愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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【遠野ハンナが犯人なわけ】
「まず、現場には足跡がなかった。
それでいて、“床の傷”から“何者かが現場にいた”ことが証明された。
それでいて、凶器のボウガンの矢だが、諸事情でボウガンは使えない状態のためボウガンの射出はありえない。
つまり犯人は“中に入り”、被害者をボウガンの矢で直接刺し殺すしかなかった。
よって、犯人は【浮遊】の魔法が使える遠野ハンナしかあり得ないというわけだ」


5日目-魔女裁判(後)

「これこそが、完璧な証人の完璧な証言。

これを崩せるものなら崩してみたまえ!!」

そう、レイアが高らかに宣言する。

 

「(確かに、キレイちゃんの発言に矛盾はない。

でも、これを覆さないと、ハンナちゃんが...)」

エマの額に、汗が滲む。

 

「...あれ、エマちゃん」

ふと、気がついたようにミリアがエマを呼ぶ。

「考えてみたんだけど、もしハンナちゃんが犯人なら、説明が付かないことがある...気がするんだけど...どこかなぁ...???」

 

「(説明がつかないこと...それって!!)」

“床の傷”

>傷が付く理由がない。

「それはおかしいよ!!」

エマが、そう叫んだ。

 

「ふうん、こちらの証明のどこにおかしな所があるのかな?」

レイアが、そうエマに問いかける。

「うん、やっぱりおかしいよ」

 

エマは言葉を紡ぐ。

「レイアちゃん達の言ってることが正しいなら、ハンナちゃんは魔法で浮かんで、手に持った矢でノアちゃんを刺して、そのまま戻っていったってことだよね?

......なら、床の傷はいつできたの?」

「......あっ!!」

レイアが気がついたように声に出す。

 

「確かに、現場に犯人が居たことを示しているのが床の傷。しかし、検察側の示した犯行方法では、傷ができることはない」

「くっ......こちらの立証が間違っていたというのか......!!」

キレイは納得し、レイアは悔しそうに顔を伏せる。

 

「本当の裁判なら証拠不十分で不起訴だよ!

でもやったね!これでハンナちゃんの無実が」

 

「.....だが、それがどうかしたと言うのかね?」

キレイが、喜んでいる様子に水をさす。

そこに、レイアが追撃をする。

「そう、確かに私達の犯行説明では傷がついてある理由が分からない。きっと何かを間違えているのだろう。しかし、それでも遠野ハンナが無実とは断定できない。現場に足跡無しで入れたのは彼女だけなのだから」

 

確かに、矛盾を突いた所で...

そう思っているエマを横に、ミリアが反論する。

 

「それは違うよ。検察側の立証では説明できないことがある以上、現場の中に入らなくても犯行が出来たことを考えるべきじゃないかな」

その言葉に、レイアが答える。

「確かにそうだ。しかし、現場からはもう特定する材料もない。時間一時間と短い以上、今から検討する時間はかなり厳しいものがあるよ」

 

その言葉に空気が停滞すると......

「つーかキレイっちさぁ......」

「(ココちゃん.....?)」

「なんでずっとアレ黙ってるわけ?」

今まであまり発言をしていなかったココが、キレイに問いかける。

 

「おや、なんだったかな。ああそうそう、君が言っていたあの」

「あれは忘れろ!!そうじゃなくて、アリバイ!!あてぃしに確認しただろ!!」

「おお、現場不在証明!ミステリーの基本中の基本!!そういえば皆さんのは話してませんでしたね〜」

シェリーのテンションが上がる中、ココが話を続ける。

 

「まあ良いや。まず、21時からのアリバイね。あてぃしの配信見てた奴〜声上げてけ〜!」

ココが皆に呼びかけると、それぞれが答え始める。

 

「私は外の畑で君の配信を見ていた」

「.....それはウチが保証する。言峰は娯楽室からまっすぐ畑に向かってた。ただウチは配信見てねえ」

「でもシェリーちゃんが部屋で配信を見てた時に帰って来てたので、アリサさんのアリバイも私が保証できます!」

3人の21時からのアリバイがまず証明され

 

「あら、なら私とナノカちゃんもアリバイが証明できるわね。

部屋で配信を見ているとき、ナノカちゃんが居たわ」

「......そうね、あなたはトイレにも立たなかった」

ナノカ、マーゴもアリバイを話す。

 

「ボクはアンアンちゃんと一緒に医務室で配信を見てたよ」

『それはわがはいが証明する』

医務室にいた二人もそう話し...

