愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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言峰キレイは、少し調子が悪い。
(設定開示の為に本日2話投稿)


14日目:自由時間

少しばかり体調の優れない朝を迎えて、朝食後。日曜日なので礼拝を行おうとしたらエマが皆をラウンジに集めた。

どこか明るい表情......希望を持った目をしてエマが話そうとした所で、ココが話を遮った。

 

「エマっちさ、懲りないよね。脱獄でみんなまとめ上げて、殺人起きたじゃん。もうこりごり、巻き込まないでくれない?」

先日の件で少しばかりメンタルがやられているのだろう。話を聞かずに帰ろうとした。

 

「まあ待ちたまえよ。話を聞くだけ聞くのも良いとは思わないかね。情報はこの牢屋敷において重要だ、手伝う手伝わないの話は置いておいて、一度聞くのも良いだろう」

 

その言葉に一理あると納得したのか、ココは足を止め、再度ソファへ座る。

「......言っとくけど、手伝わねーからな。エマっち」

「ううん、聞いてもらえるだけでも良いから!」

エマの表情に笑顔が戻った。

 

「......さて、話をして欲しいのだが。今日は礼拝がしたい」

「あ、うん。これはキャビネットで見つけたんだけど」

 

そう言ってエマが出してきたのは、古ぼけた地図。

そこに×印と、走り書き。

『脱出方法を残す』

 

それを見たシェリー、ハンナ、メルルは明るい表情をして声を出した。しかし、他の面子はあまり良い顔をしなかった。

 

「ど、どうしたの?そんな顔して」

「エマっちさ。見つけてこれで出られるって思ったんだろうけどさ。甘いよ、ゲロ甘」

ココは呆れた様子でエマにそう言った。

 

「脱出方法を残す、じゃあこの字を書いて、そこに手掛かりを残した人は今脱出できているのかしら。こうして残っている時点で、疑うべきよ」

マーゴは冷静に、その問題点を指摘した。

 

「確かにそうかもだけど、でもこれが今残ってる希望なんだよ!少しくらい信じてみても」

「......なあ桜羽。この×印の所、もう言峰が畑にしてる」

え、とエマは思わず声に出した。

 

「それならここに、中身は見たが......」

そう言ってキレイは袖からそれを取り出した。

皆がそれに注目する。

それは、古ぼけた缶詰だった。

 

「ありがとうキレイちゃん!どんな中身だったの?」

エマにそう聞かれるものの、キレイは表情変わらずにいた。

「見れば分かる。希望を抱いたままでいたければ、見ないことをお勧めするがね」

限りない善意で忠告するも、エマは止まらなかった。

 

中にある手紙を見て、その内容に目を通して...

膝から崩れ落ち、項垂れた。

周りの少女が全員心配して、エマに駆け寄る。

 

そして、手紙の中を見てしまった。

『この牢屋敷に、脱出できる方法はない』

前の囚人が残した答えが、全員に突き刺さる。

 

「......んだよそれ!!ふざけんな!!」

「悪趣味ね、希望を持った人の心を折るように」

「......なら、なんで脱出方法なんて書いたんだよ!!」

あまり協力的でなかった3人も、この内容を書き残し、土に埋め、脱出方法と嘯いた前の囚人に怒りを表す。

 

「エマさん、まだ諦めちゃダメですわ。きっとどこか他に誰も見つけていない何かがあるはずですわ!」

「エマさん、泣かないで下さい......」

「エマさんエマさん、きっとこの古ぼけた地図にも情報はあると思うんです。ですからまだ希望を捨てちゃダメです!」

エマと特に仲の良い三人が、エマを励ますものの、エマはただ泣いていた。見つけたと思った希望が、絶望に変わったことに耐えられなかった。

 

「ごめん......ボク、みんなに喜んで欲しくて、でも...!!」

結局、この場はエマを宥めて、その場を解散した。

アリサ、ココ、マーゴはそれぞれ別に、

ハンナ、メルル、シェリー、エマはラウンジに

そしてキレイは礼拝をしに畑に向かった。

 

━━━━━

そうして、礼拝を終え、自室に戻ろうとしていると...バラバラになったはずのココ、アリサ、マーゴがそこにはいた。

「おや、ご清聴どうも...と言った所か。どうしたのかね」

 

キレイは3人にそう聞く。

「昨日...いや、夏目の件だ」

アリサがそう切り出す。3人は、昨日の処刑時のことについて聞きにそれぞれ来ていた。

 

「ぶっちゃけ言うけどアレ何?アレキレイっちの魔法としては違うくない?」

ココが純粋な疑問を出した。

「なるほど、では話すとしようか。何をやったかをね」

キレイはそう言って語り出した。

 

