愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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小休止です。



DEAD END-手を取る-

(エマ視点)

みんな死んでしまった。

ココはなれはてになり、マーゴはココに襲われた自分を庇ってしまった。キレイも、今どこにいるか分からない。

そんな中で、エマはメルルと対峙した。

 

一人は嫌だと、嘆いていた。

寂しくて、辛いと...嘆いていた。

それは、今までと変わらない。友人の姿だった。

「エマさんなら、きっと分かって下さいますよね?」

 

「(何、言ってるの。メルルちゃんの気持ちなんて、理解できない。でも...ボクも...)」

ひとりは、いやだ。

 

「(ボクが手を差し伸べられるのは、メルルちゃんしかいない)」

そうして、手を取ってしまった。

「...ボクも......一人は、いやだ」

エマは、ぎこちない笑みを浮かべる。

 

肩を掴む、メルルの手に自信の手を重ねる。

そうして一言、震えた声でそう呟いた。

「メルルちゃん......助けて」

「......はい」

メルルもまた、小さくそう言って涙を流す。

 

「助けられたのは、私の方です。私には、今までずっと、歩み寄ってくれる人なんていませんでした。今までずっと寂しかった。でも、みなさんの死は無駄じゃありませんでした。こんな素敵な友達に、出逢えたんですから!」

はにかむように、メルルが笑う。

メルルはエマを胸に抱き留める。エマは小さく頷いていた。

 

「嬉しいです!今まで、こんなこと一度もなかったので」

思考が纏まらない。だが、これだけは分かる。

「...メルルちゃんのこと、見捨てたりなんてしないから」

「━━━はい!」

 

「(これは、正しい選択なんだ。メルルちゃんは、他人を思って涙を流せる優しい子、だから)」

自分に言い聞かせるように、心の中で何度も何度も、何度も言った。心を空洞に、痛む心を押さえつけて。

 

「...大魔女を、一緒に召喚しよう」

「......いいん、ですか?すごく...心強いです!今まで一人で考えて色々やっていたので......!」

互いに手を取り、笑い合う。

次の魔女候補を迎え入れよう...そう言った時。

 

肉の破れる音がした。

一つは、形が変わった看守が、レイピアに突き刺された音。

もう一つは...メルル。

メルルの胸から、手が伸びていた。赤い花を咲かして。

 

「......え?」「......うそ」

理解できない表情を、どちらもした。

看守は倒れる。何もできぬまま。

...メルルの背後には、笑顔の...キレイがいた。

 

「...お話の所、失礼するよ」

いつも通りにそう笑って...メルルから手を引き抜いた。

メルルの胸には穴が空いていた。既に塞がっているが...キレイは、自身の手で肉体を貫いたのだ。

 

キレイは、メルルから一枚の紙を奪い、突き放した。

「...!かえ、して!!」

「メルル、ちゃん?」

彼女としては珍しく声を荒げた。

その紙が、エマへと渡ってきて...目を見開く。

 

「これ...って...???」

ああ、優しいエマ、可愛いエマ。知ってしまいましたね。

そんなことは知らずのうちに、キレイが話す。

 

「メルル君、君は言った。大魔女は人間社会に紛れ、魔女因子を広げていると」

「そ、それがどうか......したんですか!!」

メルルの声にも返答せず、続けた。

 

「人は、自己と異なる存在を排斥するようになっている。それが大魔女と呼べるものなら尚更。魔女狩りも、発生理由は同じだ」

そして、とキレイはエマに向き直る。

 

「では君に、答えを聞こう桜羽エマ。君の頭の中には多くの矛盾が存在した。『一言の勇気が出せない臆病な自分が嫌になる』『嫌われたくない』...だったかな。私としては、それは【傍観者】の視点だね」

 

エマの呼吸が浅くなる。そうだ、本来のエマの原罪はそれだった。優しいエマには抱えきれない現実。それにエマは、自身で蓋をした。

 

キレイは語る。

「さてメルル君。【忌み嫌われる存在】と、【傍観者】...どこか繋がりがあると私は考えていてね。その答えを、エマ君は示してくれた」

「...エマ、さん...大魔女様に...会って......?」

 

ああ、優しいエマ、可愛いエマ。私はずっと、側にいましたよ。あなたのことをずっと見ていました。

「...ユキ......ちゃん......?あの時、自殺...して」

次の瞬間、また血肉を裂く音がした。

 

発生元は、メルルだ。

メルルは、自身の体をレイピアで突き刺されていた。看守に刺してあった、レイピアで。

すぐさま治癒を行った。傷は塞がらない。

「な、なんで...なんで...!?」

 

メルルは狼狽えている。キレイは答えた。

「魔女を殺す薬。それを吸った血だ」

ふと、ココのなれ果ての死体を見る。

 

