(ネタ切れしました)
(誤字報告ここすき感想ご愛読ありがとうございます)
エマが調子を取り戻す所か以前よりもメンタル面で強かになったので、報告しに行くことにした。
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ラウンジで、牢屋敷の地図を睨んでいるシェリーがいた。
「うーん......」
「何を悩んでいるのかな名探偵」
後ろから声をかける。
「あ、キレイさん。エマさんの調子は?」
一言目にそれを聞いてくる、友達のことが心配なのだろう。
「明日にでも良くなるとは思うよ。精神的な疲弊が溜まっていたのだろう、ただ...明日は覚悟しておくことだ」
「覚悟?」
シェリーはそう聞き返す。
「少しばかり栄養を与えすぎた。次からは更にアグレッシブになること請け合いだ」
「なんだ!それなら安心ですね!」
「そう言えば、ハンナ君とメルル君は?」
「ハンナさんは自分の部屋に戻っていきました!なんでもやることがあるのだとか!メルルさんは外に薬草を取りに行くと言っていました。少しばかり話しましたが......」
それぞれの行き先が分かった。シェリーは話を続ける。
「悩んでいることなんですけど、これです。エマさんから預かって、並べて見ていたんです」
シェリーは、二つの地図を並べる。
一つは今の牢屋敷の地図、もう一つは昔の囚人が書き残したメッセージのある牢屋敷の地図。
「ほら、見て下さい。ゲストハウスなんですけど」
そうして二つを指差す。
そういえばこの辺りは足を運んでいないと考えていると、キレイはある違和感を覚えた。
「この間取り、何か変なんですよ!」
「2つ足りないね」
「その通りです!二つないんですよ!!」
ゲストハウスは今の地図には3つあり、昔の地図には1つしかない。これは何を意味するか...
「なるほど、他二つは増築されたのだね」
「はい!その可能性が極めて高いです!」
「......さて、何が引っ掛かっているのかね?」
キレイはそうシェリーに聞く。
「はい、まずこの牢屋敷はゴクチョーさんによると、500年前にはあったそうです。それで思ったんですよ、つまり昔に一つだけ建てられているこのゲストハウス、何か意味があるのではないかと思いまして!!」
シェリーの、名探偵としての勘が告げているのだろう。シェリーの瞳にはワクワクとした気持ちでいっぱいだ。
「調べる際には忠告をしておこう。確定していない情報を嬉々として語ろうとしないことだ」
「分かってますよ〜。『今はまだ、語るべきではない』という奴ですね!情報を確定させてから、皆さんには伝えようと思います!」
そう言って、シェリーは飛び出して行った。
「......さて、次はハンナ君かな」
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キレイはハンナのいる部屋へと向かう。
相変わらず空気は濁っている。
ガサゴソと、何かの作業をしているようだ。
「どうしたのかね?」
「ひゃあ!?って、キレイさん!驚かさないで下さいまし!エマさんの調子は大丈夫なんですの?」
「ああ、明日にでも良くなるだろうね」
ふと、覗き込むと布や刃物......前回気球を作る際に使ったもので、何か工作をしているようだった。
「それは?」
「これは、その...笑わないで欲しいのですが。エマさんが少しでも元気になるようにとプレゼントを作っていたんですわ。でも、元気になったなら要らないのかしら......」
キレイはできかけのそれを見る。
少しばかり独特な趣味をした外見だが、シェリー、メルル、ハンナ、そしてエマ。いつも仲良くしている者たちの人形だ。
「いや、作るべきだ。なるべく早くね」
「......どうしてですの?」
「何、私は少しやり過ぎてね......そうだね、エマ君が恐らくはシェリー君並みにぐいぐいくる」
「エマさんがシェリーさん並みに!?」
ハンナは驚愕する。
「先程も君含め皆に書いて貰ったアレを宝物にすると言っていたよ。だからこそ、友人である君からのプレゼントは...何よりも喜ぶんじゃないかな?」
「それを聞くと渡したくもあるのですが......でもそうまでして大切にされるものかと言うと......!!」
ハンナは葛藤している。自身の作る物はそこまで大切にされるものとして相応しいのかと。
「何、要は受け取る側の気持ちの問題だ。君自身の考えは関係ない、ただ...相手の喜ぶ顔が見たいかどうかだ」
ハンナはしばらく考え...やがて決意した。
「分かりました!今からでも、わたくしがプレゼントしても恥ずかしくない人形にすれば良いのですわ!やってやりますわ......!」
そうして、ハンナは情熱のままに布に向かう。それを見たキレイは次の場所に向かった。
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外にいるというメルルの前に、牢屋敷の中にいる面子に声をかけるかと考えた。
