愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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【証拠品ファイル】
氷上メルルの死体
ノアとアンアンの檻房で発見された遺体。検死によると死後20分〜1時間。死因は心臓の刺し傷...と、トレデキム。複数回に喉と心臓を刺された。

ココの証言
ココが水精の間にいたのを知っているのは多くいる。魔女について詳しい者がいれば、金庫を開けられるはずである。

レイアの証言
事件発生の40分前、ガラスの割れるような小さな音がしたらしい。

睡眠薬の瓶
現場に散乱したガラス片の正体。青く甘い匂いがする。

拘束された二階堂ヒロの写真
二階堂ヒロは現場に倒れていた。
恐らくは、今回の事件の私の切り札となる。




6日目-魔女裁判(前)

牢屋敷の探索の中で、唯一開かなかった大扉。出入り口には看守が付き、ステンドグラスに囲まれ、一つの杭を囲むように、一人一つの席がある。

キレイは自分の番号に付き、他の少女も同じように、同じ番号の席に着く。皆の見る目は、最も疑わしい存在のヒロに向き、ヒロは全員を睨み返す。

 

そんな一触即発の空気の中、ゴクチョーの説明が終わると同時に、レイアが語り出す。【視線誘導】により、視線がレイアに集まった。

「ゴクチョー、みんなに魔女裁判を始める前に、提案があるのだが、良いだろうか」

「何ですか?こちらは早く終わらせたいんですがねぇ」

 

ゴクチョーは面倒そうに返すが、レイアは気にしない様子でこう続けた。

「この裁判、余りにもヒロくんに対して疑いが向きすぎる。それでは正しい議論進行はできないと考えた!よって、私は正しい議論進行を行うために......被告人、二階堂ヒロの無罪を証明するために弁護しようと思う!構わないかな、裁判長!」

「ゴクチョーです。別に構いませんよ?」

 

そう高らかに宣言する。周囲の響めきが起こる、特に二階堂ヒロは理解できないような顔をしていた。まるで何を考えているという様子だ。

一方、蓮見レイア。

「ふっ、決まった。周囲から疑いを向けられている少女に救いの手を差し伸べる主人公......!」

とても楽しそうだった。

 

「(では、始めようか。隣人を疑い、隣人を我々の手で死地へと向かわせる魔女裁判を。私はサポートをして、議論を円滑に進めるとしよう)」

ゴクチョーが、高らかに宣言をする。

「それでは、魔女裁判開廷です!」

 

━━━━━

「......つーかさ、【現行犯】なんだし、議論する必要なくね?そこの現場に倒れてたヒロっちがさぁ」

開始時、ココがそういう。そこにはレイアが毅然と反論した。

「いや、確かに状況的に考えればヒロくんが犯人だろうが、事実を一つ一つ見ていけば、別の可能性が見つかる可能性があるからね」

 

「その意見に賛成です!一体どのように事件が起こっているのか整理することで、見える可能性はありますから!」

シェリーがレイアの意見に乗っかった。

「では、まずは現場の状況を私から説明させてもらうよ。現場はノアくんとアンアンくんの部屋、今朝にスプレーが塗られて真っ白となった部屋だね。

 

被害者は氷上メルルくん。発見当時、現場には二階堂ヒロくんがいた......それで間違いはないね?」

頭を抱えつつ、ヒロが返答する。

「......間違いないよ。私はそこにいた」

それを聞いたレイアが、全員にある写真を送る。

 

「これは、ココくんがその時撮った現場写真だ。これを見れば分かってくれると思うが、周囲に他の人の足跡はなかった......」

ココの写真は、ヒロの体が見切れてはいるが事件現場を綺麗に撮っている。

「次に凶器だ。これはメルルくんの胸に刺さっていた剣だろう」

 

「その剣の件については、私から。それは牢屋敷の地下冷凍室の金庫に仕舞われていたものだ。魔女を殺す薬と共にね」

口を挟むと、周囲がざわつき始める。ココから言っちゃうの!?という視線が来たがスルーしておいた。

「詳しく、説明してもらえるかい?」

 

レイアに聞かれ、キレイは話しだす。

「ああ、地下は水精の間に隠された隠し階段からエレベーターに乗ることで移動が可能だ。通気口を通って冷凍室に向かうことができる。これについては二階堂ヒロなど、様々な人が沢渡ココが水精の間に入り浸っていた様子を確認しているため、調べればわかると考えられる」

 

キレイは続ける。

「さて、ここで質問です二階堂ヒロ。魔女といえばでお馴染みの、セイラム魔女裁判が始まった日付は何年の何月何日?」

ヒロは困惑した様子で尋ねる。

「......その質問に何の意味がある?」

 

「良いから答えたまえ。それで分かる」

ヒロはしばらく頭を悩ませる様子を見せて、答えた。

「...1692年までは分かるが...」

「なるほど、ちなみに先程の問題の答えが【魔女を殺す薬】と凶器の剣が入っていた金庫のパスワードだ。魔女に詳しい者なら少し試せば開けられるようなものだね」

 

ひとまずこの情報で確認した。嘘を言っている様子はない、【切り札】も合わせて、二階堂ヒロは無実であると確信を持った。

レイアはそれを聞き終え、続ける。

「なるほど、情報提供感謝するよ。最後に、メルルくんの死体についてだ。勝手ながら、少し体を調べさせてもらったよ」

 

そう言って、体を見た結果を伝え始めた。

「死体の状況からいって、死後20分以上は経過していた。亡くなったのは1時間以内だろう。まあ、おおよその時間だけどね」

ヒロがその言葉に反応する。

「【検死】したのか?」

 

