「あ、ありのまま今起こったことを話すぜ...少女達がわちゃわちゃする日常を眺めようとしたら急にサッカが始まった...!」
「ヒロちゃんが死なないから皆かなり精神的な余裕もあるもんねー。後絶対麻婆サッカーやりたくて言ったでしょ」
「サッカーですか...では私はエマとメルルのチームを応援しましょう」
「が、頑張ってくださいあっちの私...!大魔女様が応援してるんですから...!!」
「......楽しそうだな、みんな」
そうして、全員が昼の自由時間、食事を摂って牢屋敷前の扉を通った。
それぞれがしっかりと実った畑に出迎えられ、まっすぐ進む。
全員がそれに目を取られつつ更に真っ直ぐ進むと...全員が全員目を見開く結果になった。
そこにあったのは、立派なサッカーのフィールドだった。
しっかりと草が切り揃えられ、フィールドの線は薄く掘られ土が見えるようになっている。
木枠と蔦のネットで作られたサッカーゴールも大きく頑丈で、ベンチもしっかりと日の光を遮る屋根さえ付けられている。
「(こんなこと誰がやった...!?)」
驚く私を他所に、全員がそれぞれ反応していた。
「マーゴさん、こちらに座ってください」
「ありがとうメルルちゃん。それにしても、誰が作ったのかしら?こんな立派なサッカー場なんて」
「さぁ...?昨日の朝とかには、なかった筈です」
メルルとマーゴがそんな会話をする中。レイアが全員をベンチ前に集める。
「みんな、今日は集まってくれてありがとう!この試合で、私たちの絆を深めよう!!」
「言ってろ!おめぇのその高い鼻へし折ってやる!」
その発言にアリサが噛みついたりもしたが、全員がコートに並ぶ。そうしてレイアが高らかに宣言する。
「私たちは【妖精國・レイアウレア十二の夜】全員の想いを一つにしたこのチームは無敵!かかってくると良い!」
「(くっ、相手チーム全員の目が痛い...!!)」
相手チームが(コイツら正気か)という目でこちらを見てくる。私とハンナは頭を抱えている。他ミリア以下は全員自慢気だった。
特にエマとキレイ...!!心配の目でこちらを見るな!
結局の所、全員が全員譲ることなくチームは決裂しかけていた。
そこでミリアの金言
「全員の案を一つに纏めるのはどうかな?」
その一言で決まったのが先程のチーム名だ。正しくはなかったが、渋々私は認めた。
そんな空気の中、キレイが語る。
「ではその威勢の良さ。我等【サバイブ11】が相手をしよう。このチームは私の冷静な戦術と全員の有り余るガッツが組み合わさった、まさに生存・切り抜ける力に優れたチームだ。ちなみに数字は英語で読んでくれて結構です」
「(サバイブイレブン......!!)」
「どうしてどっちのチームも数を守らないんですの〜!?」
さらに続けて、キレイが言った。
「━━━キックオフだ。歴史に残る試合をお見せしよう」
こうして、全員が持ち場についた。先手は【サバイブ11】なのだが...驚くべきことが起きた。
「━━━全員FWだと!?」
それは、朝に遡る。
━━━━━
【サバイブ11作戦会議】
「城ヶ崎ノアの魔法は【液体操作】それを最大限に活かす場面はDFにあると思うわ」
「レイアっちって多分目立ちたがり屋じゃん?なら絶対FWやると思うんだよね〜」
「じゃあそこ二人は決定として...橘は手が使えるGKか」
「じゃあ、ハンナさんは近くにいるでしょうし...ハンナさんもDFでしょうか...?」
「じゃあ残りの二人がMFになると思うけれど...ヒロちゃんのことを知るエマちゃん?どう思うかしら」
「うん、ヒロちゃんは秩序とかそう言ったものが大好きだから。こんな感じでバランスを取ってくると思うから間違いないよ!」
