愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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言峰キレイは、人を見る目が養われている。

拙作を投稿して一週間が経過して、多くの高評価、お気に入り登録、UAが9500を超え、寒風吹きすさぶ折から今日この頃。
皆様の評価や感想を糧に、ここまでやって行くことができました。ありがとうございます。
拙作ですが、これからもどうか完結まで見守り続けていただければ幸いです。


12日目-結束、崩壊-

決行当日の朝、問題が発生した。

皆で作っていた、隠していた気球が壊されていたのだ。

気球を隠していた少女━━━ミリアに疑いがかかる。

 

「隠し場所はおっさんしか知らなかったはずだ、おっさんがやったのかよ!?」

首のリボンを掴み、アリサが睨む。

 

「な、何か言って下さいミリアさん。そうしないと、みんなが......」

「おっさん、マジ?そんな大それたことするキャラじゃないじゃん...もうすぐ行けるって、あてぃし...おっさん、あてぃしらのことを騙してたワケ......?」

「......残念だわ」

 

そうそれぞれ、メルル、ココ、マーゴが言った。特にココは、失意が大きいらしい。ミリアに懐いていた上、もうすぐという期待が裏切られたからだろうか。

 

そんな中、スマホに通知が届いた。ゴクチョーからだ。

自由時間外に、ミリアが出歩いていたので、懲罰房行きとなると。

疑いは、確信へと変わった。

 

「なるほどぉ、深夜に抜け出して、ここの気球を破壊したんですね?」

「酷いですわ!一体どうしてそんなことを!?」

 

ふと、くくっ、あははっと嘲笑を浮かべたココは

「んなの当然じゃん!!おっさんがやっぱ黒幕で、あてぃしらに脱獄されると困るからやった!そうなんだろ!ねえ!!」

 

ココは目に涙を浮かべたまま、ミリアに詰め寄る。

その様子に、何か言いかけたミリアも、言葉を失ってしまった。

「みんな......ごめん。エマちゃん、ごめん、おじさんのこと信頼してくれたのに、本当にごめんなさい」

と、力無くそう言った。

 

「━━━私は真実を知っている」

キレイは、その様子に声を上げた。

少女達の目線が、キレイに向かう。

 

「それって━━━」

「言葉の通りだ。もし、真実を言えば......私が君に代わり弁明しよう。きっと懲罰房から帰った後には、普段通りの生活が送れるはずだ...どうするかね?佐伯ミリア」

 

キレイは、ミリアに対して選択を遂げた。

自身の安全を取るか、それとも......

 

それに対して、ミリアは

「いいや、これが真実......だよ。

おじさんが......やったんだ。自分の、意思で」

 

こうして、ミリアは看守に連れられて行った。

最後まで抵抗していたものの、決意を固めていた。

「おい言峰、真実ってなんだよ?」

アリサが、キレイに対して詰め寄った。それに対してキレイの答えは、虚をつかれるものだった。

 

「━━━鎌掛けだ」

「......は?」

「鎌掛けだ、何か隠しているのではないかと考えて言ったのだが、どうやら見当違いだったらしい...混乱させてすまないね」

 

少女達はなんだ、と肩を落とした。

「......」

そんな中、マーゴだけが目線をこちらに向けていた。

 

しかし、状況としては最悪だ。ミリアが裏切った。

そんな失意が広がる中で、声を上げる者がいた。

 

「みんな!今回はダメだったけど、また気球を作ろう!気球じゃなくて、他の方法を模索するのでもいい」

 

「そうですね!アリサさんはいますし!流石に木で作られた乗り場は壊れませんでしたし!またエンペロープを縫い直せばいいですね!ハンナさん、お願いします!!」

 

「えんぺ...全く、簡単に言わないで下さいまし、どれだけ苦労したことか...でも、エマさんの言う通りですわね。わたくしだって諦めたくない。壊されたのなら、作り直せばいい。何度だって付き合ってやりますわ!」

 

「がっかりしてしまったけれど、作戦を練り直しましょう」

「そうだね、みんな、一度ラウンジに戻ろう」

 

そうしてエマがみんなを再度まとめ上げていった。

━━━その中で、壊された気球の前に座り込み、地面に拳を何度も打ち付けているアンアンがいた。

アンアンは、その場からしばらく動かなかった。

 

