愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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【アンアンのスケッチブック】
みんなのアリバイ
「ノア、わがはい、エマ」
3人は2階に、死体発見の30分前に合流。直後エマに電話がかかり通話。
「ハンナ、ココ、ミリア、レイア」
死体発見の1時間前に合流。ミリアとレイアの監房にいた。部屋から出ていない。
「シェリーとアリサ」
2人はラウンジに、死体発見の1時間前からずっといた。
「キレイ」
午後は一人ずっと外で作業をしていた。外に慌てて出てくるエマを死体発見の直前に視認している。
「ナノカとマーゴ」
ナノカは死体発見の30分前、医務室からラウンジにやってきて合流。同じタイミングでマーゴとエマも合流。
その後、ナノカとマーゴは自分たちの監房へ戻り、死体発見まで部屋を出ていない。


6日目-魔女裁判(中)

エマのその発言に、ヒロが思わず歯噛みする。その様子を黙ってキレイは見ている事にした。エマが語り始める。

「メルルちゃんの死亡推定時刻は、死体発見の30分くらい前。間違いないよね?」

「正確には【20分以上前】だ。私が保証する」

 

レイアのその答えに確信を得たエマが語る。

「なら、やっぱりヒロちゃん以外にメルルちゃんを殺せた人物はいないのかもしれない...」

「な、なんだって!?」

レイアが驚愕する中、エマが話す。

 

「ボクは、メルルちゃんの死体が見つかる【30分くらい前】2階にいたんだ。そこにはノアちゃんとアンアンちゃんがいて...」

「うん!エマちゃんとバイバイしたね!」

『間違いない。その後わがはいたちはずっといた』

エマの発言に、アンアンとノアが同意する。

 

「ボクが二人と別れてからすぐ、メルルちゃんから電話がかかってきたんだ。そこで少しだけ、メルルちゃんと通話したんだ」

その説明を、シェリーがまとめる。

「つまりエマさんの証言が正しいとすれば、レイアさんの検死の結果と合わせて、メルルさんが死んだのは20分から30分の間、ということになりますね!」

 

エマは続ける。

「うん、そうなんだ。その後ボクはラウンジでシェリーちゃんたちに会っていて、その後にマーゴちゃんとナノカちゃんが来たよ」

その発言にそのときラウンジにいたアリサ含めて、エマの証言に出てきた全員が同意する。

 

「その後、アリサちゃんとシェリーちゃんがラウンジに残って、ボクは外に出たんだ。そこではキレイちゃんが作業をしてたよ」

その言葉にはキレイが証言する。

「ああ、確かに出てきたのを確認している。随分と慌てた様子だったから覚えていたよ」

 

マーゴもそれに続く。

「私とナノカちゃんは自分の部屋に戻ったわ。死体発見までの間、2人は一緒にいたの」

「......そして、レイアちゃんたち4人はみんな一緒にいた」

そこでシェリーが話をまとめた。

 

「つまり、みんな【アリバイ】があるってことですね!」

「......この中でアリバイがないのは......ヒロちゃん。キミだけなんだ」

しかし、それには毅然とヒロが反論する。

「いいや。そのアリバイの前提は、【メルルと話した】という君の証言に由来するものだ。その証言が【嘘】であれば、いくつかは成り立たない」

 

ヒロは少し考え、こう言った。

「そしてその筆頭は君自身......【30分前に死んでいた】という仮定が覆れば......君にだって犯行が可能となる」

エマはショックを受けながらも反論する。

「そ、そんな......!ボクは嘘なんて言ってない......!」

「なら、それを証明できるのかな?」

 

ヒロのその言葉に考え、思い出したように答える。

「......そうだ!【通話履歴】なら残ってるよ!死体発見の30分前に、電話をかけられた証拠だよ!」

ノアやアンアンも通話が来たことを証言し、エマはメルルの携帯に電話をかけてみることにした。

 

......携帯は、二階堂ヒロの方から鳴った。

全員の疑いが、一斉にヒロの方に向いた。レイアは決定的な証拠が出て驚いてしまっているし、一方ヒロは、エマが犯人と決めつけたような目で睨む。

...ここで、キレイは発言をした。

 

「少々、よろしいかね?」

隠してスマホを操作しつつ、全員の注目を集める。

 