そう思い、娯楽室に行くと...“推し”と話をしているココがいた。
「そ!いつかは絶対帰ってやるけど、その時は目一杯あてぃしを構えよなー。うん、うん...大丈夫、あてぃしは大丈夫だから」
自分にも相手にも言い聞かせるように、ココは大丈夫と呟いた。そして会話を終えて、こちら側に向いた。
「キレイっちヤッホー。どしたん?」
「何、エマ君が回復したことを報告にね」
「あ、エマっち回復したんだ。人騒がせな...」
心配して損したーと言いながら肩を落とす。
しかしその口角は僅かに上がっていた。
「なんだよ」
「いいや?それより明日は覚悟をしておいた方がいい」
覚悟?とココは聞く。
「ああ、少しばかり水をやり過ぎて、今のエマ君は何も恐れないものになっている。みんなでピクニックを計画してるそうだが...その時は何がなんでも連れて行こうとするかもしれない」
「問答無用!?ていうかあてぃしその時間寝てたいんだけど〜...」
ココは弱音を吐く。
「何、外で寝ればいい」
「簡単にいうけどさー?」
そんなこんなで軽口を言い合っている。
「そういえば、話が弾んでいるようだが、どうだね?成果は」
「あー......ムズイね。人を楽しませるような話書くって」
ココはそう言ってソファに力無く横たわる。
「......でもさ、苦労した分“推し”の笑顔が増えたんだ。それがあてぃし、とっても嬉しい」
そう言って少女は、笑顔を浮かべる。
「......今なら、同接数も増えるかもしれないね?」
「それはパス。あてぃし“推し”以外を喜ばせることに興味ないし、後配信キレイっちしか見ないじゃん」
そうしてココとたわいもない雑談をした後、キレイは次の場所に向かった。
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図書室にいるマーゴに声をかける。
目には少しばかり隈ができており、夜遅くまで本を解読していることが伺える。マーゴはこちらに気が付いたようで。
「あら、エマちゃんはもう大丈夫なの?」
「ああ、精神の傷を少しばかり抉ったがね」
キレイは失礼、と言いながらマーゴの隣に座る。
「何か分かったことはあるかね?」
「ええ。サバトの儀式を読み解いているのと...この屋敷のどこかに、【魔女を殺す薬】があるということね」
「ほう、魔女を殺す薬とは」
キレイの問いに、マーゴは答える。
「その名前は【トレデキム】」
「...ラテン語で13を表す言葉」
「ええ、キレイちゃんには分かっているみたいね」
「...私とは縁深いね、魔女然り、何に然り」
13、それは一般的に悪魔の数字として知られるもの。
13番目の天使であるサタン、
最後の晩餐におけるユダ、
神の子が処刑された13日の金曜日。
「ふふ、話を続けるわね。その薬は体に入った後、死後に身体的な変化が起こるそうよ...未だ、解読途中だけれどね」
「...ふむ、所感で良いかね?」
「ええ、何か気になったことでも?」
マーゴの問いに、キレイは答える。
「恐らくではあるが、その薬は魔女に対する対抗手段として生み出されたのではないかな?」
「...なるほど、あなたの魔法と同じようにね?」
【トレデキム】と【洗礼詠唱】
どちらも不死の魔女を殺すためのもの。
【洗礼詠唱】が、魔法を用いて魔女に対抗する手段とすると、【トレデキム】は科学を用いた魔女に対抗する手段であった。
「ただ、それだと何故...なるほど、確実性ね。その魔法には信仰心が必要、全員が全員使えないもの」
いくら探したとしても、【洗礼詠唱】の記述はなかった理由をそう結論づけた。
「では、私はこれで夜にまた来るとするよ」
そう言って、キレイは去る。
去り際に、マーゴはキレイに語りかける。
「...魔女化には、個人差があるのかしら」
「ああ、見た目の変化は服のうちにあることがあったり、爪が黒く染まり、髪が伸びるなどを経由して...魔女からなれはてる。見た目がそこまで変化がないうちは、人のままだ」
キレイは返事を聞かずに、図書室を去っていった。
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1階に降りる際、中庭にいるアリサを見つけた為にキレイはまっすぐ向かうことにした。
娯楽室の扉を開け、驚いているココを尻目にベランダから跳躍。
中庭に向けて落下し五点着地により無傷で降りた。
「何やってんのお前!?」
「驚かせてすまない、無傷だから安心したまえ」
「心配かけんな!!」
そんな2階のココと会話をしていると駆け寄ってくるアリサがいた。
「おい言峰!?どうしたんだ!なんで...っ!!」
アリサは酷く狼狽えている。
「ああ、アリサ君。エマ君が無事回復したということを伝えたくてね。階段を降りるよりこっちの方が早かった」
「それ今度からやめろ......心臓に悪い。体は大丈夫か?痛い所は?医務室行くか?」
「何、心配はいらない。こうしてピンピンしているとも」
まず自身の体の心配をする所から善性を感じている。
