ヒロの万年筆
たいせつなもの、握ると力が湧く。
ロウソク
現場近くにあった。使われた痕跡がある
電気椅子
処刑用器具。背中に二つのスイッチ。拘束機能あり
拘束されることで、効果を発揮する。
何か不具合があったらしい。
ガラスの破片
死体の足元に落ちた、ガラスの破片。
地下冷凍室
処刑後はみんな、ここに運ばれる。
操作盤
地下にある。処刑台の操作ができる。
アリサの死体
処刑台の電気椅子に座った状態で亡くなっている。拘束はされていない。
頬には蝶の形の火傷後。魔女化が進行している。
髪や服が濡れている。
(エマ視点)
裁判所では、既にアリサの死体は片付けられ、いつもの処刑台となっていた。
ここに集まった少女達はメルル、ココ、マーゴ、キレイ。
エマ含めて5人となっており、ナノカは、今一人で牢屋敷の地下を探索している。
「それでは、魔女裁判開廷です!」
こうして、始まった。隣人を処刑台へ送る裁判を。
━━━━━
裁判は、ナノカを抜きにして開始した。
「ナノカさん無しで始めて、良いんですよね?」
メルルがそう恐る恐る聞いた。
「ナノカちゃんはずっと外で探索してたみたいだし、この事件には関係ないと思うよ」
エマの役目は一つ。地下を探索しているナノカを、守ることだった。
「ええ?そんなんわかんなくない?」
「まあ、いなかったら【欠席裁判】だし、私は問題ないわ」
(アリサちゃんの為にも、真相を明らかにしないと)
ふと、エマがキレイの方をみる。
「......」
キレイは、酷くつまらなそうな顔をしていた。
(キレイちゃん。やっぱりショックなのかな)
キレイは、語りかける。
「...早速、冒頭弁論を始めてもいいかね?」
「うん、お願いキレイちゃん」
(大丈夫、今まで通り、やれば良いんだ)
「被害者は紫藤アリサ。死亡理由は...今の所は電気椅子と言うしかないだろう。しかし、間違いなく’即死“だったことは確かだ。
第一発見者は私とマーゴ君だ。
死亡推定時刻は...分かるものはいるかね?」
それにエマが反応した。
「うん。アリサちゃんは電気椅子に座ってたんだよね?そしてゴクチョーが言ってたんだけど、昨晩の21時と今朝の9時に、処刑台が動いてたらしいんだ。そして、その間は地下にあった。
だから、夜21時前か朝9時以降。そのどっちかのはずだよ。」
それにキレイが返答を返す。
「ふむ、情報ありがとう。できれば更に絞りたいが」
それに、マーゴが語った。
「なら、アリサちゃんは夜に殺された可能性が高いわね。現場には使われた痕跡のあるロウソクが。足元を照らす為にロウソクを使って、アリサちゃんがこの場所に来た可能性は高いわ」
「分かった、続けよう。現場の死体は濡れているが、現場への道は濡れておらず、被害者はあの場所で濡れた、と考えるべきだ。頬には火傷の跡が付いており、今のところは電気の痕と考えられる。現場にはガラス片が散乱していたが、関連性は不明だ。私からは以上。何か質問はあるかね?」
>即死
・何故そう思ったのか。
「ねえキレイちゃん。どうしてアリサちゃんが即死って思ったの?」
そうだ、即死だったかどうかは不明だ。
「では、被害者の手と頬を見てもらおう」
現場写真が映される。
「被害者は、魔女化している。私は魔女化についてかなり詳しいのだが、この進行度なら傷は生きている限りは治る。つまりは火傷を負って数分もしないうちに、命を落としたはずだ」
「そっか、ありがとうキレイちゃん」
それらの発言を聞き、マーゴが発言した。
「なら容疑者は、キレイちゃんとエマちゃん、そしてナノカちゃんになるわね」
マーゴは続ける。
「その前提でいけば、一番怪しいのはナノカちゃんね」
「ちょっと待って!?なんでみんなは外れるの?」
「だってあてぃしら、3人でお茶会してたから」
横からココが答える。
「は、はい。キレイさんは部屋で深い眠りについてて、エマさんは見つからなかったので、マーゴさんとココさんとお茶会を...!」
メルルが答えた内容に、エマは気がついた。前に話していたことをメルルがやったのだと。
「それで、誰も席を立っていなかったからこの3人は外れるのよ。問題あるかしら」
「うん、問題はないよ」
エマは素直に述べた。
「話を続けるわね。ゴクチョーに話を聞いたけれど、
電気椅子には【パスコード】があったの。私たちはそれを知らないから扱えないけど、ナノカちゃんは別よ。彼女の魔法なら問題なくパスコードを知ることができた。つまり、ナノカちゃんが電気椅子を使って、アリサちゃんを殺害したのよ」
その言葉に、エマは反論する。
「そもそも、本当に電気椅子は使われたのかな?」
「なんですって?」
「ボクもゴクチョーに聞いたんだけど、電気椅子には不具合があったみたいなんだ」
マーゴの驚きに、エマがそう答えた。
「ゴクチョー、詳細を教えてくれるかね?」
キレイがゴクチョーに語りかけると、ゴクチョーは答える。
「はいはい...電気椅子の不具合は...
