吾輩は寄生生物である。名前はまだ無い   作:雁木まりお

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オウム返し

「まさか本当に仲間だったとは、失敗したマヌケだったようだが」

 

 初めての同族は、最初から私を対等に見ていなかった。それに気づかず、私は初めて見た同族に驚きながら、奴はこちらを見下しながら互いを観察した。

 

「小動物にでも寄生したのか?首から下はどうなっている?頭部の中に収納でもしているのか?」

 

 その男は矢継ぎ早に私に質問してきた。当時の私は人間の言語をまだ理解していなかったので

 

「しようどうおぶつにきせいしたのか。くびからしたわどおなあている」

 

と今からすれば恥ずかしくなるようなオウム返しをすることしか出来なかった。

 

 その時は木にぶら下がりながら男の顔と声をマネしていたので、知らない人間が見ていれば生首が木に吊るされている、しかもその生首が喋っているように見えていたかもしれない。

 

「懐かしいな、私も寄生したての頃はテレビを見て言葉を練習したものだ。それにしても脳ミソが小さい状態で成熟したせいか知能が低いな。いや、環境のせいか?未だに言語すら習得できていないとは」

 

 ソイツは今思い出すとこんな感じのことを言っていた…当時言葉を理解していれば激昂していたかもしれない。理性ある今現在ならヤツの言うことにも一理あると分かるが、それにしてもムカつく物言いだ。本当のことだからといっても言っていいことと悪いことがあるだろう。あんなのが人間の社会に溶け込めていたのだろうか?

 

「いや、案外体を丸ごと乗っ取ったから消化器官の真似事も出来ているのか?羨ましい話だ。我々は人間の真似をしても寄生生物の範疇を超えられないというのに」

 

 ソイツは私の苦労を知らずに私を羨ましがった。ムカつくヤローだ…案外言葉を理解した今でも殺意を覚えるかもしれん。

 

「さて、言葉を理解してはいないだろうが、私が今日きた理由を話そう。我々は寄生生物として人間を食っているわけだが、人間の社会に紛れて生活している。今のところ社会は我々の食事をミンチ殺人として、あくまで人間の仕業として考えている」

 

「だが、そこにお前が現れた。フライングヘッドだか未確認生物だか、人は適当な名前でお前を呼ぶ。この前は新聞にも載った。テレビのニュースにもなった。つまりお前は目立っているんだ」

 

「そうすると我々は困るんだよな、お前のような半端者がいると世間がこう考える、新種の化け物がいるんじゃないか、とな。実際にお前は物見遊山の学生と依頼を受けた猟友会のハンターを襲った。しかも逃げられている。」

 

 私は初めて他者から殺意を感じ取った。目の前の男は私を殺そうとしている!ソレは私の短い人生の中で初めての経験だった。

 

「生活の基盤を作り終える前に我々の存在が明るみに出るのは危険だ。だからお前を殺す」

 

 その宣言に対して、私は奴の真似をしてこう言ってやった。

 

「オマエヲコロス」

 

 よちよち歩きの雛にしては上出来な返しだろう?

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