愉悦少女ノ魔女裁判   作:保温と後光

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【タイガー劇場】
「メルルちゃん...こんなに沢山の......」
「うぅ...エマさん、その目で見ないで下さいぃ...」
「エマ、メルルをそんなにいじめないで下さいね」
「マズイです師匠!タイガー道場内の空気が悪いです!」
「よーし!それじゃあ皆でPC版のFateをやりましょう!さーて、久しぶりに埃被ってるPCを掘り起こさなきゃ!」
「おー!!私たち初登場の思い出の品ー!!」


11日目:団結...

マーゴの死から、数日後、私は食事を摂るために、食堂に訪れた。食堂の中には、他の少女たちも集まっている。

今日もキレイが作った料理が並び、良い匂いはするものの、全員あまり食欲が湧いていない。そこを加味しているのか、食べやすいメニューが並ぶ。

 

......あの事件の余韻が、たった数日で薄れるわけがない。私も食欲はないが、メニューが軽度なものなのもあって食べられた。

エマはシェリー、ハンナと共に食事をしているが。なんとか口に運んでいると言った雰囲気だ。

 

━━━結局、あの地下からは脱出経路は見当たらなかった。今ハンナたち3人がそれについて話し合っている。そう耳を傾けていると、倉庫を見つけたことも思い出した。屋敷裏手の、鍵のかかった小屋。それが事件終わりには開いていた。バックヤードであろうそれが開いていた。監視や規則も雑になって、混乱が起こっていると推測できる。

 

「諦めないで、脱出方法を探っていこう!」

そのエマの前向きの言葉に、腹の奥がカッと熱くなった。どの口で、君がそんなことをいうのか。......聞き耳をふと立てていたことに気がついたのは今だった。息を深く吐いて、小さくかぶりをふることで落ち着く。

「(今腹立てた所で、ストレスを溜めるだけ)」

 

私は意識を強引に引き剥がし、キレイからメニューを受け取り、席に着く。地下室のことを知っていたココが気になるも、魔法で知ったの一点張りで何も情報は得られなかった。

......今は、できる限り皆との交流をできるだけ絶ちたい。そう思ってできる限り全員と距離を置いてきた。

 

...ふと、アンアンとノアが仲良くしているのを見て、心臓が跳ねる。あの時から溝ができてしまい、どこかよそよそしい関係になったままだ。

「(......それでいい。私は、もう誰とも親しくなるべきではない。そうだ......私はエマを殺す。考えるのは、そのことのみだ)」

そう決意し、計画を立てているとコトリ、と食器を置く音と、刺激的なまでに悍ましい匂いが漂う麻婆が置かれていた。

 

「......どういうつもりだ。キレイ」

「何、サービスだよ」

ただそれだけ言って、キレイはアリサの横に座って共に麻婆を食べ進めていた。両者共に全身から汗を吹き出しながらも、スプーンを止めない。私も一口食べる。...どこか、エマへのストレスと燻っていた何かが軽くなる感覚がした。過剰摂取は正しくないが......今の私には必要だ。

 

...不意に近付いてきた足音に目を止める。そこにいたのは、レイアだった。物言いたげな表情をしている。

「......何か、私に用でも?」

気後れした様子を見せながらも、レイアが

 

「なんだか気分が悪そうに見えたんだ。だから少し、気になってね。もし具合が良くないようなら━━━」

「ふざけてんのかてめえ!」

レイアが何か言いかけたところで、皿が割れる大きな音と怒声が響いた。アリサがナノカの胸ぐらを掴んでいる。

 

「ウチは知らねえって言ってんだろ!」

「本当に?」

「しつこいんだよ!いきなり人を泥棒呼ばわりしやがって!」

二人は間近で睨み合うと、間にキレイがが入る。

 

「二人とも、落ち着きたまえ。ナノカ君、そもそも何があって、君はなんの根拠があってアリサ君を疑うのかな?」

それに淡々とナノカが答える。

「リボンよ。私の髪リボンがなくなったの。思い当たる場所は探したけど、見つからなかった。だから泥棒がいる。彼女が一番怪しいと思った」

 

「なんだと、てめえ......!」

アリサが拳を振り上げようとするものの、間にキレイが立っているために拳を下ろす。

「根拠もなしに人を疑うのは良くない。私は君にも同じことを言ったような気がするがね?ナノカ君」

 

ナノカが動じず、こう返した。

「私は、あなたも怪しいと思っているわ」

「んだと!?ウチだけじゃなくて言峰まで疑う気かよ...!」

ナノカの発言にアリサが怒る。

そうした一触即発の食堂内に、凛とした声が響く。

 

「━━━そこまで!」

レイアに、視線が集まる。

「アリサくん、ナノカくん。ここは一旦、冷静になってほしい」

その堂々と力強い声音に気圧されたのか、アリサとナノカは無言で距離を置く。それを確かめたキレイは食器を片付けつつ礼を言った。

 

「助かったよ、レイア君。私も収めようとはしたが......」

「何、当然のことだよ」

そう笑って返し、レイアが全員に向けて言った。

 

「みんなも、気持ちをしっかり持つんだ。どうか衝動的になるのを抑えてほしい。この状況を乗り切るには、私たちが団結する必要がある。マーゴくんやメルルくんのためにも。生き残った全員で、ここを脱出しよう」

 