それぞれが意見を出し合って、相手のチームを考察していく所から始めていた。そこでキレイの一言。
「バランスの良いチームは崩しにくい。では、私に一つ策があるが、聞いてくれるだろうか?」
━━━━━
「━━━GO!牙を突き立てろ!!」
GKのキレイが全員に向かって叫ぶ。
「よろしく、ココちゃん!!」
まずエマがココに向かってパス、ココは受け取り進む。
「ヒロくん、ミリアくん、ここで止めるよ!!」
「言われずとも!」
「わ、分かった!」
こちらに進んでくるココを取り囲むようにして私たちが迫る。しかし、ココは冷静だった。
「見えてるっつーの!パス、ナノカ!!」
まるで【周囲が見えている】かのように穴を抜いて、ナノカへとボールを蹴り出した。
「なっ、抜かれた!?」
レイアが驚愕している間にもナノカは冷静に蹴り進む。
「ストップだよ、ナノカちゃん!」
「ここから先は通しませんわ!」
ノアとハンナが立ち塞がる。周囲にはノアが描いた絵が浮かび上がり、ボールを行かせまいとしていた。
「.,.残念だけど、私はボールの未来を【見て】いるわ」
ナノカは天高くボールを蹴り飛ばした。絵が飛ぶよりも高く、二人のブロックを超えた先のメルルの元へと飛んだ。
「えっとっ...えいっ!!」
メルルは目を瞑り、ボールを頭で受け止め飛ばす。その先はゴールだったが、シェリーが立ち塞がる。
「甘いですよメルルさん!やー!!」
そう言ってシェリーは軽く弾き飛ばす。ボールはゴールに入ることなく別方向へと飛んだ。
「はっはっは〜!シェリーちゃんは無敵「爪が甘いんだよ!!」あっ...!?」
弾いた方向には、紫藤アリサがいた。アリサはそのボールを勢いよく弾き飛ばす寸前で
「橘シェリー、【受け止めろ】」
ベンチのアンアンからの声で、しっかりとアリサのボールを見据え移動して、受け止めた。
「...ちっ!!」
「危なかったですねー!」
アンアンの【洗脳】がなければ、反応ができずに点を取られていただろう。
「シェリーさん、次からは受け止めてくださいまし!」
「分かってますよぉ...」
ハンナの注意を受ける中で、シェリーはあまり力を込めずに投げる。その球はミリアの足元に飛ぶものの、そこにはすでにナノカがいた。
「残念だけど通さないわ、佐伯ミリア」
「えっちょナノカちゃん!?」
ミリアのボールを必死に取ろうとし、それをミリアがどうにか防ぐ。一進一退の攻防の中、間に挟まったものがいた。
「貰いますわ!」
「!?」「ありがとうハンナちゃん!」
遠野ハンナはその小柄な体と【浮遊】を用いて攻防から割り込み、ボールを奪取した。
「ヒロさん!お願いします!!」
そうして球を蹴り渡された私はレイアに叫ぶ。
「後はガラ空きだ、頼んだぞレイア!」
「任された!!キレイくんは私が抜く!」
全員が全力で戻ろうとするものの、それに意味はない。私はレイアに対して飛ばしやすい位置でパスをした。
「さあ、これで一点だ!!」
そうしてゴールの端へと綺麗にシュートを行う。キレイは動こうとしたらしいが【視線がボールに向かずに】ゴールを許してしまった。
「...なるほど」
そう静かに呟くキレイを他所に、私たちのチームが先手を取ることになった。
「良くやってくれたレイア」
そうレイアに言うと
「いや、今回はみんなのおかげだ。全員がFWという異常事態にも対応した。今回で言えばアンアンくんが一番活躍したんじゃないかな?」
それを聞いたアンアンは顔を赤らめながら
『礼には及ばん』とスケッチブックで返答した。
「確かに、あのまま自力で反応しようとしても無理でした。次はちゃんとボールを取るようにしますね!」
