言峰キレイは、暇を持て余している。
脱獄計画が開始して、エマはシェリー、ミリアと共に気球を飛ばす場所を探していたという。
そんな中キレイも脱獄計画に参加することになり、自身の布が一番多いとのことで、自身の燃やす衣服を提供、また食料の生産に勤しむことにしたのだが......。
「......暇だ」
昼食も用意した、夕食の仕込みも終わった。保存食となる野菜の干物も今放置中。日課の朝のボトルメールも終わらせている。
やることがなく手持ち無沙汰になった。
キレイは、ここの所ずっと医務室にいる夏目アンアンの様子を見に行ったり、夜を散歩したり、色々暇を潰すことにした。
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【医務室の安らかな一時】
医務室前、朝食終わりから少したった頃。一人が、誰かに話しかけているのが扉の外から聞こえた。
ノックをして、中に入ると.......
看病をしていたメルルと、アンアンがそこにはいた。
メルルは普段通りだが、アンアンはやはり体調がすぐれないのか、別の理由か...気分が悪そうにしていた。
「あっ、キレイ、さん」
『何のようだ』
「何、ここ最近はずっといるのでね。手土産も用意した」
木で作った籠に、リンゴ、いちご、トマトなど、収穫寸前の新鮮なものだ。
『そこにおけ』
「了解」
指定された通りに、アンアンの机の前にバスケットを置く。
食べやすいように、リンゴやトマトを切り分けて、持ってきた皿に乗せていく
「体調は優れないようだね。もしくは精神的な何かかな?」
「......」
アンアンは無言を貫く。その表情は浮かない、脱獄手段が見つかったと報告があってから、その顔は更に浮かない。
「......歌」
と、アンアンはその声を絞り出すように言う。
「あの歌は、良かった。また、聞きたい」
それは、昨日の礼拝の時の歌。ミリアに連れられて礼拝に参加した時に、どうやら気に入ったらしい。
「...よろしい。しばらく、騒がしくするが構わないかね?メルル君」
「は、はい。大丈夫です......ここにはこの3人しかいませんから」
「では...宜しい。歌を始めよう」
そうして、キレイは求められたように歌を歌った。
少しばかり、アンアンの気持ちも和らいだようだった。
こうして、優しい時間は過ぎて行った。
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【夜の秘密の会合】
ナノカの襲撃等様々な騒動があり、ミリアが医務室に送られた頃。
キレイは夜の散歩として牢屋敷の周りを歩いていた。
そうして裏側まで回っていると......一つの物影が見えた。
自身を見ると怯えたかのように隠れる様子を見て、キレイは声をかける。
「......ナノカ君、悪いと思っているのなら姿を...いや良い。話したいことがあるからそちらに向かおう」
そうしてキレイは隠れた方向に歩いていく。
そこには想定通り、隠れていたナノカがいた。
「......何か用事かしら」
「何、会ったのは偶然だが...食べるかね?」
「......頂くわ」
持っていた試作品の保存食を手渡すと、ナノカはもくもくと食べ始める。食べ切ると、ナノカは話し出す。
「...ありがとう、それとあの時はごめんなさい」
「こちらは気にしていないし、実害もないから良いが......ミリア君を疑うのはあまり良くないのではないかな?」
「......あの男は、女子高生の体を無理矢理奪った。謝る理由もないわ、むしろ疑われて当然よ」
ナノカはテコでも考えを変えるつもりはないようだ。キレイは話を変えることにした。
「エマ君は気球で脱出しようとみんなをまとめ上げているらしい。皆で脱出するために、と」
「...無駄よ、あの中に黒幕がいる。仮に佐伯ミリアが黒幕では無かったとしても、別の黒幕がそれを邪魔するはずだもの」
「誰かを利用して、などは平気で行うだろうね」
そういって静かに空を見ながら、互いにぶどうジュースをちびちびと飲みつつ会話をしている。
「......あの時の、あなたが言ってたことは真実よ。言峰キレイ」
「...君の姉、という話かね」
「ええ......」
それ以上は話したくなさそうだったので、キレイも返す。
「私も最近知ったのだが、同じシスターが前回ここに来ていたらしい。同じく脱出の手段を探ってね」
「......知ったってことは、手掛かりがあったということ?」
「ああ、結果、既に手遅れだったとのことだ」
「手遅れ......」
ナノカは深く考え込むようにしている。
「つまり、時間さえ合っていれば脱出できたということかしら」
「それはわからない。シスターは『諦めろ』としか書かなかったからね」
「...酷いわねそれ」
すっかりと話し込んでしまい、やがてそろそろ戻らなければいけない時間になってしまった。
「おっと、もうそろそろ時間だ。...所で、食事は塀にでも置いておくことにする。好きに取って行きたまえ。それでは、おやすみ」
「......ええ、ありがとう。おやすみなさい」
こうして、秘密の夜の会合は幕を閉じる。
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【押忍!マジカル⭐︎八極拳!!】
