愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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1周目
プロローグ


言峰キレイは、緩やかに目を覚ました。

懐かしい夢を見たと、まだ彼の顔を覚えているのかと考えながら...

その眼は異常を捉えた。

 

「...おや、これはこれは」

 

起き上がったのは、自分の部屋ではなかった。

粗悪な作りの、二段ベッドの上に寝ていた。

天井は古びた石造り、室内は薄暗く、空気は澱み

壁には鉄の鎖が飾られ...扉は鉄格子であった。

 

「...まるで牢屋のようだ」

 

いくら記憶を辿ろうとも、この場所の目星がつかない。

教会の地下とも異なる。

服も、寝巻きではなく黒を基調とした神父服のようなものになっている。

 

「(私は連れ去られた。そして...“見られた”と考えるべきかな)」

 

牢屋の外から、悲鳴が聞こえてくる。

 

「ねえ!ここどこなのかな!?」

 

「何を考えていますの!?

わたくしをこんなところに閉じ込めるなんて!」

 

「少女監禁とか、犯罪だよこれ!

誰だか知らないけど、人生終わるよ!?」

 

「ざけんなぶっ殺すぞおらぁ!出せぇ!!」

 

同世代の少女が、複数人閉じ込められているようだ。

そして、この部屋にも

 

「な、なんですかぁ...!?ここ...!?」

 

声からして気弱そうな少女が、私の下のベッドで寝ていたのだろう。

私はベッドから降り、その少女に向き合うとした。

 

「おはよう。どうやら目覚めは悪いようだが、元気かね?」

「ひぅ!?」

 

...怖がられてしまった。どうやら笑顔で挨拶したのがダメだったらしい。

 

「お、おはようございます...その、なんなんでしょう...?」

 

その時、壁のモニターの方から音が聞こえた。

私と、気弱そうな少女はモニターに注目する。

 

映ったのは、フクロウを模した何か。

フクロウが首を傾げたような見た目に、フードを被っていた。

 

「......あ、もしもし......映像って見えてます......?

何せ古くて故障が多いので......やれやれ」

 

フクロウはため息をつき

 

「私、ゴクチョーと申します。

詳しい説明がしたいので、ラウンジに集合して下さい。監房の鍵を開けますので、看守の後についてきてください。

抵抗とかは自由なんですが......

命とか無くなっちゃうので......はい......」

 

そうして、モニターは消えた。

ガチャリと音がした。どうやら見た目に反してオートロックらしい。

 

「い、行きましょう。何をされるか分かりませんし...」

「分かった。それに、迎えも来たようだ」

 

鉄格子の外を見ると、仮面を被った巨体がこちらを覗いている。

恐らくは、あれが看守。

 

私は怪物に一礼をし、外に出る。気弱そうな少女もそれに続く。

私達が一番先だったのだろう。後ろから一つ一つ、扉の開く音がした。

 

「ぎゃああぁ!!触んな化け物ぉ!キモいから!わかった!わかりました!行くから!!」

 

...抵抗している者もいたようだ。

━━━━━━

 

階段を登ると、豪奢な洋館のような、広々とした玄関ホールにでた。

どうやら先程の場所は地下にあったようだ。

幾つもの扉があり、廊下は先が見えず、大階段は天井が高い。

ゴクチョーの言っていたように古く、老朽化しているようだ。

しかし、昔はもっと立派だっただろうと考えられる。

 

看守に連れられ、入った部屋は、毒々しさを孕む華美な空間だった。

高い天井にはシャンデリア。床には古びた絨毯、ソファや暖炉。

壁には牛か何かの骸骨や、クロスボウと矢など

趣味が良いとは言えないものばかりである。

 

看守は扉の前に立つ。どうやら全員揃ったらしい。

私含めて14人。気弱そうな少女、苛立っている少女、好き勝手に配置を変えている少女、隅で丸まっている少女。何故か銃を持っている少女、この場にそぐわない明るさを持つ少女など

個性豊かなメンバーが揃っているが、共通点として私と同じくらいの年齢の少女ということだ。

 

中性的な格好をして、レイピアを腰に携えた少女が、一歩前へ進む。

何故だか、目を離せなくなっている。カリスマというものか。

 

「みんな初対面だと思うから、良かったら自己紹介をしていかないか?」

 

彼女は続けて

 

「先に名乗らせてもらうよ。私の名前は蓮見レイア」

 

