「「「「耐えた!?」」」」
「...流石ヒロちゃんだね」
「サッカーしよう!!」
朝の食堂にて早々に、ボールを小脇に抱えた蓮見レイアがそう言った。
急に何を言い出してやがりますの!?や、ふざけてんのか!という言葉が聞こえつつも彼女は続ける。
「先日の事件は痛ましいものだった。キレイくんやメルルくんの初期の明確な処置と、栄養のある食事によってマーゴくんは快方へと向かっている。しかし!私としては先日の事件は私たちの絆が不足していたからこそ起こったと考えた!」
回りくどく、演技っぽくレイアはそういった。
「そこで、だ。私たちは今一つのチーム競技を共に行うことで絆を深めたい!どうだろう、私と共にサッカーをやってはくれないか!」
ふと、レイアの目線がある一定方向に向いているのが分かったので、そこを見ると...言峰キレイだ。いい笑顔だった。
「(十中八九、キレイがこの案を出したのは確実だ。だが何故だ...何故キレイはこの案をレイアに渡した...!?)」
困惑している中、少女達は分かれた。久しぶりにスッキリ運動がしたい者、まあやるなら良いかなって思う者、そもそも運動をしたくない者、レイアの指示に従いたくない者とそれぞれが別の理由だった。
『わがはいは動くのが嫌いだ』
「なんでおめぇの指示に従わなきゃならねえ...!!」
特に夏目アンアンや紫藤アリサが拒否派として目立っていた。アンアンにはミリアが、アリサにはキレイが対応した。
「アンアンちゃん、だったら監督をやってくれないかな?レイアちゃんにも聞いたんだけどマーゴちゃんは怪我してるから監督として応援をして貰うんだって。だからアンアンちゃんには監督として応援して欲しいなぁって」
『それなら、いいだろう』
「アリサ君。これはチャンスとも呼べる」
「もう口車には乗らねえぞ言峰」
「まあ聞きたまえ、君がレイア君を気に入らないのは分かる。だがもし、チーム分けにより君がレイア君の敵となれば、その鼻っ柱を折ることができる」
「......悪くねえな」
それぞれの説得もあって、二人は参加に移行。他もなぁなぁで参加することに決まった。
「ではくじ引きをしよう。監督をマーゴくんとアンアンくんに分けて、それぞれの色がついたチームになる」
それぞれがくじを引き、メンバーはこうなった。
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監督:夏目アンアン
遠野ハンナ
二階堂ヒロ
橘シェリー
蓮見レイア
佐伯ミリア
城ヶ崎ノア
監督:宝生マーゴ
氷上メルル
言峰キレイ
黒部ナノカ
沢渡ココ
桜羽エマ
紫藤アリサ
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「人選に悪意を感じるんだけど!?誰も不正してないよね!?」
「どうしたのココちゃん!?一人で大騒ぎして!?」
約一名が大騒ぎしていたが、チームが決まった。
「ああ、ちなみに会場は牢屋敷前、昼の自由時間にやる予定だ!後ルールはサッカーと同じだが...全員、魔法を使っていいことにする!」
少女達が一斉に唖然とした。魔法あり...レイアはそう言ったからだ。
「待てレイア。君は魔法を見せびらかすのに反対側の立場だった筈だが、どういう風の吹き回しだ?」
私がそう言っても、レイアは余裕だった。
「そう、私は今までそう言っていた。だが私は気がついたんだよヒロくん。どんなに周りが魔法を使っていようとも、私の輝きは誰も止められないとね!」
そう言って高らかに笑った。
世にも奇妙なサッカーが始まろうとしていた。
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「それでは!これより作戦会議を始める!」
レイアがそう宣言する。
「ではまずはポジションから決めよう!私は勿論FW(フォワード)をやらせて貰うよ!異論はないね?」
勝手に進めたが、確かにレイアの身長や運動神経からしても適任そうだ。ここは言わないでおこう。
「はいはーい!じゃあシェリーちゃんがキーパーをするってことで!ゴールから投げて点を決めてしまいますよ!」
「全員怪我どころじゃ無くなりますわ!却下!」
「そんな〜...」
