「お…俺の……体が……」
「ああなんということだ私の体がっ!!!」
「違う……俺の……」
私はミギー、泉新一という人間に寄生した寄生生物である。私は他の寄生仲間と違い、人間の脳を奪うことに失敗した。脳の代わりに右手に同化することで、新一の血液から栄養をもらって生きながらえている。
どうやら脳を奪った同種たちは人間の脳が生き残っている言わば失敗作を非常に警戒しているらしく、つい先日も同種と戦闘になった。あの個体は人間に寄生できなかったという意味では私と同じ境遇であったが、それでも人間の脳が残っている我々を敵と判断し襲いかかってきた。
今回の仲間は我々を警戒はしていたものの、右手を切り落とすことで私をスカウトしようとしてきた。まあ信用できなかったので殺してしまったが。
「クソッなんとか結合できないか…?いや、右手も無いし血液も足りない!おい死ぬな!早く頭に戻ってこい!」
「………………」
そして今、新手の仲間が死体の前で無駄な蘇生を試みている。右手を切っていたせいで血が足りないらしい、そこをふさいでも頭部も無い、完全に詰みだ。
「なあミギー、こいつもお前の仲間か?本体だけで胴体がないけど…」
「それでも確かに『仲間』のようだぞシンイチ、敵意は無いようだが」
そいつは人間の頭ほどの大きさで、どうやら翼をはやして飛んで来たらしい。空を飛べるとは先日の『仲間』を思い出す…。私や他の寄生生物では本体が重くて邪魔だろうが、もっと本体が小型の仲間や首だけの奴には関係ないだろう。
「なあどうするミギー……」
「どうするとは何だ」
「さっきの奴みたいに殺すのか?殺さなくていいなら逃げようぜ、今奴はあの死体に夢中だし」
胴無しの仲間は現在動かなくなった死体と死んだ寄生生物の前で悔しがっている。随分怒りっぽい奴だ。殺した私に対して殺意を向けてこないのはそれほど頭がよくないのだろうか?
「いや………もし逃げた後追いかけられたらシンイチの足では逃げきれないだろう。こういう時はまず話し合いだ」
「今更人間みたいなこと言いやがって……」
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「ほう、まさか鳥に餌として食われてそうなったとはな。同化したのが小さな雛だったから全身を乗っ取ったと」
「お前も人間の腕とは苦労するな、だが狩りをしなくていいとは羨ましい。食欲は無いのか?」
「私はシンイチの血液から栄養をもらっている。………鳥とはいえ脳を奪ったのに君は我々に敵意を向けてこないのだな」
「私は一度人間に寄生した奴に襲われている。敵の敵は味方という奴だ」
俺の横でヘンテコ生物が井戸端会議に勤しんでいる。どうやらコイツもミギーと同じで寄生に失敗したようで、互いの苦労を報告しあっている。
「なあ、もしかしてお前らってポンコツなのか?今の所人間に寄生したやつより失敗したやつの方が多いんだよな」
「さあ、サンプルが少なすぎて何も言えないな。だがミンチ殺人は『仲間』の仕業だろう。」
「なんだと?お前を森の中に放り出してもいいんだぞ」
ミギーと胴無しが同時に返事を返したが、同じ寄生失敗仲間とはいえ個性があるらしい。ミギーは事実を淡々と話す性格で、胴無しは怒りっぽいようだ。
「なあ胴無し、お前これからどうするんだ?さすがにお前を連れて帰るわけにはいかないしなぁ」
「ぐぐぐ……左腕でいいから居候させてくれたり……ミギー!」
「私は反対だ、リスクが高すぎる」
「リスク以前に嫌に決まってるだろ…左腕まで食われてたまるか」