冬木に転生したアクセルの最弱職、第五次聖杯戦争に参戦する。   作:猿野ただすみ

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続きです。お昼に投稿した分を読んでいない方は、そちらをお先に。


この若き魔術師たちと取り引きを!

「汝らが求める聖杯はすでに汚染され、託した願いは捻じ曲げられて、人類を滅ぼす方向へと叶える物だったとしても、そのような事が言えるのかな?」

「なん…ですって?」

 

俺が告げた事実に真っ先に反応したのはしかし、凛ではなくイリヤだった。

 

「聖杯が汚染されてるって、どういう事!?」

「そのままの意味である。もとはといえば汝ら、アインツベルンが仕出かしたことであるぞ?」

「え…?」

 

思っても見なかったんだろう、驚きと疑問を含んだものだろう短い言葉を上げると、そのまま黙り込んでしまった。

 

「そうだな。汝らには説明せねばならんか。

── 事の起こりは第三次聖杯戦争。当時のアインツベルンは聖杯を手にする為に、ある奇策を立てたのだ。それは、神霊を呼び出す事である」

「え、ちょっと待ってよ。聖杯戦争のシステムじゃ、神霊を呼び出せる程高度な魔術行使は不可能なはずだよ?」

 

アサシンが頬を掻きながら言った。

 

「そう。そこの胸無しアサシンが言った通り、本来であれば神霊の召喚など不可能だ」

「おい」

 

アサシンの怒気を含んだ反論は、気づかないフリでスルーだ。

 

「故にアインツベルンが召喚したのは、邪神[この世全ての悪(アンリマユ)]の皮を被った紛い物、人々の悪の象徴たれという呪いを一身に受けた存在、復讐者(アヴェンジャー)というエクストラクラスで現界した、ただの人間の霊であったのだ。

当然そのようなものが聖杯戦争を勝ち残るなど、ほぼ不可能。必然、かの神霊モドキは三日目に敗退したわけだが、それと同時に聖杯は、それなる者が背負った呪いをも取り込んでしまい、それ以降聖杯は穢れてしまった、というわけだ」

「何よそれ。ズルが原因で、目的そのものを台無しにしたってこと?」

 

さすがは凛だ。俺の説明を的確に、かつ簡潔にまとめてくれる。もちろんこれは、魔術使いであって魔術師ではない士郎に噛み砕いて教えるためでもあるんだろう。

 

「そのとおりである。まあ、根源に至ることを目的とする生粋の魔術師にとっては、些かも問題とはならんがな」

「待てよ。問題ないことはないだろ? 根源に至れたって、人類が滅亡したら…」

「衛宮くん。魔術師っていうのは、根源にさえ到達できたなら、その後はどうなろうと構わないって人は五万といるの。たとえ自身も死んでしまうとしても、その前に根源へ至ることができれば…ってね。それはアインツベルンでも同じでしょう?」

「……え? ああ、そうね」

 

凛が話を振ると、ショックのためか直前まで呆けていたイリヤが肯定して、しっかりとした口調で続きを語る。

 

「アインツベルンの悲願は第三魔法の再現。その願いを成就させるためにも根源へと至る。到達目標は違っていても、その過程で根源を目指すことに変わりはないし、目標に至れたなら後はどうなっても構わないのは同じことだわ」

 

凛とイリヤの発言に、士郎は「何だよそれ」と文句を言うが、魔術師とはそういったものである。聖杯戦争での勝利こそが目的の凛でさえ、根源への到達は視野に入れてるわけだし。おっと、それはともかく。

 

「そう、あかいあくまとホワイトロリが言う通りである!」

「あ、あかいあくま!?」

「ホワイトロリ!?」

 

俺が言った二つ名(ニックネーム)に、目を吊り上げる二人。こ、(こえ)え。言っとくけど、俺が考えたわけじゃないからな!? ホワイトロリは本来、プリズマ先輩だけど!