「まず、恐らくそのスマホは二階堂ヒロが現場に倒れていた時からあったものと考えられる。現場にはいなかったから断定はできないが......少なくとも、ラウンジから懲罰房に拘束されている間は看守以外は触れておらず、懲罰房にはエマ君、レイア君、そして私しか来ていない。後ろで見ていたが、エマ君はヒロ君の汚れを拭いていたが、ポケット等に触れる様子はなかった」

 

ひとまず、事実を語る。桜羽エマそうして少女達を一望しながら、議論を動かすある人物にメッセージを送ると...反応して、語り始める。

「ふむ、ありがとうキレイくん。では弁護側は、可能性を提示させて貰うよ!犯行は、【30分よりも後】であったとね!」

 

全員の【視線】がまたレイアに集まる。ヒロはもちろん。他の少女も驚いた様子だった。

「ど、どうしてそんなことが言えるの?」

エマの問いに対して、レイアは自信満々に答える。

 

「ああ。死体発見の【40分ほど前】のことさ。私含め4人で集まって、スマホの機能を確認していたんだ。録音や配信の使い方を試している時にね。あのスマホは高性能で、立体音響などもできるみたいで物珍しくてね。ココくんと遊んでいたんだよ」

それにココが返す。

 

「ASMRとか、声だけ消す、みたいなこともできそうでさ?あのスマホ、オーバースペックってやつ?」

レイアが話を続ける。

「だから耳を澄ませていたら、微かな【ガラスの割れるような音】がしたんだ。私しか気がついていないようだから、気のせいだと思っていたけれどね」

 

「わたくしはべつに聞こえてませんでしたわ?」

「おじさんも......」

ハンナとミリアは不思議なように首を傾げる。

「だが、私はこれが気のせいではないと考えていてね。私の推理によれば、それは本当にビンが割れる音だと考えられる!!」

 

高らかにレイアが宣言した。全員がそれぞれ響めく中で、ヒロがその発言に乗っかった。

「つまりレイア。君は、その音が鳴った時間こそ......本当の犯行時間だったと言いたい、そういうわけだね?」

「ああ、その通りさ。それなら、ヒロくん以外にも犯行が可能となってくるからね!」

 

レイアは全員からの視線を浴びて気持ちよさそうにしていた。先程の送ったメッセージは成功と言えた。

「ちょっと待ってよ!でもボクは確かに30分くらい前に、メルルちゃんと電話で話したんだ!」

「じゃあエマちゃんは、どんなことを話したの?」

 

エマの反論に、ノアが聞くと...こう答える。

「......わかった。言うね。ボクが電話に出たとき、メルルちゃんは何かに追われるように慌ててたんだ」

エマは一息置くと、こう言った。

「メルルちゃんは、【ヒロちゃんに襲われた】って」

 

ヒロは特に驚愕した様子だった。

「なるほど、メルルくんはそう証言したんだね」

レイアは落ち着いた様子でエマに聞く。

「うん...だから...ボクは......!!」

シェリーはそれに反応した。

 

「......エマさん!せっかくなので、その時のことを教えてください!」

そこでキレイも発言を被せる。

「具体的に何と言ったか、まで教えてくれるかな?」

それを聞いたエマが頷き、証言する。

 

「ボクは、死体発見の30分前に、メルルちゃんから電話がかかって来たんだ。【医務室でヒロちゃんに襲われた】って...その後すぐに電話は切れちゃったんだけど、気になっちゃって...メルルちゃんを探したんだ。ヒロちゃんが何かしてしまったんじゃないかって......外に出て、その後直後に死体発見アナウンスが流れたんだ」

 

そのエマの発言に、異を唱える者がいた。

「待ちなさい、桜羽エマ。それはあり得ないわ」

ナノカは真っ直ぐエマを見据えている。

「ど、どうしてそんなことが言えるの?」

「私はその時、医務室にいたのよ。ラウンジに行く前に」

 

エマはその言葉に非常に驚いた様子だった。

「で、でも確かに、メルルちゃんは電話で医務室にいたって......!」

それをナノカが否定する。

「いいえ、桜羽エマ。私はあなたの言う30分前には、医務室にいたわ。【氷上メルルが医務室にいなかった】」

 

ヒロが、エマを問い詰める。

「君の言っていることははっきりと矛盾している。......まさか、私を犯人と仕立て上げるために?」

「違う!そんなこと...!!」

「......ま、まあまあ......!2人とも、落ち着いて......!」

 

二人が喧嘩し始めたのをミリアが止める。しかし、このままでは話は平行線だ。そこで、ノアがポツリと呟く。

「んー...。のあ、なんか変だと思うな。エマちゃんの言ってること」

「...まあそりゃ、黒部の話と食い違ってるしな」

ノアはアリサの発言に横に首を振る。

 

