愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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少女は、目を覚ます。


2周目
RE・プロローグ


目が覚めたのは、二段ベットの上。

“見覚えのある風景”を見て、ヒロは呟く。

「━━━【戻った】ということか......。それなら、はじめから、やり直さないと」

全ては、【正しくある】ために。

 

瞼を瞬かせ、天井を見た。

そして、聞き覚えのある声。

「え、なに、ここ......?」

桜羽エマ。私の同級生。最も罪深き【悪】だった。

彼女は、助けられる立場だったのに、彼女はユキを助けることはなく、ユキは自殺した。

 

ささくれる心を落ち着けるために、深く息をする。

エマがいることを、私は知っていた。

二度目だからこそ、知っていた。

「(大丈夫だ、私は『正しく』振る舞える。━━━彼女の顔を見ても、平気だ)」

そう自分に言い聞かせ、ベッドから軽やかに降りた。

 

「ああ、エマ」

声をそうかけると、エマは私がいたことに驚いていたが、気にせずに微笑み返しても見せた。

「私と君はルームメイトになった。ただそれだけの話だ、驚くことでもない」

「え、え...?」

 

エマは困惑したような声を上げる。その声に心に波風が立ってしまう。

「(どうして、私の前にまた現れた)」

耐えられない息苦しさで、エマから目を逸らす。

 

アナウンスが流れる中、私は冷静に考える。

前回の私は、あまりにもおかしく、衝動的だった。

「(あれは、正しくない)」

次こそは同じ失敗をしないように、決意した。

 

そうして、私は前回と同じようにラウンジへと向かう。エマが馴れ馴れしく話しかけてきたが、私はそれを冷たく突き放す。

前回のように突き飛ばしてもいないのに、派手に転んだ。

「(これが、エマの本性だ)」

それを無視して、湧き上がる憎悪と胸の締め付けを抑えつつ、私はラウンジへと向かっていった。

 

前回のような過ちは避ける。

【死に戻り】をしてしまったからこそ、

同じ轍は踏まないと決意した。

 

━━━━━

 

14人の少女が集められる。全員が【魔女】であり、間違った存在なのかと頭によぎる。

だが、間違いはそこのエマだ。そう思った。今エマは橘シェリーにより話しかけられていた。

 

多くの少女が動揺、困惑した様子だった。

私は正しく、彼女たちを導かねばならない。

そう思って、私は室内中央に立った。

 

「みんな初対面だし、自己紹介をしていこう!」

大きな声で提案する。少女達は注目した。

「私の名前は二階堂ヒロ。以後よろしく」

微笑んで自己紹介をすると、すぐさま蓮見レイアが近寄って話しかけてきた。

 

「キミ、随分落ち着いているんだね......ひょっとして、ここのことに詳しいのかい?」

いいや全くと返事をすると、訝しげに見つめてくる。

それに動じず、笑みを浮かべる。

 

「ふうん......まあ、いいか。私の名前は蓮見レイアだよ。よろしく」

そうして沢渡ココに自己紹介をさせ、場の支配権が私にあると感じて見回していると...言峰キレイが話し出す。

 

「私は言峰キレイ、シスター。人生の指針、日常生活の補強には一家言ある身だ。以後よろしく」

そう皆に笑いかけながら、目は私の方に向く。

暗く澱んだ瞳、いつも崩さぬ余裕の笑みは、どこか私の奥底を覗いているかのようにも感じた。

そう言えば、廊下での私とエマのやりとりも見ていた気がする。

 

そうして、各々自己紹介をさせて行く、しなかった者の名前は私が読み上げて言った。黒部ナノカは警戒する目を、他の少女は不審げに...言峰キレイだけはよく分からなかった。

 

その後、キレイが

「...ヒロ君。君が何を焦っているのか、何故名前を知っていたのかはは知らないが、そのやり方は良くない。各々のペースやそういったものがある。君のやり方は集団生活において不和を招くものだ。そう...君のやり方は【正しくない】のではないかな?」