 

「……ふむ。せっかくの悪感情だが、どうも我輩の好みとは違うようだ。まあ、それはよい。

そう。魔術師とは、他者がどうであろうと構わない、汝らが言うところのロクデナシなのだ。そういった意味では、そこの化けの皮を何重にも被った赤い娘は、まだまだ甘い性格のようではあるな。お陰で我輩好みの悪感情を提供してもらえるので、大変好感が持てるのだが。……おっと、その屈辱に満ちた悪感情もなかなかに美味である」

 

俺にからかわれて、凛はぐっと口をつぐんだ。

 

「さて、話はここでは終わらんぞ。第三次聖杯戦争で汚染された聖杯は、第四次聖杯戦争で牙を剥くことになる。正義の味方を目指す男とあかいあくまには、心当たりがあろう」

「……冬木、大災害」

「聖杯に相応しくない男が触れたから…」

 

やっぱり教会の中で、麻婆神父に唆されてたか。

 

「ふむ。正解であるが正しくはないな」

「……え?」

「冬木大災害は聖杯が破壊され、中に溜め込まれた呪いの泥が溢れ出したがために起きたものだ。聖杯に相応しくない男が触れたことは、切っ掛けに過ぎん。まあ、破壊を命じられたサーヴァントが変に抗わなければ、聖杯は完全に破壊され、今回の聖杯戦争などは起きずに平穏がもたらされていたであろうがな?」

 

最後に思わせぶりに言った台詞を聞いたセイバーが、ピクリと肩を震わせる。

 

「……それじゃあ、聖杯を破壊した男が悪いってことでしょう?」

「これ、ホワイトロリよ。汝が父を責めるでない」

「え?」

「あの子の父親?」

 

俺が告げた事実に、凛と士郎が声を上げた。

 

「そうとも。第四次聖杯戦争で聖杯の破壊を命じた男こそ、アインツベルンが雇い入れた傭兵にしてホワイトロリの父、魔術師殺しと恐れられた男、衛宮切嗣であるっ!!」

「なっ!? 切嗣が…親父が、アインツベルンの…。!? それじゃああの子は!?」

 

どうやら士郎も、ことの重大さに気づいたようだ。自身とイリヤとの関係に。

 

「そう。ホワイトロリことイリヤスフィール・フォン・アインツベルンは、汝の義理の()なのだよ!」

 

この発言に誰もが口をつぐんだまま、あたりに静けさが広がる。

 

「……えっと、妹じゃなくて?」

 

ナイスツッコミだ、アサシン。

 

「この娘は可哀想なことに、父は裏切り者だと信じ込まされた上、幾度(いくたび)にも及ぶ魔術的調整を施され、肉体的成長と寿命を引き換えにして莫大な能力を手にしたのだよ」

 

……もっと言えば、聖杯戦争が順調に進んだ場合、イリヤは最終的に小聖杯となる予定で、イリヤという個がなくなってしまう設定である。これに関しては、前世の頃から胸糞悪くなっていたっけ。

 

「……待って。()()()()()()ていた? 冗談じゃない。たとえ聖杯が呪われていても、アインツベルンの悲願を叶えるのに問題はないわ。なら、その望みを水泡に帰したキリツグは、アインツベルンの裏切り者よ!」

「ふむ。ならば問うが、汝は、汝が父の望みを理解しているのかな?」

「え…、それは…」

 

言い淀むイリヤ。

 

「[恒久的な世界平和]…。それこそが汝が父の願い。当然、アインツベルンの当主代行ユーブスタクハイトとて、その願いは把握していた。汝らアインツベルンの願い、第三魔法[魂の物質化]を人類全てに施せば、飢え等による苦しみや意識の統一化によって争いがなくなるだろう、といった理由で親和性があったのは間違いないからな。

しかし聖杯が汚染されていることを告げれば、むしろ敵となるであろうことは火を見るより明らかである。故にその事実は隠し続けられたのだ。即ち、むしろ裏切られていたのは、汝の父であったというわけだな」

「う、そ…」

「いいや、紛れもない事実である。その証拠に汝は、汝の父が迎えに来ては追い返されていたことなど、一切聞かされてはおるまい」

「!?」

 

イリヤはまさに、寝耳に水といった表情をしている。

 

「……そういえば親父、よく海外に出かけては落ち込んだ表情で帰ってきてたな」

 

おお、士郎にしてはナイスフォローだ。

 

「さて、些か話がそれたが…」

 

とは言いつつ、むしろ聖杯の汚染と切嗣の真実の方が重要だったんだけどな、本当は。

 

「人間の悪感情を好む我輩は、美味しいご飯製造機である人間に死なれては困る。故に汝らの戦いに介入してまで今の話を聞かせたことは、理解してもらえたかな?」

 

その問いに、凛と士郎は頷く。イリヤはショックから抜け出せないらしく、うつむいたままだ。

 

「もちろん、聖杯戦争をやめろ、などとは言わん。ただ、人間のマスター同士の殺し合いは控え、呪いが解消されない限り聖杯に願いをかけるのをやめてもらえれば、これ以上口出しはしないことを誓おうではないか」