 

「それで、おじさんとレイアちゃんは一緒にココちゃんの配信に映ってたから」

「21〜22時の間、誰も犯行はできなかったと言うことになるね」

「そそ、そう言うこと〜」

 

「んで次、死体発見時のこと話してくれない?確かアンアンだっけ、最初に見つけたの」

『そうだ』

 

そうして、アンアンが状況を書き出す。

『医務室のロックが開き次第、わがはいは自分の部屋へと向かった。その時にエマと出会い、一緒に死体を発見した』

「うん、そうだね」

エマもそれに同意する。

 

そこに、マーゴとナノカも語り出す。

「私たち、二人とも朝早く起きたけれど、静かだったわね」

「そうね、夏目アンアンが来る前に、誰も動いた様子はなかったわ」

 

エマは思考する。

「(と言うことはつまり...)」

 

>朝には誰も外にいない。

「分かった!つまり朝には犯行はできないんだ!」

「そういうことになりますね!であれば、ノアさんの死亡推定時刻は20〜21時の間、ということになりますね!」

シェリーがそう纏めると、反論が起きた。

 

「異議あり!その発言はおかしいよ、シェリー君!!」

「そうですか?おかしな点はないように思えますけど」

その反論の主はレイアだった。

 

「いいやおかしいさ。配信が終わった後、ココ君、ミリア君、私の3人で部屋に戻る時、私たちはノア君の部屋の前を通っている。

その時、キレイ君とも会っていたから間違いないよ」

「ええ、その通り。確かにノア君の部屋の前を通っていたね」

キレイがそれに同意する。

 

「あの現場の状況から中が分からない、なんてことはあるだろうか?

血の臭いもするだろうし、横を通り過ぎていたのなら見ていないとおかしいよ。つまり、その時ノア君は生きていたんじゃないかな!」

「......キレイっちさぁ、なんでこれ黙ってたわけ?」

「━━━おや、なんのことだったかな?」

そのレイアの反論に、ココが呆れてキレイに問う。

キレイは心当たりがない様子を見せた。

 

「(キレイちゃんが、黙ってた?)」

エマが疑問に思う間に、ココが語り出す。

「.....現場にはノアがカラースプレーばら撒いてたっしょ?それなら血の臭いもかき消えてるから分かんないし、それにミリア、あてぃしらどういう状態だった?」

 

話を振られたミリアは慌てながらも

「それは、えっと......レイアちゃんとお話して騒いでたから......あそっか!見てない!覗き見ることはなかったはずだよ」

「そんなっ......!!」

レイアが驚いた様子でそう言う。

 

「てなわけで、これで死んでた可能性は否定できないから、死亡推定時刻は20〜21時ってことで!......おい、笑うなし」

「ふふ、すまないすまない」

「(二人とも、何か話したのかな)」

 

キレイとココのやり取りに、エマが疑問に感じていると、シェリーが話を始める。

「では!20〜21時の間のアリバイをまとめていきましょう!」

 

その言葉にココが

「あてぃしとそこのザコはずっと配信の準備をしてたから、共犯じゃない限りあてぃし達は無理〜犯人はご愁傷様〜」

「夕飯の後は、ずっと手伝わされてたから、その時間は証明できるよ」

 

ミリアが同意して、それにマーゴが続く。

「夕食の後は、ずっと娯楽室にいたわ。時計も確認していたし、そこにエマちゃん達も来たはずよ?麻雀を打っていたキレイちゃんとアリサちゃんが印象深かったわね」

「二人麻雀も中々新鮮だった」

「......黒部もそこに来てたな」

 