「...異常あったら医務室迷わず行けよ。それで...桜羽は元気になったんだな、良かった」
そう言って目元で薄く笑う様子をみる。
「ああ、しかし元気になりすぎた。手が掛かるぞ?」
「...何やったんだよお前」
「メンタルケアだ。回復どころか以前にも増して強固になってしまったが」
そうして色々と話していると、ふと、アリサがこう切り出した。
「......いつもありがとうな、言峰」
「どうしたのかね、藪から棒に」
そうキレイは眉をひそめる。
「普段から世話になってるんだよ、ウチ含めてみんな。飯から悩み相談...だからだよ」
「何、礼を言われる程でもない。勝手にやっていることだからね」
「それでも、ウチは感謝してる。もし言峰がいなけりゃ、ウチはとっくに壊れてる気がする」
ストレスの捌け口もなく、内に秘めたままに、医務室の薬を飲み漁っていただろうと。
「...なあ、言峰。もし......」
アリサはそう言い掛けて、手を上げようとして、それをやめ、口を閉じる。
「いや、なんでもない。今日も作ってくれ。麻婆」
「任された。腕によりをかけて作るとしよう」
こうして、キレイは残りの人を探していた。
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森の中、一人で野草......ハーブを摘んでいるメルルと遭遇した。
「あ、キレイさん。エマさんの様子はどうですか?」
「ああ、問題はないよ。むしろ以前よりも元気になったようだ。みんなのおかげでね」
「い、いえ。エマさんの力になれたのなら、書いた意味があります......!」
その言葉は本心のようで、眩しい笑顔と共にあった。
「そういう君は、ハーブかね」
「はい、少しでもエマさんにリラックスしてもらおうと、体に優しいハーブ茶を、と」
「ぜひ戻ったら淹れてあげて欲しい。きっと喜ぶよ」
「はい!」
そう言って共に野草を摘んでいる。
「所でメルル君、不思議とは思わないかね」
「不思議......ですか?」
「ああ、野生化した野菜が多く存在しているのだよ。大蒜や枝豆、唐辛子と...500年前にいるという魔女達の育てたものが、野生化したものなのかね」
それを聞いたメルルは、少し言葉を詰まらせながらも答える。
「そう...だと思います。ここは島ですし、きっとキレイさんみたいに野菜を育てて平和に生きていた...んだと思うんです。魔法もありますし...」
そう言っているメルルは、どこか懐かしいものを思い出しているような目をしていた。
「...あ、良い感じに溜まりました。それじゃあ私はこれで、エマさんの所に行ってきますね」
「ああ、行くと良い。よろしく頼むよ」
そうしてメルルは野草を抱えて戻っていった。
...最後は、あの子だけだ。
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「...言峰キレイ」
ナノカは、牢屋敷の裏にいる倉庫に潜んでいた。
倉庫には爆竹や蝋燭、マッチから、元々食堂に並んでいた酷い食事の缶詰が並んでいる。
「何、エマ君が無事回復したことを伝えたくてね。君にも礼をと思ったんだ」
「......私は何もしていないし、礼を言われる筋合いはないわ」
そういうナノカに、キレイは話を切り出す。
「ああ、エマ君に頼まれたことがあってね」
「桜羽エマに?」
「ああ、明日ピクニックをやるそうで、ともに来ないか、とのことだ」
ナノカは眉をひそめ、こう返答した。
「嫌、というより無理よ。もし見つかったら、捕まってしまうし......私が来た所で、楽しくなるとも思えない」
「何、君に身を隠す手段を与えよう......それに、これを付ければ一気に場が盛り上がること請け合いだ」
そう言ってキレイが袖から出したものに目を開き...
...そうして暫くした交渉のうち。
「ええ、分かった。花畑で良いのよね?」
ナノカの説得に成功した。
「では、私はこの辺りで。良い夜を」
「......ええ」
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こうしてキレイは以降、食事を作った後にマーゴの解読に付き合った。進捗は上がったらしい。
【魔女図鑑:人物】
[ことみね きれい]
囚人番号671番。 誕生日:12月28日
15歳
【魔法】奇跡 洗礼詠唱
一つのリンゴを全員に行き渡るように渡す。
水をぶどうジュースに変えるなど
神の子と近しいことができる。
それだけではなく、実現可能な範囲ならどんな願いも叶えられる。
言峰キレイが会得している人造魔法
この地に縫い止められし魂を、使用者の慈悲により強制的に主の元へと送り届ける魔法。
あくまで【なれはて】限定であり、魔女には効果がない。
敬虔なるシスター、目が死んでいる。
本日は色々な人に顔を見せに行った日だった。
ピクニックのお誘いに応じたナノカ。一体身を隠す手段でありながら、場を盛り上げること請け合いとは何か