愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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【魔女図鑑:人物】
[ことみね きれい]
囚人番号671番。  誕生日:12月28日
15歳
【魔法】奇跡 洗礼詠唱
一つのリンゴを全員に行き渡るように渡す。
水をぶどうジュースに変えるなど
神の子と近しいことができる。
それだけではなく、実現可能な範囲ならどんな願いも叶えられる。

言峰キレイが会得している人造魔法
この地に縫い止められし魂を、使用者の慈悲により強制的に主の元へと送り届ける魔法。
あくまで【なれはて】限定であり、魔女には効果がない。


私は◾️◾️するモノを祝福する。

全ての黒幕が、この場で明らかとなった。

周りの少女はそれぞれが反応をした。

ある者は怒り、ある者は悲しみ、ある者は冷静に。

それぞれが一人の少女を見据えている。

 

その少女はいつもの調子で語り始める。

前に言っていた時のように。

...やがて、限界を迎えた少女、エマが叫んだ。

 

「━━━なんで!!なんでそんな、普通に話していられるの!?メルルちゃん、ずっとボクらを騙していたんでしょう!?友だちだって優しくしてくれて、たくさん心配してくれて、全部全部...嘘だったの!?」

 

喉が裂けそうな程の絶叫だった、裏切られた嘆きだった、それは、キレイの心を潤していた。

その発言に、メルルは反論する。

 

「嘘なんかじゃ、ありませんっ......!辛かったです、みなさんを苦しめるのは、嫌がるように考えるのは...!みなさんの嫌がることを分からないとって、みなさんと親しくなって...それを傷付けるようにするのはっ...!!とってもとっても...辛かった、です......!」

 

それは、泣いていた。心の底から、本心で。

その光景に、周りの少女は唖然としていた。この少女が何を言っているのかが、分からずに。

 

「大魔女様が、必要だったんです。大魔女様さえ見つけられたら、みなさんにとっても、きっと救済になると思って...!だから、みなさんが嫌な気持ちになるか、必死に探ったんです」

 

次々に語られる、その真実。

蓮見レイアの心に付け込んだ。

夏目アンアンの怒りに付け込んだ。

橘シェリーに何をしたかを言う直前で、エマが叫ぶ。

 

「もういい!もう聞きたくない!やめてよ!!」

「ゴクチョー!!さっさとコイツ処刑しろよ!!魔女は処刑なんだろ!!自分で魔女だって言ってんじゃん!!」

ココが叫ぶが、ゴクチョーは変わらぬ調子で言う。

 

「いや、そのぉ...確かに裁判で魔女と認定されましたが、私はメルル様の使い魔でして。流石に主を処刑するのは躊躇するというか......すみません、主催者権限で勘弁してもらいませんか?

まあ、みなさんが納得できないなら、処刑しても良いんですけど、時間の無駄っていいますか......」

面倒そうに言うゴクチョーに、マーゴが反応した。

 

「メルルちゃんは【なれはて】にならないということね。死なないし化け物にもならない。確かにその通りね」

 

そう話している時に、キレイが口を開く。

「...最後に、良いかね?メルル君」

「...どうか、しましたか?」

「なに、伝えておくべきことがあってね。君は大魔女に会いたいと言ったが、このままでは会うことは永遠にないからね」

 

そう言って、キレイは話す。

マーゴと解読した、あの本の内容【サバト】を

13人の魔女と儀礼の剣を用いることで呼び出す儀式を。

 

「そん......な......!?」

メルルは酷くショックを受けたようだった。

今まで自分がやってきたことは全て無駄だったということに。

しばらくそうした後...笑顔を見せた。

 

「...ありがとうございます、キレイさん。お陰で...最期に、皆さんと素敵な思い出ができました!」

 

マーゴが、エマとココに叫んだ。

「━━━エマちゃん、ココちゃん!」

二人の手首を握り、こう言った。

「逃げましょう......!私たちは、もう、殺される結末しか用意されていない!」

 

後ろから、看守が鎌を振り上げて、こちらに来ている。

━━━キレイは、その数m先にいる看守の懐に瞬時に潜り込み、看守を殴り飛ばした。

後ろを振り向かず、キレイは言った。

 

「行け」

ただ短いその言葉に、全員が頷いて...全力で走り去る。

キレイは看守をじっくりと見据え、こう言った。

「......では、祝祭を始めよう」

 

━━━━━

(???視点)

それはただ、目の前の存在を仕留めるべく鎌を振るう。

しかしそれは弾かれ、逆にこちらが突き飛ばされる。

しかし、それに痛みはない、苦痛はない。

目の前の存在はこちらに対抗しうる力を持つ。

だが、致命打を与えることはなかった。

 

それは、その存在を段々と追い詰めていった。

裁判所前の通路を通り、地下へと行き、目の前の存在は懲罰房へと向かった。大きな音が鳴ったが、あそこは行き止まりである。

その存在を仕留めるべく、そこに向かう。

 

━━━瞬間、様々な物が飛んできて、それは懲罰房の壁へと縫い付けられてしまった。懲罰房の備品だった。

ナイフ、杭、斧、鎖、ペンチ...