それにナノカが反応する。

「......リボンを探していた時ね」

「そうだね、その時は一緒にメルルちゃん、ハンナちゃん、シェリーちゃんも一緒に行ったよ」

「はい!その時時間も確認しています!20時頃から21時頃でしたね!」

 

エマとシェリーも同意して、ハンナが続く。

「キレイさんがナノカさんとアリサさんの喧嘩を止めた後、何故かわたくしたちも麻雀を打たされましたわ...」

「でも、新鮮でした...!」

 

「...あれ?」

エマが何か気がついたかのような声を上げる。

「......じゃあ、20〜21時の間、みんなアリバイがあるってことじゃ?」

その言葉に、アリサが反応する。

「いや、いるだろそこに。長い間アリバイのない奴が......」

「それって.....!」

 

・長い間誰も会っていない人物

>蓮見レイア

 

「レイアちゃん......だよね?」

名前を挙げられても、レイアは沈黙している。

「......ねえ、あの時キミは、何をしていたの?」

 

そのエマの問いに、レイアは

「......さて、なんだったかな」

 

そう惚けた後、

「ただ、アリバイなんてどうでも良いことじゃないかな、私にノア君を殺すことはできないんだ。外から殺したとしても、

廊下から現場まで3mも距離があるノア君を刺し殺すなんて、私には到底できないよ」

 

エマはレイアの言葉を思考する。

「(考えるんだ。レイアちゃんが犯人だとして、それを可能にする方法を。問題は、床に付いた傷はどうして付いたか。付くような殺し方はあるか)」

 

・どうすれば、廊下からノアを刺せるか。

>槍を作る

・どうすれば、槍を作れるか。

>ほうき

>黒いリボン

>ボウガンの矢

「(......これだ!!)」

 

「いや、レイアちゃんなら可能だよ」

「なんだって......!?」

「これを見て欲しいんだ」

 

エマは、黒いリボンを取り出した。

「.....!私のリボン......!」

「アリサちゃんが拾ったんだけど、

これには、現場にあった塗料と、そして、血が付いていたんだ」

「なんですって......!?」

 

エマは話を続ける。

「次に、このほうきだよ。これは先端と柄が分解されていたんだ。きっと、矢と括り付けるために」

「なるほど、長槍ね?」

マーゴがそれを聞き、納得したようすだ。

 

「でもでも、それで作ったとしても、身を乗り出して精々2mですよね?であれば後1mは必要では?」

シェリーが疑問点を口に出す。

 

「そう、だから...犯人はいつも持ち歩いているものを使ったんだ」

>レイアのレイピア

 

「......犯人は、自分の持っている剣と鞘を使ったんだ。これなら、長さ的にも問題はないと思うよ...。

犯人は、自分の持っていた剣と鞘、箒と、持っていた矢、拾ったナノカちゃんのリボンで、長槍を作り出して...ノアちゃんを刺し殺した。

そうだよね。

━━━蓮見レイアちゃん!!」

 

「......ふふ、面白い推理だよエマ君。小説家にでもなったらどうかな?」

「......!!」

レイアは余裕の表情を浮かべている。

 

「ただ、黙ってやられるわけには行かない。反論させて貰うよ!

そもそもの推理が大間違いだとね!

そもそも、その長槍が作られたという証拠は!」

 

>黒いリボン

「現場の塗料と血が付いた、ナノカちゃんのリボンだよ。アリサちゃんが拾った時には付いていたみたいだから、きっと犯人が犯行後に捨てたんだよ」

「...確かに、白い塗料と血が同時に付着するのは、現場以外あり得ないわ」

エマの言葉に、ナノカが同意する。

 

その反論にも、レイアは毅然と対応する。

「本当かな?それに例え使われていたとして、それが私を指し示す根拠には薄いよ!」

「...じゃあよ、なんで血と塗料が付いたんだ?」

アリサの疑問に、エマは━━━

 

>落とした。

「きっと、括り付けが足りなかったんだろうね。多分即席の槍が崩れたんだ」

「なるほどね、それで犯人は、リボンを回収したのね」

「うん、きっとその時に傷が付いたんだ」

 

レイアの余裕の表情は崩れない。

「そもそもの話だ。もしエマ君の推理が正しかったとして、槍はその場で組み立てる必要がある。では、その間ノア君は何をしていたのか!