レイアは答える。

「ああ。以前、役作りのときにちょっと勉強したことがあってね。あくまで素人の真似事だが、間違っていないはずさ。死因は見ての通り胸の刺し傷だろうね。あとこれはまだどういうことなのかわかっていないんだが......彼女の瞳は、目が鉱物のように変化しかけていたみたいだ」

 

キレイはある人物に話を振る。

「ココ君、説明」

「あてぃしに今振る!?......それ、【魔女】が死ぬとそうなる、というか死ぬにはそうするしかないって奴。多分剣と一緒に犯人が持ち帰ったんでしょ」

 

続けて話を振る。

「ゴクチョー、説明を」

「私もですか......。まあ説明は必要ですしね。メルル様の眼は、魔女の不死性を失わせる薬の副作用によるものですが......この変化具合からいくと、メルル様が胸を突かれたのは薬が効く前......恐らくは、その剣の刃に塗っていたのでしょうね。

 

皆さんが見つけるのは、【薬を刃に塗って、胸を刺した人物】と認識していただいて大丈夫です」

「なるほど、説明感謝しよう」

そう言ってキレイは沈黙する。

 

「......さて、私が調べた現場の状況としてはそこだね。状況からして犯人と言えるのはヒロくんしかいないが、キレイくん、意見はあるかね?」

このままでは弁護どころか犯人だと導くことになってしまうのでキレイにパスを回した。

キレイはふむ、と考えて...

 

「死体発見時の状況が聞きたい。頼めるかね?」

レイアは表情を明るくし、答える。

「ああ、もしもヒロくんが犯人でないとしたら、おかしな点が見つかる筈だ。では、私から語るとしよう」

そうして、発見時の状況を語り出す。

 

「私たちは奥の部屋で話をしていてね。そこには私を含めた4人がいた。そうだね、ミリアくん」

ミリアは頷く。

「う、うん。レイアちゃんとココちゃんと、ハンナちゃんにおじさんの4人がそこにいたよ!」

 

マーゴもそれに続く。

「私とナノカちゃんもその時、自分の部屋にいたわ」

ナノカも同意をする。

「......ええ。間違いないわ。私たち全員が、その時城ヶ崎ノアと夏目アンアンの部屋の方からガラスが割れるような音を聞いている」

「そうして駆けつけたら、ヒロちゃんが倒れていたの♡他には誰も、いなかったわね」

 

「一つ、いや二つほど聞きたい。ナノカ君とマーゴ君は、いつから部屋にいたのかね?」

「...30分くらい前よ」

キレイの問いにナノカが答える。

「では、その間廊下を通った人物などはいるかね?」

「それはないわ。通った人物は見えなかった。これでいい?」

 

今度はマーゴが答えた。それらの情報を自分で整理して、ヒロがそれをやったのならそうなり得る状況を考えて話すことにした。

「......なるほど?つまりヒロくんが犯人であれば、『メルル君を殺した後20分以上そこにいて、倒れた状態のままガラスを割った』という状況になるが、それで合っているかね?」

 

全員が全員、頭に疑問符を浮かべている。

「...あれ?そう考えたらおかしなことになりませんか?どうしてそんな音を鳴らす必要があるんでしょう?わざわざ見つかりに行ってませんか?」

シェリーがそう口にした。それにヒロは反応し、チャンスだと言うように語る。

 

「ああ、その通り。おかしなことなんだ。シェリーのいう通り、私が犯人でいたのであれば、そのようなことはしない。状況的に不自然な状態になってしまう」

そこにレイアが勝機を見出し、語る。

 

「その通りだ!シェリーくんにヒロくんの言う通り、ヒロくんが犯人であれば、そんなことをする必要がない。つまりこれは、犯人がヒロくんを陥れる為に仕組んだ、偽装工作と弁護側は主張するよ!」

その言葉を聞いて、キレイは一息つく。

「(ふむ、これで二階堂ヒロ以外の人物に疑いをかける土壌ができそうだ)」

 

反撃の芽を潰すべく、更に語る。

「二階堂ヒロが落とした、という線も考えにくい。倒れてガラスビンを落として、部屋中に散乱したあのガラスがそれであったと言うのなら、何故20分もそこに立っていたかという疑問が残る」

全員それぞれが、確かにという空気になる。

 

また、ヒロが語る。

「そもそもそれは、ガラスが割れた音だったのかな?」

「では、ヒロくんは何か別のものであると分かるのかな?その音の正体が!」

レイアの問いに、ヒロが答えた。

 

「レイア、君は蓄音機というものを知っているかな」

「あ、ああ。使ったことはないが、見たことはあるし、知識としても知っている。それがこの事件になにか関係があるというのかな?」

もちろん、とヒロは言った。

 

「それは、テクノロジーの発達と共にその姿を変えてきた。【録音装置】現代ではスマホにも標準で搭載されている機能だよ」

「...なるほど、確かにココくんたちとスマホの機能を確かめている時に、その機能があるのを確認している。確かにそれならガラスの音を鳴らすことも可能だね!」

レイアがそう納得した。

 

...何故だか、ヒロ君の視線がこちらをずっと向いている。「何を企んでいる?」と言うように。そのような目を向けられる筋合いはないはずなのだが......。

そうしていると、ミリアが声を上げる。

 

「ちょっと待って欲しい......かも。録音したとは言っても、メルルちゃんのスマホが現場には【なかった】んだよ。それをできる機材がないと、無理じゃないかな」

ヒロは少し考えて、可能性を提示した。

 

「......もしかしたら、犯人が持ち去ったのかもしれない。もしくはメルルが最初から持っていなかったか......」

「━━━それはおかしいよ!」

ふと、声を上げる者がいた。

 

 

「いや......メルルちゃんは、スマホを持っていたはずだよ。殺される直前まで」

こうして、議論は進む。

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