そうそう【拘束機能】です。拘束する分には良いんですが、一度拘束されるとなかなか解けないんですよ。接触不良ですかね、何回かボタンを押せば解除されることもありますが、運が悪いとダメでして。ですが、処刑には問題ありませんよ」
「そう、ありがとうゴクチョー。
なら、電気椅子を使って処刑する分には、問題なさそうね」
そのマーゴに対して、エマが答える。
「いや、問題はあるよ。アリサちゃんが拘束されてない」
それは、死体の状況から見て明らかだった。
「この電気椅子は、拘束された状態じゃないと電流が流れない...さっきのゴクチョーの発言とアリサちゃんの状況は矛盾してるよ!」
その発言に対して、ココが重ねる。
「つーかナノカでもヤンキー拘束ってできんの?あいつこの牢屋敷が燃える勢いで反撃しそうじゃん」
その問いには、メルルが答えた。
「アリサさん、昨日睡眠薬を持って行かれました。ですから、眠っていた可能性は高いと思います」
「おや、君が渡したのかね?」
キレイがそう聞いた。
「は、はい。勝手にですけど、医務室の薬のことを見分けて、私の名前を書いて必要な人にそれぞれ手渡しているんです」
そう言って、メルルは睡眠薬の瓶を提出した。ラベルにはメルル、と書かれている。青色の液体だ。
「うむ、医務室にある瓶は全てこのようなタイプだ」
そこにキレイが同意した。
「ようするに、アリサは寝てる間に殺されたってわけね。ま、苦しまなくて良かったじゃん」
そう言って、ココが締めた。
それを聞いた後に、エマが聞いた。
「ねえ、そもそも本当にアリサちゃんは電気椅子で殺されたのかな。それを示す証拠はないはずだよ!」
「いいえエマちゃん。それはアリサちゃんの死体の状況がそれを示しているわ」
マーゴは反論する。
「アリサちゃんの死体は濡れていた。これは電気椅子の処刑を効率よくする為に行われたものだ、そう証言するわ」
>濡れていた
・地下冷凍室
「いや、アリサちゃんは夜21時以降から朝9時迄は地下にいたんだ。そう、地下の冷凍室に!」
「冷凍室!?何それ!?」
エマの反論に、ココが驚く。
その発言に、マーゴが納得する。
「...なるほど、私もゴクチョーから聞いたわ。処刑された魔女は不死だから、地下の冷凍室に、処刑台毎凍らせて封じるって」
「時間からして12時間。霜が降りて溶けて水浸しになってもおかしくないよ!」
「あら、確かにその説明は通るけど...電気椅子の処刑を裏付ける、アリサちゃんの頬の火傷痕はどう説明つけるのかしら」
「(あの頬の蝶の形の火傷...!!)」
エマがそう思い浮かべると、ふと横から声がした。
「エマ君。ガラス片を思い浮かべたまえ」
「ガラス片...?」
エマは考える...そして。
「そうか!きっとビンのフタだ!」
「...!」
「キレイちゃんがさっき言ってたよね。医務室にある蓋は全部...このビンと同じタイプだって!」
エマは、薬ビンのフタを見せた。
「......!!確かに、アリサの火傷痕そっくりだ!」
「そう、きっとこのビンが火傷の痕を作ったんだよ!」
「でもなんでビンで火傷が付くわけ?」
ココの問いに対して、エマが答える。
「アリサちゃんの魔法なら、火元はあるよ。なんらかの理由でビンを炙ったアリサちゃんが、誤ってビンを顔に付けたんだ」
「......エマちゃんはどうしても、電気椅子が使われなかったことにしたいみたいね?でも、説明できなければそれは空論よ」
マーゴは強く反論する。
「答えなさい、エマちゃん。電気椅子が凶器じゃなかったとしたら...あなたの推理では、何が凶器で、死因だというの?」
>凶器
・睡眠薬
「死因はきっと睡眠薬の、オーバードーズだったんだ!」
「なんですって...!!」
「オーバードーズって、薬の飲み過ぎってこと!?」
二人が驚愕する。
「過剰摂取......!!」
「確かに、あの睡眠薬は強力なもので、飲みすぎてはいけないものですが...!!」
「そう。散乱したビンの破片は、睡眠薬のものだったんだよ。青色の液体は、現場から見つかってない。アリサちゃんが全部飲んだんだ!」
「...では。君の意見を聞こう。アリサ君は、なぜ死んだのかね」
いつも以上に低い声で、キレイは聞いた。
「(キレイちゃん......)」
エマは、その答えを告げた。
「...自殺、だよ」
「......そうか」
長い沈黙の後。キレイは
「ゴクチョー。もし自殺ということになった場合はどうするかね。特例を作るのは面倒だろうが、答えてくれ」
「本当に面倒くさいですねぇ......良いでしょう。全会一致でありながら、それを示す客観的な証拠があれば、それを認めましょう」
「...というわけだそうだ」
...少女達の間に。沈黙が走る。
「...アリサちゃんの自殺、なら。
隠しておく必要もないわね」
そういってマーゴは、袖から...溶けたアルミの瓶を出した。
「おや、薬のビンのフタだね。これで火傷をしたことは確からしい」
「ええ、蝶の絵があって、焦げていて...わたしが犯人だって疑われるのを避ける為に現場から持ち去ったの。キレイちゃんは......別の所に注目していたから」
「...なら、分かったことがあるよ」
そう言って、エマが切り出した。
「みんな、理科の実験でやったよね。空気は暖めることで膨張するって、ならきっと...!