私の魔法は【魅了】......人にちょっとした恋心を抱かせる魔法さ。けれど、それに強制力はないし、何より殺されるとなれば、抵抗もするはずだよ」

 

それにエマは対抗する。

「そもそも、それは本当なのかな。ボク達は、互いの魔法を知る術はない。別の効果の魔法を語ることだってできるんだ!」

「じゃあ、レイアさんの本当の魔法ってなんなんですの?」

「それには、嘘とバレず、犯行を抵抗されず、死体を犯行後気付かれず...この3つの条件が必要よ?エマちゃんに、できるかしら」

 

エマは、前にあった出来事を回想する。

それは、シェリーがハンナのスマホを奪った時。

その時にはレイアの配信で、奪われたハンナはスマホに釘付けだった。

 

「......そっか。レイアちゃんの魔法は、【注目を集める】ことだったんだ」

その言葉に、レイアの表情が崩れる。

 

「確かに、人と目を合わせた時ドキドキするのは心理学的にもあり得る話ね」

「そう、だからココちゃん達がノアちゃんの死体の前を通っても、犯行時にノアちゃんが抵抗しないのも、全部説明できるよ!」

「なるほど、【ミスディレクション】ね」

マーゴは納得した様子だ。

 

落ち着きを失った様子のレイアに、

「少し良いかね?」

━━━キレイが、声をかけた。

「(キレイちゃん...!!)」

しばらく沈黙を貫いていたキレイが、口を開く。

 

「何も慌てる必要はない。エマ、君の言うことが正しいのであれば、気になることがある。

床の傷はどう付いたのかな?」

 

>レイアのレイピア

「レイアちゃんのレイピアだよ。あれなら鋭いし、崩れた時にしっかりと傷が付くはずだよ」

瞬間、キレイの顔に笑みが浮かんだ。

「.....!!」

何か、嫌な予感がする。

 

「であれば、簡単な話だ。蓮見レイア、皆に見せてあげるといい」

そして、レイアの表情に余裕が戻った。

「ああ、そうか...。最初から、これを見せれば良かったんだね」

そうして、レイアが己の剣を高らかに掲げる。

 

その先端には、一片の曇りもなかった。

「そんなっ......!!」

「君の推理が崩れたね。ナイスアシストだよ、キレイ君」

 

やられた、恐らく気がついていて、証拠の塗料を拭き取られた。

「(どうすれば良いの、証拠はもうない......!)」

エマの表情に、絶望が浮かぶ中、キレイは続ける。

 

「にしても見事でした。裁判を円滑に進めるリーダーシップ、追い詰められても果敢に反論する精神力」

「いやいや、そんなに褒めないでくれたまえ」

キレイの言葉にすっかり気を良くしたレイア。

 

「そういえば、昨日の配信も見事でした。

唐突の無茶振りに見事に対応して見せた、経験の賜物といった所でしょうか。

“飛んでくる林檎に、レイピアを刺して受け止める”など、そう簡単にできることではない」

━━━レイアの表情は一気に固まり、青くなった。

 

すかさず、ミリアは自分の懐を探り...一つの林檎を出した。

「......あった。レイアちゃんが使った林檎に、塗料が付いているよ」

 

それは、動かぬ証拠であった。

その時のキレイの顔は......怖い笑顔だった。




その後、レイアの自白が起こり、最多投票を集めて...
城ヶ崎ノアを殺した犯人は、蓮見レイアとして、処刑されることになる。
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