「あの魔法の名前は【洗礼詠唱】

教会が魔女因子を解析し、独自に作り上げた魔法だ」

「待って、魔法は作れるの?」

マーゴは思わず口に出す。魔法は原則一人一個、それを軽々無視するように言い放ったのだから。

 

「ああ、とはいえ、どのように魔法を作ったかは分からないがね。何せ、この魔法の基盤を生み出されたのは私の父が産まれるより遥かに前なのだから......話を戻すとしよう。その効能は至って簡単、

【なれはて】た者を、主の元へ送り返すことだ」

「...殺すってことか」

アリサが思わずそう口に出す。キレイは気にしない様子で続けていった。

 

「ああ、それをなす為にその魔法を会得し、

【なれはて】を主の元へと送り返す者を【代行者】と呼ぶ」

「【代行者】?何それ」

ココがそう聞き返す。

 

「ああ、強い信仰と魔女因子を持ち、自然に発生した【なれはて】と戦える力を持つものをそう呼ぶ」

「おい待て!戦うのか?というか自然に...?」

思わずそう口に出すアリサ。看守の強さは異常である、それと同じ存在が自然に発生して、更に戦うと言うのだから。

 

「勿論、【なれはて】は元は人だ。あらゆる場所、状況でも発生する可能性がある。その犠牲者を増やさず、手を汚させないようにするのが【代行者】の役目というわけだよ。大事にならないように秘密裏に、情報統制もしっかりと行ってね」

 

目的は人命保護。そして無秩序に暴れる

【なれはて】に対抗する為に、そして何よりその被害者の為に生み出されたのが【洗礼詠唱】という。

 

「ねえ、良いかしら。【なれはて】と戦わずに、その魔法を隠れて使うことはしないの?強い信仰の意味は?」

続けて、マーゴが気になったことについて聞く。

 

「一つ一つ説明していこう。戦わなければならない理由は一つ。完全に動きを止めなければ使えないのだよ」

キレイは話す。

【洗礼詠唱】は、相手に詠唱が完了するまでずっとかけ続けなければならない。だからこそ、虫の標本のように磔にするか、組み付き動けない状態で行うか、だ。

 

「信仰についても必要だ。信仰がなければ、この魔法は使えない」

信仰の強さによって、効力が変わる。

信仰がない状態で使用したとしても、【なれはて】た魂は解放されないという。

 

「そう、なら全員で覚えて看守を、というのは厳しいわね」

「つーかさ、キレイっちに倒して貰えば良くね?そうすりゃやりたい放題じゃん!!」

マーゴが反応し、ココがそう提案する。

 

「レイア君のレイピアが後7本欲しいね」

「レイピアそんな使う?」

「使うとも、投げて磔にする」

ココは引いた。できそうで余計に引いた。

 

「...なあ、前にも言ってたけどよ。もしかして前にも【代行者】ってこの囚人の中にいたのか?」

ふと、アリサがそう聞いた。

 

「ああ、確実に。というよりも15歳程の代行者の戦死率が何故か高かったのだが...恐らくはここに連れて来られている。基本的にここにいるものは死んだか行方不明の扱いだろう」

その事実に、ココは思わず息を呑んだ。

 

「では何故看守がいるかだが......看守が成れ果てる前に死んだ可能性が高い。【代行者】は芯が強く、信仰の強い者ばかりだ。集団生活からは浮きやすいのではないかな」

「この生活で聖職者が適応できてるのは、キレイちゃんがかなり特殊な人だからだものね、納得よ」

この後は、日々をゆっくりと過ごしていった。

それぞれがバラバラだが、話しかけたり、頼み事があったり、そこに確かな繋がりはあった。

 




【魔女図鑑:人物】
[ことみね きれい]
囚人番号671番。  誕生日:12月28日
15歳
【魔法】奇跡 洗礼詠唱
一つのリンゴを全員に行き渡るように渡す。
水をぶどうジュースに変えるなど
神の子と近しいことができる。
それだけではなく、実現可能な範囲ならどんな願いも叶えられる。

言峰キレイが会得している人造魔法
この地に縫い止められし魂を、使用者の慈悲により強制的に主の元へと送り届ける魔法。
あくまで【なれはて】限定であり、魔女には効果がない。

敬虔なるシスター、目が死んでいる。
仕事内容は
塀の外にボトルメールを投げ捨て、皆の朝食昼食夕食を作り、時にはお悩み相談をしたり外にナノカの為にご飯を置いたり空いた時間に畑の整備など、その生活は多忙を極めている。
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