様々な拷問器具が人ではあり得ざる力により投擲され、胸はレイピアにより突き刺され、それは身動きが取れずに磔にされた。

 

目の前の存在は、ただそれの顔を掴み...言葉を告げた。

「━━━私が殺す」

 

━━━━━

 

キレイは一人、裁判所へと戻っていた。

既にメルルやゴクチョーはエマ達を探しており、いなかったので、辺りを一望できる柱の裏へと隠れて、ビンのジュースを煽る。

 

桜羽エマが遅れて裁判所へ来て、隠れた。

エマとキレイを呼ぶ声がする。現れたメルルの側には、看守とはまた別のなれはてが、なれはてを捕えられていた。服装から捕えられていたなれはてがココだと分かった。

「(逃げることはできなかったか)」

 

キレイはただ観察を続けた。

メルルは呼びかけつつも、ビンのフタを開き、ココへと液体を注いでいく。その光景にエマが声を上げて、見つかった。

メルルはエマと共に居たいと言い。エマはそれを拒絶した。エマはココを殺したことを攻め、そこから揉めた。

 

そして、メルルはある一枚の写真をエマに見せた。

「(ああ、見せてしまったか)」

大魔女は、人間社会に潜むと言ったらしい。

人は、自らと違うものを排するようになっている。

魔女ともなれば当然そうなるだろう。

 

一方で、エマの記憶にも矛盾が生じている。

“もう虐めないでという一言が発せない”

“臆病な自分を責めている“

”嫌われたくない“

この心理は被害者ではなく【傍観者】に近い。

 

実際の所は何も分からなかったが、何か関係しているやも知れないとは思っていた。だからこそ、キレイはその結末を眺めていた。

...その考察は、正しかった。

 

メルルが語る内容を殆ど聞かず、エマはただ写真を見て信じられないような目をしていた。

エマは写真に写っていた人物を友だちと呼んだ。

苦しげに両手で口を塞いだ。

辺りを見回して、誰かいるのかと叫んだ。

 

その後に、エマは全てを思い出したかのように...絶望した表情を浮かべて呆然と立っていた。

「(...後は、結末を見届けるか)」

最期のビンを開けて、少しずつ飲んでゆく。ワインでないことだけが、少しだけ残念だった。

 

エマの体から、眩い光が放たれた。

輝きは空間を包み込み、

周囲の空気さえも震わせる。

 

光が晴れた瞬間、エマの姿が、空高くに見えた。

背には翼、肉を持たぬ翼で、エマは空を飛んでいた。

魔女化、しかして人の形を保っていた。

 

メルルが狼狽える。

エマはただ一言呟いた。

それだけで、二人目の看守は息絶えた。

まるで普通の生物のように。

 

エマから語られる言葉に耳を貸す。

【魔女殺し】エマが持つ魔法。

大魔女とは友だちで、これから多くの魔女を殺すのだと。

 

エマはゴクチョーに命ずる。

ゴクチョーはそれに従い、処刑台が現れる。

その後、用済みとしてゴクチョーは息絶えた。

 

エマによりメルルが処刑台へと運ばれる。

それは大きな火鍋だった。

...そして、ただ一言。

「君は捨てられた」

 

エマのそれだけの言葉で、メルルは深い絶望に堕ちた。

メルルは火鍋に落ちて、溶けて死んだ。

...その後にエマは、何者かに呼ばれるように空へと飛び去って行った。

 

━━━━━

 

...キレイは、最期にと。

自身の畑にある、祭壇へと来た。

既に夜は明けており、新しい朝が来たらしい。

 

「(恐らく、私は今日死ぬのだろう)」

ふと、綺礼にそんな予感がした。

多くの魔女を殺すのだと。その為に魔女因子をばら撒いたのだと。メルルの話から、大魔女の計画を、なんとなく理解した。

 

「...やることは変わらないか」

言峰キレイは、聖職者である。

いつものように畑を見て、祭壇に祈りを捧げた。

━━━そうしてキレイは、【奇跡】を起こす。

 

「...主よ、慈悲を与えたまえ」

そうして最期にと、キレイはこう言った。

「━━━私は、誕生するものを祝福する」

 

ただ一人島に残ったシスターは、そう言って命を落とした。

【それ】を見届けられぬことだけが、心残りであった。

 

━━━━━

 

人類が滅びて、数ヶ月が経過した。

ある島では、【奇跡】的に、その【肉】は生命活動を止めていなかった。ただ、何かを守る殻のように、そこにいた。

 

やがてその肉は蠢き、

━━━そこから二つの【命】が誕生した。

 

一人は、銀色の髪に、金色の目を持った子供。

【聖女】とも呼べるような、美しさだった。

もう一人は、真っ黒だった。輪郭すら掴めぬ程に。

【この世全ての悪】を一人に詰め込んだように。

 

こうして人類は、絶滅を免れた。

ここに二人の男女が生誕した。

産めよ、増えよ、地に満ちよ。

その言葉の通りになるだろう。

 

この島で二人はアダムとイブとなり、新たな人類はここから発展していくことになる。

何百年と、先の話であるが。








━━━言峰キレイから、子が産まれ落ちた。
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