「そうしてね...?あ、ハンナちゃんもナイスプレイだったよ。あの状況でよく突っ込めたね」
「ボールが浮いていましたし、ぶっつけ本番でしたがなんとか出来ましたわ...!」
そう言って声を震わせるハンナだった。
「むー...あんまり活躍できなかった」
そう言ってノアはむくれるが
「次頑張ればいい。君の魔法は守りの要だ」
「...うん。次頑張る」
そう言って機嫌を直した。
「では、このまま快勝と行こうか!」
そう言ってまた相手の攻撃ターンとなる。今度はメルルがエマにボールをパスして、エマが進む。
私がエマに立ち塞がりボールを取ろうとすると
「NOだ!桜羽エマ、ゴーホーム!!」
そう叫ぶ声が聞こえると。
「ごめんねヒロちゃん!じゃあね!」
そう言って方向転換をして自身のゴールへと突き進んで行った。その間にも他のメンバーは前へ前へと進む。
「待て、エマ.....!!」
「待ちたまえヒロくん!」
レイアの静止も振り切ってエマを追いかける。そうしてエマはゴールに向かってシュートを行った。
「よろしくねキレイちゃん!!」
「━━━任された」
そのシュートをキャッチし、ノータイムで私たちのゴールへ向けて投げ込んだ。
「くっ、誘い込まれたか!!」
「えへへ、ヒロちゃんはこうすればボクを追いかけてくるってキレイちゃんが言ってたからね!」
その見透かされたような発言に思わずまた心が波風立つ。しかもそれがエマとキレイにとすればかなりのものだった。
しかし、やっている場合ではない。私はすぐさま自分のチームの方へと戻る。
投げられた球は前線にいるココへと飛び、ココが空いている所へとシュートをするものの、ノアの絵によって阻まれる。
「えへへ、今回は通さないよ」
そう言って自身がボールを踏もうとした所で、横からナノカが掠め取っていく。
「喰らいなさい、橘シェリー」
そのままシェリーに向けてシュートを行う。当然シュートをキャッチしようとしたシェリーだが
『罠だ!受け止めるな!』
アンアンの静止する声が響いて、シェリーは思わず弾いてしまう。そこにまたアリサがシュートを行い、ゴールした。
「っしゃあ!!!」
ガッツポーズを行って喜ぶアリサが戻ってきて、相手チームがそれぞれハイタッチなどを行っている。
ふとベンチをみれば完全に混乱している様子の夏目アンアンと、楽しそうに笑っている宝生マーゴがそこにいた。
「(マーゴの魔法か...!!)」
マーゴの魔法によりアンアンの声を真似して指示を混乱させたのだろう。それにより点を貰ったわけだ。
「(次こそは...)」
こうして白熱したサッカーは、自由時間が終わる寸前まで続いた。
━━━━━
試合が終わり、得点を見る。
【サバイブ11】3:3【妖精國・レイアウレア十二の夢】
結果は同点に終わり、決着は付くことはなかった。
アンアンの【洗脳】をマーゴが真反対のことを言って打ち消したり、紫藤アリサが白熱してボールを燃やした球を打ち出したりなど色々あったが、全員が全員活躍していた。
「...とても良い試合だった!」
レイアがそう爽やかな顔でそう言った。
「今日はみんなありがとう。きっとこの試合は皆が息を合わせて勝利に向かって行ったからこその楽しさになったと思う。どうかまた、共に行おうじゃないか!」
それを〆として、全員が楽しそうに笑い合って、牢屋敷に戻っていく。ここまでして清々しい気分なのは、私も初めてだった。
【本日の処スノート:追記】
結果的には引き分けで終わってしまった。ここまで伸び伸びと運動をしたことがどうやら全員にとっても良い影響になったようで、全員が全員笑っていた。マーゴも回復したようで何よりだった。
明日こそはノアの絵を描く場所を探そう。