言峰キレイは、探求者である。
(キレイ視点)
皆の視点が、私に向かっている。
「キレイ、ちゃん?」
絶望に染まった顔の中、そう言った少女が
「キレイ、さん?」
口を挟むと思わなかったのか、驚く少女が
「なんだよ急に、黙ってただろずっと!」
いつもの調子で突っかかる少女が
「...異議あり、って言ったわね。それは何?」
真剣な眼差しで、こちらに問う少女が
全員が、こちらを向いている。
私は、語り出す。
「傷つけ合う必要はない。
━━━今から私が一方的に話す」
これはもはや、裁判ではない。
「今の発言には矛盾が生じている、紫藤アリサは即死だ。これは間違いない」
「待ちなさい、でも状況的に」
「魔女は死なない」
その言葉に、マーゴは口を閉じた。
「待ってよ、でもキレイちゃんはさっき、アリサちゃんの死の真相に、辿り着いたって、それにアリサちゃんは実際に死んで...!」
「キレイっちどうしたんだよ、気でも狂った?」
私は語る。一方的に話す。
「私は死の真相を知った。『何故紫藤アリサは死んだのか』を。だから私は今までは口をそこまで挟まなかった。だが、アリサ君の死が原因で、罪なき者が処刑されるというのであれば、口を挟まざるを得ない。私としてはね」
「死因は即死だ。薬の飲み過ぎでも凍死でもない」
「でも、キレイさん。今までの議論では...!」
「あの程度の火傷が、治らないわけがない」
その言葉に、気がついた者がいた。
「ねえキレイちゃん、もしかして...アリサちゃんは死ぬ筈が、なかったの?」
その言葉には、微笑みのみを返した。
「魔女は死なない。ある特別な手段を用いなければ、主の元へと届くことはない。私の魔法か、もしくは」
「...!それって!!」
マーゴは気がついたらしい。
「ゴクチョー、少し良いかね?裁判終了までは時間があるだろう?」
「確かにそうですが...手短にお願いしますね?」
ゴクチョーは面倒くさそうにそう言った。
「まずは一つ目...このアリサ君の目を見て欲しい」
ゴクチョーに対して、死体の写真を見せる。
...宝石のように光る、目を。
「ああ、なるほど......」
「目が宝石のように光り輝く現象、心当たりはあるかね?エマ君も素直に答えた筈だ。答えたまえ」
「分かりました。やれやれ......。これは魔女を殺す薬の副反応です。こうして目が結晶化してしまうんですよ」
「......!!トレデキム!」
マーゴは反応した。私と共に解読した内容だ。
「次に、だ。本来の管理はどうなっている?」
「はい、地下の冷凍室にて保管しています。開けられないように金庫に鍵を入れて閉めているんですが...」
「どうもありがとう」
そうして私は、皆に告げる。
「私は告げる。
━━━この裁判は、無効にさせて貰う」
「裁判が......」
「無効......!?」
エマとココは驚いた様子を浮かべる。
「ゴクチョー。君は確かにこう言った。金庫にしまっていると。しかし現に、アリサ君の手に渡ってしまっている。これは、牢屋敷側の管理体制により起こったものだ」
「管理不行き届き...ね」
私の発言にマーゴが同意する。
「確かにそうですね。それは事実です」
「本来であればアリサ君は死ぬことがなかった。であればこの事件は牢屋敷側の管理不行き届きによる死亡事故だ」
キレイは、一つ息を吸い...こう告げた。
「この魔女裁判には意味はない。この裁判を無効にしたまえ、手間も省けるだろう?ゴクチョー」
「...分かりました」
そう言って、ゴクチョーは素直に認めた。
「確かに、こちら側に不備があり、そのせいでアリサさんが死んでしまったのは分かりました。ですので、この魔女裁判は無効とさせていただきます。皆様にはご迷惑をおかけいたしました」
ゴクチョーは素直に謝罪をする。
ココが噛み付いていたがゴクチョーは気にせず
「それではこの後は、処刑台の調整を致しますので、速やかに退廷してくださいね。それでは、これにて閉廷とします!」
...こうして誰も傷付くことないまま、
魔女裁判は終わりを告げた。
━━━━━
少しばかり、明るい空気の中戻る。このような魔女裁判の終わりは始めてだった。あの暗い空気感が好きだったが。
「その、いつから気がついてたの?」
道中で、エマが聞いてきた。
「何がだね?」
「アリサちゃんが死んだ凶器だよ。いつからかなって」
ああ、その話か。と思い答える。
「死体を詳しく見た時だね」
「えっ」「はぁ?!」
エマと聞いていたココが反応する。
「じゃあ何?キレイっちはあてぃしらが頑張って議論してる間、一人嘲笑ってたってわけ?何それ意地悪!!」
ココが猛抗議をする。
「すまないね、だが私も知りたかったのだよ。紫藤アリサが何故死んだのか...それは私にも分からなかった。私であれば、殺せたのにね」
「...キレイちゃん」
エマが悲しそうな表情でこちらを見る。
「...きっと、アリサちゃんはキレイちゃんに殺して欲しくなかったのよ。シェリーちゃんみたく、傷付いて欲しくなかったんでしょうね」
マーゴが、そう分析する。
そうして、廊下を歩いていると...
スマホの通知がなる。
「えー、皆さん。申し訳ございませんがもう一度裁判所までお集まり下さい...やれやれ...今日は早く帰れると思ったんですが」
「なんなのかな...?」
「まだ何かあんの?寝たいんだけど」
「い、行きましょう...!!」
「...嫌な予感がするわね」
皆が足を渋々戻すと、そこでは。
「━━━嘘」
エマ君のか細い声が響く中。
━━━処刑台の上で、黒部ナノカが死んでいた。
【魔女図鑑:人物】
[ことみね きれい]
囚人番号671番。 誕生日:12月28日
15歳
【魔法】奇跡 洗礼詠唱
一つのリンゴを全員に行き渡るように渡す。
水をぶどうジュースに変えるなど
神の子と近しいことができる。
それだけではなく、実現可能な範囲ならどんな願いも叶えられる。
言峰キレイが会得している人造魔法
この地に縫い止められし魂を、使用者の慈悲により強制的に主の元へと送り届ける魔法。
あくまで【なれはて】限定であり、魔女には効果がない。
敬虔なるシスター、目が死んでいる。
エマが絶望の淵ギリギリになる所まで楽しんでいた。
ただし、紫藤アリサの願い
「紫藤アリサにより誰も死なないまま」
魔女裁判を終わらせた。