせっか!」
「ケロッ!」
ケロマツが一気に距離を詰める。でんこうせっかをしたあと、指示もしていたがたいあたりで追撃。
残り15%。
「もう一発! みずてっぽう!」
「ケロォォッ!」
水鉄砲が、オニスズメの頭部に直撃。
「ピギィッ!」
オニスズメが再び動こうとするが、また麻痺で動けないのがモーションが中断される。
「よし、とどめだ! でんこうせっか!」
「ケロォォッ!」
ケロマツの最後の体当たりが、オニスズメの頭部に直撃。
「ピ……ギ……」
巨大オニスズメがその場に倒れ込む。
次の瞬間、体が光の粒子となって消えていく。
【フィールドボス:オニスズメ を撃破しました!】
『ケロマツがレベル12になりました』
『ハルがレベル7になりました』
「一気に2レベル上がったか。ボス討伐の経験値、美味いな」
ドロップアイテムを確認する。
【獲得アイテム】
・オニスズメの鋭い羽 ×3
・オニスズメの爪 ×2
【初回討伐報酬】
・フィールドボス討伐の証 ×1
・3,000円
「初回だけ報酬が貰えるのか。周回で金稼ぎはできない仕様か」
まぁ、3,000円は装備代の足しになる。
お金があれば変態装備ともお別れすることができるからな。
「それにしても、ノーダメージクリアできたな」
ケロマツが誇らしげにこちらを見る。
「ケロ!」
「よくやった」
ケロマツの頭を撫でる。
VRならではのリアルな感触。爬虫類特有の質感と気持ちいい冷たさがある。拒まれない限りは撫でていたくなる感じ。
「ステータスも振っておくか」
メニューを開き、ケロマツのステータスを確認する。
【ケロマツ Lv.12】
HP: 32
攻撃: 16
防御: 13
特攻: 18
特防: 17
素早さ: 23
ステータスポイント残り: 38
「レベル10から12で10ポイント獲得。前の28ポイントと合わせて38か」
今回も素早さに振ろう。先手を取れる方が有利だ。
残りポイント全て、38ポイントを素早さに振り分ける。
画面が一瞬光り、ステータスが更新される。
【ケロマツ Lv.12】
HP: 32
攻撃: 16
防御: 13
特攻: 18
特防: 17
素早さ: 23 → 32 (+9) ★
ステータスポイント残り: 2
「素早さが9も上がった。かなり速くなったな」
「ケロ!」
「よし、デュオシティに向かうか」
フィールドボスを超えるとデュオシティへの道が開ける。
草原を抜け、舗装された道路に足を踏み入れる。
徐々に近づいてくる、近代的な街並み。
高層ビル、ネオンサイン、行き交う人々。
ウノタウンの田舎町とは真逆の、都会の雰囲気。
「これが……デュオシティか」
街の入り口に近づくと看板が建てられている。
【デュオシティへようこそ】
ウノタウンとは規模が違う。
ホーム拠点にしているのか歩いているプレイヤー数、NPCの数も圧倒的に増加している。
ミアレシティ、ヒウンシティなんかを彷彿とさせる印象。
建物全てに入ることが可能なのか気になってくるところではあるが、とりあえず防具を買いたい。近代的な街にそぐわない野蛮な格好をしている俺、あまりにも浮いている。ポケモンセンターにも寄りたいところではあるが、フレンドリーショップか装備品が売っているお店に移動したい。
「さて、とりあえず一軒目に入ってみるか」