 

思わず、唇を噛む。

読まれている。自分が何を信条に生きるのかを、そしてその言葉が正しいと理解してしまった。だからこそ反論ができなかった。

「...確かに、その通りだ。非があったことを謝ろう」

「よろしい。自らの非を認めるのは【正しい】ことだ」

言峰キレイはそういう人間だと、理解した。

 

そんな中、蓮見レイアが手を挙げた。

「私からいいかな?みんな、よく分からない服を着せられているよね。各自、服のポケットを見て欲しい。スマホを配給されているようなんだ」

 

知らない情報に内心で驚きながらも、自身の服のポケットに手を入れるとそこにはスマホと...万年筆があった。

心臓が早鐘を打つが、なんとか無表情を保つ。

 

皆が各々話しているのを聞いている中、私はレイアをチラリと観察した。あまりにも知らない情報が多く、暫くは情報を得ようとした。

 

「(そろそろ時間だな)」

私は天井付近を仰ぐ。定刻通りに、小さな通気口から化け物フクロウが飛んできて、前回と同じ説明をした。

自我が崩壊しそうな程の衝動に思わず、火かき棒を手に取りそうになりながらも...私は耐えた。何故か剣道場が見えた気がした。

 

看守の説明に入った。記憶に焼き付く、殺された衝撃、精神的苦痛が胸を襲う。表情に出ていたのだろう。エマが声をかけてきた。

「ヒロちゃん、すごく顔色が悪いけど、大丈夫...?」

「放っておいて欲しい」

 

より動悸が速くなったのが、エマを遠ざけたことで余裕が生まれてきた。エマの存在を認知すると、感情の抑制が効かないらしい。

何故だ、と考えていると、その説明がされた。

暫く過ごしていると、囚人間で殺人事件が起きると。

 

説明後に、魔女図鑑を開く。

【魔女因子】の欄を見る。強いストレスを受けると、魔女因子が高まり、魔女化が進む。魔女になると、堪えきれない殺人衝動で殺人を犯す恐れがある。と書かれていた。

 

その説明に腑に落ちた。...前回の私が完全におかしかったのは、その影響だったのだろうと。

【エマとの再会】は、私にとって多大なストレスだったようだ。そう考えると、私は【魔女化】が進んでいるのかと考え、首を振る。

 

「(落ち着け、気をしっかり持て。もう大丈夫だ、私は私のままでいられる。私は魔女になど、決してならない)」

自己に言い聞かせるようにそう考える.。

大きく息を吸い込み、真っ直ぐ前を見据えた。

 

得体の知れない何かが、じわりじわりと胸に染み込んでいくのを感じながら...私の目の前で、こちらを見るものがいた。

 

...私は、苦手なものができた。

言峰キレイだ。相性が悪いというべきか、肌に合わないというべきか...人間として好きになれそうにない。

「...どうした。何もなければ、私は部屋に戻らせてもらう」

そう言って踵を返す。その途中。

 

「━━━喜べ少女。君の願いはようやく叶う」

キレイは、神託を下すように言った。

 

「━━━何、を」

「明確な悪がいなければ、君の正しさは証明されない。たとえそれが君にとって容認し得ぬものであろうと、正義は対立すべき悪が必要だ」

 

目の前が真っ暗になるような衝撃だった。

私の心から望む正しさは、悪あってこそだと、キレイは言った。心を刺すように、キレイは言った。“敵が出来て良かったな”と。

 

「...君は、何を」

「取り繕う必要はない。君の葛藤は、人間としてとても正しい」

「━━━っ」

私はキレイの言葉を振り切り、自室へと戻る。

 

「...最後に忠告しておこう。君はその目を逸らし続けるものに、目を向けることになるだろう。きっとそれが、受け入れられぬ真実としても」

 

...こうして、2回目の牢屋敷での生活は始まる。

私の心に、楔を打ち込まれながら。

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