天井も壁も床も真白い空間。いや、正確には上下左右前後が存在しない次元らしいが、人間として生きていた頃の感覚では、ついそう表現してしまう。
(それで、先ほど言われた異世界転生。それはラノベなんかでよく見るあれで良いんですか?)
口が存在しない為、尋ねたいことを強く念じると、
“肯定。正確には魂を別システムに引っ越しさせる”
と、姿は見えないが存在感だけは圧倒的なそれ……神と呼ばれる者が丁寧に答えてくれた。
(それにしても、一体なんで私みたいな者を……)
“汝が選ばれた理由は、魂の器が大きかったから。ここまで大きいのは凄い”
(いやいや、私はただのアラフィフですよ。そんなたいそうなものじゃあありません)
謙遜のつもり無くただ事実を述べるも、“しかし、汝の魂は立派である”等と言われる。
“魂は後天的に成長する。娯楽神曰く『経験値を稼いでレベルアップ』……と言うと分かりやすいらしい”
(その娯楽神様は随分俗っぽいんですね。……けど、そんな経験値を稼げそうなことした記憶がありませんが……)
そう言うと、神様は“魂の成長はそれほど特別なものではない。挫折、喪失、失敗、奮起、獲得、成功……。生物として成長した時、又は磨かれた時、その魂は成長し、器が拡張される”と解説してくれた。
そう言われると、確かに心当たりがある。長く生きていると色々とあるもので、特に私は他の人より少しばかり苦労した経験が多いと自負出来るほどに挫折や失敗。そしてそこからの奮起を繰り返した。
しかし、それが私の魂を成長させていたとは……。人生分からないものである。
(私が選ばれた理由はなんと無く分かりました。それで私は転生先で何をすれば良いのでしょうか?)
“何も”
魔王を倒せだの言われるのではないかと思いながら質問すれば、端的にそう告げられる。
(何も……。とは、何もしなくて良いと?)
“肯定。汝を転生させるのは魂の不足を補う為である”
(魂の不足って……)
“下界で大きな争いが起こり、その影響で数多くの魂が消滅。魂の循環に大きな問題が生じた為、汝はその補填となる”
淡々と告げられる内容のスケールについて行けなくなりそうだが、なんと無く理解できた。
(しかし、別の世界に転生させるなら、態々こうして話さなくても良かったのでは……?)
“否定。初期に試した魂は異なるシステムに適応出来ず消滅してしまった。我等としても不本意な結果である”
(……え?)
思いもしない返答に慌てて大丈夫なのか問いただすと、“解決策は発見済み。汝らの魂が適応できるように調整する為、加護を与える”と返される。
(加護ですか……)
“然り。しかし、この調整では汝らの記憶を漂白する事は不可能になってしまう。それ即ち、魂の成長がその生に限り停止してしまうことになる”
“その補填として、加護の要望を聞き、魂の余白に収まるように調整する事が決定されている。娯楽神曰く『転生特典』……と言うと伝わりやすいらしい”なんてマジメ腐った雰囲気で淡々と告げる神様。どうやら娯楽神様はサブカルチャーに明るいらしい。流石、娯楽の神だ。
(けど、地球の方から魂を運んでも良いんですか?今度は地球の魂が不足になるんじゃ……)
“その心配は無用。地球の転生システム上で現在魂は容量オーバー。転生待ちの魂が向こう数億年分貯まっている”
(それはそれは……)
地球の魂事情にびっくりしていると神様から“それで本題。汝の望む加護……チートは何か”と聞かれた。
私が望むもの、か……。
私の精神が若かったらテンプレートなチートをもらって俺Tueeeeeeeをしようと企むのだろうが、現実はそう甘くない事をこの身を持って知ってしまっている。ならば、
(縁に恵まれたいです。私の行動が、最終的には福に転じる。その福が私だけでは無く周りのみんなにも当てはまる。そんな都合の良すぎる縁に)
“了承。汝の魂の余白的にはもう少し余裕があるが?”
(いえいえ、特別な力なんて持っていたとしても、私じゃあ持て余してしまうだけですから)
そう答えれば、“……了承した。ならば程よい加護を見繕おう”と告げられた。
(……失礼ですけど、神様って言うのはサービス精神旺盛なのですね)
“それは否。我等は汝らと考え方や基準となるものが違えど、感情はある。これは我等の都合に巻き込んでしまう事になる汝らへのお詫びだ”
……どうやら、娯楽神様だけで無く、神様全般が俗っぽいようだ。
“……加護を与え終えた。汝の生に幸あれ”
(ありがとうございます神様)
そこで、すぅ……と薄くなる意識。意識が途切れてしまう直前、何故かは分からないが、顔が見えないはずの神様が微笑んだような、そんな気がした。
“新たな脅威が誕生した?悪魔王は滅ぼされ、魂も滅した筈”
“……っ!?我らの加護を感じる。まさか、転生者か?”
“早急に対応策を用意すべき”
“……無垢なる魂の用意が出来た。作ろう、そして産み落とさせよう”
“新たなる、勇者を”
久しぶり過ぎて、少し小説の書き忘れちゃってるわ。w