愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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「所でキレイっちさ。なんでアリバイ黙ってたの?」
「話さなくても君が話すと思ったんだ」
「おめー楽しんでただろ!!いじわる!!」
「はっはっは」
(次回からキレイ視点に戻ります)


喜べ少女、君の願いはようやく叶う。

(エマ視点)

犯人は、蓮見レイアだった。

彼女は、アンアンがスプレーの刺激臭で、参っているのを見た。

それを見て、どうにかしないと、という思いから犯行に及んだという。

 

「(でも、ノアちゃんだって......)」

それを聞いて、エマの心はもやがかかっていた。

それに対する蓮見レイアの顔は、どこか清々しい笑みだった。

 

「......違う」

そして、その蓮見レイアの言葉を、アンアン自身が否定した。

「わがはいは、弱くない...ノアが、お守りだと...おまじないだと、描いて...」

「(そっか、あのスケッチブックの絵は......)」

 

それは、ノアからアンアンに向けてのプレゼント。

あの蝶の絵は、二人の友情の形でもあった。

「......みんなが怖くないように、流れる血も、蝶になったんだ」

 

最後にノアが見た姿は、レイアだっただろう。

マーゴが蝶の意味を伝え、アンアンがレイアに問いただす。

その衝撃に、レイアはよろめき、膝をつく。

「そんな、そんな...私は......!」

 

慟哭するレイアを横に、ゴクチョーが語る。

「お話は済みましたか?時間も押してますし、そろそろ進行したいんですが」

 

ふと、各々のスマホの画面が変わる。

写った処刑、という一つのボタンを全員が押すことで、投票により決まった犯人が処刑されるという。

 

「(......ボク達が、この手で、レイアちゃんを処刑するボタンを押すなんて......!)」

エマは、ボタンの上に手を、恐る恐る載せた。

ゆっくりと上がる赤い色は、人の命の重さを感じさせた。

その時間は1秒1秒が長く感じ、やがて全員が、ボタンを押し終わった。

 

「はい!ではこれより、魔女の処刑を実行します〜」

ゴクチョーの宣言と共に、真ん中の台座が沈んでいく。

それと入れ替わりに現れたのは、巨大な天使像。

処刑台というには。あまりにも神秘的だった。

 

「━━━アイアンメイデン」

キレイが小さく、そう呟き、その声にレイアがびくりと反応する。

「蓮見レイアさんには、この中に入ってもらいます。

あ、他に人たちは動かないで下さいね。邪魔や介入をすれば、看守がその者も同様に断罪します」

 

看守が、レイアの席に近寄り、レイアを捉える。

「い、嫌だ。【あれ】の中には入りたくない......!!」

遅すぎる抵抗を、レイアは始めた。

ノアとアンアンが上手くやっていけそうとは知らなかったと、そうでなければ殺さなかったと、皆を守りたかったと。

その抵抗も虚しく、ズルズルと、看守はレイアを引きずっていく。

 

天使像が、中身を露わにする。

それは、アイアンメイデン。

かつて、エリザベート・バートリーが愛用した処刑器具。

内部は青い薔薇で埋め尽くされ、至る所には使用者を噛み殺す牙が幾度となく散りばめられる。

 

その中に、レイアが捕えられた。

恐怖で顔を引き攣らせながらも、どこか凄惨な美しさがあった。

「お願い!閉めないで!!他の処刑方法にして下さい!!」

抵抗をするのも、無理はないと思った。

━━━この言葉を聞くまでは。

「この処刑方法はダメだ!だって、みんなに見えないじゃないか!!」

 

その言葉を皮切りに、2人の少女が、その隠された本心に切り込んだ。

「やっぱり、みんなを守りたいなんてウソばっか。

ノアが邪魔だったんでしょ?自分が目立たないから」

ココが、そして

 

「なるほど!【バルーン】が動機でしたか!

確かに、一芸能人のレイアさんと、世界的アーティストのノアさんであれば、知名度的にも差がありますもんね!やっと動機がしっくりきました!」

無邪気にシェリーが、切り刻んだ。

 

「ちが、ちが...」

二の句が告げず、震え立つ。

ふと、レイアの顔に亀裂が走る。

彼女の【禁忌】に、触れてしまった。

 

「ああそうだ!認めるよ!!私は目立ちたかった!

城ヶ崎ノアに舞台の主役を奪われて、あいつを殺さないとって思ったんだ!!もっと私を見てくれよ!!私だけを見てよ!!やだ、やだぁぁぁ!!!」

 

それは、彼女の心の底からの慟哭。

それに対して、前に出る者がいた。

「━━━キレイちゃん?」

彼女は、処刑される直前のレイアに、言葉を告げる。

 

「━━━喜べ少女、君の願いはようやく叶う」

その言葉は、あまりにも予想外で...レイアすら、虚をつかれた表情をしていた。

 

「たった一輪の変わらぬ花が咲いた程度では、皆はそれを見ることはない。注目を集めるには、多くの変化か、見るも無惨な姿になるか。

人の命を奪った君は、君自身が最も望まぬ死を迎える。

 

それは自業自得、憐れみ、嘆き...如何なる目線であろうとも、私たちは君の最期を見届け、死んだ後も忘れないだろう。

━━━閉幕だ。最期は笑いたまえ、偶像だろう?」

 

その言葉は、レイアにとって、一つの救いとなったのか。

地獄に垂らされた一本の糸を見たかのように、泣き腫らした顔に笑顔を浮かべ.....

━━━幕が降りるまで、その笑顔を絶やすことはなかった。

 

閉じた天使の像からは、何も聞こえることはなかった。

天使の合間から、紅い紅い液体が落ち、それは皮肉なことに、蝶へと変わってゆく。

 

各々が、その死から目を離せなかった。

 

「━━━おや、魔女とはなりませんでしたか。珍しいこともあるものです」

ゴクチョーが、レイアの死後、意外だと声を上げた。

仕掛けが作動し、処刑台は降りる。

そうして、何も見えなくなった。

 

「(......さよなら、レイアちゃん)」

「まあ、無事に事件が解決してよかったですね。また事件が起きたら、こうしてまた【魔女裁判】を開きます。それまでは、今まで通り、囚人として慎ましく過ごしてください。

それでは、これにて閉廷とします。やれやれ、お疲れ様でした」

 

裁判が終わった。

少女達が、各々の顔を窺い、はかりあいつつ、ノロノロと動き出す。その中で......

 

銃声が鳴り響く。

一撃で仕留められたゴクチョーは地に落ち、びくともしない。

「(一体だれが......!?)」

銃声のした方向に目を向けると、そこには......

 

「この茶番を、いつまで続けるつもり」

銃を持った少女、黒部ナノカだった。




【魔女図鑑:人物】
[ことみね きれい]
囚人番号671番。  誕生日:12月28日
15歳
【魔法】奇跡
一つのリンゴを全員に行き渡るように渡す。
水をぶどうジュースに変えるなど
神の子と近しいことができる。
それだけではなく、実現可能な範囲ならどんな願いも叶えられる。

敬虔なるシスター、目が死んでいる。
蓮見レイア処刑において、彼女に救いとなる言葉を与え、蓮見レイアを【魔女】ではなく、【偶像】として終わらせた。
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