一つの穴が空いていた、まさか。

「キレイちゃん......まさか、ココちゃんの飲んだ魔女を殺す薬を使うために...?」

「ああ、必要だったからね」

死体の損壊に罪悪感すらない。キレイはメルルに語る。

 

「君はもう直ぐここで死ぬ。君は大魔女には会えないし、この先大魔女は召喚されない。大魔女は既に死んでいた。ただ君の過ごしてきた時間は無意味だった。...その後悔を抱いたまま。

━━━ここで朽ちるといい」

 

「嫌だ、いやだ...いやだいやだ!!助けて下さい、エマさん.....!!」

メルルは最後に、自分に助けを求めて...涙を流し、目は宝石のように輝いて...その命を落とし、崩れ落ちた。

 

エマ、優しいエマ。あれは、敵です。

エマは魔女を殺します。でも、あれはまた別のナニカです。

ここで、始末しなければなりません。

 

エマに怒りが込み上がる。そうして、叫んだ。

「なんで、なんで!!メルルちゃんをそこまで苦しめたんだ!!あんなことする必要、なかったじゃないか......!!」

キレイはただ、それには答えず、こう言った。

 

「......君はまた【傍観者】だったね、エマ君」

その瞬間、エマの中で何かが切れた。

 

エマの体から、眩い光が放たれた。

輝きは空間を包み込み、

周囲の空気さえも震わせる。

 

光が晴れた瞬間、エマの姿が、空高くに見えた。

背には翼、肉を持たぬ翼で、エマは空を飛んでいた。

魔女化、しかして人の形を保っていた。

キレイは驚いたが、しかし冷静に向き直る。

 

「...魔女殺し。そんな魔法をもらったみたい」

もうなにも、怖くなかった。

たった2文字、それを呟くだけで、目の前のソレは死ぬ。

 

「ボクは今、怒ってる?悲しんでる?恨んでる?...どれも正しくて、どれも違う。...ボクは、キミを殺したい」

エマはただ、その句を告げた。

 

「━━━」

 

 

 

 

 

 

その瞬間、衝撃がエマを襲う。

あり得ない。距離からして10m、しかもこちらは飛んでいた。それをキレイは...

 

たった足の一踏みで懐に潜り込み、殴ったのだ。

エマは地に落ちる。キレイはエマをクッションにして着地した。更にその重さがエマに襲いかかる。

 

エマは魔女だ。殴られたくらいでは死なない。

エマはなんとか離れて戦いを再開する。

 

 

コンマ2秒のその句が告げられない、たった2文字のそれを告げられない。飛ばされた隙に言おうとも言えない。飛ばされた直後に来て殴り飛ばされる。

何度も何度も試しても、その句を告げることはできない。勝てないと、エマの頭の中でそれが過ぎる。

 

━━━逃げなさい、エマ。あれは、化け物です。魔女以上の何かです。今は遠くに逃げて下さい。......逃げて、エマ!!

 

頭の中で、ユキちゃんがそう叫ぶ。今は逃げるしかない、遠くで、みんなをまとめて殺せば、目の前のソレも死ぬんだ。

そうしてエマは、一目散に飛び去った。

...それを、一直線で飛んできたレイピアが貫き、エマは力尽き、そうして命を落としてしまった。

 

落ちる瞬間、どこか悲しげな目をしたキレイが見えた。

 

━━━━━

 

エマが落ち、転がって来た万年筆を、キレイは握り潰して立ち止まる。良い嘆き、絶望だったと噛み締めながら...ゴクチョーに向き直る。

 

「さて、これで生き残ったのは恐らく私一人だ。君の主は死に、なれはての看守も居ない。さて、この後私はどうなるのかな?」

 

ゴクチョーは面倒そうにそう言った。

「本当に面倒なことしてくれましたねぇ......メルル様が居なくなればやりやすくはなりますが、あなたに勝てるビジョンが見えません」

 

キレイは、話を切り出す。

「では、ここで一つ提案がある。

━━━私を新たな管理者にする気はあるかな?」

「...本気で言ってるんですか?」

ゴクチョーは驚いた様子だった。

 

キレイは続ける

「何、私も初めてだったのだよ。ここの生活は、私の人生に彩りを与えてくれたからね」

 

多くの悲しみがあった。

多くの怒りがあった。

多くの絶望があった。

それら全ては、キレイの空虚な心を踊らせた。

 

「看守の役目や説明等は私が行う。君はただ、適当な雑務をこなしてくれるだけで良い。...悪い話ではないと思うがね」

ゴクチョーはふむと考えて、こう言った。

 

「良いでしょう。あなたを私の、そしてこの牢屋敷の新たな主として認めましょう。やれやれ...移行手続きって面倒なんですがねぇ」

「安心したまえ、書類整理はやったことがある」

 

━━━━━

(キレイ視点)

そうして、数ヶ月の時が経ち......