「……悪魔の言うことなんて、信じられるのか?」

「これは契約である。我輩ら悪魔族は契約には厳しくてな。これが契約である以上、口約束でさえ絶対なのだ」

 

俺がそう言うと、士郎は考え込み、代わりに凛が軽く手を上げ聞いてきた。まあ、言いたいことはなんとなく予想がつくが。

 

「ちょっといいかしら。アンタは口を…」

「『口を出さないと言ってたけど、手を出したりはしないのかしら』? 安心するがいい。少なくとも今回は、そんな言葉遊びでだまくらかす気など微塵もない。それでも心配ならば言い換えてやろう。汝らが先に挙げた条件を守るのなら、見通す大悪魔バニル及びその同胞・眷属共は第五次聖杯戦争には一切関わらないと約束しよう。

……これで満足かな。冬木の管理者(セカンドオーナー)よ」

 

なお、佐藤和真(おれ)が関わらないとは言っていない。

 

「私が言おうとしてたことに被せないでよ!」

 

どうやら俺が言った台詞は正解だったみたいだ。バニルなら絶対に今みたいな行動するから真似てみたけど、マジで心臓バクバクでしたわ。

 

「……ねえ。マスター同士の殺し合いを控えるって、どの程度が許容範囲なの?」

「ホワイトロリも、気持ちを切り替えたようだな。許容範囲か。この国には専守防衛という言葉がある。相手からの攻撃に対して守りに徹する為の、必要最小限の攻撃力を保持するという思想であるな。今回は、それでも凌ぎきれずに自身の命を守るためになら、としておこう。

……此度の聖杯戦争のマスターで我輩の忠告を聞かぬだろう人物は三人、故に我輩も接触はしておらぬのだが、まあそれはともかく。その内の二人は確実にその条件に当てはまるであろう。率先して命を奪うのは好ましくはないが、何事にも例外はつきものであるからな」

「そう…」

 

俺の説明に短く答えるイリヤ。この条件は、対外道神父の為の譲歩だ。葛木先生もそれに含んでるけど、倫理観こそ破綻してるものの、極悪かって言われるとそうでもないから、ちょっと抵抗があるんだけどな。

 

「では、改めて聞こう。我輩の提案は受け入れてもらえるかな?」

 

その問いかけに最初に答えたのは士郎。

 

「俺はもともと、こんな儀式を終わらせるために参加するんだ。その条件に反対する意味なんてないさ」

「……シロウ。そう、ですね。どうやらこの聖杯には私の願いを託せないようだ。ならば私も、マスターに同意します」

 

士郎に続いてセイバーも同意してくれた。まあ、穢れた聖杯になんて、選定のやり直しやブリテンの未来は託せないよな。

 

「あたしのマスターは偶然巻き込まれただけだし、もともと生き残ることが目的だから問題ないかな。これはマスターとあたしとの総意って受け取ってくれていいよ」

 

まあ当然、アサシンもOKと。

 

「……そうね。私は元々、遠坂家の悲願として聖杯戦争に勝利したいだけだからね。聖杯に望みを託すのはオマケみたいなものだから、私も問題ないわ」

「……マスターがそう望むなら、それに従おう」

 

アーチャーはめちゃくちゃ不満そうだな。そりゃそうか。アイツの目的を封じられたようなもんだからな。

 

「……私は、戦いについては同意しても構わない。でも聖杯に関しては、少し考えさせてほしい」

「ホワイトロリは一部保留か。まあ良かろう」

 

本当は良くないが、この返答も予想の範囲内だ。イリヤは今、アインツベルンに猜疑心を抱いてるんだろうけど、一族の悲願を蔑ろには出来ない、といったところか。

 

「では我輩は、汝らの誰かの勝利を願っておるぞ」

「あれ? でも、見通す悪魔じゃ…」

 

こら士郎! 変なタイミングで頭を働かせるんじゃねえ!

