言峰キレイは言峰綺礼の人生を15歳分に凝縮している。
ノアの騒動からして皆が疲れているようで、何人かは部屋で眠っているようだ。
「...それにしても、この牢屋敷の管理人はいい趣味をしているらしい」
そうキレイは呟く。この環境は、囚人達のストレスを増やすような作りをしている。恐らくは...
【魔女】を作り上げるために。
「...さて、散歩にでも行くとしよう」
この時間で、身の振り方を考える必要がありそうだ。
さて、どこに行くとしようか...
外は暗いから、後にしておこう。
・シャワールーム
・医務室
・焼却炉
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一度、身体を洗い流すことにした。
脱いだ衣服はそのまま、ダストシュートに入れて焼却処分するらしい。
誰にも見られないうちに、さっさと済ませてしまおう。
━━━おっと、先客が居たらしい。
「...わぁ!?」
「すまない、驚かせてしまったかね。
確か、佐伯ミリア君だったかな?」
「え、あうん。えっと...誰だっけ。顔と名前まだ覚えられなくてさ。ごめん。良くないよね」
「何、会ってから会話を交わしていない相手とはそういうものだよ。
私は言峰キレイ。シスターだ」
佐伯ミリア。どこにでもいるような高校生。
そのような雰囲気を覚える、少しばかり衣装の露出が多い少女。
レイア組のメンバーであり、仲裁や宥め役をしているようだ。
主にアンアンやココの。
「えっとありがとうね、リンゴ分けてもらったりして」
「何、求めるものに施しを与えるのは私の勤めだ。
そちらこそお疲れ様。何か困っていることはないかな?」
「そうだね...やっぱりご飯かな。あんまり美味しくないし.....」
「それについては同感だ。わざとでもない限りあのような味にはならない、しかしゴクチョーに言ったところで変わらないだろうし、懲罰房行きになるだろうね」
この牢屋敷では集団抗議は禁止されている。
牢屋敷にストライキは適応されない。
「うっ...しばらく我慢するしかないかぁ...」
「何、禁止されないやり方で食事の改善をすれば良い。
任せたまえ、明日の夜は食事の改善を約束しよう」
「あはは、あ、シャワーでしょ。長話しちゃってごめんね」
「いいや、有意義な時間だったよ」
そう言って、ミリアは自室へと戻って行った。
さっさと済ませてしまおう。
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アンアンの様子を見に、医務室へと向かった。
「あ、キレイ、さん」
「おや、メルル君。看護かね?」
医務室は地下などとは違い、清潔な空間が保たれている。
恐らくは体調を崩した者を死なせない為の部屋だろう。
【魔女】にする為、劣悪な環境にしているというのは案外間違っていないのかもしれない。その前に死なれては困るということか。
「はい...アンアンさん、今も体調を...あ、起き上がらないで下さい.....!まだ安静に...!」
『何をしに来た』
スケッチブックでアンアンはそう書き出す。
「何、体調を崩したということで様子を見に来たのだが、この調子であればここで安静にしていれば問題はないだろう。そうだろう?メルル君」
「は、はい...!空気が澄んでいるこの場所があって助かりました...!」
「...わがはいは疲れている。はやく“帰れ“」
談笑をしていると、アンアンが言葉を発する。
その言葉に従わなければならないという思いが強くなり、身体が勝手に動く。
「...おっと、機嫌を損ねたようですまないね。ではこれにて失礼。”お大事に“、アンアン君」
「...ふん」
どうやら、機嫌を取るのは難しそうだ。
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焼却炉。シャワールームから繋がっており、月曜日の15時、衣服などはここで焼却して処分するらしい。
勿体無いとは思うが...規則なら仕方ないだろう。
...と、何やら一人で話す声が聞こえる。
気配を消して様子を覗くことにした。
「あー、大丈夫だって。あてぃしは元気でやってるからさ。そんな顔すんなよな〜...。絶対元気で帰ってくるから、そっちも元気でいろよ〜」
...一人でスマホに語りかけている猫耳少女、沢渡ココがそこに居た。
「...何、キレイ。そこで隠れて見てたりして」
「何、散歩を少々」
「んな理由でここに来る奴いる?」
「ここに」
「うざっ」
リンゴを分けたことで多少の軽口を言えるようにはなったらしい。
少々雑談をすれば、何か教えてくれるかも知れない。
「そういえば、よく私がいると気がついたね。職業柄、気配を消すことには長けているつもりなのだが」
「キレイ本当にシスター?アサシンだったりしない?」
「そんな破産してそうな職業ではないよ。私は敬虔たる神の信者だ」
ココはちょっと面倒そうに言葉を続ける。
「はぁ...言わなきゃダメっぽいかぁ。いっか、リンゴくれたお礼ってことで。
あてぃしの魔法は【千里眼】。生でも写真でも配信でも、とにかくあてぃしを見てる奴を俯瞰して見れるって魔法。
だからキレイのことも分かったってわけ」
「━━━では、先程君が話しかけていた相手は、
今もココ君を気にかけてくれているということかな?」
ココは目を見開き、驚いた様子で
「なんでわかるん?もしかしてエスパー?」
「何、職業柄そういったことも理解しているつもりでね。
例え届かなくとも、安心させたいという所かな?」
「...正解、良いじゃん別に。たった一人の、大切な推しなんだもん」
拗ねた様子で、そう呟いている。
「━━━では、本当に言葉を届けられるとしたら?」
「!!マジ!?そんなことできるの!?」
「ああ、ボトルメールというのは知ってるかね?」
ココは期待して損したという顔をする。
「まあ待ちたまえ。私の魔法なら可能だ」
「キレイっちの魔法?何々?」
「教えてくれたからね、お返しというものだ」
キレイは両手を広げた。
「私の魔法は【奇跡】。一つのリンゴを皆で同じ量に分け合える。
かの神の子と近しい力だ。光栄だね」
「...いや、確かにすごいけどさ、それでどうやって届けるのさ」
キレイは続けて言う
「私の魔法は神の子と同じような偉業の他に、
願いを叶える力もあってね。まあ実現可能な範囲だが。
...無論、ボトルメールを確実に届けることもできる」
「...マジ?」
「マジだとも。明日の朝までに、伝えたい内容を一枚の紙に書いておくと良い。後は私が届ける」
「...その、ありがとうね...キレイっち」
「お礼は、しっかり届いてから受け取ろう」
そういって、キレイは焼却炉を後にして行った。
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スマホのアラームが鳴った。散歩をして大体だが大まかな位置は理解した。
明日の朝は外で食料でも探すとしよう。
こうしてキレイは一人の部屋で、眠りにつくことになった。
【魔女図鑑:人物】
[ことみね きれい]
囚人番号671番。 誕生日:12月28日
15歳
【魔法】奇跡
一つのリンゴを全員に行き渡るように渡す。
水をぶどうジュースに変えるなど
神の子と近しいことができる。
それだけではなく、実現可能な範囲ならどんな願いも叶えられる。
(神の子+Fate聖杯)
敬虔なるシスター、目が死んでいる。
基本的に皆の悩み事を解決することがあるが、見逃したりすることもあるらしい。