新たな魔女候補はこの島にやって来た。

彼女らを見据え、キレイはこう言った。

 

「ようこそ諸君、私は言峰キレイ。

この牢屋敷の管理者で、シスターだ。人生の指針、日常生活の補強には一家言ある身だ。以後よろしく頼む」

 

こうしてまた、犠牲者は増える。

魔女裁判は、終わらない。

全ての魔女が消えるまで、絶対に。

 

━━━━━━━━ DEAD END━━━━

 

 

 

【タイガー道場:EXTRA2】

ふと、【3人】が目を覚ました先にあるのは

日本の剣道場だった。

「......ここは」

 

エマは見覚えがあった。

取りあえず準備をしておく。

「こんにち━━━」

「━━━しn」

「体罰!!」

 

バシィッ!!っといい竹刀の音が鳴ってエマが魔法を使う前に防がれて来た。

「...痛い」

「もー、ダメじゃない。女の子が簡単に人に死ねなんて言っちゃ。お友達も近くにいるんだし、禁止ね?お姉さんとの約束だゾ⭐︎」

 

━━━お友達?

そう言って辺りを見渡すと...二人の姿がいた。

「......ユキ、ちゃん。メルル、ちゃん?」

「...エマ、メルル」

「エマさん...?大魔女様...?夢じゃ、ありませんよね?」

 

全員が全員、信じられないような顔をする中...

「はいはい、改めまして自己紹介。

悩みを即時サクッと解決!お助けコーナー・タイガー道場出張編のお姉さんだよ〜。師範と呼びな!!」

 

「押忍!やったー!二回目の出番だー!......とは素直に喜べない弟子1号っす。押忍」

剣道技を着たお姉さんとブルマ?体操服を着た白い髪の子がそう言った。

 

ふと。メルルが質問をする。

「......あのー。ここはどこなんでしょう?私たちは死んだ筈では...キレイさんによって......」

「それに、これは私の持つどの魔法にも属しません。あなた達は一体、なんなんですか?」

 

確かに、ここはどこなんだろう。

すると、説明が来た。

 

「ここはね、間違った選択をした子を送り届ける為の道場だったんだ。でも、その出番がなくなっちゃったのよ」

「押忍!一作目でお払い箱っす!だから暇になってて世界線を彷徨ってたらここに辿り着いたの。ある縁によってね」

 

世界線を彷徨う?縁...?

「...何バカなことを言ってるの?」

「まあまあ。とにかく覚えておくべきことは...『キレイちゃんが原因でDEAD ENDに辿り着くとここに来る』それだけで良いわ!」

「あの鬼畜外道麻婆神父の縁があって出番が増えたのを喜ぶべきか、それとも悲しむべきか...」

 

何を言っているのか全然分からない...けど後ろが騒がしい。

「大魔女様ぁ......!!ずっと、ずっと会いたかったです......!!お会いするために、ずっと、ずっとぉ......!!」

「...メルル、今まで頑張らせてしまいましたね」

 

メルルが号泣して、ユキがそれを慰めている。

「(家族みたいだ...)」

そう思った。心から

 

「...それじゃあ早速反省させて返す...つもりだったんだけど」

剣道着のお姉さんが言葉を濁す。

 

「...ほら、本来の管轄違うでしょ?だから本来なら選択肢の直前までパパって戻せるんだけど...世界違うから、死ぬ直前までにしか戻せないの、ごめん!」

「押忍!詰みセーブってやつであります!」

二人がそんなことを言っても、そこまで実感がない。

 

「それで提案なんだけどさ。三人とも弟子にならない?ご飯もふかふかの布団も用意するし、直前まで戻ってもまた痛い思いするだけだし...悪くはないと思うわ!」

「押忍!タイガー道場はいつでも入門歓迎っす!」

二人は笑顔で誘ってくる。後ろの二人を見る。

 

「...私は、もう、痛い思いも、大魔女様と離れ離れになるのもいやです...!!ずっと、大魔女様と一緒が良いです...!!」

「......エマ。選択肢はあなたに預けます。恐らくはここは輪廻の狭間。どちらを選んでも、変わりませんから」

 

二人はそれぞれ、そう言った。

ボクは......

「...よろしく。ユキちゃんにメルルちゃんがいるなら、ボクはここにいることにするよ」

 

二人は安心した様子で笑って。

「よしきた!今日から君達は弟子2号3号4号!この広い道場で共に迷える者を救いましょう!今日はご馳走と行くわよー!!」

「押忍!妹弟子が増えたやったー!と喜びたい気分っす!魔法少女の先輩としても頑張るぞー!!」

「弟子1号!並行世界の自分を同一視しない!!」

 

そんなこんなで...ボク達の新しい生活は始まったみたい?

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