言峰キレイは、嗤っている。
「ナノカ、ちゃん?」
エマの掠れた声が響く。
何故、と、あり得ないと考えている声だった。
ゴクチョーの声が響く。
「全く、今日はあんまり手間かからないと思ってたんですけどねぇ......2度も殺人事件が起きてしまうとは」
心底面倒そうにゴクチョーが呟いた。
「次の魔女裁判を、そうですね。3時にしましょう」
「魔女裁判って......!処刑台が上がって死んでんならこれもそっちの不手際じゃねえの!?だったら!」
「これに関しては私も想定外です。ナノカさんがここにいることも知りませんでしたしね。不手際だとするなら、証拠を見つけて貰わないことにはなんとも......」
ココが噛み付くが、ゴクチョーはそう躱す。
「...いるんだ」
エマがそう呟いた。
「この中に、いるんだ!ナノカちゃんを地下で殺害した黒幕が!」
「...黒幕」
その言葉にぽつりとマーゴが呟いた。
なのでふと思ったことを口にしてみた。
「ではナノカ君が地下にいたと先程証言したエマ君が一番の容疑者になるね?」
「えっ。...いや違う!ボクじゃない!!」
エマは必死に否定している。
しかし周りの目が厳しくなっている。
「...ひとまず、エマちゃんが探索する際は見張りとして2人は必要ね、証拠隠滅を阻止する為にも」
マーゴがそう言って警戒をするようにエマを見る。
そこにキレイは声を上げた。
「では、その役割は私と...ココ君、頼めるかな?」
「えっ、なんであてぃしが!?」
ココが唐突に振られた話に驚いた。
「良いだろう?君と私との仲だし」
「まあ良いけどさぁ?」
ココは渋々と言った感じで了承した。
こうして、1日で2回目の捜査が始まった。
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「まずは、死体の状況を確認するとしよう」
そう言ってキレイは死体を観察する。
「ナノカちゃんは殺されたのかしら、ぱっと見では分からないわね」
その死体の状況に、マーゴが呟いた。
そう、被害者の黒部ナノカには外傷がなく。口に小さく血が流れたままだった。
「ナノカさんまで......。こんなこと、いつまで続くんでしょう......!」
メルルが泣いて、そう言った。
キレイは気にせずに。死体を調べていた。
エマの隣ではメルルが、エマを励ましていた。
そうして調べて、キレイは服の内側にあるものを、エマはある紙をポケットから見つけた。
エマが見つけた紙は【169231】と書かれたメモ。
そしてキレイが見つけたものに、エマが声を上げる。
「それは、ナノ仮面......?」
そう。キレイが与えた身元を隠すための仮面。それが服の内側で粉々に砕けていたのだ。
「...大切に持ってたんだね」
エマがそうぽつりと呟く。
ふと指先を見ると。わずかに血が付いていた。
それ以外は表面が非常に冷たいということしかなかった。
キレイは捜査を切り上げ、エマに言った。
「これ以上はない、案内を頼めるかな?」
「う、うん。ココちゃんもよろしくね」
「はいはい。あてぃし眠いんだから付いてくるだけでも感謝してよね〜」
そう言って、エマ先導の元、地下施設に向かう。
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向かう道中、エマはキレイに質問した。
「ねえキレイちゃん。このメモなんだけど」
169231と書かれたメモを見せる。
ココはそのメモを覗き込んだ。
「なになに...?イロックニサイ?みたいな読み方じゃないか」
「全部の数字を足してみて、ココちゃん」
「......22?」
「なんなんだろうねこのメモ」
「こっちが聞きたいんだけど!!なんで計算させた!?」
そんなコントみたいな話をしている中、キレイは答える。
「ああ、これはセイラム魔女裁判の始まった日付だね」
「魔女裁判...!?」
エマは思わず息を呑んだ。
「君たちも知っているだろう?歴史でも習ったのではないかな?歴史でも取り扱っている内容だ」
「魔女狩り......だっけ?」
ココがそう呟いた。
「ああ、表向きは集団ヒステリー等で処理されている、世界で最も有名な魔女狩りだ」
「...表向きは...って」
「......知りたいかね?」
エマは首を横に振った。