 

「……此度の戦いは未来が安定しておらんのだ。先程までは、汝とあかいあくまのどちらかが勝利する可能性が高かったが、今回の条件でホワイトロリが勝利する可能性も高くなったようだな」

 

とりあえず【stay night】は3ルートあるし、制作初期はイリヤルートも存在したらしいから、口からでまかせとはいえ、ありえない話じゃないだろう。

 

「つまり、お前にとって都合がいい未来に近づいたってことか?」

「当然。だからこその介入である。……ふむ、そうだな。ならばより都合の良い未来のためにも、もうひとつアドバイスを与えてやろう。

正義の味方を目指す男よ。汝が親しくする献身的後輩娘には注意せよ。その者、汝との好感度次第では途轍もない災禍の中心となるであろう」

「後輩娘…って、桜のことか!?」

 

いや、それ以外に誰がいるっていうんだよ。

 

「あの娘には間桐臓硯によって、ある仕掛けが施されている。それを解消するが吉と出ておるぞ」

「仕掛けって何よ」

「あかいあくまよ。それはナイショである」

 

本当は教えたいんだが、これ以上ネタばらしすると、どこからともなく金ピカが現れて、「余興の邪魔をするな」とか言って粛清されそうな気がするのでやめておく。

 

「汝も魔術師ならば安易に答えを得るのではなく、自ら調べる努力をするべきであろう?」

「悪魔に諭された!?」

 

うん。取り敢えずそういうことにしておこう。

 

「というわけで、我輩の為にもせいぜい頑張るがよい。そこの繁みに隠れた、アサシンのマスターもな」

「「「!?」」」

 

俺が繁みに向かって言うと、マスター三人が驚いた顔をしてそちらへ目を向ける。当然、セイバーやアーチャーも警戒している。

 

「では、サラバだ!」

 

その僅かな混乱に乗じてそう告げと、みんなが再びこちらを見て。

 

「『テレポート』…」

 

俺はボソリと、魔法…魔術を発動させた。

さあ、ここからが時間との勝負! [芸達者になるスキル(ヴァーサタイル・エンターテイナー)]の真骨頂! 声真似だけだと思うなよ!

 

「ちっ、立ち去ったみたいね。まあいいわ。それよりもアサシンのマスターさん? そこにいるのなら、隠れてないで出てきなさい」

 

凛の問いかけに一拍だけ間を取り、俺はがさりと繁みの中から姿を現した。そう。テレポートの出現先を繁みの中に設定し、移動直後に芸達者の技能を活かし早着替えをして、みんなの前に姿を見せたのである。まさにエンターテイメントだ。

 

「……あら、貴方」

「あ、ええと、以前助けた子…だよね?」

 

声をかけるイリヤに、ワザとオドオドとした態度で返答する俺。[芸達者になるスキル]の効果はまだ切れていないので、なかなか自然に返すことができた。その代わり、動作がエンターテイメントらしく、やや大げさになってしまったが。

 

「……あんたは?」

 

短い台詞の中にも、有無を言わせぬ圧を込めてくる凛。本当に何も知らない一般人だったら萎縮してるぞ?

 

「俺は、佐藤和真。……ええっと、遠坂先輩と衛宮先輩ですよね? 俺、穂群原学園の1年です」

「ふうん。でも、全く見覚えの無い顔ね」

 

……凛よ。俺の心をえぐるのはやめてくれ。

 

「……俺、この間まで、自宅警備に勤しんでましたから」

「あら。家族を守るなんて立派じゃない」

 

自宅警備の意味を知らない凛は、本気で褒めてくれた。しかしアーチャーが。

 

「……マスター。自宅警備は、引きこもりを意味するスラングだよ」

 

呆れた表情で説明をすると、凛は恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にさせる。というかアーチャー、口調が若干士郎っぽくなってるぞ?

 

「ええと、君は俺達の事を知ってるみたいだけど」

「衛宮先輩と遠坂先輩は有名人ですから。穂群原のブラウニーに、ミス・パーフェクト。あと、衛宮先輩は今日…じゃなくて昨日の放課後に、ワカメっぽい頭の人と話してるところを見かけたし」

 

変に突っ込まれるのは嫌だったので、念のため、あの時のことは先に提示しておく。因みに「今日」というのはマジで間違えた。お陰でむしろ、自然な感じになったけど。

 

「……ワカメは失礼だろ、慎二に」

 

ワカメで通じてるのもどうかと思うけどな。

 

「あの、それで、聖杯戦争についてなんですけど。俺、アサシンからある程度のことは聞いたんだけど、なんか他に知らなきゃなんないことってないですか?」

 

いかにも一般人的なことを尋ねてみる。

 

「……そうね。マスターになったら聖杯戦争の監督役に報告する義務があるけど、これは守らないマスターも多いから。とはいえ、あんたも衛宮くん同様、根本のところから教わった方がいいと思う。でも、私はもう、教会には入れないし…」

「え? 場所を教えてもらえれば、俺ひとりでも…」

「ああ、うん。そうなんだけど、そうじゃなくて…」

 