シェリーがGK(ゴールキーパー)をしたいと言ったが最もな意見でハンナが却下した。しかし意見があるので口を挟んだ。
「いや、シェリーにはGKをして貰おう」
「本気で言ってますの!?」
「ああ、このサッカーにおいては魔法が認められている。橘シェリーの【怪力】においてこれ以上の適任はない。頼んだぞ、シェリー」
相手の魔法の正体が掴めないが、質量を増やす魔法や勢いを増す魔法を用いる者がいてもおかしくはない。それも加味して適任とする。
「任されました!どんなボールも私の【怪力】で受け止めます!」
「握り潰さないかが心配ですわ...えっと、キーパーの近くにいるポジションってなにがありますの?」
見張り役としてハンナが行おうとしている。意外な人物がそれに答えた。
『であればDF(ディフェンス)だ。ゴール近くで球を止める役割を持つ。それで良いか?』
アンアンがスケッチブックにそう書いた。
「え、ええ!守ってやりますわ...!!」
ハンナは気合を入れていた。
私はそれに付け加えた。
「であれば、ノアもDFにするべきだ」
「ノアがハンナちゃんと同じ奴をやるの?」
ノアがそう聞いてくる。
「ああ、適任だとも。ノアの魔法は【液体操作】絵による防御面の厚さが期待できる。今回は好きにお絵描きして良い。期待してるぞ」
ノアにそういうと笑顔で言った。
「分かった!ノアいっぱい絵を描いて、ボールを止めるんだね!」
「ああ。ではミリアは私と一緒にMF(ミッドフィルダー)をやってもらおう。構わないか?」
するとミリアは少しおずおずと言ってきた。
「MFって...何...?」
レイアが意気揚々とミリアに説明する。
「簡単に言えば、中間地点、地味だが最も重要な役割と言えるよ。DFからボールを受け取り、できる限り前に運んでFWに回す。チームの潤滑油としての役割だ。期待しているよ」
「...大変な役を任されちゃったなぁ...でもおじさん、頑張るからね!絶対に足引っ張ったりしないから」
「ああ、共に頑張ろう」
こうして、ポジション分けが終わった。レイアが纏めた。
「ふむ...即席のチームにしては良いバランスだ。シェリーくんが怪力でボールを受け止め、その暴走をハンナくんが手綱を握り、ノアくんが魔法でそもそもの守りを固める。そして周りをよく見るミリアくんにヒロくんが繋いで...私が点を取りに行く...!!完璧なチームだ!」
レイアの説明に、私も心の中で頷く。くじで引いたにしてはかなりのバランスの良さで固められている。後は相手チームが如何なる魔法を覚えているか、それにかかっている。
そこで、アンアンがスケッチブックを書き込む。
『わがはいの魔法は【洗脳】だ。納得させれば相手を命じた通りに動かせる。問題や混乱が起これば、わがはいの指示を聞け』
これまた強力な魔法だと思った。
「ああ、助かる。だがその魔法は危険だ。日常生活では使わないように、できるな?」
アンアンはこくこくと何度も頷いた。
「さて、では...勝ちに行くよ!みんな!!」
おー!という数人の掛け声と共に、私たちは昼の時間を迎えていた。問題ない。きっとこのチームなら勝てるはずだ。
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【幕間】
「そういえば、チーム名を決めていなかったね。ではここは私からレイア十二勇士などはどうだろうか!」
レイアがふとそう言った。
「いえいえ!ここは妖精國でどうでしょうか!」
シェリーがそれに続いた。
「12人もいませんしなんで妖精になってますの!?しかも国!?...私は思いつきませんけど...」
ハンナは突っ込んだものの止める手段がない。
「ドムス・アウレアとかどうかな?」
「なるほど、ネロ皇帝の作り上げた宮殿か」
ノアの発言にレイアが発言する。
『夏の夜の夢』
「シェイクスピア!?夏目漱石じゃなくて!?」
アンアンが書き込み、ミリアがそれに突っ込んだ。
「(大丈夫かこのチーム)」
一気に不安になってきた。
【本日の処スノート】
レイアの発言により急にサッカーをやることになった。下手人は当然キレイだろうが、何を考えている...?
ひとまずは試合に集中することにする。やるからには勝利を掴む。これが正しいはずだ。
チーム的にも問題ない。勝てるはずだ。
...死ぬほどバラバラだが。