「キレイさん!あのレイピア捌きを教えて下さい!」
こうして押しかけてきたのはすっかりと手持ち無沙汰になってしまったシェリー。何とびっくり、全ての作業現場から出禁を食らってしまったらしい。
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「縫った側から破らないでくださいまし!」
「ハエ女もう何もすんな!!」
「てかもうキレイっちの方行ったら?あっちも暇そうだしなんか手伝えるかもよ?」
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「ということがありまして!」
明るく言うが、彼女なりに反省はしているらしい。
畑を手伝うとは言わないのがその証拠だ。
「それで、なぜレイピアを学ぼうと?」
「はい!とある有名な名探偵は【バリツ】という東洋の武術を持っているじゃないですか!名探偵シェリーちゃんも負けられないと思いまして!何か技を得たいと思ったんです!お願いします!あの銃弾を切り捨てるほどのレイピア捌きを教えてください!!」
シェリーが必死に頼み込んでくる。
「シェリー君。一つ良いかね?」
「はい、何でしょう?」
「君にレイピアは無理だ」
えー!?と衝撃を受けたように肩を落とす。
「だって君、絶対折るだろう?それと、敵を無力化するのにレイピアは向かない。殺してしまう場合もあるからね」
「そんな〜......何でも良いから教えて下さいよー」
シェリーは尚も食い下がる。
そんなシェリーにキレイは
「レイピアは教えられないが、八極拳であれば教えられるが...どうするかね?」
「八極拳?とっても強そうな響きですね!お願いします!」
「よろしい、期間は短いからね。返事は押忍だ、付いてくるように」
「押忍!よろしくお願いします!!」
〜3日後〜
「ハンナさん!エマさん!こっちですこっち!」
「はいはいどうしたんですの、見せたいものがあるって。キレイさんまで呼んで...」
「待ってよシェリーちゃん、何で森の中に?」
厳しい修練を積み込まれたシェリーは、その成果を見せようと友人二人を森の中へ呼んだ。
「ふっふっふ。私は今日から名探偵からスーパー名探偵シェリーちゃんになりました!その成果をぜひ二人に見て欲しくて!」
眩しいまでの笑顔でそういうシェリー。
「よく来てくれた二人とも。シェリー君を鍛えあげたのだが、魔法の力もあってかこの短期間で見事なまでに成長した。本当にすごいので、これを見た後は褒めてあげたまえ」
キレイの言葉に嫌な気がした二人だが、シェリーは構わず、4mは先のとても太い木に向けて構える。
その構えは見ただけで素人でも隙がない、と分かるが...何をする気かと思った瞬間の出来事だった。
瞬きの間に、シェリーと木の間にあった間がなくなり、二人は驚愕する。
「とう!せい!はっ!やー!!」
楽しそうな掛け声と共に、掌底、肘打ち、蹴り、拳と流れるように同じ箇所に打ち込んでいく。
ミシ、ミシ、ミシ、ベキッ......
打ち込んでいくたびに、木が変な音を立てていく。
拳を打ち込んだ後に、完全に折れた音がして......
あれほど太かった木は、木の根からポッキリと折れていた。
「ふー、どうですか?このスーパー名探偵シェリーちゃんは!!」
「「............」」
二人は絶句した。友人がいつの間にかアニメの世界の住人になってしまったと。
「ふむ、私の方からも評価しよう。3日でこれ程の熟練度は素晴らしいものがある。これからも励みたまえ、こちらも教え甲斐がある」
「押忍!よろしくお願いします!!」
そんな奇妙な師弟関係が生まれつつ...折った木は気球の乗る部分に使うことになった。木材が不足していたため助かったとのこと。
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【密会に聞き耳を立てて】
エマとアリサの距離が近くなったり
ミリアがココやアンアンと、色々な人に懐かれたり、
様々なイベントが起こりながら、脱獄計画始動前日となった。
そんな中キレイは夜、中庭にいるエマとミリア、二人の会話を聞いていた。
それは、入れ替わった少女と男との間にあったことだった。
ある日、少女グループの裏切りにより、自身の姿をSNSに流出させられた少女がいた。それを弄り、おもちゃにし、余りの出来事に自殺を決行しようとした。
それを......と言った所で、ミリアは話を切り上げた。
自身の禁忌に踏み込まないようにと考えたか。
「(...逃避、か)」
少女が、自身をおじさんと呼ぶ意味を理解した気がした。
そしてキレイは、医務室の前へと寄り......計画の失敗を確信したのだった。
【魔女図鑑:人物】
[ことみね きれい]
囚人番号671番。 誕生日:12月28日
15歳
【魔法】奇跡
一つのリンゴを全員に行き渡るように渡す。
水をぶどうジュースに変えるなど
神の子と近しいことができる。
それだけではなく、実現可能な範囲ならどんな願いも叶えられる。
敬虔なるシスター、目が死んでいる。
役割は保存食の増産だったもののあまりにも暇だったので色んな所に顔を出していた。
シェリーが【マジカル八極拳 C】lv.1を得たことで筋が良いなと素直に思っている。