「エマちゃんは嘘つく必要も、さっきまでのことを【隠してた】必要もないよね?何で、そうしてたのかな......難しいね、のあにはわかんないや」

......城ヶ崎ノアには鋭い観察眼があるらしい、とキレイは認識した。そこで、一つの組み立てた論理をキレイは発言する。

 

「......その理由は後回しにしておこう。では、どちらの話も正しかったとすれば、どうだろうか?」

皆の視線がこちらに集まる。

「エマ君の言っていた証言、レイア君の推理した死亡時刻、どちらも正しかったとしたら、残っている可能性はなんだ?」

 

エマがそれに反応する。

「そんな......!でも、メルルちゃんと話したことと、レイアちゃんの推理には矛盾がある......!!」

ヒロが、そのエマの言葉に挟み込む。

「......嘘だね」

 

「そ、そんな......!ボクは嘘なんてついて......!」

エマの発言に、ヒロが返す。

「人の話は最後まで聞くべきだ。君は誰彼構わず通行人に吠えかかるバカ犬か?」

「きゃんっ......!?」

 

ヒロが、こう告げた。

「エマ、君が仮に嘘をついていないとしたら、それは、メルルが嘘をついていたのかもしれないよ」

「そんな、メルルちゃんが...!?」

「......なるほど、新しい視点だね」

 

さて、ここまで来れば犯人がわかってきた。そうキレイは考える。そのために、二階堂ヒロに答えを促すことにした。

「では、ヒロ君。どういったことか説明して貰うとしよう。氷上メルルが40分前に死んでいて、その後氷上メルルはエマと会話をしていた。それをどう説明つける?」

 

ヒロは深く考え込み、答えを出す。

「...犯人は電話をかけて、エマを証人に仕立て上げた。その時間まで、メルルが生きていたことにしたんだ。そうして私に罪をなすりつけた。それが可能だったのは、この中でただ1人しかいない」

 

ヒロは、自身の考えを語る。

「メルルのあの気弱な喋り方は特徴的だ。電話口とはいえ、相手の声を聞き間違えたとは考えにくい。本人が嘘をつく理由も、録音した音声相手に会話なども考えられない。なら、電話口でエマの相手を務められるのは、一人しかいない。相手の声帯を、完璧に模写することができる者......【モノマネ】の魔法使い......。

━━宝生マーゴ!君がメルルを殺した犯人だ!」

 

「......へぇ?」

宝生マーゴはニヤリと笑う。

「......面白いわ、ヒロちゃん。そんな不確かな情報で、私を犯人扱いするなんてね」

そういって挑発的に笑った。

 

「私としてはただ単に、推理を積み重ねた結論を言っているだけに過ぎない。反論があるのなら聞こう」

当然と言うように、マーゴは反論した。

 

「あなたの推理のほとんどは、みんなの証言に基づいているものよね?ならどうしてそこまで自信を持てるの?エマちゃんが嘘をついている可能性も、陥れる可能性も......【友だちだから信じてる】とでも言うのかしら?」

バカを言えと言うように、ヒロは鼻で笑う。

「まさか。それだけは絶対にあり得ない」

 

エマは酷くショックを受けていた。それには反応せず、ヒロは論理を積み重ね、その論理が犯人はマーゴと告げているといった。

それは嘘でしょう?とマーゴが一蹴し、嗤う。

...ここは、マーゴ側に着くとしよう。

 

「そもそもの話だ。事件現場の塗料は乾いていなかった。踏み入れた者の足跡がくっきりと写るようにね。そこにヒロ君とメルル君以外の足跡はない。今の所、君にしか犯行はできないと思うがね」

ヒロとマーゴ、そしてレイアがこちらを見て驚く。

 

「キレイくん!?こちらの味方の筈じゃ!?」

レイアの発言に、こう返す。

「私は誰の味方でもない。私は氷上メルルの無念を晴らすべく、真実を探究する為にいる。今は宝生マーゴに正当性があるためこちらについている」

マーゴはこちらを値踏みするように見て、肩を落とす。

 

「...本当のことを言っているわね。厄介だけど、だからこそ頼もしいわ、キレイちゃん。さあ、ヒロちゃん。どう反論するのかしら?」

ヒロは苦虫を噛み潰したかのような表情でこちらを睨む。

...そうして裁判は、佳境に入る。




(長かったので一区切りします)
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