・ガラスの破片
「このガラスの破片は、アリサちゃんが炙りビンしたことで、空っぽのビンの中の空気が膨らんで、爆発したんだ!」
「...なるほど、それで飛んできたアルミのフタが焼きごてみたいに...それで、あの火傷が」
納得したマーゴだが、ココは納得しない。
「あてぃし、それで納得しないから。エマっち、説明できねえだろ?アリサはなんでビンなんて炙ったんだよ!」
・睡眠薬のラベル
「...メルルちゃんは、全部のビンに自分の名前書いてるんだよね?」
「は、はい。ビンについているラベルに」
「...なら、アリサちゃんはそのラベルを燃やそうとしたんだよ。自分が自殺しようとした時に...メルルちゃんに疑いが向かないように」
「...確かに、あり得ることだ」
ふと、キレイが口を開いた。
「アリサ君は、人の為に怒ることができる人物だった。死の間際でも、人のことを思ったのだろうね。ありがとう、お陰で...アリサ君の死の真相に辿り着けた」
キレイの笑顔は、爽やかだった。
...どこか、悲し気にも思えたが。
「...ねえ、エマちゃん。最後に一つ良いかしら。どうして、アリサちゃんは自殺を選んだの?」
・魔女化
「...アリサちゃんの死体は、魔女化が進んでいたんだ。キレイちゃんが言ってたように、アリサちゃんは、優しかった。だから...魔女化に苦しんで、死を選んだんだ」
その真相に辿り着けた少女達の顔は、暗かった。
ただ、一人以外は
「アリサ君は、牢屋敷の環境に殺された。だからこそ、自殺ではない。アリサ君の魂は、主の元へと届くだろう」
それは、キレイなりの慰めだった。
━━━そんな時、フクロウの一声が鳴った。
「一つだけ、気になることがあるんです。処刑台のことなんですが...真相を伝えてくださいね?」
そうして少女達は、絶望へと歩いていくことになる。
「処刑台は、私がリモコンか地下の操作盤を動かさないと動かないはずなんです。
昨晩から今朝にかけて...動いた理由を知ってますか?
>動いた理由
・地下にいた。
「...ボクだよ。ボクが地下にいて、動かしたんだ」
「えっどゆこと?」
エマの答えに、ココが驚く。
地下のナノカを守る為に、エマは答えた。
昨日、水精の間の地下に迷い込んだこと、
そこで閉じ込められ、操作パネルを触ったこと
「...なるほど、そうだったんですね。
私の疑問は解決したようです」
ゴクチョーは納得した様子だ。地下に入ったことは許してくれるらしい。
...しかし、真実に気がついた者がいた。
その者は、メルルに尋ねた。
睡眠薬のオーバードーズで死に至る時間は24時間。そして、アリサは21時から9時の間、冷凍室にいた。
そうして、マーゴがその事実を告げた。
「そうなるのであれば...アリサちゃんの死因は
━━━凍死、になるんじゃないかしら」
一気に、エマを見る目が変わってしまった。
薬を飲んだ時点でアリサは死んでいなかった。
ならば、死に追いやった原因は...
エマは矛盾を探した。なかった。
エマは反論した。意味はなかった。
みんなの目が、エマを責めているように感じた
今までの事件についても、疑われた。
助けてくれる人なんて、いなかった。
目の前が真っ黒になった。
いつもの笑顔を浮かべ、声を上げる者がいた。
「━━━異議あり」