それに続いて、各々が自己紹介をしていく。

13人が自己紹介をして行く中で、驚くべきことがあった。

それは、私と同じ牢屋にいた少女、氷上メルルが

怪我をしていた少女、桜羽エマの怪我を治したことだ。

これには皆、興味を惹いていた。

 

そうして、13人の自己紹介が終わり...残りは私一人となった。

私は促され、こう名乗りあげた。

 

「私は言峰キレイ、シスター。

人生の指針、日常生活の補強には一家言ある身だ。以後よろしく」

 

 

...そうして、自己紹介を終えた頃...ゴクチョーが降り立った。

「あっ......人がいっぱい......。えっと、改めまして......この屋敷で管理を任されている可愛いフクロウ、ゴクチョーと申します。

定時とかもあるので......さっさと説明をしていきますね」

 

そうして、ゴクチョーにより

・私達は【魔女】となる因子を持っていて、集められた14名はこの因子を多く所持していること

・【魔女】は、災厄を齎す存在であり、私達はなる可能性があるために、ここで一生出られないらしいこと

・看守は、ここで【魔女】となった者であり、怪物【なれはて】と呼ばれる者。逆らったら死ぬ。

を説明された。【大魔女】とも溢したが、すぐに忘れてくれと言われた。

 

 

「間違いです、私は悪ではない」

ふと、立ち上がった黒髪の少女、二階堂ヒロがそう言う。

どうやら、エマとは知り合いで仲が悪い様子。敵意を出していた。

ゴクチョーは宥めたが、ヒロは止まらず

 

「この世界を正すことができるのは、私だけだ」

 

暖炉の側の、火かき棒を手に取った。

そして、その棒を━━━

看守へと、振り下ろした。

 

「悪は死ね!死ね死ね死ね!!」

 

何度も何度も振り下ろし、その身は返り血で赤く染まっていた。

常人であれば死んでいる。しかし、看守は死ななかった。

人外の素早さと力で、反撃に振るわれた刃は

あっさりと、ヒロの首を刎ねた。

胴体は、火かき棒を固く握りしめたまま

ふらふらと揺れ、その場に崩れ落ちる。

少女の悲鳴、そして、ヒロと知り合いのエマの顔は、絶望に深く染まっていた。

 

そして...

━━━それを見たキレイの心は満たされていた。

恐怖、苦痛、嘆き...様々なものに、久しぶりに満たされる感覚を覚えていた。

すでに死んでいるかのような自身が、生きている実感を得た。

 

「うわ〜...死んじゃいましたね。掃除しなきゃ。ああでも、魔女はこのくらいじゃ死なないので、彼女は魔女じゃないと証明されたことになりますね。やれやれ...良かったですね」

 

そういった後、ゴクチョーは続ける。

 

「━━━あっ、あと何個もすみません。最後に。みなさんに、最も大切なことを伝えておきます。魔女になりつつある者は、抑えられない殺意や、妄想に憑かれてしまいます。面倒なことに、囚人間で殺人事件が起きるんですよ」

 

「殺人事件っ!?」

名探偵を名乗る、底抜けに明るい少女、橘シェリーが反応する。

 

「そうなんですよ......毎度のことなんですよねぇ......さすがにそんな危険人物とは一緒に生活できませんよねぇ。

というわけで殺人事件が起こり次第、【魔女裁判】を行います。

【魔女】になった囚人は......あのー......処刑しますので。

詳しくは【魔女図鑑】をご覧ください。それでは、私はこれで」

 

そういって、飛び立とうとするゴクチョーを呼び止める。

 

「なんですか?私はさっさと仕事を終わらせたいのですが...」

面倒そうにゴクチョーは言う。

 

「何、一つお願いがありまして。二階堂ヒロの死体を弔いたく、そちらの言う掃除をお手伝いさせてはいただけないかと」

 

「何故です?そこまでやる意味はないでしょうに」

「私はシスターです。死者を弔う責務がある」

ゴクチョーは少し考えて

 

「そこまで言うのなら良いでしょう。看守の手も早く開きそうですしね」

「温情、感謝します。それ以外にはありませんので、どうかお休みを」

そういうと、キレイは静かにお辞儀をする。

それを見てゴクチョーは、さっさと通気口の中に入ってしまった。

 

こうして、魔法少女達の獄中生活は始まった。

殆どの少女が、実感を感じないながらに、

一人の聖職者が、生きている実感を得ながら。




【魔女図鑑:人物】
[ことみね きれい]
囚人番号671番。  誕生日:12月28日
15歳
【魔法】??   
敬虔なるシスター、目が死んでいる。
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