レイアは一度冷静になってから、ラウンジに集まるよう提案した。全員で話し合いたいことがあるのだという。

「ヒロくんも、どうか参加して欲しい」

そう私にも呼びかけられる。慣れ合う気もないが、囚人たちの動向は把握しておきたい。そう思って、承諾の返事をする。

 

「よかった......ありがとう!」

私の返答に、レイアは安堵したような笑みを浮かべた。

 

━━━━━

 

私はラウンジに入ると、すでに全員が揃っていた。意外だと感じたが、一部は私と同じように考えただけと考えた。

「んで、話し合いってなんなん?」

「レイアちゃんは何か、ここから逃げ出す方法を思いついたの?」

ココとミリアがそれぞれ尋ねる。

 

しかしレイアは、脱出の手段までは考えていなかったようで申し訳なさそうに言う。それをココが期待外れと悪態をついた。

「だったら、何を話し合うというの?」

ナノカの発言に、レイアが答える。

 

「これ以上、殺人事件を起こさないための対策についてだよ」

エマの殺害を企てている私にとっては、聞き捨てならない話題だった。

「ああ、みんなに聞いてほしい」

少女たちが注目する中、レイアは演説するかのように語る。殺人事件が起こらなければ、魔女裁判も起こらない。

 

無惨に殺され、残酷に処刑されることはなくなる。

「そのためには、私たちが団結しなければならない。つまり、もっと交流して互いの絆を深める必要があると思うんだ」

「それって、あの時のサッカーみたいな?」

エマの問いかけに、レイアが頷く。

 

「ああ。あの時のみんなは一体感があって、全員が楽しんでいたと思う。それを目指すんだ。仲良くなり絆が生まれれば、殺人の可能性は減ると思うんだよ。親しくなったことで、逆に軋轢を生むこともあるかもしれない。それでも━━━、衝動的に殺してしまう事態は、起きづらくなるはず」

 

数名を除き、レイアの発言には納得している様子だった。それは、意外な人物からも発言が出た。

「今回、私はレイア君の意見に全面的に賛成する。言っていることは正しい。今朝のナノカ君とアリサ君の事件は、ナノカ君がアリサ君の人となりを知らない故に起きたものだ」

 

キレイは続ける。

「絆を深めるということは、互いのことを知ると言うことだ。例えば私とアリサ君は良く話しているが、彼女は言動の粗暴さとは裏腹に、誰かのために怒り、悩むことができ、教養もしっかりと持ち合わせている優し(ゴツン)......すぐ手が出る所は君の悪い所だね」

「うるせえ!言峰が急に変なこと言うからだろ!!」

 

アリサの拳が後頭部にめり込んだがキレイは平然としている。その様子を見て、そしてキレイの説明を聞いて。皆が賛成に傾いている。

「(あまり、良くない...正しいが......)」

エマを殺すことを決めている私にとって、その提案に乗ることは避けたかった。ふと、ハンナが聞いた。

 

「仲を深めると言ったって、具体的には何をするんですの?」

ハンナの質問に、レイアはここぞとばかりに目を輝かせて言った。

「ふふふ、ハンナくん!よくぞ聞いてくれた!絆を強くするために必要なのはやはり、同じ目標に向かって苦楽を共にすること!サッカーとは違い、全員が一丸となって行うことだ!」

 

芝居がかった大袈裟な身振り手振りで、レイアが告げる。

「みんなで、劇を作ろうじゃないか!一丸となって、舞台を作り上げるんだ!!」

......一瞬、場が静まり返った。私たちが固まっている中、場の空気を読まないふたりの拍手が鳴り響く。

 

「素晴らしい!中々の名案ですね!ひとつの目標を一緒に成し遂げる......きっとお互いの気持ちが深まりますよ!」

「私もシェリー君と同意見だ。娯楽というのは、人間が作り上げた生活を豊かとするもの。劇もその一つだ。反対する意見もない」

シェリーとキレイだ。

 

「劇って......誰に見せるんですの?まさか、ゴクチョーと看守?」

至極真っ当な意見を、ハンナが呈した。

想像しただけでシュールな光景だが、それぞれがそれぞれの考えを口にし始める。

 

「お芝居か〜、楽しそう!いいよ、のあお手伝いしてあげる!」

『考えてやらないこともない』

ノアとアンアンが肯定し、

 

「......好きにすればいい。でも、参加はしない。私は私で、やることがある」

「......流石にこれは付き合ってらんねえ」

「あてぃしも......てか、劇て。んなことしてる場合じゃないっつーの」

覚めた様子で、3人はラウンジを出ていく。

 

「残念だけど、仕方がないね。......ヒロくん、キミはどうだろう?」

レイアが残念そうに肩を落としながら、私に聞いた。

 

「私も遠慮しておく。君たちと仲良く何かをする気になれない」

先の事件のこともある。それを気遣うようにレイアが眉を下げる。

「......そうか、残念だよ」

正直、犯人扱いされたことに対してもう腹は立っていなかった。彼女たちの立場であれば、あの選択、判断は正しかった。

 

「(......だが、私はもう君たちと仲良くするわけにはいかないんだ)」

哀しげなレイアの表情にもどかしさを抱えながら、私はラウンジを後にした。

 




【本日の処スノート】
レイアからの提案を断るのは、心苦しいものがあった。しかし、まさかキレイが全面的賛成の立場に立つとは思いもしなかった。
......だが、何があったとしても私の決意は変わらない。私は、正しくないものを正す。それがたとえ、正しくない行為だったとしても。
私は、魔女を殺す。
殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
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