━━━━━

その後はすぐ解散となり、キレイはマーゴに呼ばれてマーゴの部屋へと向かっていった。

「失礼、言峰キレイだ」

「入ってちょうだい、空いているから」

 

マーゴの部屋は、相部屋のナノカがいないことで専用部屋と化している。部屋は紫の布で一面を覆われて、まるで占いの館のようになっていた。

 

「それで、話とは何かね?」

「単刀直入に言うわね━━━あなた、アレ嘘でしょう?」

マーゴは、あのミリアに対する言葉は鎌掛けだった、というのが嘘と見抜いていた。事実、言峰は聞いていたのだから。

 

「その通りだ。ただ、本人が言わないと言うことは、私が言っても仕方ないことだからね」

「そう...言うつもりはなさそうね」

二人の間に火花が飛び散る。

 

先に切り出したのは、マーゴだった。

「...あなたのこと、勝手だけど占わせて貰ったの」

「ほう、占いとは。

そう言う趣味もあるとは、多才だね」

 

「ええ、素敵な趣味でしょう?よく当たるって噂なのよ。この3枚のカードは、あなたの過去、現在、未来をそれぞれ示しているわ」

そう言って、マーゴは一枚一枚捲って行く。

 

「一つ目は【隠者】の正位置。学び・内省・自己探求を繰り返していたのかしら、真面目なことね。何を悩んでいたのかしら。

 

二つ目は、【世界】の正位置。その悩みに対して、答えを得たのね。だからこそあなたは堂々として、それでいて隙がない。

 

そして三つ目...【死神】の逆位置。もしかして、あなたは終わらせるべき答えを持っているんじゃないかしら...と、こんな感じね。どう?感想としては」

 

「...正解と言わざるを得ない。本当に当たるものなのだね。それとも、そのタロットの結果に加えて、君の観察眼が備わった結果かな?」

自身の【悪】について、自身で何度も探求した。

今は、自身の【悪】を受け入れ、愉しむことができるようになる。

...そして未来、未だ私は、あの男が死んだ時のあの感情がなんだったのか、それに対する答えを沈めている。

 

「そう、その発言に嘘は無さそうね...ねえ、最後に聞かせて頂戴。私は、正直な所、あなたはこの牢屋敷で一番信じられないの。

あなたは一体、過去に何について悩んでいたの?」

 

ある時には人の悩みを解決し、ある時には皆に施しを与える。ある時には死者を真摯に弔い、ある時は蓮見レイアを人として最期を飾らせ、ある時は礼拝で、見てわかる程の信仰心を見せた。

けれどもマーゴにとって、それらの行動全て、キレイにとっては求めている物ではないと分かった。

 

キレイが満足していたのは、二階堂ヒロが死んだ時、城ヶ崎ノアが死んだ時、蓮見レイアの裁判の時、黒部ナノカを問い詰めた時、そして先ほどの......気球が壊された時。

それらは、誰かが不幸になっていた時だけだった。

 

言峰キレイが満たされているような、そんな顔をしている時は。

何よりも聖職者たらんとする者が、誰よりも悪人らしく見えたのだから。

だからこそマーゴは、キレイに対してこう問いた。

この人物は、何を目的としているのか。

 

キレイはただ一つ、こう呟いた。

「ただ、己が【悪】について」

 

「......そう、あなたはただ、純粋に真面目なのね」

嘘偽りのない、あまりにも単純な答え。

マーゴはそれを聞き、

キレイと言う人物をそう結論付けた。

 

不幸を愉しみながらも、悪でありながらも、

彼女が聖職者であることは変わらないのだと。

━━━━━

 

こうして、また牢屋敷の一日は終わる。

皆の心に、深い傷を残しながら。




【魔女図鑑:人物】
[ことみね きれい]
囚人番号671番。  誕生日:12月28日
15歳
【魔法】奇跡
一つのリンゴを全員に行き渡るように渡す。
水をぶどうジュースに変えるなど
神の子と近しいことができる。
それだけではなく、実現可能な範囲ならどんな願いも叶えられる。

敬虔なるシスター、目が死んでいる。
なんだかんだで一番に警戒されていたマーゴの警戒レベルが少し下がった。何よりも真面目で、全てに答えを求めなければ気が済まない。
そんな彼女が、沈めた答えを得る日はくるのだろうか。
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