「よろしい。しかしてどうやら、ここは私と随分縁深い場所らしいね」
「んな難しい話しないでよキレイっち...というか運んでくれない?眠いんだよぉ...寝起きも最悪でさぁ...?」
そう言って問答無用でキレイの背中に乗る。
「寝起きって、何があったの?」
「......今朝夢にナノカが出てきてさぁ。【パン!】って大きな音がしてさぁ?転がり落ちて痛いし眠いしさぁ...」
「そうなんだ...災難だったね......」
そう言って、エマに連れられ目的地へと向かって行った。
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水精の間には、地下へと続く道があった。
「マジかぁ...寝てる時にあてぃし気が付かなかった」
「まさかこうなってるとは誰も思うまい」
そう言って、地下へと潜り、三人でエレベーターに乗ろうとすると......ビーー!!という音が鳴った。
「え!?何これ!?」
「エマっちこれ知らないの!?」
二人は驚いていた。
「恐らくだが、重量制限だ。二人まで、らしいね」
「じゃあキレイっちは後で追いかけてきてよ」
「ああ、了解した」
そう言って、それぞれが地下へと降りる。
「うー...さむっ!何ここ寒くない?」
「あ、二人とも扉閉まらないように気をつけてね。ボク、それで前閉じ込められちゃったから」
「ひっ......!」
エマは辺りの写真を取るが、キレイはある二つを発見する。
「エマ君、ココ君。見たまえ」
「どしたのキレイっち...っていうか上着貸してくれない?」
「何かあったの?」
それは、鍵の付いた扉と、銃弾で開けられた通気口。
「恐らくだが、ナノカ君の仕業だろう」
「ナノカちゃんが...?」
「...まさか通るって言わないよね?狭いよ?」
キレイは無言で鍵のかかった扉の前に立ち...
足を大きく踏み鳴らし、八極拳により扉を開けた。
「では行こうか、時間は有限だ」
二人は、絶句していた。
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先は冷凍室だった。恐らくは先程の冷気はここからだ。
「うー寒......!」
既にキレイの上着を羽織っているココがそう言った。
「...あれ、でも...ここ何か見たことあるような...ナノカの夢で...」
この場を更に探索すると、ココがあるものを見つける。
それは、既に開いていた金庫だった。
剣や拳銃、ラベルの付いた透明な液体の入った瓶。
そして。自分達のレポートが置いてあった。
「恐らくは、ナノカ君が開けたのだろう」
そう言いながらも、金庫の番号に付いた血痕を指差す。
「そっか、ナノカちゃんの指には血が付いてたもんね」
エマは納得した様子だ。
そして奥には、巨大な扉があった。巨人が通るような巨大な扉。覗き窓があり中を覗くと、物々しい処刑台が大量に並んでいた。
「なるほど、恐らくはここが開くことで処刑台の搬入をしているのだろう」
「...ここを、通るんだ」
「こんな悪趣味な施設...誰が作ったんだろ」
二人はそれぞれそんなことを言う。
覗き窓は小さなものしか通らないようだ。
三人はどう試しても、人は入らないと理解した。
...キレイは、ある木片を拾った。
こうして、冷凍室の探索は終わった。
多くの証拠を得たが、謎は増えるばかりだった。
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こうして、本日二度目の魔女裁判は始まる。
5人がそれぞれ互いを疑い合い...
その中の誰かを処刑台へ送る。
【魔女図鑑:人物】
[ことみね きれい]
囚人番号671番。 誕生日:12月28日
15歳
【魔法】奇跡 洗礼詠唱
一つのリンゴを全員に行き渡るように渡す。
水をぶどうジュースに変えるなど
神の子と近しいことができる。
それだけではなく、実現可能な範囲ならどんな願いも叶えられる。
言峰キレイが会得している人造魔法
この地に縫い止められし魂を、使用者の慈悲により強制的に主の元へと送り届ける魔法。
あくまで【なれはて】限定であり、魔女には効果がない。
敬虔なるシスター、目が死んでいる。
事件の概要を知らないが犯人だけ恐らく知っている状態。
しかし彼女は何も言わない。
その先にある、それを見据えて。