愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

32 / 96




言峰キレイは、人でなしである。
(今回は少しばかり短いです)


27日目-捜査開始-

こうして。1日が何事もなく経過した。

言峰キレイは、一日を牢屋敷の中で過ごしていたが、紫藤アリサと巡り合うことはなかった。

 

今日も皆の為朝食を作り、食事を終えたのでゆっくりと部屋を歩いていると...裁判所の扉の前で、宝生マーゴと出くわした。

 

「あら、キレイちゃん」

「おはよう、マーゴ君。どうしたのかね?」

キレイはマーゴに対して問いかける。

 

「...あれよ」

そこは、裁判所に続く扉。その扉は普段閉め切ってあるが、開いている。

「...おや」

 

キレイは小さくニヤリと笑った。

「何かあったのかもしれないね。共に行ってみるかい?」

「ええ。朝に一度覗いたけど。くわしくは調査してないの。一緒に来てくれるかしら」

 

そう言って二人は、たどり着いた裁判所で、ある光景を目にした。

裁判所中央、一番目につく処刑台にて、用意された電気椅子に力無く座り、明らかに生命活動を終えている少女。

 

━━━紫藤アリサが、そこにはいた。

「...っアリサちゃん......!」

隣にいるマーゴが、嘆くような音がした。

 

対する、キレイの思いは冷ややかだった。

━━━どうせ、死ぬのであれば。

 

あの男が死んだ時と、似たような思いだった。

「...キレイちゃん、目......」

マーゴに言われ、手を頬に当てる。

━━━涙。

 

「...ふふ、あっはっはっはっは...!!」

もう、キレイは笑うしかなかった。

ああ、なんということだ。こんな所で、答えを得るとは。

あの男が死んだ時のように、私は同じように思い、同じように、涙を流した。

 

『━━━ほら、君は泣いているだろう?』

2年も共にいた男と、1ヶ月も経たないアリサ。

どちらも死んだ時に、キレイが抱えた思いは同じだった。キレイが流した涙は同じだった。

 

━━━ 私は、その死を自分で愉しみたかった。

その解を、得てしまったのだ。男の死は、無意味で無価値であったのだと。

キレイの笑い声は、ゴクチョーの放送をかき消すほどに高らかに、広い裁判所で響き渡った。

 

その心内で、共に好物を楽しむ仲間が消えたことを残念に思いながら...片手で目元を落として、天を仰ぎ、笑った。

 

━━━━━

 

その後、笑い声は消えて...ココが、エマが、メルルが現れた。

最後に入ってきたメルルが、キレイとは反対に、泣き声が裁判所へと響き渡る。

隣では、宝生マーゴが、心配そうにこちらを見ていた。

 

ゴクチョーが後から、こちらにやってきた。

「皆さんおそろいですかね。黒部ナノカさんは相変わらずいないようですが。というわけで、見ての通り殺人事件が発生しているので、魔女裁判を執り行います」

 

マーゴとココは、早々に裁判所を出て行った。

「...では、いつものように始めるとしようか」

あまりにも落ち着いたその様子で、アリサの死体へと向かう。

その場に立っているエマやメルルを抜きにして。

 

━━━━━

 

「......主よ」

いつものように、祈りを済ませ、いつものように捜査する。

あれ程笑っていたのにも関わらず、今や心は酷く穏やかだ。

 

アリサの様子を確認する。

まず、キレイが目にしたのはその手だった。

「(魔女化......)」

 

キレイは、魔女化について詳しく知っている。

アリサは、魔女化していたことがわかった。

何故、アリサが死んだのか...座っている電気椅子か、それとも別の何かか。

 

詳しく調べる。顔には、蝶の形を模した火傷痕があった。

「(火傷痕が再生していない。この傷であれば、すぐにでも回復するはずだ)」

魔女とはそういうものだ。不死性を持ち、異常なまでの回復力を持つ。この程度の傷であれば、治る。であれば。

「(アリサ君は、即死と見るべきだ)」

 

ふと。体を見る。濡れている。

しかし、外には雨などもなかったはずだし、全身が濡れているのであれば、ここに来るまでには水の跡がないとおかしい。

違和感は、積み重なっていく。

 

そうして、キレイは...アリサの眼を見て、軽く笑った。

 

そうしてキレイは、アリサの近くから離れ...床に、ガラスの破片が散乱しているのが気がつく。

それを見て、キレイは別の場所へ向かう。

 

「キレイちゃん」

そんな所で、エマは声をかける。

「おや、どうしたのかねエマ君。もう捜査は始まっている、すぐに動くべきだと思うがね」

 

「...その、大丈夫?」

キレイは、その言葉に思わず目を丸くした。

「おや、死者よりも私に対しての心配かね」

「うん...アリサちゃんが死んで、悲しんでいるんじゃないかって。キレイちゃん、アリサちゃんと仲良かったし」

エマは、純粋に心配をしているようだ。

 

「なに、心配はいらない。いつものように、私は死者のために戦うまでに過ぎない」

「...どうして」

 

キレイは、その言葉に振り返ることなく、立ち去っていった。

 

━━━━━

 

目的の場所に向かう時、キレイはマーゴに止められた。

「...キレイちゃん。大丈夫かしら」

「エマ君にも言われたね、それ」

 

あの異常なまでの高笑いから一変、今まで通り普通に過ごしているキレイにマーゴは面食らう。

「...あなたも、涙を流すのね」

ふと、マーゴにそう言われた。

 

「わたしだって涙を流すとも。生物だからね」

「人間、とは言わないのね」

冷たい目で見られるが、キレイは鼻で笑った。

「それよりも、裁判について考えた方がいい。時間は有限だからね」

「...そうね。あなたもね」

 

そう言って、キレイはマーゴと分かれた。

 

━━━━━

 

キレイは、医務室にたどり着いていた。

ガラスがあるのは、ここの...薬でしかなかったから。

 

キレイは、一つの瓶を手に取った。

ガラスの瓶で、蓋は金属の蝶。

青色の液体の、瓶だった。

 

━━━━━

 

こうして、また、始まってしまう。

キレイには、ある決意があった。

死者の無念を果たすべく...そして。

この裁判を、終わらせる為に。

 

 




【魔女図鑑:人物】
[ことみね きれい]
囚人番号671番。  誕生日:12月28日
15歳
【魔法】奇跡 洗礼詠唱
一つのリンゴを全員に行き渡るように渡す。
水をぶどうジュースに変えるなど
神の子と近しいことができる。
それだけではなく、実現可能な範囲ならどんな願いも叶えられる。

言峰キレイが会得している人造魔法
この地に縫い止められし魂を、使用者の慈悲により強制的に主の元へと送り届ける魔法。
あくまで【なれはて】限定であり、魔女には効果がない。

敬虔なるシスター、目が死んでいる。
アリサが死んだことで、答えを得てしまった。
しかし彼女のやることは変わらない。
いつものように、真相を突き止める。
ただ今回は、少しやる気を失っている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。