愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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【タイガー劇場】
「...あのボクならやりかねないね。看守が危険って知らなきゃ」
「あうぅ...マーゴさん、酷い怪我です...」
「...流石にヒロなら、回避してくれる筈です。きっと...!」
「さーてみんなの初任務までもう少しだよー!」
「...あれ、タイトルに違和感が」


RE.衝撃のマーボー

『皆に報告がある。夕食を食べに来れる者は来て欲しい』

言峰キレイに呼び出され、私はいち早く食堂に来ていた。すると、驚くべき光景が広がっていた。

 

「......,..」

空になった皿の前で机に突っ伏した紫藤アリサと。

顔中から汗を流し、猛烈な勢いでこの世に顕現する地獄とも言えるようなものを必死に掻き込んでいる言峰キレイがいた。

 

「なんだ、この状況は。おいキレイ、何があった、それはなんだ。何故アリサが倒れ伏している。説明しろ」

私が思わずそれを聞くと、キレイが反応した。

「...一つづつ説明するが、いいかね?」

 

そこで、今食べているのは麻婆豆腐であること、野生の野菜があったので畑を作り収穫したこと、アリサはその麻婆豆腐で倒れていることなどを知らされた。

「...分かった。何を言っているのかがわからないということは...しかし、見るからに辛そうだ。美味いのか?」

 

ふと思わず突っ込むと、キレイは反応した。

「ふっ、辛さとは、至高にして究極の味覚。舌と脳を焼き、マグマの如き辛さに身を委ねる時、私は生を実感する」

そう言いながらも一口食べ進めている。汗が全身から噴き出ているようだ。ふと、私を見て少し考えて...キレイは。

 

「食うか━━━━━?」

明らかに増えたもう一皿の麻婆豆腐らしい、煮立った釜のような何かを差し出してきた。

「待て待て待て!!」

 

私は思わず突っ込んだ。

「何故、増えた!?」

当然の反応だっただろう。キレイは難なく答えた。

「君は、神の子について知ってはいるかね?」

...その言葉に、私は目の前の少女がシスターであったことを思い出した。

 

「なるほど、君の魔法はそれか」

「その通り。神の子の【奇跡】と似たようなことができる。畑もそれで作った。実を成らなくすることができるのであれば、その逆も可能だ。少々、恐れ多くはあるがね」

そう言ってキレイは自嘲する。とんでもない魔法だと思った。恐らくは前回のリンゴを分け合うのもそれかと思った。

 

「それで、君はどうする?食うか?」

その問いに、私は...

>いただこう。

・食うか━━━━━!

 

「ああ、せっかくだ。頂くとしよう」

食べることにした。食材を無駄にすることは正しいことではない。そして食わず嫌いも正しくないと思ったからだ。

 

スプーンを手に取り、私は目の前の地獄の如き赤と向き合った。まるで気分は看守と相対する時のようだった。

「━━━いただきます」

 

私はこの世の地獄を一掬い、口へと運んだ。

瞬間、口と脳、魂まで焼くマグマの如き辛さが私を襲った。異常な如き辛さが、私の中の水分を急速に失わせる。汗が噴き出て止まらない。

「(なんだ、この異常なまでの辛さ━━━!)」

 

その先に私は光を見た。辛さという痛覚により全身を焼かれている、そこで私は一つのオアシスにたどり着く。旨味だ。辛さを打ち消すほどの盛大なる旨味が私に救いの手を差し伸べた。

...しっかりと飲み込み、私は一言キレイに告げた。

「━━━美味いな」

「そうだろう?」

キレイは満面の笑みでそう返した。

 

「ああ、見た目では地獄のようだったが...やはり見た目で判断をするのは正しくなかった」

その後、私は食べ終えて片付けをした。

 

「この麻婆豆腐を皆にも振る舞おうと思うのだが、ヒロ君はどう思う?」

「私は美味しいとは思うが、あまりにも辛すぎる。全員が食べるにしては向かない料理だ。提供は控えるべきだ」

「...そうだね。そうするとしよう」

 

その後は他の少女達も来て、アリサの状況に皆驚いていたものの、全員が全員それぞれ久しぶりのまともな食事にありつけていた。

 

「ねえキレイちゃん、アリサちゃんが食べてた料理ってボクも食べてみてもいいかn「やめろエマっち死ぬぞ!?」う、うん...?」

ココが思わずストップをかけた。

 

「...私は、恵まれていたんだね。いつもの食事というものがここまで有難いとは思ってもみなかった」

しみじみとレイアが呟き。

「...美味しい」

黙々とナノカが食べ進み。

「美味しいね、ヒロちゃん」

ノアがそう微笑んだ。

 

「久しぶりのまともな食事ですわ〜!」

「久しぶりって1日とちょっとじゃないですか?」

「わたくしにとっては久しぶりなんですの!」

ハンナとシェリーが喧嘩していた。

 

「あー...まともな食事が身体に染み渡る〜...!本当にありがとうねキレイちゃん...!おじさん、今度お手伝いするから!」

『おいしかった。後はデザートを寄越せ』

ミリアとアンアンが礼を言っていた。

 

「メルル君。これをマーゴ君に頼めるかな?」

そう言ってキレイはメルルにあるものを手渡す。

「かぼちゃのポタージュだ。今のマーゴ君ならこのくらいなら食べられるだろう」

メルルは目を見開き、笑顔を見せた。

 

「...はい!わかりました。きっとマーゴさんも喜ぶと思います!」

こうして、牢屋敷初めてのまともな食事にありつき、全員が笑顔を見せていた。このささやかな幸せを噛み締めて、牢屋敷の2日目の終わりを告げたのだった。




【本日の処スノート:追記】
言峰キレイにより牢屋敷の食生活が改善された。マーゴの事件が起こって暗い雰囲気もいくらか和やかになったらしい。そしてキレイの魔法も判明した。とてつもない魔法だった。前回の処スノートで書いたことは撤回しよう。嘘はついていなかったし独占してもいなかった。
後、あの麻婆豆腐は美味しかった。また頼むとしよう。
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