って当然これは、凛が俺を守ろうと思っての台詞だろう。あのド外道神父の魔の手から。

 

「……それなら、私がついて行くわ」

「「え?」」

 

俺と凛の声が綺麗に被る。

 

「え、ええと…?」

「聞いていたと思うけど、私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。イリヤでいいわ」

 

聞いてたというか、俺が言ったんですけどね? というか、どういう風の吹き回しだ? 相手が士郎ならわかるけど、それだって日中のデレ状態の時だし。そんな表情を読み取ったんだろう。イリヤは言った。

 

「先日、助けてくれたお礼よ。忠告の方は不発だったみたいだし」

「……一応、親には言ってみたんだけどね」

 

そう返すと、イリヤは笑顔をつくって。

 

「まあ、私の忠告、信じてくれたのね。嬉しいわ」

 

……その反応は反則だろ。

 

「……カズ…マスター? 鼻の下、伸びてるよ?」

「っな!? べべ別に、見惚れてなんかいないし?」

「見惚れてるとまでは言ってないけど?」

 

しまった! これは罠!? ……というのは冗談として。

 

《お前、さっきまでの事、根に持ってるだろ》

《別に? カズマくんがあたしに内緒で悪魔の真似事してたとか、あたしのことを胸無しアサシンなんて言ったことは、全然気にしてないよ》

 

思いっきり根に持ってらっしゃいますね、クリスさん。

……そう。クリスは最初こそいきり立っていたものの、すぐに悪魔の正体が俺だと気づいたらしい。でなければ悪魔絶対殺すウーマンのクリスが、あんな落ち着いた態度で受け答えなんて出来なかったはずだ。

 

「どうしたの? 聖杯戦争の監督者のところに行くんでしょう?」

 

そう言ってイリヤが俺の手を取る。いや待て、どうしていきなり無邪気な行動に出るんだ! って、それがイリヤさんテイストでしたね!?

 

「それじゃあリン、シロウ。今日のところは、これくらいで引いてあげるわ」

「え…」

「ああ…」

 

無邪気で物騒な捨て台詞に、凛と士郎は気の抜けた返事を返すのだった。

 

 

 

 

 

イリヤは俺の手を引き、ずんずんと進んで行く。何、この子。なんでこんなに積極的なの? ひょっとして俺に気があるとか?

 

──この男、また都合のいいこと考えてますね?

 

脳内で前世の嫁が、ツッコミ入れてきやがった。いや、確かにアイツなら言いそうだけど。というか、未だにこんなツッコミが聞こえるなんて、俺、どんだけアイツのことが好きだったんだよ。

だが、だからこそ言わせてもらう。そのせいでイリヤのこの行動にドキドキしてんだからな? あの赤い瞳と重ねたときから、イリヤが気になってしょーがないんだよ!

 

──この男、ついに開き直りましたよ。

 

だから、脳内で突っ込むのはやめろっての! お前あれか? べた惚れして俺から離れられない構ってちゃんか? ……いや、離れられないのは俺の方か。

 

「ねえ、さっきから何面白い顔しているの?」

「面白い顔言うない」

 

キョトンとしたあどけない表情で聞かれると、色んな意味でダメージが入るんですけど。

面白い顔言われた精神ダメージはもとより、美人で可愛らしい、まさに美少女のそんな表情は、前世はまだしも現世で童貞の俺には刺激が強すぎる。さらにめぐみんと重ねてしまっているから、なおタチが悪い。

いや待て、落ち着け佐藤和真。俺の恋愛許容範囲は二歳年下までだったろ。それは記憶を取り戻す前でも同じだったじゃないか。……って、イリヤは十八歳、俺より年上だった! え、何? これっていわゆる、合法ロリってやつ? あ、やばっ。なんだか急に緊張してきた。

その様に、俺が心の中で色々と悶々としていると、イリヤが急に立ち止まった。手を引かれていた俺も、必然的に立ち止まる。冬木教会まではあとちょっと、といった場所だ。

 

「……ねえ、カズマ」

 

顔を俯けて、俺の名を呼ぶイリヤ。俺の緊張が高まる。

 

「貴方がさっきの悪魔の正体でしょう?」

 

妙に冷めた声で、イリヤは尋ねたのであった。

 

お父さん、お母さん、そして我が妹よ。和真です。俺はこれから、ホワイトロリによって命を落とすかも知れません。




脳内ツッコミは、めぐみんのことを思い出した状態でイリヤを気にしていることに対する、和真の罪悪感が作り上げたものです。めぐみん登場フラグというわけではありません。
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